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人文・社会科学振興プロジェクト研究事業

研究領域の概要及びプロジェクト研究概要

 

研究領域4


過去から現代にわたる社会システムに学び、将来に向けた社会の持続的発展の確保について研究する領域

Learning from past-to-present social systems, research on securing sustainable societal development in the future

研究領域の目的:

 エネルギー使用量の抑制や、廃棄物の分別、環境負荷の低減など、地球環境問題への対応策は広く社会に受け入れられつつある。それは、せめてできるだけ消費を抑え、循環型社会を実現させて、少しでも現状の生活を持続させようとしているのである。

 しかし、そもそも、どんな社会が、どのくらい長く持続することが望ましいと考えられるのだろうか?どうすれば、望むべき社会が持続することができるのだろうか?

 21世紀を展望すると、日本のみならず、世界中で指数関数的な人口増加、経済発展が終焉を告げようとしている現在、社会の発展とその持続性に関し、上記のような問いに答えつつ、新たな視点と今後の明るい展望、方向性を示すことこそが、人文社会科学に対し強く求められている。

 本研究領域では、百年後などに関する定量的な展望、見通しの策定に関する取り組みを踏まえた上で、千年といった時間単位を想定した場合の、社会の持続性に関する研究を行うことを目的とする。

Project Number 4-1 Project Number 4-2 Project Number 4-3  
 
 
  

研究領域 4
Project Number 4-1


プロジェクト研究名:
(英訳名)

千年持続学の確立

( Millennial Sustainability Studies )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

木村 武史
筑波大学・人文社会科学研究科・准教授
http://www.logos.tsukuba.ac.jp/~sen-mind/top.htm

プロジェクト研究の目的:

研究目的:
 本研究では、千年後にも人間社会が存続しているためには、これからの社会のあり方はどのようであれば良いのか、それが実現されるためには今何をすべきか、いかなる価値を生み出すべきか、という問題に関して、過去の事例にならい、これからの人間のあり方を問う未来学を打ち立てることにある。

研究の重要性・必要性:
 本研究のテーマは、千年というほぼ永続的時間に近い時間枠から現在議論されている「持続可能な社会」を批判的に振り替えることによって、持続可能な社会実現の向けての真剣な議論を社会に提供することにある。

本研究の学術的意義:
 本研究は、文系・理系の枠を越えて、現代世代だけではなく、未来世代にも関わってくる緊急の社会的課題を学術的に確立しようとする営みである。そのため、通常の人文社会科学分野での議論とは異なる時間のパースペクティブを持つことになり、その意味では新たな人文社会科学分野の開拓となると期待される。

社会への貢献:
 公開シンポジウム、一般教養書を通じて、広く社会に問題提議を計る。
 「研究グループ間の有機的連関」心性・社会制度・都市の各グループは共通の課題を異なる視点から取り上げているといえる。そのため、相互の問題関心を取り入れ、それぞれの研究を深めていくことができる。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

心性の持続性に関する学融合的研究
( Integral Studies of the Sustainability of Human Mind )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

木村 武史
筑波大学・人文社会科学研究科・准教授

研究グループの目的:

 本研究グループの目的は、人間社会が何を持続させたいと思ってきたか、何が残すに価するかという問題を様々な表象を通して学融合的に研究することにある。特に、古代から現代へと俯瞰する視点と共時的な学融合的課題を交差させ、文化的次元での持続可能な社会に関わる諸問題を探求する。

 本研究の重要性・必要性は、今日グローバルに向き合わなくてはならない持続可能な社会の実現という緊急の問題を、諸学の枠を超えて議論し合い、過去から現代、さらに未来へと見据えて解決の糸口を探そうとすることにある。

 本研究の学術的意義は、文系・理系の研究者がそれぞれの立場から持続可能性の問題を取り上げ、それらをさらに相互に学び合うという形で学融合を進め、新しい学融合の領域と社会の提言の場を模索することにある。

 本研究の社会への貢献は、公開シンポジウムを開催するとともに、一般向けの教養書を表し、また、「未来との対話」と題して未来世代との世代を一般公募し、それを刊行する予定である。17年度中には、16年度末に開催されたシンポジウムを英文論文集として刊行し、18年度中には、一般に向けに持続可能な社会の思想(仮題)という教養書を書く予定。ホームページを通じて、随時、研究会の進展を公開していく。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

都市の持続性に関する学融合的研究
( The Project for Interdisciplinary Research on Urban Sustainability )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

