事業の成果

写真:三浦佳子教授

教授:三浦 佳子

  
  

糖鎖高分子を用いた生体機能材料の開発

九州大学 大学院工学研究院 教授 三浦 佳子

研究の背景

図 1

図1 糖鎖高分子を用いた生体機能材料の開発

細胞表面の糖鎖は、タンパク質や細胞と相互作用して、生体の認識信号として働いていることが知られています。私は糖鎖を生体認識性の分子素子と考えて、これを高分子に組み込むことで生体機能材料の開発を行っています(図1)。高分子の側鎖に糖鎖を組み込んだ材料では、糖鎖が高密度に配置しており、タンパク質が結合し易くなって、高い生体認識性を示します。また、高分子にすることで、高分子合成や物性を利用した材料展開が可能になります。私は糖鎖を側鎖に持つ高分子を特に“糖鎖高分子”と称して、材料合成と機能化を検討しています。

研究の成果

図 2

図2 糖密度によってタンパク質のアミロイド化が制御される。

(1) 糖鎖高分子との複合材料の開発

糖鎖高分子は優れた生体認識能を持ちますが、光や電子機能を持たないため、生体間の相互作用を検出することは容易ではありません。そこで、糖鎖高分子をこうした機能を持つ金微粒子や金基板と結合させた複合材料を合成しました。合成には連鎖移動剤を用いたリビングラジカル重合を用いて、精密な高分子を合成するとともに、チオールを導入して、金を修飾しました。糖鎖高分子で修飾した金微粒子や糖の種類に応じたターゲット(糖認識タンパク質、病原体など)と強く結合して色調変化などを示しました。糖鎖高分子で修飾した複合材料はタンパク質や病原体の検出や捕捉能を持つことが明らかになりました。 

(2) 硫酸化糖鎖高分子による生体機能材料

天然多糖であるヘパリンやヘパランなどの硫酸化多糖が種々の生命現象に関与していることが知られています。硫酸化多糖の機能を再現する高分子として、硫酸化グルコサミンを側鎖に持つ高分子を合成しました。硫酸化糖鎖高分子はアルツハイマー病のアミロイドβタンパク質と結合して、変性凝集を防ぎ、毒性を中和することがわかりました。

私はリビング重合やデンドリマーなどの精密な高分子を用いることで、糖鎖高分子の分子量や糖鎖間の距離を精密に制御して、生体間相互作用を制御できることを見出しました。精密な高分子を用いることで、生命シグナルの強さを制御して、タンパク質のアミロイド化や毒性を制御できることを初めて示しました(図2)。

今後の展望

今後は、糖鎖の機能を発揮する材料について、実用化を含む実践的なレベルでの材料展開を目指していきたいと考えています。糖鎖の機能は注目されているものの、未だ実材料としては、殆ど用いられていません。分子認識性を基軸として新しい材料の創製を目指したいと思います。

関連する科研費

  • 平成14-15年度 若手研究(B) 「生分解性を有する糖鎖高分子の酵素合成と生体機能発現」
  • 平成20-21年度 若手研究(B) 「糖鎖高分子を用いた病原体防除材料の開発」
  • 平成20―24年度 新学術領域研究 「生体機能性樹状高分子を用いたソフトインターフェースの設計」