助教: 打田 直行 |
植物の背丈をコントロールするスイッチを発見
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 助教 打田 直行 |

植物は環境に適応して背丈を柔軟に変化させます。背丈をコントロールする仕組みの解明は、植物の生存戦略を理解するために非常に重要です。それだけでなく、植物の背丈は作物の生産性にも大きく関わっています。有用部位の生産力を変えずに背丈だけを低く出来ると、作物が倒れにくく栽培の手間が省け、かさ張らないために密度高く栽培できます。また、茎の成長に必要なエネルギーが有用部位に回るので肥料の効率的な使用が可能になります。人為的に植物の背丈を変化させる技術の開発は作物の生産性の向上に有望です。しかしそのためには、そもそも植物が背丈をどのような仕組みでコントロールしているのかを解明する必要があります。

生物体内では細胞表面にある受容体に、それに対応したリガンドが結合すると、受容体から細胞内へ情報が伝えられます。双子葉類のシロイヌナズナでは、ERECTAという受容体が植物の背丈のコントロールに関わることが知られていましたが、そのリガンドは不明でした。今回、EPFL4とEPFL6という2つのタンパク質(この2つは同じ働きをする)がERECTA受容体のリガンドであり、受容体に結合することで背丈を伸ばすスイッチをONにすることを発見しました(図1)。ERECTAやEPFL4・EPFL6が機能を失った植物では背丈が低くなります(図2)。
また、EPFL4とEPFL6が内皮という組織で生まれる一方で、受容体のERECTAは篩部という組織で働いていました。このことは、内皮と篩部との間にこれまでに想定もされてこなかった情報のやりとりが存在することを意味し、植物の発生学の観点からも極めてユニークな発見となります。
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| (図1)リガンドであるEPFL4とEPFL6が、細胞表面でアンテナのように存在する受容体のERECTAに作用すると、背丈が伸びるスイッチがONになる。 | (図2)通常のシロイヌナズナとくらべて、受容体であるERECTAやリガンドであるEPFL4とEPFL6が無くなった植物では背丈が特異的に低くなる。 |

一般にリガンドと受容体は副作用の少ない医薬品のターゲットとして極めて多くの例で利用されてきました。したがって、今回植物の背丈をコントロールするリガンドと受容体の組み合わせを発見したことにより、今後は植物の背丈を特異的に操るための薬剤の開発などが可能になると考えられ、作物の生産性向上につながると期待されます。また、本研究結果を新たな出発点として、背丈のコントロールに関わるさらなる仕組みの解明を目指していきたいと考えています。

(記事制作協力:日本科学未来館 科学コミュニケーター 三ツ橋知沙)