プロジェクト名:
伝統と越境−とどまる力と越え行く流れのインタラクション−
グループ名:
越境と多文化
リーダー名(所属):
楯岡 求美 神戸大学・国際文化学部・助教授
関連サイト:
組織構成:
楯岡 求美(神戸大学国際文化学部・助教授):総合企画/演劇の近代と越境
<亡命とテクスト>
阿部 賢一(武蔵大学人文学部・専任講師):ヨーロッパとディアスポラ/クレオール
林 みどり(立教大学文学部・助教授):南米におけるディアスポラ/クレオール
<演劇の近代と越境>
井上 優(日本橋学館大学人文系学部 ・専任講師):演劇の近代と越境
<多言語性と文学>
ヴァレリー・グレチコ(東京大学非常勤講師):多言語性と文学
<ナショナリズムと越境>
増本 浩子(姫路独協大学外国語学部・教授):ドイツ語文化圏の広がり
<ハリウッドと多文化性>
毛利 公美(北海道大学スラヴ研究センター・COE研究員):二十世紀と亡命文化
<事務局>
松井 真之介(神戸大学総合人間科学研究科博士課程後期在籍)
伊藤 美和子(兵庫日本ロシア協会ロシア語教師)
これまでの研究成果:
<概要>
文化の境界を超え、異文化と接触することにより、どのような新しい芸術的創造が可能になるのか、そのメカニズムを20世紀の経験に基づいて分析し、現代世界における越境的な芸術・文化のあり方を解明すると同時に、将来の展望を探る事を目的とする。現代はグローバリズムの時代であり、多文化間の理解が不可欠な時代である。さらに、近年の地域紛争は、新たな越境者を大量に生んでいる時代状況もあり、個々の人間を、画一化されたひとつのカテゴリーに還元されない、複合的な文化的存在としてとらえる観点から多文化状況を考えることが必要とされる。移民の受け入れに関して、「寛容さを示してマジョリティーがマイノリティーをどう受け入れ、適応させるのか」というような一方的な見方は、マジョリティーの優位を保持したままにすぎず、国ごと、民族ごとに分割された個別文化の間の交流にとどまってしまう。よって、本研究では、個々の人間がどうやって自分を開き、自らのうちに多文化性を認めていくのか、またその関わりにおいて芸術創造にはどのような表現と機能の可能性が開かれているのかを考察することが重要である。
こうした時代が直面する様々な問題を解決するためのヒントを得るために、過去、とくに20世紀的パラダイムの基礎が築かれたモダニズム期(19世紀末から第二次大戦までの期間)から現在までの亡命や移民の問題を総合的に検証する。越境者および越境先の文化を専門とする複数の研究者が共同で資料収集及び検討を行い、従来使用言語の問題でなかなか利用が難しかった資料の掘り起こしを行う。7名のコアメンバーがそれぞれの専門を生かし、越境と多文化の諸相についてテーマごとに分科会を組織した。「多文化的な場としてのハリウッド」「亡命とテクスト」「演劇の近代と越境」「多言語性と文学」「ナショナルなものへの志向と多文化」「クレオールの現状」である。これらのテーマを軸に、それぞれのコミュニティが抱える様々な問題や多文化社会における芸術のあり方をより総合的に検証し、三つの国際研究集会等の企画と3つのシンポジウムおよび小研究会を随時開いた。それらの成果の一部を報告書として刊行した(『亡命とテクスト-生産・消費・増殖-』、『「国」という枠を離れて』、『近代演劇と越境(1) 特集コミッサルジェフスキー』)。
「越境」研究では、内外の研究者と越境の当事者が専門領域を超えて広く知的交流をもち、総合的に検証するプロセスが重要である。共同研究として他者(国外)の視点を有することは、国際化に際してしばしば指摘される日本の心理的障壁(バリア)を超克するような提言が期待できる。本プロジェクトでは、グレチコ(ロシア出身、ドイツで学位取得後、日本に移住)をメンバーに加えているほか、メイラフ(ロシア出身、フランス在住)、ヴィッテ(ドイツ人、比較文学)等を招聘し、国際学会での研究成果の海外への発信(協力者のグレチコ・毛利がポーランドのクラクフ大、ドイツのベルリン大で発表)も積極的に行なっている。
<学際性について>
専門地域および分野が多岐にわたるように依頼するよう努力している。例えば、神戸のシンポジウム参加者である岡田浩樹は朝鮮半島を主なフィールドとして文化人類学および歴史を専門とする。中国文学研究者である濱田麻矢とともにヨーロッパ研究とアジア研究が統一テーマを論じる貴重な機会となった。また、それぞれの研究組織・学会と協力関係を強化・拡大するために、積極的に共催するようにした。結果、阪神ドイツ文学会、神戸大学国際文化学部、北大スラブ研究センター、山形大学国際交流委員会とシンポジウムや研究会を共催し、充実した意見交換の機会を得た。参加者も一部の関心に偏ることなく、広く集まっている。とくに共通のテーマを設定し、異なるアプローチから連続シンポを行った阪神ドイツ文学会との共同企画は、単なる連続シンポ以上に相互の関心を喚起する成果が感じられた。
