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人文・社会科学振興プロジェクト研究事業

プロジェクト研究の成果

 
 
プロジェクト研究一覧表
 
平成18年7月作成

研究領域 3
Project Number 3-1


プロジェクト研究名:

ボトムアップ人間関係論の構築
(Constructing the horizontal human relationships)

プロジェクト・リーダー名(所属):

佐藤 達哉
立命館大学・文学部・教授

平成17年度までの研究成果について

<概要>

 「ボトムアップ人間関係論の構築」プロジェクトという名称はわかりにくいが、その意味するところは「様々な現場における水平的人間関係の構築」である。
 プロジェクトの第一の焦点は、職業的関係における人間関係的視点の重視である。医師、法曹、教師、など一般に「せんせい」と呼ばれる職業についている人たちとその対象者との関係は単なるサービス提供というよりは、上下関係を前提としたサービス提供であった。「せんせい」という呼称がこのことをよく表している。こうした関係をなるべく排し、職業というロールをとりはらった人間同士の関係として構築し直すことがこのプロジェクトの目的であり、そのための研究や概念化を行ってきた。
 これまでの3年間は、特に法と医療に焦点をあてきた。特に医療についてナラティブ・アプローチを取り入れることによって水平的人間関係の構築が可能になるという道筋がつきつつある。この他、医師を対象にした面接調査も実行中である。
 プロジェクトの第二の焦点は、学問と社会の関係や学問同士の関係について当てられている。また、学問と学問の融合を学融(トランス・ディシプリナリティ)という概念によって記述し、促進することを提唱する。また、科学社会学的議論や科学史の議論を通じて、学問と社会の関係を妨げる要因について検討してきた。当人文社会科学振興プロジェクトにおいても、積極的に他プロジェクトの企画に参加したり、融合的プロジェクトの企画に参画を果たしてきた。主な成果として以下の2点がある。
 城山・小長谷・佐藤編 『クリニカル・ガバナンス−共に治療に取り組み人間関係』(現代のエスプリ 458) 2005年08月
 サトウタツヤ・渡辺芳之/著 「モード性格」論 紀伊国屋書店 2005年11月

<学際性・社会提言・人材育成について特記すべき事項>

  • 学際性 本プロジェクに参加している研究者は、科学史研究者、医師免許保持の医療社会学者、社会福祉士資格保持の福祉学者、法コミュニケーション研究者などを含んでおり、それぞれの現場における人間関係の相克について検討し、その解決を共有することを目指している。また、「学融」という概念によって、学際を超える活動のあり方について理論構築を行っている。
  • 社会提言 文化心理学における選択肢設定の理論化、行動の自由についての性格理論構築を行い、複線経路等至性モデルやオルタナティブ・オプション、モード性格論といった概念により、より自由な行動選択を可能にする提言をしている。
  • 人材育成 人社プロジェクト内部において「若手の会」を組織することを通じて、一般には難しいとされる学融のあり方について支援を行っている。06年夏に行われる科学技術ガバナンス・プロジェクト全体でのサマーセミナーにも参加して人材育成のあり方に水平的人間関係構築的な視点を盛り込む。
  

プロジェクト名:

ボトムアップ人間関係論の構築

グループ名:

社会変化と人間関係の諸相
(Aspects of human relations in social changes)

リーダー名(所属):

佐藤 達哉
立命館大学・文学部・教授

関連サイト:

   http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/kenkyu_2004/bottomup.htm

組織構成:

研究G長
佐藤 達哉(立命館大学文学部教授・人間科学研究所)

福祉・医療など諸分野における人間関係論班
田垣 正晋(大阪府大講師) 松嶋 秀明(滋賀県大講師)
谷口 明子(武蔵野大講師) 高橋 登 (大阪教育大助教授)
西垣 悦代(和歌山県医科大助教授) 辻内 琢也(早稲田大 助教授)

学融のための方法論・科学社会学班
尾見 康博(山梨大助教授) 溝口 元(立正大教授)
細馬 宏通(滋賀県大助教授) 村上 幸史(大阪大学PD)
荒川 歩(名古屋大法科大学院) 湧井 幸子(京都大博士課程)
水月 昭道(立命館大学PD=事務局担当も兼ねる)

これまでの研究成果:

