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人文・社会科学振興プロジェクト研究事業
  • テーマ名
  • 「子どもたちに物語を楽しむ心を伝える」

  • 開催日時
  • 平成20年11月2日(日)

  • 会場
  • 国立民族学博物館 第7セミナー室

  • 住所
  • 大阪府吹田市千里万博公園10-1

  • 実施の様子
  • 第2回 子どもたちへの昔話の語り部になる

    昔話には何がこめられているのか。昔話を語り伝えるとはどういうことか。どのように語るのか。これらについて、講師の矢口裕康先生にお話しいただいた上で、梅花女子大学学生が実際に絵本や紙芝居を読み聴かせ、その場で実践指導をしていただいた。

    講師の矢口裕康先生は、昔話の採集から始める研究を長年続けられてきた。一方、将来幼児教育に関わる若い世代に、昔話の語りについての実践的な指導を続けておられる。その成果は、『民話と保育―「個育て」のために』『語りを現代に―ことばではぐくむ子どもの世界』『昔話と幼児教育』など多数の著書に示されている。現在、南九州大学客員教授。

    矢口先生のお話は、恩師野村純一先生のもとで昔話研究を始めた頃、昔話を語り聴かせることを幼児教育に携わろうとしている若い世代に伝える授業の一コマ、など具体的に親しく語られ始め、約30名の聴衆は引き込まれていった。昔話を聞いて育ち、体で覚えた語り部はほとんどいらっしゃらなくなった現代、それでも人と人が交流することの重要性を考えたとき、書き留められたものを勉強して覚えて語ることも大切である。それを絵本や紙芝居を使って「読み聴かせ」て伝えることにも意義がある。矢口先生は、後に「自分の姿を映す『鏡』」(宮崎日日新聞まがたま音信11月19日)にこの時の話を以下のようにまとめられた。

    (前略)前半に「昔話に込められている思いとは何か、昔話を語り伝えるとはどういうことか、どのように語るか」を講演。日本の昔話の中でよく知っているようで、結局はっきりとしない話「桃太郎」「勝(かち)勝(かち)山」を取り上げて語ってみた。その上で、実践的な指導を梅花女子大学生四人に、絵本と紙芝居を語ってもらった。四人四様の語りに感銘を受け、最後に「語りとは何か」でまとめた。

    語りとは①ごてごてしていなくてシンプルな存在②想像力や夢を育てる存在③聴き手に余韻を感じさせ、心の波紋を巻き起こす存在④「分からない」を知り、「知らない」を分かる存在⑤自分なりの創意工夫ができる存在⑥三つのごかん(五感・五官・語感)を生かせる存在、と思っている。(後略)  

    この中で触れられている実践的な指導は、先生が用意された絵本『ももたろう』(ミキハウスの絵本、湯村輝彦文、川崎洋絵)、紙芝居『ももたろう』、絵本(アニメ)『かちかちやま』(世界名作ファンタジー、平田昭吾文、井上智絵)、紙芝居『やまんばのにしき』(松谷みよ子脚本、井口文秀絵)をその場で読むという課題だったが、前半のお話を受け、実践指導に名乗りを上げて参加してきた学生たちは、先生のご指摘通り「四人四様」に挑戦した。それぞれの絵本・紙芝居は、話の違いだけでなく、昔話をどのように扱うかという作りの性格の違いが あり、考えさせられることが多かった。

    アンケートには、「語り手の心を伝えていく、その人の個性をだして伝えていくのだというお話には大きくうなづくものがありました。」(40代女性)、「ここまで話が変わるものだとは思いませんでした。同じ作品を違った視点から見られて良かったと思います。」(20代女性)、「『自分のことばで今の自分を語る』という事が、勉強になりました。」(30代女性)などの感想が寄せられた。信念を持って昔話をめぐって研究、授業、社会活動にまい進されている矢口先生の「自分のことばで語る」「迷ったときはやってみる」などのことばに励まされた3時間だった。