事業の成果

写真:金水 敏教授

教授:金水 敏

キャラクターと言葉をつなぐ「役割語」の研究

大阪大学大学院文学研究科 教授 金水 敏

研究の背景

図1

図1:「わしも博士じゃ」by 石橋博士

まず、次の日本語の例をご覧下さい。
1. そうじゃ、わしが知っておるんじゃ。
2. そうですわよ、私が存じておりますわ。
3. そや、わしが知っとるでえ。
 日本語の母語話者であれば、これらの台詞をどんな人(性別、年齢、出身地など)であるかということはおおよそ推測がつくと思います。例えば1ならおじいさん(ひょっとしたら、博士)、2なら上品な女性(お嬢様など)、3なら関西人、という風に。しかし、そう答えた人が、こういった話し方をする人物に現実に出会ったかというと、そうではないケースの方が多いでしょう。上に見るように、特定の話し方と、話し手の人物像との結びつきが認められる場合、その話し方のことを「役割語」と呼ぶことにします。拙著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003)では、役割語を仮想現実の言葉と見ること、その理論的背景、歴史的形成過程等について述べました。

研究の成果

図2

図2:2009年3月に神戸大学で開催されたシンポ
ジウム「役割・キャラクター・言語」

現在のプロジェクトでは、英語学、音声学、日本語教育学、日本語史、言語心理学、音声学、マンガ研究等の専門家を集め、役割語について総合的に研究しています。そんななかで、英語・韓国語にも役割語はあるが現れ方が日本語とはかなり違うこと、日本語教育にとっても役割語は極めて重要であり、適切な教材への取り込みが求められることなどが明らかになって来ました。また、幼児は何歳ぐらいでどのくらいの役割語の知識を獲得するのかという点について、言語心理学的な実験を進めつつあります。

今後の展望

役割語の研究は、言語学のみならず、言語教育、社会学、心理学など幅広い分野との学際的な研究材料として最適であり、また人文科学の入門的教材としても貴重です。
 現在は英語、韓国語、中国語、ドイツ語等の言語との対照研究がありますが、より多くの言語に視点を広げ、役割語の普遍性と個別性について明らかにしていきたいと思います。また日本語の役割語と日本のポピュラーカルチャー作品との関わり、またより広い“キャラクター”という概念との関連についても研究を進めていく必要があるでしょう。
 役割語研究の情報は、逐次下記ブログで公開されます。
 http://skinsui.cocolog-nifty.com/sklab/

関連する科研費

  • 平成19―22年度基盤研究(B)「役割語の理論的基盤に関する総合的研究」