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人文・社会科学振興プロジェクト研究事業

研究領域の概要及びプロジェクト研究概要

 

研究領域3


科学技術や市場経済等の急速な発展や変化に対応した社会倫理システムのあり方について研究する領域

Research on social and ethical systems as they respond to rapid advances and changes in science and technology and market economics

研究領域の目的:

 科学技術の発展や市場経済の進展に見られる社会の変化は、社会の様々な現場において新たな複雑性や不確実性を生み出すとともに、既存の社会倫理システムとの齟齬を引き起こし、様々な軋みを生じさせている。ヒトとは何かといった根本的な倫理的問いの再浮上、少年犯罪や機能・システムの形骸化に見られる人間関係の不全化、医療、福祉、教育、司法の現場に見られる専門家・非専門家関係の緊張、政策形成過程に見られる市民・行政・専門家間の相互不信や専門家相互間での協働の機能不全、倫理性を疑われる企業行動の顕在化、急速な科学技術や市場経済化に対応できない政治社会システムや国際システムといった課題は、その例であるといえる。

 本研究領域は、近年急速に進展しつつある科学技術の発展や、市場社会化に対応して、倫理を含む社会システムがどのように対応しているのか、その際の基本的問題は何か、今後どのようなシステムを構築していったらいいのかといった課題に関して、ミクロな人間関係のレベル、専門家集団のレベル、政策形成システムのレベル、企業行動・市場のレベルにおいて、具体的現場に即して分野横断的に研究することを目的とする。

Project Number 3-1 Project Number 3-2 Project Number 3-3 Project Number 3-4  
 
 
  

研究領域 3
Project Number 3-1


プロジェクト研究名:
(英訳名)

ボトムアップ人間関係論の構築

( Constructing the horizontal human relations )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

佐藤 達哉
 立命館大学・文学部・教授

   http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/kenkyu_2004/bottomup.htm

プロジェクト研究の目的:

 本プロジェクト研究は、「社会変化と人間関係の諸相」研究グループのみの構成であり、事実上一体化してプロジェクトを進めているが、本格展開を期に、研究グループとは異なる展開も意識的に組織しておくことにする。

 まず、「社会変化と人間関係の諸相」研究グループの課題については、「医療や教育における対人関係・対人援助の研究」「学融の方法論や評価法を科学社会学や科学史の問題として検討」「オルタナティブ・オプションズの研究」「質的研究の方法論の開拓」の4つの柱がある。

 上記に加え法と心理学の領域に関する研究会をこのプロジェクトに含むものとする。これは学融研究の具体的な形である。法化社会化・裁判員制度などの社会変化に伴う人間関係の変化を捉える領域として新たに何人かのメンバーを募りながら研究を展開する。

 また、人社プロジェクトの他領域との連携自体を目的とする。他の領域の会合に参加することで、全体をボトムアップにまとめ、可能であれば「人社振興キーワード事典(もしくはウェブサイト)」のような形で情報発信を行ってみたい。他領域との連携は常に志向するが、特に領域1「教育の失敗」との連携、関西における人社プロジェクトメンバとの連携を意識した活動を行う。

 つまりこのプロジェクト研究は、実際には「社会変化と人間関係の諸相」という1つの研究グループしか存在しないのであるが、バーチャル的に3つのプロジェクト研究から成るように考えて遂行していきたい。また、これ以外にも様々な機会を捉えて柔軟に取り組んでいけるようにしていきたい

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

社会変化と人間関係の諸相
( Aspects of human relations in social changes )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

佐藤 達哉
立命館大学・文学部・教授

研究グループの目的:

 このグループはプロジェクト研究「ボトムアップ人間関係論の構築」の唯一のグループ研究であり、事実上同体となって研究を展開している。本研究は、医療・教育・福祉・法務など、生活の必要上そして制度上経験されるような人間関係を焦点にあてる。つまり上記の様々なサービスを一種の対人援助サービスと捉えなおした上で、その人間関係を水平的なものにするための提言を行う事を目的とする。また、学問と学問の関係、学問と社会の関係も人間関係から捉えることが可能であり、それを学融的研究と呼びそのあり方についても検討を行う。

 参加している研究者は、科学史研究者、医師免許保持の医療社会学者、社会福祉士資格保持の福祉学者、法研究者などを含んでおり、それぞれの現場における人間関係の相克について検討し、その解決を共有することを目指している。3年間のプロジェクト研究の展開にあたっては、全国規模の年数回の研究会と、関西地区における1ヶ月1度程度の定期的研究会という両輪形式で研究を遂行する。

