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人文・社会科学振興プロジェクト研究事業

プロジェクト研究の成果

プロジェクト研究一覧表

研究領域 2
Project Number 2-3

プロジェクト研究名:

グローバル・ガバナンスの解明

グループ名:

「重層的ガバナンスの理念と実態」の解明

リーダー名(所属):

遠藤乾(大学院公共政策学連携研究部教授)

組織構成:

リーダー 遠藤 乾 (北大公共政策大学院教授、補完性、標準化、帝国、班間連携)

<現状班>
田所 昌幸 (慶応大学法学部教授、アジア、FTA、金融・送金、文化外交)
城山 英明 (東大大学院法政研究科教授、標準化、国際行政、領域間連携)
篠田 英朗 (広大平和研究所准教授、法の支配と平和構築、思想班兼)
元田 結花 (北大SGP特任准教授、現学習院大学法学部教授、国際開発協力、保健衛生)
河島 さえ子 (ICTY旧ユーゴ国際法廷勤務、ICCと被害者)
高安 健将 (成蹊大法学研究科准教授、相互依存下の国家(指導))

<思想班>
寺谷 広司 (東大大学院法政研究科准教授、ICC、平和構築、現状班兼)
安武 真治 (関西大学法学部准教授、「帝国」理念の検討)
ベン・ミドルトン(フェリス女学院国際交流学部准教授、トランスナショナルな社会概念)

<若手研究者>
坂根 徹(東大大学院法政研究科院生、国際機関・PKOの調達・財政)
柴田 晃芳 (北大創成科学共同研究機構研博士研究員、安全保障と帝国)
五十嵐 元道(現日本学術振興会DC研究員、平和構築と国際機関)
板橋 拓己 (北大大学院法学研究科助教、欧州連合と帝国、事務局)
宮崎 悠 (現北大大学院法学研究科助教、帝国と東ヨーロッパ、事務局)
山崎 望 (現専修大学法学部准教授、グローバル・ガバナンスの思想)

平成19年度の研究成果

今年度は、前年度までに実施してきた多数の個別イシューの検討に基づいて、以下の各テーマを重要イシューに設定し、これらに焦点を絞って研究を深めた。

重要イシュー

  • グローバル・ガバナンスの現状と思想
  • 世界標準の形成
  • グローバル・ハウスホールディング
  • 平和構築と国際機構
  • 帝国と覇権

加えて、思想的・理念的・概念的検討の成果によって、個別的イシューから全体像や対象への接近法へ、帰納的に研究を深めることができた。これにより、個別研究を適切な枠組に基づいて再構築し、一貫性の高い研究成果へと統合する展開できるよう、グローバル・ガバナンスという現象に対するアプローチの仕方を具体的させていった。 具体的には、思想や歴史の側面を重視して分析の枠組を構築し、それに基づいた形で、優れて現代的な現象であるグローバル・ガバナンスを分析することにより、その通時的・同時代的意義、課題構造を明らかにするアプローチである。これにより、多様な重要イシューを、アクター別、公的・私的セクター別、イシュー別、レベル別などに整理した上で分析することが可能になった。 さらに、こうした本プロジェクトの研究成果を公表するため、執筆・編集活動を活発に展開した。本プロジェクト代表的成果は、以下のとおり一般に広く公表されている(一部出版予定を含む)。

代表的成果の公表

  • 城山英明・石田勇治・遠藤乾(共編著)、『紛争現場からの平和構築 − 国際刑事司法の役割と課題』(東信堂、2007年)。
  • 遠藤乾(編著)、『グローバル・ガバナンスの最前線 − 過去と現在のあいだ』(東信堂、2008年)。
  • 遠藤乾(編著)、『ヨーロッパ統合史』(名大出版、2008年)
  • 遠藤乾(編著)、『グローバル・ガバナンスの人と思想』(有斐閣、2008年末出版予定。

シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:

  • 2007年7月21-22日、「グローバル・ガバナンスの人と思想」出版準備研究会、 北海道大学(札幌)、13人。
  • 2007年8月17日、「グローバル・ガバナンスの最前線」出版準備研究会、 京都大学(京都)、10人。
  • 2007年9月30日、「グローバル・ガバナンスの最前線」出版準備研究会、 大都ビル会議室、大阪、10人。
  • 2007年11月2日、グローバリゼーション研究会「世界の中の日本 − 国際競争激化の世界の中で」、牧原秀樹(衆議院議員、自由民主党)、北海道大学(札幌)、33人。
  • 2007年11月10日、「少子化高齢化時代のケア労働の国際化について」、Biz Café Sapporo(札幌)、30人。
  • 2007年12月2日、「少子化高齢化時代のケア労働の国際化について」、くすみ書房(札幌)、30人。