村松 伸
 東京大学・生産技術研究所・准教授

   http://www.sennen-toshi.org/

研究グループの目的:

 本研究は、都市の実態を人類1万年という長期的視点、地球全域というマクロな地理的視野から、さらに物理的側面から、制度、記憶までを扱う、さまざまな学問領域を融合的に用いて分析し、今後の都市のあるべき姿を考究することを目的とする。

われわれが多く生活基盤とする都市は、日々、さまざまな理由をもって変化させられている。しかし、その根拠は必ずしも明らかでなく、これまで人類が蓄積してきた都市に関する歴史や知恵が反映しているとも言えない。その理由は、都市、そして、その変容の姿(すなわち、持続性)の示す範囲が学問的にも、現象的にも広範、複雑でありすぎるからである。本研究は、その広範さ、複雑さに、人文社会、工学などの諸分野を融合し、さらに世界各地でのフィールドワークを実施することにより、少しでも近づくことを目標とする。同時に、その成果をウェブ、紙媒体、フォーラムという形で社会に公開する。また、時代を担う子供たちに、都市をどのように深く観察し、それを持続させるかの都市持続教養教育プログラムとしても、結実させる。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

社会制度の持続性に関する学融合的研究
( Sociosystem in and around the Far Eastern Archipelago )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

加藤 雄三
 人間文化研究機構総合地球環境学研究所・助教

   http://www.chikyu.ac.jp/sociosys/

研究グループの目的:

概要:
 前後近千年という視座をもって、交易を横軸としながら、東アジア地域における社会制度変遷(何が常態であって、あるイヴェントが起こったときに社会は何を継承し、何を継承しなかったのか、また何を創成したのか)という縦軸を発言資料と沈黙資料の両側面から探っていく。具体的には、同様に清朝・日本本土に対する従属的な交易を行ってきたアイヌと琉球において、一方は国家を形成し、一方は国家を形成しなかったことに関して比較研究を行う。同時に、両者を繋ぐ結節点たる満洲とメインランド・チャイナ、台湾、日本列島中央部についても物品交易に関する制度変遷を通じて観察する。

目的:
 本グループは、「社会制度が持続する」ということを「社会に内在する制度を社会の構成員たる人間が変容を許容・創出しながら継承していくこと」と定義している。つまり、社会制度とは行為者が日常世界という場で実践する中で何らかの意思を以て継承されていくものであると考えている。社会はあらゆるレヴェルにおいて制度という行為規範を実践することによって成り立っている。その制度は常に継承され、変容を受けながら社会の中で実践されていく。この意味において、考えねばならないのは、人間社会は「制度」をどのような戦略をもって継承しながら用い、社会をどのように運営し維持してきたかということであろう。環日本海地域を中心とする東アジアを対象として、こうした人間社会の営みを一端なりとも解明することが本グループ研究の目的である。

重要性:
 第一に、過去を研究する学問分野において常態が語られることは少ない。本グループはチームとして複数領域に亘って常態の研究を行おうとする初めての試みである。第二に、特定社会は一時に全滅するということでも無い限り、当該地域で存続するにせよ、移住するにせよ連綿と個別具体的な実践行為を以て持続している。その意味で多くの「社会」は千年単位の存在と言えよう。千年後の「社会」もその延長線上にあることは間違いない。制度の継承と実践によって存続している人間社会の営みを一端なりとも解明することは、千年後を見据えた将来の社会運営を考えるヒントになっていくと確信している。

  

研究領域 4
Project Number 4-2


プロジェクト研究名:
(英訳名)

豊かな人間像の獲得

( Interdisciplinary Research for the Appreciating Humanity --Beyond the Globalism-- )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

小長谷 有紀
人間文化研究機構国立民族学博物館・教授

プロジェクト研究の目的:

 グローバリズムの進展によって、時空の縮小化によるメリットと同時に、価値観の画一化というデメリットが指摘されている今日、自らが慣れ親しんだ文化を超えて「多様な人生観」を得ることは、個人にとって豊かな生き方となると同時に、社会全体にとって平和構築の手段ともなりうるであろう。本プロジェクト研究はそうした観点にもとづき、現代社会に必要とされるべき豊かな人間像の獲得をめざす。

 とりわけ人類にとって古今未曾有の少子高齢化という問題に焦点をあてて、次世代再生産をめぐる価値観の多様性を獲得し、それらを社会に広く提示して個人の選択に資することを目的とする。

