事業の成果

写真:古村孝志教授

教授: 古村 孝志

東北地方太平洋沖地震の巨大津波の謎を解く



東京大学 大学院情報学環総合防災情報研究センター / 地震研究所


教授 古村 孝志

研究の背景

これまで宮城県沖ではマグニチュード(M)7.5~8.0の地震が繰り返し発生してきており、30年以内に99%の確率で同規模の地震が起きると考えられてきました。ところが、3月11日に発生した地震は、想定をはるかに上回るM9.0。地震からおよそ30分後には太平洋沿岸の広い範囲を巨大津波が襲いました。なぜ、これだけの規模にまで増大し、そして巨大津波が発生したのでしょうか。

研究の成果

釜石沖の海底下に設置されていた海底ケーブル津波計の記録に、巨大津波の謎を解く鍵がありました。震源域の直上で記録された津波は、はじめに海面が緩やかに2m盛り上がり、そのあと5mまで急激に上昇する、二段階の成長を示していました(図1b)。このデータから、地震時のプレート境界のずれ動き量を見積もったところ、地震が起きると予測されていたプレート境界の深部が20m程度ずれ動いていただけでなく、さらに海溝付近の浅部プレート境界が55mも大きくずれ動いていたのです(図1a)。こうした二段階のプレートのずれ動きが巨大津波を生み出したのでした。

図1 (a) 推定されたプレート境界の各部分のずれ動き量

図1 (a) 推定されたプレート境界の各部分のずれ動き量(単位:m)。(b) 釜石沖の2点(TM1,TM2)の海底ケーブル津波計データ(黒線)と、計算で再現された津波波形(赤線)の一致度。前田拓人東京大学特任助教(Maeda et al. ,2011)による。

図2 プレートずれ動きモデル 10秒後(上)
図2 プレートずれ動きモデル 10分後(下)

図2 プレートずれ動きモデル(図1)を用いて再現された巨大津波の発生と伝播のようす(地震発生から10秒後(上)、10分後(下))。

今後の展望

そもそも海溝付近では、海のプレートが陸のプレートの下に常にずるずる沈み込んでいて、大地震を起こすような歪みがプレート境界に溜まらないと考えられていました。ところが、そこには何百年分もの歪みが蓄積されていたのです。その原因を探るために、海溝付近の詳しい海底地質調査や、地殻変動観測の強化を急ぐ必要があります。というのは、近い将来発生すると考えられている東海・東南海・南海地震が起きる南海トラフでも、同様のことが起きる可能性があるからです。

関連する科研費

  • 平成14-16年度 基盤研究(C) 「高精度3次元数値シミュレーションに基づく南海・東南海地震の強震動分布予測」

  • 平成20-22年度 基盤研究(C) 「地殻・マントル不均質性の定量化と、広帯域強震動シミュレーションモデルの構築」

  • 平成23-25年度 基盤研究(C) 「高密度地震観測データ解析と大規模数値計算に基づくフィリピン海プレートモデルの構築」

(記事制作協力:日本科学未来館科学コミュニケーター 五十嵐海央)