教授:上田 恵介 |
カッコウのヒナを排除する仮親がいた |

図1:上の2つがハシブトセンニョムシクイの卵、下の緑黒色の卵がアカメテリカッコウのもの。両者はまったく似ていない。
ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせるカッコウの「托卵」に対して、宿主の親鳥は、托卵された卵を見分けて排除することがヨーロッパでの研究から知られていました。しかし、いったん卵がふ化すると、自分のヒナとは似ても似つかないカッコウのヒナに盲目的にエサを与えて育て続けるものだと思われてきました。 私たちは、オーストラリア北部の熱帯域にすむハシブトセンニョムシクイと、それに托卵するアカメテリカッコウが、卵はまったく似ていないのに(図1)、ヒナがそっくりなこと(図2,3)に注目しました。ヒナが似ることの背景には、カッコウの側に自分のヒナを宿主のヒナそっくりに似せねばならない“事情”があると考えたのです。

図2:アカメテリカッコウのヒナ
そこで両者の関係を探るため、オーストラリア北部の都市ダーウィンのマングローブ林で、ビデオカメラで500時間以上、ハシブトセンニョムシクイの巣を撮影しました。その結果、托卵された11個の巣で、ふ化後まもないアカメテリカッコウのヒナをハシブトセンニョムシクイの親が排除する行動が3件確認されました。温帯ではカッコウの托卵行動は200年以上も前から研究されていますが、ヒナの排除は1例も見つかっていません。どうも熱帯では温帯と違う進化が起こっているようです。

図3:ハシブトセンニョムシクイのヒナ
アカメテリカッコウは同じ地域に棲むもう1種のセンニョムシクイ類のマングローブセンニョムシクイにも托卵しています。こちらも卵はまったく似ていなくて、ヒナが“少しだけ”似ています。おそらく進化的な時間差で、ハシブトセンニョムシクイからマグローブセンニョムシクイへの宿主転換が起こりつつあるのかもしれません。
この発見は、托卵という不思議な現象が、なぜ進化してきたのかという、世界中の進化研究者が取り組んでいる問題に、ひとつの解決の糸口を与えるものかも知れないと私たちは考えています。
