プロジェクト研究名:
医療システムと倫理
グループ名:
医療現場における意思決定・問題解決・協働
リーダー名(所属):
清水 哲郎 (東北大学・大学院文学研究科・教授)
組織構成:
清水 哲郎 東北大学大学院文学研究科・教授 研究の総括・臨床倫理システム開発
石垣 靖子 北海道医療大学・大学院看護福祉学科・教授 臨床倫理システム開発
佐藤 伸彦 砺波サンシャイン病院・医師 臨床倫理システム開発協力
松浦 明宏 東北大学大学院文学研究科・産学連携研究員 臨床倫理学理論
日笠 晴香 東北大学大学院文学研究科・博士後期課程 臨床倫理学理論
会田 薫子 東京大学・大学院医学系研究科・博士後期課程 臨床倫理学理論
圓増 文 国士舘大学・非常勤講師 臨床倫理学理論
熊野 純彦 東京大学大学院人文社会系研究科・助教授 ナラティブと死生学
島薗 進 東京大学大学院人文社会系研究科・教授 ナラティブと死生学
竹之内弘文 静岡大学農学部・助教授 地域の医療・福祉ネットワーク
岡部 健 社団法人爽秋会岡部医院・院長 地域の医療・福祉ネットワーク
鈴木 岩弓 東北大学大学院文学研究科・教授 地域の医療・福祉ネットワーク
直江 清隆 東北大学大学院文学研究科・助教授 臨床研究の倫理
田代 志門 日本学術振興会 特別研究員PD 臨床研究の倫理・地域ネットワーク
山本 史華 東北大学大学院薬学研究科21世紀COE助手 臨床研究の倫理
平成18年度の研究成果
1.臨床倫理検討システム開発と医療システムへの組込み: 本プロジェクトが開発した臨床倫理検討システム(医療現場における意思決定、問題解決を支援するツール・理論等のセット)を試用・使用する医療機関を広げるため、医療従事者を対象とした「臨床倫理ベーシック研修会」を企画し、昨年度末から開始したが、本年度は全国各地で研修会を開催し(大阪、延岡、青森各1回、札幌2回)、システムの説明と事例検討を行なった。これは同時に、さまざまな臨床場面における事例を集積し、今後の研究の展開につなげるための活動でもある。加えて医療系、看護系の各種研修会・講演等への招聘に応じて研究成果を提示し、現場への浸透を図った。本検討システムは、これまで交流のなかった医療者・研究者から、現場での使用や学会発表での引用の許可をもとめられることがあり、また現場で既成の方式との優劣がとりざたされるなど、昨年に引き続き、さらに医療現場に広まりつつあると思われる。
2.ナラティブ・メソッドのブラッシュアップと臨床倫理への還元: 検討システムとの連関で、個別事例における患者等および医療者のナラティブをどう理解し、かつそれを医療現場の活動にどう実践的に結びつけるかについて、@の臨床倫理事例検討と重なりあいつつ検討を重ねた。本テーマの研究は、東京大学21世紀COE「死生学の構築」との交流を深め、「臨床死生学」として今後展開する方向になりつつある。また、以下の3.の若手研究者の会においても個別事例に即した検討がなされた。
3.地域における医療・福祉ネットワークのあり方の実践的研究: ・若手研究者・大学院生を中心とした、在宅ホスピスケアと結びついた死生学の研究会(タナトロジー研究会)は、昨年度に引き続き、本年度も多分野の研究者が参加し、医療従事者とつながりつつ、地域の文化や患者・家族の生活を理解することを基礎に、人文科学研究と医療・福祉のつながりを志向している。グループの2名はスピリチュアル・ケアについての緩和医療サイドの研究グループに参加して、以上の成果を実践に活かそうとしてもいる。 ・医療ケアと結びついた死生学研究を、プロジェクト・リーダーが代表をしている「みやぎ在宅ホスピスケアネットワーク」(県と・市民の協働によるもの)の活動と結びつく研究を企画し、具体化した。
4.臨床研究の倫理(東北大学21世紀COEプログラムCRESCENDOへの協力): ・ 東北大学21世紀COE「医薬開発統括学術分野創生と人材育成拠点」(CRESCENDO)に協力して、その倫理面を担当する研究を、昨年度に引き続いて行ない、講演会やシンポジウムを開催して、国内の現状を把握し、国際的研究状況への理解を深めつつ、あるべき姿を探った。 ・臨床研究の倫理を、被験者保護という点について検討した昨年度のシンポジウムの成果をさらに深め、報告書にまとめた『臨床倫理学4』として刊行)。・公開シンポジウム《被害のあと―医療におけるケア・補償・責任》を開催し、「被験者保護」ができずに被害を出した場合にどうするかという問題に取り組んだ。
シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:
- 2006.4.22-23
