日本学術振興会賞

過去の受賞者について

第6回(平成21年度)日本学術振興会賞受賞者

photo_湯浅 新治
湯浅 新治
(ユアサ シンジ)
YUASA Shinji



生年 1968年 出身地 神奈川県
現職 産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門 研究グループ長
(Group Leader, Nanotechnology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)
専門分野 スピントロニクス、薄膜成長、磁気工学
略歴
1991年 慶應義塾大学理工学部卒
1993年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了
1996年 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了
1996年 博士(理学)の学位取得(慶應義塾大学)
1996年 工業技術院電子技術総合研究所研究官
2001年 産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門主任研究員
2004年 産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門研究グループ長(現在に至る)

授賞理由
「高性能磁気トンネル接合素子の開発と実用化」
(Development of High Performance Magnetic Tunnel Junction Devices)
 湯浅新治氏は、強磁性金属/絶縁体/強磁性金属の薄膜3層構造を持つ磁気トンネル接合(MTJ)において、絶縁体として厚さ1nm(ナノメートル)オーダーの結晶化した酸化マグネシウム(MgO)を用いることで、コンピューターで用いられているハードディスクの記録密度を飛躍的に向上させるとともに、次世代大容量不揮発メモリの基盤を構築した。
 同氏は、鉄薄膜上に結晶化MgOを成長させる技術を開発し、それによりMTJのトンネル磁気抵抗比(TMR:上下2つの強磁性体の磁化の向きが揃った場合と逆向きの場合のMTJの電気抵抗の違いの指標)が従来の3倍以上になることを見出した。また、鉄の代わりに鉄・コバルト・ホウ素合金を用いることで量産化を可能とし、TMRが更に増えることも見出した。これらの技術は、ハードディスクの磁気ヘッドとして、現在すべての大容量ハードディスクに採用されている。また、MTJは電源を切っても記憶が消えない不揮発という特徴を持っていることから、将来の大容量メモリとしても期待されているが、同氏の業績は、このメモリセルの小型化、すなわち大容量化へも大きな進展をもたらしている。
 同氏の業績は一言でいえばMTJの特性向上であるが、その飛躍的な前進はスピントロニクスという新しいエレクトロニクスの分野の発展に大きく貢献している。また、同氏の研究自身も、磁気ヘッドから大容量メモリ、さらには、マイクロ波発信素子の開発などへ広がりつつあり、今後の更なる発展が期待される。

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