<飛び出せ人文・社会科学〜津々浦々学びの座〜実施状況>

  • 2007年11月10日、「少子化高齢化時代のケア労働の国際化について」、Biz Cafe Sapporo(札幌)、30人。

論文、著書等:

  • 遠藤乾(編著)『グローバル・ガバナンスの最前線 −現在と過去のあいだ』(東信堂、2008年)。
  • 遠藤乾(編著)『ヨーロッパ統合史』(名大出版、2008年)
  • 遠藤乾、「学者が斬る(345)国境を越えるアジアのケア労働」(『エコノミスト 86 号』、46〜49頁、2008年)。
  • 遠藤乾、「ISAF参加の是非をめぐり議論の本位を定る事 (小沢論文、私はこう読 んだ)」(『世界』 772号、160〜163頁、2007年)。
  

グループ名:

帝国とネットワーク ーアジア地域秩序の解明

リーダー名(所属):

籠谷直人(人文科学研究所)

組織構成:

岩井茂樹 京都大学人文科学研究所 中国近世史
上田貴子 近畿大学文芸学部 華僑ネットワーク
小野沢透 京都大学文学部 アメリカ覇権
大石高志 神戸市立外国語大学 印僑ネットワーク
籠谷直人 京都大学人文科学研究所 日本近代史
川村朋貴 富山大学文学部 イギリス近代史
神田さやこ 大阪大学経済学研究科 南アジア経済史
木谷名都子 名古屋市立大学経済学研究科 イギリス帝国史
蔡志祥 香港中文大学歴史学部 華僑ネットワーク
鍾淑敏 中央研究院台湾史研究所 華僑ネットワーク
城山智子 一橋大学経済学研究科 20世紀中国史
谷口謙次 大阪市立大学経済学研究科 インド通貨史
陳天璽 国立民族学博物館先端人類学研究部 華僑ネットワーク
陳来幸 兵庫県立大学経済学部 華僑ネットワーク
西村雄志 松山大学経済学部 アジア通貨史
溝口歩 神戸大学国際文化学部 華僑ネットワーク
村上衛 横浜国立大学国際社会科学研究科 清朝帝国史
李培徳 香港大学アジア研究センター 華僑ネットワーク
林満紅 中央研究院近代史研究所 華僑ネットワーク
劉宏 マンチェスター大学 華僑ネットワーク
脇村孝平 大阪市立大学経済学研究科 インド経済環境史

平成19年度の研究成果

 近世以降のヨーロッパは「主権国家」を作りだし、経済的には「重商主義」、「資本主義」、「帝国主義」の時代を迎えた。これが人類の歴史的径路であれば、これらとは無縁であった東アジアには、やや「後進」、「停滞」のイメージが与えられてきた。だが、東アジアにはこうした径路とは異なる「帝国とネットワーク」の歴史径路があった。その中で、主体となるのは中華帝国から登場し、ネットワークを伸張させた「華僑・華人」であった。

 彼らが有する「儒教」の基本は、祖先崇拝(孝)だから、本籍に住むことが優先される。それゆえ「僑寓」は本籍の対峙概念であり、いずれは帰郷することを前提にした。それゆえ、「僑」をある集団として使うことはなかった。他方、「華」は文明の中心を示したから、中心から移動した人や対象には使わなかった。華人という表現は、いずれは帰国する人物を含意したのであり、もしそうした意味の拘束をさけるのであれば、「唐人」という表現をつかった。つまり、中心からはなれた海外移住者には、中国の政治文化の原則からややはずれた「私人」を含意させたほうがよかった。