- 新大阪丸ビル新館会議室、《臨床倫理ベーシック研修会第二回》、17名、担当清水、アドバイザー石垣靖子
- 2006.5.28
- ホテルメリージュ延岡、《臨床倫理ベーシック研修会 in 延岡》、30名、担当清水
- 2006.7.9
- アピオ青森、《臨床倫理ベーシック研修会 in 青森》、約30名、担当清水、あおもり保険生協協同組合あおもり協立病院の協力による開催
- 2006.8.20
- 研修会、東札幌病院、 《臨床倫理ベーシック in さっぽろ》、72名、 担当清水、石垣靖子、司会 長谷川 (東札幌病院看護部長)、 東札幌病院臨床倫理委員会との共催
- 2006.12.7
- 艮陵会館(仙台市)、 《エシックスフォーラム 国際共同研究の倫理》 、30名、講師NIH上級研究員ライダー・リー、東北大21COE《CRESCENDO》との共催
- 2006.12.10
- 東札幌病院、《臨床倫理ベーシック研修会 in さっぽろ 2》、64名、担当清水、石垣靖子、司会長谷川、 東札幌病院臨床倫理委員会との共催
- 2007.2.3
- ハーネル仙台、公開シンポジウム《被害のあと―医療におけるケア・補償・責任》、 67名、講師 川田龍平(薬害エイズ被害者の会)、 長谷川(自治医大)他、東北大21COE《CRESCENDO》との共催
- 2007.3.4
- 神戸市勤労会館、研究会《「リビング・ウィル」を考える》、46名、市民グループ「患者のウェル・リビングを考える会」との共催
論文、著書等:
- 2006.3
- 清水哲郎、《QOL》および《尊厳》の概念に基づくSEIQoL-DWの位置づけに関する研究、厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 特定疾患患者の生活の質の向上に関する研究 平成17年度総括・分担報告書、24〜29、2006年3月(実際の刊行は2007年度)
- 2006.4
- ※竹之内裕文、苦悩と幸福(24「死」、25「愛」、26「幸福」)、麻生博之・城戸淳編『哲学の問題群――もういちど考えてみること』(ナカニシヤ出版)、262−299頁
- 2006.6
- 田代志門、専門職と『開かれた自律』――後期パーソンズ医療社会学の射程、『社会学研究』、79、85-109
- 2006.10
- 日笠晴香、R・ドゥオーキンにおける生の不可侵性と生死に関する決定、『思索』(東北大学哲学研究会)、39、83-102頁
- 齋藤直樹、行為の意味についての「表出主義的議論」の妥当性に関する一考察 ― エアーならびにスティーヴンソンによる「情動主義」的意味論の検討を介して、MORALIA(東北大学倫理学研究会)、13、29〜53
- 清水哲郎、人間の尊厳と死、医療教育情報センター編『尊厳死を考える』(中央法規)、127-152
- 2006.11
- 清水哲郎、医療現場に臨む《ことばの専門家》の仕事、『学士会会報』861、115-118
- 田代志門、被験者保護システムの構築に向けて、『臨床倫理学』、4、3-8、2006年11月
- 田代志門、医療倫理における『研究と治療の区別』の歴史的意義――日米比較の視点から、『臨床倫理学』、4、95-115
- 田代志門、臨床試験のリスクとその公正な分配――TGN1412事件の社会倫理学的考察、『臨床評価』、34号別冊、149-162
- 2007.1
- 清水哲郎、尊厳をもって死に到るまで生きる、『緩和ケア』17-1,3-4
- 2007.3
- 圓増文、相手を目的として扱うこと、相手と信頼関係を築くこと、三田哲学会『哲学』、118、69−91
|
|||||
グループ名:
医療システムと医療専門家組織、保険者、民間保険機関の役割
リーダー名(所属):
吉田 あつし (筑波大学・大学院システム情報工学研究科・教授)
組織構成:
吉田 あつし (筑波大学) (研究の総括)
三橋 平 (筑波大学 (同窓ネットワークと医療者養成)
村澤 康友 (大阪府立大学) (医療サービス市場規制と社会厚生)
鹿野 繁樹 (大阪府立大学) (医療・介護と家族の役割)
高木 真吾 (北海道大学) (医療・介護と家族の役割)
西本 真弓 (阪南大学) (医療・介護と家族の役割)
遠藤 秀紀 (日本福祉大学) (医療サービス市場規制と社会厚生)
山村 麻理子 (医療経済研究機構) (保険者再編と保険者機能)
川村 顕 (筑波大学・産学連携研究員) (医療サービス市場規制と社会厚生)
西田 喜平次 (筑波大学・博士後期課程) (医療サービス市場規制と社会厚生)
