事業の成果

写真:齊藤英治教授

史料研究室長:渡辺 晃宏

木簡-地中からのメッセージを読み解くための知の結集と共有化

独立行政法人国立文化財機構
奈良文化財研究所 都城発掘調査部 
史料研究室長 渡辺 晃宏

研究の背景

図1

図1:重要文化財に指定された
平城宮跡出土木簡の一例
(備前国からのクラゲの荷札・表裏)

木簡は1961年の平城宮跡での発見以来、全国1000を超える遺跡から、7世紀前半から近代まで37万点余が出土しています。中でも藤原京・平城京の時代は日本の木簡使用の最盛期で、特に8世紀は木簡の世紀といって過言ではありません。従来この時代の史料は政府編纂の歴史書『続日本紀』が中心で、木簡への期待はますます高まっています(図1)。
 ところが、木簡は当時の人々が捨てたいわばゴミで、しかも日光と空気から遮断されかつ充分な水分に守られて辛うじて1300年近くも保存されてきた大変脆弱な遺物です。欠損や劣化により不完全な状態の文字を解読するためには、この時代に関わる知の結集が何よりも求められます。そのため私たちが50年間かけて蓄積してきた木簡解読のノウハウを形に残し、今後の木簡研究の発展に役立てたいというのが研究開始の動機です。それは全国の木簡の7割を調査してきた当研究所の責務でもあると考えます。

研究の成果

これまでの成果は、木簡釈読支援システム「Mokkanshop」(モッカンショップ)と、木簡の文字画像データベース「木簡字典」の開発に集約されます(いずれも奈良文化財研究所のHPで公開中)。
 「Mokkanshop」は、木簡を読むための頭脳の一つとして解読者と対話しながら不完全な文字を類推していく釈読支援のための情報処理システムです。画像処理・文字認識・文脈処理を駆使し、従来の研究で得られた様々な技術とノウハウを実装しました(図2)。
 一方「木簡字典」は、木簡に書かれた字形を一覧できる文字画像データベースで、字形の類例を探すための強力な工具です。画像は一種類だけでなくカラー・モノクロ・赤外線画像、さらには私たちが文字を読み取った記帳ノートと称する記録まで切り出して公開しています。また、個々の文字が書かれた木簡のメタデータにもリンクしています(図3)。

図2

図2:「Mokkanshop」による木簡解読画面

図3

図3:「木簡字典」連携検索の検索結果画面

今後の展望

「Mokkanshop」と「木簡字典」を踏まえ、総合的な拠点データベースに発展させ、木簡研究の綜合研究拠点機能を構築していきたいと考えています。木簡情報の蓄積が新たな解読を可能にし、それがまた今後の解読を可能にする「知の循環」が実現すれば、墨書土器など他の出土文字資料研究への応用、文献史料に関する研究拠点との連携(2009年に東京大学史料編纂所の「電子くずし字辞典データベース」との連携が実現)、ひいては東アジア漢字文化圏の資料研究への応用が可能になるでしょう。世界的にも類例のない総合的な歴史資料研究として、歴史資料の共有環境の実現に貢献したいと考えます。

関連する科研費

  • 平成15-19年度 基盤研究(S) 「推論機能を有する木簡など出土文字資料の文字自動認識システムの開発」
  • 平成20-24年度 基盤研究(S) 「木簡など出土文字資料釈読支援システムの高次化と綜合的研究拠点データベースの構築」