 本プロジェクトにおいて次世代再生産の現場として着目するのは「家族」「産育」「伝承」の3つである。私たちが現在、常識として了解している結婚観、出産観や子育て観、人生観などについて、その歴史的な変容と地域的なバリエーションを明らかにすることによって、すなわち時間的・空間的に相対化をしてみせることによって、これからの生き方の選択に関する参照枠を示したい。こうした参照枠は個人にとってのみならず、現在、各地方自治体等で策定されつつあるプランに対しても参考として付するに足る基礎資料として寄与するであろう。

 「家族と人口変動の現場からの考察」では、歴史人口学を中心として、家族の動態を国際的に比較し、従来の家族観が改定を迫られていることを明らかにする。「産育の現場からの考察」では、文化人類学、医学、看護学、歴史学など学際的なチームで、近代化による医療モデルの限界性を指摘する。「伝承の現場からの考察」では、今日のように人間が制度に依存する生物と化してしまう以前の、さまざまな慣習など人間関係の調整機能の目録集を提示することになるだろう。これら3つの考察を総合して、次世代再生産に焦点をあてた多様な人間像を描く。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

産育の現場からの考察
( Comprehensive Study on the Reproduction )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

松岡 悦子
 旭川医科大学・准教授

   http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/ge/socio/reproduction/

研究グループの目的:

 自然科学の急速な進歩と市場経済の論理は、人類の欲望を満たし、利便を促進している。しかし、自然科学は、人間に幸福感や生きる意味を与えるわけではない。自然科学と人文・社会科学は、互いに補完しあい、共通のことばを用いて現実社会で生じる問題に対処していく必要がある。

 産育(リプロダクション)は、人間が生き物として自然科学の法則に従うと同時に、文化をもつ存在であることを示す典型例であり、自然科学と人文・社会科学の両方の視点が不可欠の分野である。人間は、リプロダクションによって社会のメンバーを再生産し、文化を伝え、社会を維持してきた。現在、リプロダクションの分野で見られるさまざまな問題―少子化、不妊、生殖技術と倫理、育児不安や虐待などーに対処するには、自然科学的知だけでなく、人間が文化や社会の中で生きているという視点が重要である。

 この研究グループは、リプロダクションをめぐって正反対の状況にあるとも言える先進国と途上国の両方の現状を視野に収め、地球上の人類の再生産と社会の維持について調査研究し、社会提言を行いたい。現在先進国で見られる上記のような問題を相対化するには、異文化の知恵や歴史的な視点が重要であり、またグローバル化によって途上国で生じている急激な医療化、市場化と民族の知恵の衰退に対しては、先進国の反省的な視点が重要であろう。

 人類がリプロダクションに関して昔から蓄積してきたローカルな知恵と新たに獲得した科学技術をもとに、現代のリプロダクションを相対化し、それによってリプロダクションをとらえる新たなパラダイムを提供することを目的としている。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

伝承の現場からの考察
( Comprehensive Study on the Modernity of the Oral Traditions )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

小長谷 有紀
人間文化研究機構国立民族学博物館・教授

研究グループの目的:

 「人類にとってことばは第二の遺伝子である」という表現は、言語を介した知の伝承によって人間社会が持続的に成立していることを如実に表わしている。知の伝承には、学校教育や法律のように制度化された、ハードな社会システムから、暗黙の了解として維持されているだけの習慣のように、ソフトな社会システムまで、多様な内容と方法が含まれうる。そして、いずれの内容・方法にせよ、口頭伝承すなわち生の声を通じた直接的なコミュニケイションは、その程度の差こそあれ、並存している。すなわち、口頭伝承は、知の伝承においてもっとも根源的な方法として多様に変容しながら長期にわたって維持されてきた、と言えるであろう。にもかかわらず、その意義は見失われがちであった。なぜなら、根源的であるがゆえに過去の産物と思われがちだったからである。

 本研究グループは、現代社会においてもなお重要であるにもかかわらず、その価値を見過ごされがちであった口頭伝承に焦点をあて、語り継ぐべき知の内容と方法論について新しい見通しを明らかにすることを目的としている。

 具体的には、口頭伝承のなかでも物語などのように伝承されながら規範化されてきた「口承文芸」に重きを置き、その変容過程を詳細に比較する。こうした地道な作業を通じて、現代社会において、書承を含む伝承の持つ意義を時間的かつ空間的に相対化する。こうした相対化を経て初めて、現代社会によりふさわしい、語り継ぐべき「内容」と語り継ぐための「方法」が明らかになるであろう。村の歴史を老人から子へ伝えるという古典的なイメージによる「伝承」にとどまらず、国や文化の違いを超えて、未来社会のデザインに役立つような「伝承」のあり方を求めてゆく。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

