事業の成果

写真:増澤武弘教授

教授:増澤 武弘

富士山の永久凍土と環境変動

静岡大学 理学部 教授 増澤 武弘

研究の背景

富士山に永久凍土が存在する事は、1971年に共同研究者である藤井等により報告されました(Nature, 1971)。近年、地球温暖化などの環境変動の影響が多くの地域で推測されていますが、その具体的でかつ科学的な根拠については、定量的なレベルで提示されているものはわずかです。そこで世界各国において2000年頃から、永久凍土および氷河における水平・垂直位置の変化によって、環境変動の影響を推定することが注目され始めました。
 本研究は日本列島において、富士山の永久凍土に焦点をあて、その年変化を測定し、地球温暖化との関連を推定しました。

研究の成果

2007年から代表者の増澤と藤井により、富士山の永久凍土の垂直的な位置が、1971年からどのように変化したか、同時に富士山山頂付近において、どのように植物の分布が変化したか、調査が行われました。その結果、図1のように約35年間で標高にして300~400mほど、永久凍土の下限が上昇した可能性がある事がわかりました。さらに、山頂の各地点において、現在確実に永久凍土が存在していることが明らかとなりました(図2)。また、富士山の高山帯や山頂付近で過去に記録がなかった地点において、新たに多くの維管束植物が侵入している事も明らかとなりました。

図1

図1 富士山南斜面の永久凍土の下限の変化


図2

図2 富士山山頂付近の地表面下50cmの
地温の年間変動

今後の展望

富士山山頂では、一般的な高山性のコケ植物・南極と富士山頂に共通して生育するコケ植物・わずかに見られた維管束植物が、定量的に記録されました。そのため本研究計画をさらに発展させ、これまでの植物の分布の変化と現状を比較することにより、植物の侵入・増加の現象についての将来性を定量的に示すことが出来ます。
 また、本研究の成果は永久凍土の位置の変化をもとに地球温暖化の方向性を推定することができます。この成果は、環境科学の分野に関心を持つ多くの研究者や教育関係者が利用できる事になります。今後、永久凍土の下限の変化を富士山の東西南北面で同様に測定することができれば、その成果はより確実な環境変動の指標になりうるものと思われます。

関連する科研費

  • 平成19-22年度 基盤研究(B) 「富士山の永久凍土と環境変動」
  • 平成22年度 研究成果データベース 「北極域から日本列島に分布する高山植物データベース」