また、神戸、山形での研究会の際に痛感したのは、研究会の実施自体を脱中心化(東京以外での開催)することの重要性である。近年、各大学では学部内のインターディシプリンが進み、学内での特色あるスクールが形成されている。いわば、開催校となることで、歴史などの社会科学系研究者が学会を超えて聴衆として参加しやすくなり、積極的に議論に加わった。時間・予算等の制約から東京での開催が多くはなるが、今後、開催地の多様化も図っていきたい。
<社会提言について>
社会提言の主な方法は、現在のところ、報告書の出版(公開研究会・シンポジウム参加者への配布)、ホームページの拡充であるが、商業出版の方法も将来的には検討したいと考えている。ホームページについては、現在のページをさらに充実させると共に、海外からのアクセスを念頭に置いて多国語対応にしていくようにしたい。商業出版については、大学の教養課程レベルの教科書としても使用できる内容を想定している。過去の「越境」に関わるさまざまな現象についての総合的な知識を通して、多様な現代文化の全体像やその背景を的確に理解することができ、これからの社会や個人のあり方について考えるための一助となるような内容を目指す。他のグループとの同意が得られれば、本プログラムによるシリーズもの出版物としてまとめて出すことも可能だろう。今後、グループ間での連携を試みる中で、具体的に検討していきたい。
<人材育成について>
コメンテーターや報告者を選ぶ際、できるだけ非常勤の研究者を掘り起こすように積極的に依頼を行っている。18年度からは「若手研究者育成プログラム」として、院生が企画/運営/報告のすべてを主体的に行う研究会をシリーズ化させることによって次世代の育成を考えている。
シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:
2005年
7月9日 "国際研究フォーラム「未来(ユートピア)への回帰」
(学部共催/阪神ドイツ文学会協力) 於:神戸大学国際文化学部 報告・コメント:前田良三(立教大教授)、浜田麻矢(神戸大助教授)岡田浩樹(神戸大助教授)、沼野充義(東大教授)、西成彦(立命館大教授)(80名)
10月1日ミニシンポジウム「演劇の近代と越境 −コミッサルジェフスキー」
於:成城大学文学部" 報告・コメント:井上優(日本橋学館大専任講師)、楯岡求美(神戸大助教授)、村田真一(上智大教授)等(20名)"
10月29日 公開国際研究会「『国』という枠を離れて」
(山形大学文学部国際交流委員会共催)於:山形大学人文学部、報告・コメント:濱崎桂子(神戸外大助教授)、望月哲男(北大教授)、増本浩子(姫路独協大教授)、水田恭平(神戸大教授)、福間加容(札幌大大非常勤)
11月19日ワークショップ「亡命とテクスト−生産・消費・増殖」
於:武蔵大学人文学部、報告・コメント:澤田 直(白百合女子大教授)、久野量一(法政大助教授)、本橋哲也(東京都立大教授)、阿部賢一(武蔵大専任講師) 等(20名)
11月19-26日 「ゲオルグ・ヴィッテ教授連続講演会」
於:早大文学部・東大文学部・神大国際文化学部 など、ゲオルグ・ヴィッテ(ベルリン自由大教授)、貝沢哉(早大教授)、沼野充義(東大教授)(のべ60名)
2月18-19日 セッション「−越境と多文化:映画の場合−」
(シンポジウム「スラブ・ユーラシアにおける東西文化の対話と対抗のパラダイム」枠内)於:北海道大学スラブ研究センター、報告・コメント:佐藤千登勢(立教大非常勤)、井上徹(千葉大非常勤)、扇千恵(同志社大非常勤)(50名)
論文、著書等:
- 阿部賢一・林みどり(編)『亡命とテクスト−生産・消費・増殖−』(日本学術振興会「人文・社会科学振興のためのプロジェクト」研究領域Ⅴ-1「伝統と越境−とどまる力と越えゆく流れのインタラクション」第2グループ「越境と多文化」研究報告集No.1)2006年、1−56頁。
- 中村唯史(編)『「国」という枠をはなれて』(日本学術振興会「人文・社会科学振興のためのプロジェクト」研究領域Ⅴ-1「伝統と越境−とどまる力と越えゆく流れのインタラクション」第2グループ「越境と多文化」研究報告集No.2)2006年、1−94頁。
- 井上優(編)『近代演劇と越境(1) 特集 コミッサルジェフスキー』(日本学術振興会「人文・社会科学振興のためのプロジェクト」研究領域Ⅴ-1「伝統と越境−とどまる力と越えゆく流れのインタラクション」第2グループ「越境と多文化」研究報告集No.1)2006年、1−76頁。
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