教授:登尾 浩助 |
水田からの温室効果ガス発生抑制を目指した管理法の開発 |

主要な温室効果ガスの中でもメタン(CH4)と亜酸化窒素(N2O)の発生量のほぼ半分は農業起源で、更にその約半分は水田を含む農地から発生していると言われています。我が国の水田では湛水(水を溜める)と落水(排水する)を繰返すので、周年的にはCH4とN2Oの両方が発生しています。従来は、水田の小面積(1m2以下)からのCH4とN2O発生量の測定例しかありませんでした。そこで、広域(5,000m2程度以上)の営農水田における長期間にわたるCH4とN2Oの経時的な発生・吸収量を把握することに取り組みました。

近年開発された簡易渦集積法(上向きと下向き風により運ばれるガスの濃度差と上下方向の風速によりフラックスを測定する方法)を使うと、高速度(1秒間に10回以上の頻度)でガス濃度を測定する必要がないので、可搬式のガス濃度測定装置を使って広域のガスフラックス測定が可能です(写真1)。この方法で、温帯地方の日本と熱帯地方のタイに位置する営農水田において、広域のCH4とN2Oの発生・吸収量を経時的に測定することに成功しました。いずれのガス動態にも日周変化がありました。日本とタイの両方において、CH4はほぼ発生のみで、N2Oは発生と吸収を繰返しました。また、いずれのガスも発生・吸収量の大きさは、両国において同程度でした(図1)。
写真1 神奈川県平塚市の営農水田に設置した |
図1 日本とタイの出穂開花期の水田におけるCH4(A)とN2O(B) |

近年では、CH4とN2Oに含まれる天然安定同位体比を測定することによって、これらの生成経路を特定する事ができます。生成経路が特定されると、土壌水分量を適切に加減することで水田からのCH4とN2Oの発生量を抑制したイネ栽培法を提案できます。
(記事制作協力:科学コミュニケーター 五十嵐海央)