 医療や教育における対人関係・対人援助の研究。これは実証研究であり、医師の役割と専門性・患者の期待に対する医師自身のとらえ方の研究や、社会福祉審議会における研究者のあり方の研究、東アジアにおける親子関係、フリースクールにおける共感の研究など、実証的な研究を行う予定である。

 学融の方法論や評価法を科学社会学や科学史の問題として検討する。特に未来における評価としての学問史という観点から日本の学問史を総合的に構築する道を探る。また、学融の具体的領域として、環境保全、環境教育の領域における学融のあり方について検討する。環境問題は世界的問題かつ、人文社会系をまたがる問題であり、融的研究を実行しつつ学融方法論について検討するのに好適である。

 オルタナティブ・オプションズの研究。過去2年間に暖めてきた構想であり、制度的サービスに対する人々の意識や生の声を実証的に捉える。その際に、制度的ではないサービスや知識を求めるのはなぜか?という観点(オルタナティブ・オプションズ選択)について検討することで、人々の意識を裏側から探る。選択肢の提示こそガバナンスにおける水平的関係構築のカギであるから、オプション構築についても扱うことになる。

  

研究領域 3
Project Number 3-2


プロジェクト研究名:
(英訳名)

医療システムと倫理

( Medical System and Ethics )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

清水 哲郎
 東京大学・大学院人文社会系研究科・教授

   http://www.sal.tohoku.ac.jp/philosophy/MedSys/index-j.html

プロジェクト研究の目的:

 現代社会における医療の諸問題を解決し、その望ましいあり方を実現することは喫緊の課題である。これに取り組む研究には、医療技術の高度化を図る視点のみならず、科学技術を担いまたそこから益を得る人間および社会に注目する視点が必要とされる。本プロジェクト研究は、後者の視点を持つ人文・社会科学諸領域の研究者が参加する場を形成し、医療・看護・福祉系の研究者、現場の医療・福祉従事者、そして一般市民と共同で、個別の医療現場から社会の医療体制までを視野に収めて、諸レベルで問題に取り組みつつ医療のシステムと倫理を探り、医療が今後どうあるべきかを提言することを目指す。 さしあたって現場と密着した臨床倫理学研究および社会システムレベルでの実証的経済学研究を軸とする二つのコア研究を立て、他のプロジェクト研究とも交流しつつ、研究を展開する。

 研究グループ《医療現場における意思決定・問題解決・協働》は、

  1. 臨床倫理検討システム開発とその医療しステムへの組込み
  2. ナラティブ・メソッドのブラッシュアップと臨床倫理への還元
  3. 地域における医療・福祉ネットワークのあり方の実践的研究
  4. 臨床研究の倫理(東北大21世紀COE CRESCEND0への協力)を行い

医療や臨床研究が行われる現場に視点を置いて、医療システム全体の今後のあるべき姿を見定め、かつ研究成果がすなわち提言となるような研究を目指す。

 研究グループ〈医療システムと医療専門家組織、保険者、民間保険機関の役割〉は、

  1. 医療専門家組織が医療サービスの供給において果たす機能
  2. 社会厚生水準を高めるための公的医療・介護保険制度の改革の方向および家族の機能
  3. 民間保険と公的保険の役割分担
  4. 公的医療保険に関する他の先進国の改革と日本の改革の比較研究

をデータを用いて実証的研究として進め、政策評価方法論の確立や、発展途上国における医療システムの整備に貢献することを目指す。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

医療現場における意思決定・問題解決・協働
( Decision Making, Problem Solving and Cooperation in Medicine )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

清水 哲郎
東京大学・大学院人文社会系研究科・教授

研究グループの目的:

 医療の質が向上し、受益者により大きな利益をもたらし、かつその意思が真に尊重されるように医療現場が改善されるためには、当事者が対等の立場で参加し、合意を形成するための意思決定や問題解決のシステムを整備し、当事者全員の協働体制を整える必要がある。例えば、医療の現場では「インフォームド・コンセント」をキーワードとしつつ患者の意思を尊重すべきことが語られるようになってきてはいるが、それに伴って真に患者やその家族が、あるいは関係する医療従事者全員が納得できる医療の選択がされるようになっているかというと、必ずしもそうではない。そこで、意思決定や問題解決の実際に有効なシステムを構築し、関係者の協働体制を整備することが、医療者−患者間の課題であるのみならず、医師と看護師の協働のため、また地域における関係者・関係機関の協働のために喫緊の課題である。本研究は、この課題に取り組み、医療に関わる当事者間の望ましい協働システムのあり方を探り、提言することを目指す。臨床倫理学を研究の核かつ現場とのインターフェースとしつつ、人文・社会科学系および医療・看護系の関係諸領域の研究者と現場の医療者からなる共同研究グループを形成し、患者・家族の参加と協力を得ながら、次の4つの研究課題を柱としつつ研究を進める。

  1. 臨床倫理検討システム開発と医療システムへの組込み
  2. ナラティブ・メソッドのブラッシュアップと臨床倫理への還元
  3. 地域における医療・福祉ネットワークのあり方の実践的研究
  4. 臨床研究の倫理(東北大学21世紀COEプログラムCRESCENDOへの協力)

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

医療システムと医療専門家組織、保険者、民間保険機関の役割
( Health Systems: Professional Association, Public Health Schemes and Private Health Insurance )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

吉田 あつし
筑波大学・大学院システム情報工学研究科・教授

研究グループの目的:

 このグループの研究目的は、医療システムにおいて、

  1. 医療専門家組織(医師会や大学同窓ネットワーク)がよりよい医療サービスの供給にどのような機能を果たしているか
  2. 現在の公的医療・介護保険制度をどのように変革すれば社会厚生水準が高まるのか、家族の機能は医療システムの中でどう位置づけられるのか
  3. 民間保険と公的保険はどのように役割分担をすべきか、を実証的に明らかにすることである
  4. 同時に、公的医療保険を導入している他の先進国の医療システム改革と日本の改革の比較研究を行うと同時に、アジア諸国の医療システムの現状と課題を明らかにする

 近年、政策責任者の説明責任の一環として、「証拠に基づく政策」(Evidence-based Policy)策定が求められている。特に医療・介護政策は国民の社会厚生に大きな影響を及ぼすので、ある政策を導入すると、医療サービス提供者、医療サービス需要者、保険者等がどのように行動を変化させるのか、その結果導入された政策は当初の目的を達成できるのか、が証拠に基づいて検証されなければならない。本研究は、上記の(1)、(2) 、(3)および(4)の課題について、データを用いて実証的に検証する。また、国際比較によって日本の制度とは異なる制度の可能性についても比較考量する。データに基づいて日本の医療・介護政策を評価する試みは緒についたばかりであり、方法論も未だ確定していない。本研究は、個々の具体的な医療・介護政策を評価することにより、政策評価方法論の確立に貢献する。さらに、アジアの発展途上国では医療システムが未整備であるところが多く、その整備が緊急の課題となっている。途上国の医療システムと開発戦略について研究することは日本の国際貢献にもつながる。

  

研究領域 3
Project Number 3-3


プロジェクト研究名:
(英訳名)

科学技術ガバナンス

( Science and Technology Governance )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

城山 英明
東京大学・大学院法学政治学研究科・教授

プロジェクト研究の目的:

 現代社会は科学技術の発達に伴う様々な便益を享受するとともに、安全・環境上の様々なリスクなどの問題に直面している。科学技術には不確実性が不可避であり、また、多様な社会的目的のために利用可能であるため、このような特質を踏まえて科学技術を社会において適切にマネジメントするシステムを、様々な分野の専門家、様々なレベル(国際組織、国、地方自治体)の政府、団体(専門家団体、事業者団体)や市民といった多様なアクターにより構築することが課題となっている。本プロジェクトは、国レベルのガバナンス、自律的技術者倫理、国際問題という3つの次元に焦点を当て、政治学・行政学、科学技術社会論、技術政策、国際政治経済学、国際法等の様々な分野の研究者や現場の実務家の協働によりこのような課題に取り組み、新たな研究領域を切り開くことを目的とする。