鶴田 芳貴 (筑波大学・博士後期課程) (保険者再編と保険者機能)
牛島 光一 (筑波大学・博士後期課程) (発展途上国の医療保険制度)
佐藤 伸彦 (砺波サンシャイン病院・医師) (医療・介護と家族の役割)
小暮 克夫 (カンボジア統計局JICA派遣adviser) (発展途上国の医療保険制度)
平成18年度の研究成果
平成18年度は、(1) 医療システムの制度変更と社会厚生、(2) 砺波サンシャイン病院の協力を得て作成された患者の医療・介護ヒストリーのデータを用いて、医療型(介護型)療養病床に入院している高齢者の cost-utility 分析、(3)卒後研修の導入後、新人医師がどのような属性を持つ病院を研修場所に選択しているかの分析、(4)タイとカンボジアにおける医療制度の研究、を行った。
医療システムの制度変更と社会厚生
療養型病床か急性期病床かを病院に選択させ、それぞれで診療報酬を変えることによって、医療サービス提供の効率化が計れると考えて、国は自発的に病院に病床種類を選択させる政策を2004年に導入した。そこで、市区町村で集計されたデータおよび大阪府内の病院の個票データを用いて、競争の程度と療養病床選択の関係を分析した。その結果、一般病床を持つ病院間の競争が厳しいほど、一般病床から療養病床に転換する傾向があること、介護施設を持っている場合にもその傾向があることが示された。また、公的保険の制度設計と効率性の関係を明らかにするために、国民健康保険、介護保険の保険者ごとの医療(介護)サービス需要関数を推定し、保険者のモラルハザードを抑制できるような財務システムを採用している介護保険では、医療保険よりもモラルハザード程度が小さいことが確認された。
高齢者医療・介護と家族の機能
砺波サンシャイン病院(療養型病院)に入院した事があるか現在入院している高齢者の介護度・認知度、医療・介護給付費、家族の状況についてのデータベースを用いて、入院してから死亡するまでのサバイバル分析を行った。男性で、入院時の年齢が高く、入院回数が多く、寝たきり度が高いほど、入院期間が短くなることが示された。また、介護保険を使っている患者のほうが医療保険を使っている患者よりも入院期間が短くなる傾向が示された。さらに、身体障害の程度が高いほど、男性であるほど医療保険を使う傾向があることがわかった。
卒後研修と研修病院の選択
筑波大学医学部卒業生の卒後研修前後6年分のデータを用いて研修病院の変化を調査したところ、大学病院での研修が有意に減少し、関東地区の民間病院での研修が増加した。また、全国の研修病院の研修員の募集定員と定員充足率を用いて検証したところ、給料よりも研修の機会の多さ、都市部にあることが定員の充足に有意に影響していることがわかった。
タイとカンボジアにおける医療制度の研究
本年度はタイの30バーツ制度が医療サービスの需要にどのような影響を与えたかを分析するための個票データを整備した
シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:
開催年: 2007年2月10日〜2007年2月11日
開催場所: 社団法人芝蘭会 芝蘭会館別館(国際交流会館)
名称:「医療システムと倫理」( 「医療システムと医療専門家組織、保険者、民間保険機関の役割」)研究集会
参加人数: 19名
論文、著書等:
- 2006.6
- 西田喜平次・吉田あつし, 歯科診療所の空間的競争と立地均衡, 『応用地域学研究』,No.11, 95-107
- YOSHIDA Atsushi, TAKAGI Shingo, “Physician-Patient Interaction and the Provision of Medical Services Under Different Co-payment Schemes”, 筑波大学社会システム・マネジメント Discussion Paper, 1-38
- 2006.8
- YOSHIDA Atsushi and KAWAMURA Akira, “Who has Benefited from the Health Services System for the Elderly in Japan?”, 筑波大学社会システム・マネジメント Discussion Paper, No.1164,, 1-41
- 2007.3
- 吉田あつし, 専門家倫理の経済学的考察, 『経済セミナー』,No.625, 2007年3月, 40-42
- 2007.9
- 吉田あつし・幸野聡, 茨城県における診療所間の空間的競争, 日本統計学会誌, 2007年9月発刊予定
|
|||||


