事業の成果

写真:仲真紀子教授

教授: 仲 真紀子

法と人間科学



北海道大学 大学院文学研究科 


教授  仲 真紀子

研究の背景

ここ10余年の間に、児童相談所に寄せられる虐待の通告件数はおよそ5倍となりました。警察での虐待事件の数も増加の一途をたどっています。こういった事案では、被害者・目撃者となった子どもから体験や出来事について正確な情報を聞き出すことが重要な課題です。言語能力、記憶能力が十分ではなく、暗示にもかかりやすい子どもから、どのように話を聞けばよいか。精神的負担をかけず、誘導せずに正確な情報を引き出すにはどうすればよいのか。欧米では1980年代頃より、証拠的価値の高い供述を得るための面接法(司法面接)の研究が行われてきました。しかし、国内での研究は十分に行われていませんでした。

研究の成果

私は対話や記憶の研究をしていましたが、子どもの証言に関する鑑定を依頼されたことから、司法場面での大人と子どものコミュニケーションに関心をもつようになりました。そして基盤研究(C)、基盤研究(B)等を通して、大人と子どものやりとりの特徴や、どのようなときに子どもはより良く話せるのか等を研究してきました。その結果、大人はクローズド質問(YESかNOで答える質問や選択式の質問「車は白?黒?」等)をたくさんしがちであること、質問に含まれる情報(「白、黒」等)は子どもを誘導するおそれがあること、オープン質問(「お話ししてください」「それから?」)は誘導となりにくいこと等を改めて確認しました。
  こういった成果を踏まえ「子どもの面接法:司法場面における子どものケアガイド」(共訳)や「子どもの司法面接:ビデオ録画面接のためのガイドライン」(共訳著)を出版するとともに、現実に使える面接法の研究も開始しました。科研費補助金、そして科学技術振興機構の支援もあり、ようやく児童相談所の職員や警察官の方々に司法面接を利用してもらえるようになってきました。

図1 司法面接のガイドライン
図1 司法面接のガイドライン
図2 司法面接の一場面(現実の事例ではありません)面接者はプロトコルに従い、オープン質問を用いて子どもから自由報告(自発的な語り)をもとめます。
図2 司法面接の一場面(現実の事例ではありません)
面接者はプロトコルに従い、オープン質問を用いて子どもから自由報告
(自発的な語り)をもとめます。

今後の展望

成果を実務で活かしてもらうには、実務家・専門家に向けた研修等で、成果を積極的に提供していく必要があります。また、得られたフィードバックをさらなる研究へと投入することで、ニーズに応え、かつ研究においても新しい洞察を得ることができるように思います。
  日本でも国民の司法参加が始まり、司法における心理学の活用はますます重要な課題となってきました。そこで上のような経過を活かし、法学者、心理・社会学者、実務家が協働して研究を行い、人材育成の道筋もつくる新学術領域研究「法と人間科学」を立ち上げました。司法面接の研究を含む10の計画研究班と8の公募班が、「法意識・教育」「捜査手続き」「裁判員裁判」「司法と福祉」という4つのフィールドで5年間研究を行います。社会実装につながる成果を創り出せる新学術領域の確立が目標です。

図3 研究者・実務家・市民の協同
基礎研究を実務家・市民に提供し、その成果を基礎研究に投入するというかたちで、
新学術領域の基盤形成を目指します。
図4 新学術領域研究「法と人間科学」の4つのフィールド 「法意識・教育」「捜査手続き」「裁判員裁判」「司法と福祉」という4つのフィールドで、18の研究班が研究活動を行います。
図4 新学術領域研究「法と人間科学」の4つのフィールド
「法意識・教育」「捜査手続き」「裁判員裁判」「司法と福祉」という
4つのフィールドで、18の研究班が研究活動を行います。

関連する科研費

  • 平成13—16年度 基盤研究(C)「子どもによる出来事の想起とコミュニケーション(I)‐面接場面の分析-」
  • 平成17—20年度 基盤研究(B)「子どもの面接法 -出来事を話すための語彙-」
  • 平成23—27年度 新学術領域研究(研究領域提案型)「法と人間科学」
  • 平成23—27年度 新学術領域研究(研究領域提案型)「子どもへの司法面接:面接法の改善その評価」