 国レベルの科学技術のガバナンスに焦点を当てるリスクガバナンス研究グループ、安全保障といった国際的課題に焦点を当てる科学技術と国際問題研究グループ、専門家団体や企業等の現場の技術者による自律的規制に焦点を当てる現場からの技術者倫理研究グループの3つのグループに分かれるとともに、有機的に連携して研究を進める。その際、科学技術ガバナンス研究会が研究グループ横断的な議論のプラットフォームともなってきている。この3つのグループは、安全リスク(safety)、安全保障リスク(security)、倫理的含意に焦点を当てて分業しているともいえる。これらの場における、現場実務家も巻き込んだ具体的な事例研究の蓄積を通して、日本の現場における暗黙知を明示化し、そのような実態を踏まえた社会提言や実践を試みる。また、ナノテクといった先端技術に関して、各グループが連携して共同作業を行う予定である。さらに、2005年度に予定している科学技術ガバナンス・プロジェクト全体でのサマーセミナーの開催を通して、より幅広い若手研究者の育成を図る。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

日本のリスクガバナンス・システムの実態解明と再構築の提言
( State of the art of Japanese Risk Governance Systems and their Improvement )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

平川 秀幸
大阪大学・コミュニケーションデザイン・センター・准教授

研究グループの目的:

 本研究グループは、食品、原子力などにおける日本のリスクガバナンスの政策決定と、そこでの専門知利用の実際を、行政・審議会・専門家集団・企業・市民団体など各アクターの働きと相互作用、法制度、人事制度などからなる「リスクガバナンス・システム」に焦点をあて、科学技術社会論、行政学・政治学、経営学、環境社会学など学際的な枠組みで明らかにすることを目的としている。将来の国・地方自治体における制度の充実・改善に役立つ知見を獲得するとともに、研究を遂行すること自体が、行政・企業・専門家など各方面の実務家も交えた経験・知見・情報共有のためのフォーラムとなることを目指している。

 リスクガバナンスにおける意思決定は常に、科学技術情報に伴う大きな不確実性と、社会の価値・利害の多元性という二重に困難な条件のもとで行われる。そのなかで科学的判断と価値的・裁量的判断は複雑に絡み合い、互いに影響を及ぼしあっている。科学的に客観的であるとともに社会的に公正なリスクガバナンスの成否は、より確実で偏りのない科学的情報と、より公正な社会的合意形成だけでなく、いかに科学的判断と価値的・裁量的判断の適切な関係を築くかにも大きく依存している。

 しかしながら、こうしたリスクガバナンスへの日本社会の対応は、これまでのところ欧米諸国と比べて未発達であり、しかも、ガバナンスの実態に関する学術研究の蓄積もまだまだ少ないのが現状である。この点で本研究は、新たな学際的・学融合的な研究領域とその方法論の開拓、分野横断的な研究者ネットワークの構築という学術的意義のみならず、研究成果を通じて、実際のリスクガバナンスの制度的・組織的能力の改善・向上や人材育成、研究者と実務家のネットワークの構築に貢献する社会的意義ももつものである。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

現場からの技術者倫理システム
( System of Ethics from the labotratory point of view )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

大上 泰弘
帝人ファーマ株式会社・生物医学総合研究所・主任研究員

研究グループの目的:

 「生命倫理」の議論を経て、人文・社会科学が医療現場における患者の権利の保護に貢献した意義は大きい。しかし、先端医療は生命の改造・創造を行うものであり、人間の命をいかに守るかだけを考える「生命倫理」には、生命の新たな可能性を提示する科学・技術との間に距離がある。生命科学・技術が提示しているのは、乱開発や汚染物質の排出による生態系の破壊、環境悪化に伴う食糧生産の低下の問題、医学的には遺伝病や環境悪化に伴って生じる疾患などを克服する可能性である。さらに、個体としての人間にこだわる「生命倫理」は、分子レベルの操作を行う生命科学・技術を適切に制御することはできない。適切にという意味は、人権という概念だけでは、現場の研究者に効果的に響かない規制になる可能性がある。分子操作の時代に適合できる倫理システムとして生命倫理を構築しなければならない。このような意味で、既存の「生命倫理」の限界を超えるために、「現場からの」倫理システムの内容的検討を試みる。

 また、生命の改造・創造は、生命科学技術者の研究開発活動によって行われる。この研究活動に対する規制が甘ければ、生命を傷つけたり、生命観を揺るがす問題が生じてしまう。一方、過度に規制すれば、科学・技術の成果を得ることができなくなる。研究開発活動を適切に制御する (保護と発展を考える) 必要がある。そのためには、現場の技術者・研究者という専門家の自己規制が重要になる。このような専門家集団の自主的規制メカニズムについて、動物実験の現場等を踏まえて検討する。

