准教授: 藤田 昌史 |
下水処理過程で生成する温室効果ガスの対策
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わが国には約2,100カ所の下水処理施設があります。そこでは、活性汚泥とよばれる微生物の集団により、下水中の有機物や窒素などが除去されています。しかし、窒素除去の過程でCO2の約300倍の温室効果ポテンシャルを持つ一酸化二窒素(N2O)が生成することが問題視されています。
下水処理におけるN2Oの生成機構は、1990年代から精力的に研究されてきました。生成条件として、活性汚泥の周囲の環境条件や下水の化学的組成が挙げられていますが、未だにN2O生成を定量的に説明できるには至っていません。

われわれは、まずアンモニア酸化反応に的を絞りました(図1)。実験室で集積したアンモニア酸化細菌(AOB)を用いて、NH4-Nの添加量を調整することによりさまざまな活性のAOBを得て、バイアル試験を実施しました。活性の指標としてキノン含有量を用いたところ、AOBのNH4-N酸化量が多いほどキノン含有量が多くなり、最大NH4-N酸化速度が高くなることを見出すことができました。しかし、N2Oの生成量はキノン含有量だけでは説明できない場合がありました。バイアル試験中にばらつきのあった亜硝酸性窒素(NO2-N)濃度が関係しているものと考え、初期NO2-N濃度を調整して再試験したところ、N2O生成量はNH4-N酸化量とNO2-N濃度とで定量的に説明できる可能性が示されました(図2)。既報で指摘されているAOBによるNO2-N還元にともなうN2O生成にあたりますが、本研究ではAOBの活性、つまり細胞内の生化学的な側面に着眼したことで、N2Oの生成機構にさらに一歩踏み込むことができたと言えます。
このように下水処理におけるN2O生成の機構は複雑なため、われわれはN2O対策として原因療法的な視点に加えて、対症療法的なアプローチも考えました。具体的には、N2Oを還元する細菌を利用することにより(図1)、生成したN2Oを消費させてしまう運転の可能性を検討しました。その手始めとして、都市下水を用いてN2O還元細菌を集積して、N2O還元速度を調べました。集積したN2O還元細菌は、下水処理施設の活性汚泥のN2Oの生成能力の240~690倍に相当する消費能力を持つと概算されました。つまり、N2O還元細菌の担体固定化などの実務利用を想定した研究を進めていく価値が十分にあることが示されました。
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| (図1)窒素サイクルと一酸化二窒素の生成 | (図2)アンモニア酸化細菌の亜硝酸還元による一酸化二窒素の生成 ※クリックして拡大図が見られます。 |

国内外を見渡してもN2O対策については、対症療法的なアプローチは非常に限られています。実務利用を見据えながらN2O還元細菌の微生物学的あるいは生化学的な側面を明らかにしていきたいと考えています。