 しかし、こうした私人の活動に政治的な枠をはめたのが、近代ヨーロッパの東漸を契機とする条約概念の浸透であった。中心から離れていても「中心を意識する集団」としての「華僑」像が創造された。1842年の南京条約は、主権、人民、領土を規定し、国家概念を東アジアに持ち込んだ。1844年にイギリスは、海峡植民地に生まれた人を「イギリス臣民」として保護をあたえることを宣言した。清朝としてもその対抗策としては、海外の中国人を「清国臣民」であると主張する必要があった。つまり19世紀になって清朝帝国は、「華僑」、つまり「中心からはなれた集団」の存在を追認したのである。華僑という表現の成立には送り出し先の郷里(中華帝国)と移住先(ヨーロッパの植民地)との政治的な利害交渉の錯綜から生まれた。近年に華僑と華人をわける表現も移住先で中国籍を有する前者と移住先の国籍を取得した後者を区別する中国本国の意思を反映したものであった。そうであるとすれば、アジアの各地域に分布する華僑華人を研究対象にすることは、ヨーロッパ帝国主義の東漸から引きおこされた近代の再編を描くことになり、送り出し側の中国の帝国社会のあり方、そして、受け入れ先の地域であるアジアの植民地、主権国家の個性を議論することにつながろう。歴史学における西洋中心史観や一国史観からも捉えがたい華僑華人ネットワークを、「制度」として議論したい。D.ノースによれば、制度とは「人間がお互いにかかわりあうときの不安定さを軽減するために考案された構造」であり、それは法律のような公式的な規制や、「規範や慣習」のような非公式的な制約から構成されるルールの束だった。

 ヨーロッパでは、権力が私的所有権にたいする恣意的な統制や、財産の没収という「横暴」にでることを抑制した。公権力を相対化し、安全を確保しうる市場インフラが形成されてこそ、ヨーロッパの工業化が可能であった。M.ウェーバーによれば、「産業資本主義は、法秩序の恒常性・確実性・没主観性・法発見(司法)や行政の合理的な・原理的に計算可能」性が高くなる必要がある。他方で、中国では、市場を完全に近づけようとする、議会や、裁判所、取引所、そしてイデオロギーなどのインフラが、権力と商人との間でつくられなかった。代議制などによって公権力を相対化して、投資の安全を確保する「計算可能性」が高まらなかったゆえ、中国の工業化は遅れたと指摘されてきた。

 しかし、近年の中国の明清史研究の文脈は、公権力の「横暴」を強調していない。むしろ清朝は、人の移動に制度的な規制を加えない開放性と流動性を備えていた。帝国にとっては沿岸交易によって台頭した経済主体が、王権への反抗勢力になることを未然にふせぐことに関心があり、そうでないかぎり移動や交易に介入する意思はなかった。そうした開放性を背景に、商人は権力の後援をうけなくても、地縁・血縁・業縁を通して取引コストを引き下げる工夫をこころみた。主権国家や私的所有権のような制度がなくとも、農業の商業化とプロト工業化による市場展開がみられた。商人のギルドやネットワークのような中間組織、そして村落共同体、家族などの制度が、取引コストを切り下げて、市場の拡張に貢献した。

 清朝の中国では、地租の金納化、商品作物の増加によって人口が増加した。資源に対して人口がふえると、中国では二つの対応があった。第一は、余剰労働を吸収する労働集約型経営であり、第二の対応は、移動を通して、家族労働を地域外で吸収することであった。土地などの資源の足りない郷里で競争を繰り返せば、人々は共倒れとなるから、人々は移動という戦略で競争社会に対応した。郷里の競争を念頭にして、華僑が外地に赴くときに、生存の戦略としては、勤勉、節約、順応が徳目となり、移住先での社会的上昇の成功率を高くする可能性がある。

 生存の戦略として、移動が選ばれれば、家族の構成員と協働するよりも、個人の才能を活かすことが優先された。それゆえ、教育への投資も重視された。近隣や宗族が奨学金や旅費を与えることもよくみられたように、移動には教育水準の向上による人材育成が求められた。そして、教育投資が、各人の才能を引き出すのであれば、決して単純な労働に就くのではなく、科挙の試験に合格することや、才能を生かした出稼ぎがすすむ。たとえば、科挙の試験に合格して、官界や学者になって上昇すれば、郷里の栄誉になる。そして才能を生かして、商人や海員として海外に赴き、成功して、送金すれば、郷里に錦を飾ることになろう。商人や海員のネットワークは、商品、熟練、使用人の補充を郷里から調達したから、さらに地縁・血縁・業縁のネットワークを伸張させた。日本のように「イエ」の維持は優先されず、むしろ、血縁、地縁、同郷、同方言の集団から良質な労働力を引き出すことが重要であった。