 これらの研究を通して、現場の研究者に内在する問題を明らかにし、分野横断的な研究を促進するとともに、現場に適用可能な倫理の枠組みと専門家集団として自主的に実行しうる技術者倫理システムの構築をめざし、それらを社会にフィードバックする。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

科学技術の進展と国際問題―安全保障リスクのガバナンス
( Development of Science and Technology and International Relations- Governance of Security Risk )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

鈴木 達治郎
財団法人電力中央研究所・社会経済研究所・上席研究員

研究グループの目的:

 本研究プロジェクトは、急激に進展する先端科学技術、特にその中でも軍民両用技術と国際関係との関係を総合的に評価・分析した上で、将来おこりうる課題を未然に防止することができるような国際的な枠組み(ガバナンス)改革を提言することを目的とする。

 原子力・核、宇宙といった国家主導型の技術は、軍事転用の可能性がもともと高い(あるいは軍事から民生に転用された経緯がある)。平和利用を目的とした技術開発であっても、大量破壊兵器に直結する技術であり、その軍事転用を防止するためには、国際法・国内法に加え、二国間条約や多国間の自主的規制(例・ミサイル技術管理レジーム)などが存在している。 また、9.11同時多発テロ以降は、大量破壊兵器を用いたテロのリスクも無視できなくなった。2004年2月には、核の闇市場の存在が明らかになり、国家単位を対象としてきた既存の規制レジームでは対応できないことが明らかになりつつある。

 さらに、最先端の民生用汎用技術からの軍事転用もありうる。たとえば、国家戦略として進められているナノテクノロジーは、その潜在的な影響力の大きさから、軍事転用されれば新たな大量破壊兵器開発につながると最近警告され始めた。

 このように、軍民両用技術の開発とその軍事転用防止は、科学技術と国際問題の関係を考える上で、きわめて深刻な課題として注目されるものであり、国際条約から国内規制、そして企業行動、ひいては科学技術者倫理を含めて、新しい社会の仕組み(ガバナンス)を研究することを目的とする。また、科学技術と安全保障の関係を深く理解し、かつ実践面も含めて分析する学際的研究は、日本ではまだ例が少なく、学術的にも先駆的な研究として貢献できるものと期待される。

  

研究領域 3
Project Number 3-4


プロジェクト研究名:
(英訳名)

市場システムのガバナンス

( Market Mechanism and Governance System )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

久米 郁男
早稲田大学・政治経済学部・教授

プロジェクト研究の目的:

 市場のグローバル化は、従来の国民国家を単位とするガバナンスシステムに大きな変容を迫っている。1990年代以降日本における様々な制度改革や政策革新も、この様な変容の具体的表現であると見ることができる。本研究プロジェクトでは、第1に、選挙制度改革、行財政制度改革、司法制度改革、地方分権改革、金融制度改革、社会保障制度改革などの制度改革が、いかなるプロセスを経て実現してきたかを、行政組織内に蓄積されてきた知識や情報のみならず、当該政策に関わる専門家集団の知識、それに関心を持つ政治家や言論人等によって保有される知識、すなわち広義の「専門知」の果たした役割に注目して解明する。第2に、それぞれ具体的な政策アイデア・構想に基づいて設計された制度が、現実にどのような政策効果を持つとともに、市場や社会のガバナンスのあり方にいかなる影響を与えたかを検討する。本プロジェクトにおける専門知への注目は、情報通信技術をはじめとする多様な科学技術の急速な進展が、政策決定システムにおける専門知の役割の重要性を飛躍的に高めつつあるとの認識に基づいている。しかし、他方、1990年代日本の改革過程では、行政組織や政策実施の現場が持つ専門知への不信が高まっていた。政策決定過程における専門知の適切な利用のあり方を解明することの重要性は明らかである。

 また、ガバナンスのシステムの変容の中で、政府と市場・企業やNGOといった社会集団の役割関係にも変動が見られる。このような役割関係の変動やその背後にある制度・理論についても、関連プロジェクト等と連携して、課題の所在を探りたい。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

政策システムと専門知
( Professional Knowledge in Policy Making )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

久米 郁男
早稲田大学・政治経済学部・教授

研究グループの目的:

 本研究プロジェクトでは、改革の過程において、どのような検討がいかなる証拠や情報に基づいて行われたか、改革を実施する上で政策ネットワーク、行政組織編成そして政策コミュニティー、さらに進んで市場や社会におけるガバナンスにどのような変化が見られたか、そしてそれが改革の内容にいかなる影響を与えたかを解明する。「失われた10年」は同時に「改革の10年」でもあった。政治改革・選挙制度改革から「聖域なき構造改革」まで、政治・行政・司法・経済・社会・教育など様々な分野でラディカルな改革が進められてきた。そこでは、政策形成過程において行政機関・実践現場が蓄積してきた知識は、従来の思考や慣行にとらわれており社会経済環境の変化に迅速に対応できなくなったとの認識から、軽視される傾向があった。いわば、専門知の倫理的正統性が揺らいできたとも言える。しかし、その改革がラディカルであればあるほど、何らかの専門的な知識や研究に裏付けられた政策形成努力が必要である。行政組織内に蓄積されてきた知識や情報のみならず、当該政策に関わる専門家集団の知識、それに関心を持つ政治家や言論人等によって保有される知識、すなわち「専門知」が重要な役割を果たす。改革過程を検証するとともに、政策システムにおける専門知の役割を様々な分野が協働して解明する必要性は高い。本研究では、このような広義の「専門知」の政策システムにおける意義を検討し、近年欧米諸国で盛んに研究されつつあるevidence-based policyの可能性と課題を日本の文脈で明らかにすることが目指される。そこから社会や市場におけるガバナンスのあり方への示唆を得ることが期待できる。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

市場補完・統御の法制度設計に向けた知の再編

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

藤谷 武史
北海道大学・大学院法学研究科・准教授

研究グループの目的:

 現代日本社会における主要な潮流たる「構造改革」論は、資源配分機構としての政府の役割縮小と市場の役割拡大、秩序維持モデルとしての行政主導の事前調整型から司法中心の事後チェック型への移行を志向するものであると言えよう。かかる方向性それ自体は、政府の(特に財政面における)行き詰まりや、グローバル化・ボーダレス化する経済社会における透明性の要請に照らして正当化されるものの、そのような社会への移行に伴う帰結と、それに対処するための法制度設計の議論が尽くされているとは言い難い。政府が万能ではないように、市場も完全に自律的な機構ではなく、適切な法制度によって補完ないし統御される必要がある。なぜならば、「市場補完・統御の法制度の司法中心/事後チェック型への移行」が機能しない(あるいは機能するとしても過大なコストがかかる)場合には、却って市場が混乱することになりかねない。このような混乱を避けるためには,十分な理論的備えが必要である。現代社会の趨勢に照らして市場を補完し統御する法制度の再編の必要性が叫ばれているのであれば、かかる法制度およびそれが機能しうる制度的・政治的前提についての十分な理論的考察が不可避となる。具体的には、再編された市場補完・統御の法制度が期待通り機能するのか、そのコストはどの程度かという検討や、市場アクターすなわち規制客体のみに着目するのではなく、政府ないし規制主体の側のバイアス(例えばAgency Captureの問題)などをも踏まえた考察が必要とされる。

 以上の問題意識から出発し、複数領域の若手法学研究者・実務家を中心として構想される本研究は、複数の法分野(が直面する諸問題)の比較、国際的比較、学際的考察(政治学・経済学等の知見の導入)という理論的アプローチと、市場に関わる多様な政策現場の事例研究の融合を通じて、新しい時代の市場システム補完・統御のための法的仕組みのあり方とその制度的前提についての理論的探究を行うことを目的とする。 この点、一部の法分野においては既に「市場中心の時代における新しい課題への対応」といった問題意識からの研究が蓄積されており、また法と経済学のように法制度設計を強調する法学研究も発展してきているが、多様な法分野(領域)と多層的秩序階層(地方・国・国際)を横断する理論的研究に加えて、政策の現場での多様な法制度設計の創意工夫(とその制約)に焦点を当てた事例研究から得られた知見を踏まえることによって、理論的枠組の探求をボトムアップ的に行なう点に、本研究独自の意義が認められる。これによって、「市場の補完・統御が問題となる多様な局面においていかなる法的仕組みが利用可能・効果的であるか(あるいはその逆であるか)」「効果的な法制度設計のために必要な考慮要素や基準は何か」「どのような場合に事後チェック型の司法制度が機能するのか」等の問いに対する理論的な見通しを獲得することが、本研究の目指すところである。