プロジェクト名:
文学・芸術の社会的媒介機能
グループ名:
文学・芸術の社会的統合機能の研究
リーダー名(所属):
山田 広昭 東京大学・大学院総合文化研究科
関連サイト:
組織構成:
田尻芳樹、総合文化研究科、国民文学の誕生と越境
野崎歓、総合文化研究科、芸術の生産・流通システムとメディア(映画)
安原伸一朗、東京大学・産学官連携研究員、共同体論/事務局・Webサイト
金澤忠信、東京大学・産学官連携研究員、共同体論/事務局・ワークショップ
和田雄志、未来工学研究所・21世紀社会システム研究センター、芸術の生産・流通システムとメディア(インターネット)
上記のコアメンバー以外に全国の研究機関に20数名の研究協力者を数える。
これまでの研究成果:
<概要>
本研究の目的は、近代の国民国家体制の形成に際して文学・芸術が果たしてきた美的、感性的紐帯の創出という役割をあらためて検討しなおすとともに、まさしくこの現在において、文学・芸術がその周囲にどのような共同性(共同体)を生み出しているのか、あるいは逆にどのような共同体がどのような美的、感性的活動を必要としているのかを探り出すことにある。これは、グローバリゼーションの波に洗われる現代世界において、文学・芸術が有する新たな公共性を形作る力の探求でもある。そうした目的にもとづいて、本研究では複合的な観点から、海外の研究者を含めた共同研究を推し進め、その成果を主としてシンポジウムや公開ワークショップの形で公にしてきた。これらの成果はプロジェクトのサイトでその概要を公開するとともに、一部は論文や単行本の形でも公刊されつつある。研究成果そのものについては現時点でなんらかの総括を行いうる段階にはないが、共同体とは何かといった原理論的な考察と、個別的な事例研究(世界の多くの地域にまたがり、また文学のみならず、映画や伝統芸能、インターネットにおける芸術発信などにも及ぶ)の並行的な遂行によって、さまざまな知見が積み重ねられつつある。また、若手研究者の育成という面でも、研究員としての採用やワークショップの継続的開催によって成果が上がり始めている。
<学際性について>
本研究は、その対象の多様性(文学、映画、音楽など)においても、その地政学的条件の多様性や流動性においても、長い間「国民」文化と芸術ジャンルによる類別を固定的な枠組みとして編成されてきた人文学の発展的な組み替えをはかることなしには遂行することが難しい。いいかえれば、本研究はこれまで孤立的になされることが多かった文学・芸術研究に協同的探求のひとつの方向性を示し、異なる分野の研究者による真に学際的な共同研究の場となりうることをその目標の一つにしている。
<社会提言について>
人文学的研究は、ある種の社会科学的な研究とは異なり、ただちに具体的な政策提言や、広く公衆に向けた問題解決の処方箋の提示へとつながることはまれであり、本研究についても、社会とのあいだのコミュニケーションは、主としてシンポジウムや、限られた専門家の集団をこえて一般読者を対象とする研究書の出版(それが多くの読者に迎え入れられることが前提だが)による。その目標は、社会に向けて現代社会における「文化」の次元の重要性を、文学や芸術がそなえる社会的機能、いいかえれば、それらが潜在的に持つ新たな公共性を形作る力を強調することで広く訴えていくことであり、同時に、それらの力がまちがった方向に使用される際の危険性について歴史的考察にもとづいた警鐘を鳴らすことである。これに加えて、個別的には、教育の現場(とりわけ、初等、中等教育の)における文学や芸術教育の目標や手段についてより直接的な提言を行うことも模索中である。
<人材育成について>
若手研究者の育成という面では、産学官連携研究員としての採用(2名)を行うとともに、彼らを中心としたワークショップ(「共同体を考える」)を継続的に開催している。この若手研究者中心のワークショップにおいても、分野・領域をまたがるということがつねに意識されており、毎回2名から3名の発表者を招き、研究者間の貴重な出会いの場となっている。なおワークショップでの発表については18年度末に論集の出版を予定している。
シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:
<シンポジウム>
2005年3月18日、東京大学駒場キャンパス、「文学・芸術と共同体?国民国家の臨界で」、発表者10名。
2005年6月2日、東京大学駒場キャンパス、「不思議の国? ベルギー・フランス語共同体の文学と芸術」、発表者4名。
2005年12月17日、東京大学駒場キャンパス、「私的領域からのアート発信?日本文化の基底を探る」、発表者6名。
2006年3月17日、東京大学駒場キャンパス、「精神分析的視点の可能性?文学、歴史、共同体」、発表者6名
<若手研究者ワークショップ>
2005年3月10日、東京大学駒場キャンパス(以下同様)、「共同体を考える」、発表者3名。
2005年7月26日、「共同体を考えるー19世紀のドイツとフランスにおける(反)近代」、発表者4名。
2005年9月27日、「共同体を考えるーJ.M.クッツェーと歴史の欲望」、発表者3名。
2005年11月24日、「共同体を考えるー病める国アメリカ」、発表者3名。
2006年3月27日、「共同体を考えるー文学・言語・政治」、発表者2名。
2006年6月10日、「共同体を考えるーヨーロッパ近代の照射、宗教と美術:東アジアのプリズムを通して」、発表者2名。
ほか
論文、著書等:
図書
田尻芳樹ほか、『J.M.クッツェーの世界、<フィクション>と<共同体>』、英宝社、2006年、288ページ。
論文
和田雄志「インターネットと日本人の感性」、「技術と経済」462号、p,58-63.2005年
安原伸一朗「紙の争奪戦、ナチス占領下のフランスにおける検閲と作家の文筆活動」、「言語情報科学」第4号、p.339-355、2005年
安原伸一朗「ポリティックとミスティック−シャルル・モーラスの文学と政治」、「言語態」第6号、p.121-131、2006年
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