家族と人口変動の現場からの考察
( Comprehensive Study of Demographic and Family Change in Japan )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

津谷 典子
慶應義塾大学・経済学部・教授

研究グループの目的:

 本研究は、次世代の再生産を担う社会単位である「家族」という視点から、社会経済変動の下での社会の持続性にとって必要な人間像を探ることを最終目的とする。具体的に、本研究では、わが国で進行する少子化とその最大の要因である家族の変容に焦点をあて、その文化・歴史的背景、社会経済的要因、さらに少子化への社会政策的対応について、[1]欧米諸国および他のアジア諸国との国際比較、[2]過去・現在・未来という時間の視座、という2つの分析軸を設定し、計量データと質的データを組み合わせることにより検証する。その上で、将来のわが国の家族像やのそれを支える社会のあり方について検討する。そのため、本研究では、人口学者を中心とし、学際的分野である人口学と密接に関わる統計学、家族社会学、家族・人口史、および労働経済学といった多様な専門分野から人材を集め、それらの視点・手法・知見を融合するべく研究チームを構成している。

 最新の『将来人口推計』によると、2006年をピークとしてわが国の人口は減少し始めると予測される。少子化はこの最大の要因であり、また1970年代以降進行する急激な人口高齢化の主要要因でもある。この人口減少と超高齢化は少なくとも21世紀前半は継続すると予想される。しかし、わが国の歴史において、平時に人口が長期にわたり減少し続けたことは一度もなく、結婚・家族制度を含む社会制度でこの継続的人口減少を想定して構築されたものは殆どない。したがって、長期的視点から国際比較を通じて少子化の要因と影響に関する実証的研究による知見は、21世紀のわが国の方向性を考える上で有用かつ不可欠である。特に、変容する家族は少子化の要因であるのみならず、人口減少や高齢化の下で家族は今後更なる変容を余儀なくされている。このような実証的研究を踏まえて、人口減少社会における社会制度としての家族、そして人間関係の中心としての家族のゆくえを探ることは、今後の日本における豊かな人間像の獲得のために重要である。

  

研究領域 4
Project Number 4-3


プロジェクト研究名:
(英訳名)

資源配分メカニズムと公正

( Resource Distribution Mechanisms and Fairness )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

佐藤 仁
 東京大学・大学院新領域創成科学研究科・准教授

   http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/rdm/

プロジェクト研究の目的:

 社会における諸資源の公正な分配は、その社会の持続性を担保するうえで決定的である。第一に、環境問題の顕在化に如実に表れているように、自然のどの部分をどのくらい、どの程度の速度で取り出すか、という物質的な側面は、生態系の持続性に強く影響する。第二に、極端に不公正な諸資源の分配は、紛争や暴力の原因となり、社会秩序を不安定にするだけでなく、資源の性急な収奪を促し、その持続性を損なう。

 では、人々の生活条件を規定している資源や機会はどのようなメカニズムで配分され、人々の選択肢に影響を与えているのだろうか。本プロジェクトでは、これを明らかにするための方法論の構築、現場での検証、理論枠組みの整備を行うとともに、異分野交流、国際交流を積極的に行い、研究成果の社会還元を試みる。市場が司る「財」のレベルではなく、実質的な「選択肢」のレベルで分配に関する考察を深めたい。とりわけ、諸資源を分配する行為それ自体が引き起こす二次的な作用や、意図せざる作用の形成プロセスを明らかにし、無意識に形成される機会の分布を決めている条件を、ダムを例とする人工物の配置や撤去が及ぼす社会的作用、自然が資源になる過程で生じる社会的作用、そして、それらのプロセスで選択肢を失ったり獲得したりする貧しい人々の戦略の観察から掘り起こす。

 最も望ましい状態をひとつに固定し、その状態への盲目的な到達を促す「最適化」の発想を超え、不確実な状況の中で柔軟な選択肢を保持すること自体の価値を見出してみたい。このためには、事例に基づく実証研究だけではなく、規範論のレベルでの掘り下げも必要になる。それは「発展」と呼ばれる一連の社会変化の意味を、資源配分という観点から問い直す作業でもある。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

分配問題としてのインフラ/資源開発
( Research on Technological Politics in Infrastructure Development )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