 華僑が、「族譜」をつくるようになるのも、その外地で移住者が増加し、家族が増えて、先祖の廟の香炉や位牌をもって祭りを定期的に開催したことを含意した。そこでは確かな血縁のつながりでなくても、信用できる人材を兄弟と擬制して、その系譜に含みこむことも可能である。日本のイエでは、貯蓄を利殖にむけて、息子たちに労働を課して富を増やそうとするが、中国では貯蓄を利用して、兄を農民に仕立てたあとには、残った子供たちを、それぞれの能力に応じて仕事を習得させる。この対照は、人は「生産力の理論」に従うのか、それとも「価値の理論」に従うのかを問うている。

 ヨーロッパにおける主権国家や私的所有権が発展の径路を整備したとするならば、アジアにおいては「帝国」と「商人のネットワーク」が径路形成に大きな役割を果たしたのである。

シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:

2007年9月9日 第九回世界華商大会開催記念 連続シンポジウム「孫文・華僑・東北アジア」第二日目 「東北アジアの華僑華人」 場所:中華会館東亜ホール 主催:人社プロジェクト籠谷グループ・神戸華僑華人研究会 共催:(財)兵庫県国際交流協会・(社)中華会館 一般参加90名

2008年3月3日 ワークショップ Networks and Global Governance in the Past and at the Present Japanese Scholars’ Perspectives 場所:香港中文大学 参加者30名

<飛び出せ人文・社会科学〜津々浦々学びの座〜実施状況>
2007年11月17日 「華僑ネットワークと神戸」 場所:ひょうご国際プラザ交流ホール 共催:(財)兵庫県国際交流協会 講師:籠谷直人 一般参加30名

論文、著書等:

  • 陳天璽 「危機を機会に変える街−チャイナタウン」『現代思想』vol. 35-7,青土社(2007年6月)pp.84-94
  • 陳来幸 「阪神地区における技術者層華僑ネットワーク一考—理髪業者の定着とビジネスの展開を中心に—」山田敬三先生古稀記念論集刊行会編『南腔北調』(2007年7月)pp.937-964
  • 陳来幸 「三江会館の設立と新たな活動」「三江会館的成立与其新的活動」神戸三江会館編『三江会館簡史』(2007年8月)pp. 53-67,131-142[中国語版]
  • 陳来幸 「清末民初期江南地域におけるシルク業界の再編と商業組織」太田出・佐藤仁史編『太湖流域社会の歴史学的研究──地方文献と現地調査からのアプローチ』汲古書院(2007年11月)pp.35-64
  • 城山智子 「十九世紀末的子口半税与内地貿易:以漢口為例」張之香編『張福運与近代中国』 上海:上海人民出版社(2007年)pp.112-122
  • 城山智子 China during the Great Depression: Market, State and the World Economy, 1929-1937, (Cambridge: Harvard University Asia Center, 2008)
  • 大石高志 “Indian Muslim Merchants in Mozambique and South Africa: Intra-regional Networks In Strategic Association with State Institutions, 1870s-1930s,” in Journal of the Economic and Social History of the Orient, Leiden, Brill, Vol.50, No.2-3, 2007, pp.287-324
  • 大石高志 「インドにおけるマッチ産業と女性・児童の労働―矮小化と弾力性の表裏関係」『外国学研究』<特集:女性と世界> 神戸市外国語大学66号(2007年)pp.77-105
  • 大石高志 「雑貨・食糧品ビジネスの探求 −インド人商人ネットワークの広域的展開」『自然と文化そしてことば』第4号(特集インド洋をめぐる人と物の移動)葫蘆舎(2008年1月)pp.52-59
  • 神田さやこ ‘Merchants, institutions and the market: changes in the salt trade in early colonial Bengal’, Discussion Papers in Economics and Business, Graduate School of Economics and Osaka School of International Public Policy, Osaka University, no.08-02 (January 2008)
  • 籠谷直人「帝国下における商人のネットワーク」『現代中国研究』16号、中国現代史研究会、2005年、2-6頁
  • 籠谷直人「19世紀の東アジアにおける主権国家形成と帝国主義」『歴史科学』、大阪歴史科学協議会184号、2006年、4-13頁
  • 籠谷直人「東アジアにおける自由貿易原則の東漸」(脇村孝平氏との共編著)『帝国の中のアジア・ネットワーク』世界思想社、2008年(近刊)
  • 籠谷直人"The Chinese Merchant Community in Kobe and the Development of the Japanese Cotton Industry, 1890-1941," in Kaoru Sugihara(ed.), Japan, Chine and the Growth of the Asian International Economy, 1850-1949, Harvard University Press,2005,pp.49-72.