湊 隆幸
東京大学・大学院新領域創成科学研究科・准教授

研究グループの目的:

 極端に不公正な諸資源の分配は、紛争や暴力の原因となり、社会秩序を不安定にし、持続性を損なう。本研究では、資源配分に関わる技術の問題を、機能的・経済的側面からではなく、技術の政治性(あるいは権力性)という観点からの副次的な影響に着目し、資源分配のメカニズムを研究する。

 本プロジェクトでは2つの班に分かれて、この共通のテーマにアプローチしてきた。第1班は、インフラを対象に、技術を「人間活動」と「選択肢拡大」の媒体として捉え、人工物と社会の連関についての考察を行う。しばしば,特定の地域の資源開発,社会経済開発と連動して行われるインフラ整備が,ときに比較的順調な社会経済開発を加速させることもあれば,その地域の社会環境変化に様々な予期せざる副次的な結果を生み,社会的公正の観点からきわめて重大な問題を引き起こすこともある。そこで、本班では、インフラが設置される過程における必要条件としての設計規準、社会とのインターフェイス、意思決定システムなどが持つ分配論的メカニズムを技術の政治性の面から考察する。こうしたメカニズムを体系的に深く分析し,資源開発やインフラ整備に対して有益な示唆を与えることのできる学問的枠組みは未だ未成熟といわざるをえない。この班は、おもに工学と社会科学の研究者が連携して、公正なインフラの構築のための意思決定や評価のあり方の深化を目指す。

 第2班は、資源そのものが社会で果たす役割に注目し、配分メカニズムを根本から再検討する。とりわけ、今年度は、自然が資源になるときのメカニズムや二次的な作用についての事例研究を蓄積し続ける同時に資源アクセスと分配、資源配分の公正や平等、といった大きなテーマの下に研究会を重ね、財の配分メカニズムではない、資源配分メカニズムの理論化を試みたい。なお、第2班は平成18年度からは一つのグループとして独立する予定である。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

貧困・格差研究
( Studies on Poverty and Inequality )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

青山 和佳
日本大学・生物資源科学部・准教授

研究グループの目的:

 貧困・格差グループでは、ある国家や地域において明らかに不利な資源配分状況におかれてきたような少数民族(マイノリティ。宗教的、文化的少数者)に焦点を絞り、その貧困とそれに対する援助の影響――とくに資源配分メカニズムの変化とその社会的影響――というテーマを取り上げ、地域研究の手法によるミクロの事例研究を積み重ねていく。ここで「資源配分」については、単なる余剰の再分配の問題ではなく、歴史的に蓄積された「配分の束」としてみなすという本プロジェクト共通の見解をとる。対象地域は、東南アジア(フィリピン、インドネシア)、アフリカ(モザンビーク)、ラテンアメリカ(メキシコ)である。本研究の学術的な意義は次の通り。

 第1に、「文化的自由と人間開発」という新しい論点に関する具体的な分析の視角、およびそれにもとづく個別実証研究の提供によって、開発研究への貢献が期待できる。開発研究において、A.K.センの潜在能力アプローチに基づく「人間の選択肢の拡大こそが開発」という考え方が浸透してから久しいものの、文化的少数者の自由の重視という理念が表舞台に登場したのは、最近のことである(cf. UNDP, Human Development Report 2004)。こうした流れを規範的議論にとどめず、政策論に結びつけていくためには、現状の把握と分析が必要であろう。本研究では、歴史的諸条件、国際関係などを含むマクロ・レベルでの資料と、ミクロ・レベルでの資料を組み合わせた分析を通じて、途上国の貧しい少数民族にこうした理念が実現されるのを阻む要因を明らかにしていく。

 第2に、「少数民族の権利拡大」を標榜してなされる各種の援助が、世界的に増大する傾向にある。本研究では、A.K.センの提唱するような人々の選択肢や自由の幅という観点からみたとき、これらの援助が人々にどのような影響を与えるのかという問題について、具体的な事例をもって論考し、援助研究への一般的な政策的含意を提示することをめざす。既存の援助研究においては、資源配分状況の意図的変更とそれによる人々の意識の変化などが論じられてきたが、個別社会の固有要因の重要性が強調される一方で、各事例研究から得られた知見の一般化は避けられてきた感がある。そこで、個別社会の固有性と援助現象の複雑性を認めつつも、どのような社会にも共通する基礎的な潜在能力が存在するという立場から、人々の福祉を向上しうる援助のあり方について改めて検討したい。