<概要>

 このグループはプロジェクト研究「ボトムアップ人間関係論の構築」の唯一のグループ研究であり、事実上一体となって研究を展開してきた。
 本グループでは、医療・教育・福祉・法務など、生活の必要上そして制度上経験されるような人間関係を焦点にあてる。つまり上記の様々なサービスを一種の対人援助サービスと捉えなおした上で、その人間関係を水平的なものにするための提言を行う事を目的としている。また、学問と学問の関係、学問と社会の関係も人間関係から捉えることが可能であり、それを学融的研究と呼びそのあり方についても検討を行ってきた。
 具体的には、教育、医療、法、非行臨床、福祉、環境などそれぞれの現場において、水平的関係を築くためには、透明性の確保と選択肢設定の可視化が重要である。実践活動や実証的調査を通じて、それぞれの現場における活動の限界や可能性を明確にしてきた。
 また、一般向けの公開企画や専門家のための方法論講習企画を行うことで、様々なレベルでの社会提言を行ってきている。

<学際性について>

 本プロジェクに参加している研究者は、科学史研究者、医師免許保持の医療社会学者、社会福祉士資格保持の福祉学者、法コミュニケーション研究者、建築研究者、環境教育研究者などを含んでおり、それぞれの現場における人間関係の相克について検討し、その解決を共有することを目指している。
 なお、学際性については、より一歩進んだ概念である「学融」性という概念を打ち出しており、学融という活動が重要だということについて理論構築を行っている。つまり本グループでは、学融の実践にとどまらずその意義について理論的に考究している。

<社会提言について>

 自然科学(者)だけが発明や発見をするのではない。人文社会科学(者)は概念によって新しい世界観を切りひらくものなのである。このことを院生や学生や社会に周知したい。
 ボトムアップ人間関係論の構築、複線経路等至性モデル、オルタナティブ・オプション、など、水平的人間関係の構築に資するモデルや概念を練り上げている。成果は学術書出版、公開企画、HPによる発信などによっている。また、地域FMによる発信方法について検討中である。
 グループの中には、行政の審議会の委員などを通じて活動を行っているものもいるし、日本学術振興会の成果還元プログラムの委員として活動を行っているものもいる。

<人材育成について>

 若手研究支援者やポストドクトラルフェローの雇用を通じて、人材育成と研究推進を行っている。
 人社プロ内の若手交流を通じて学融的取り組みを行うための「関西人社若手の会」の開催をPDと共に支援している。
 06年夏に行われる科学技術ガバナンス・プロジェクト全体でのサマーセミナーにも参加して人材育成のあり方に水平的人間関係構築的な視点を盛り込む。
 人文社会科学全般において質的研究への関心が高まっているものの適切な指導を受ける機会が無い現状をふまえ、若手研究者の育成や広い意味での社会貢献を目指して質的研究検討会を行ってきた。

シンポジウム、ワークショップ等の開催状況:

  1. 2004年6月20日 個性化が意味するもの−日本の幼児教育の多様性と変化
    場所:大阪教育大学天王寺キャンパスミレニアムホール
    講演者:スーザン・ハロウェイ(カリフォルニア大学バークレー校準教授)
  2. 2005年8月24日 多分野連携における医療人類学の可能性 参加250名
    場所:立命館大学 衣笠キャンパス
    講演者:大橋英寿(放送大学副学長)ほか
  3. 2005年9月4日 「病いと語り」 参加者120名
    場所:立命館大学 衣笠キャンパス
    講演者:Arthur Frank(Calgary大学)
  4. 2005年10月16日 「取り調べの可視化」 参加80名
    場所:立命館大学 衣笠キャンパス
    講演者:David Johnson(University of Hawaii)
  5. 2006年6月2日 「ナラティブ・ベイスト・メディスン−臨床における物語りと対話」 参加者80名
    場所:立命館大学 衣笠キャンパス
    講演者:Trisha Greenhalgh(London University)

論文、著書等:

田垣正晋 2004 中途障害者を理解する方法としてのライフストーリー研究の意義 ソーシャルワーク研究30(3) 54-61
谷口明子 2004 病院内学級における教育実践に関するエスノグラフィック・リサーチ:実践の“つなぎ”機能の発見 発達心理学研究 、15。
城山・小長谷・佐藤編 『クリニカル・ガバナンス−共に治療に取り組み人間関係』(現代のエスプリ 458) 2005年08月
サトウタツヤ・渡辺芳之/著  「モード性格」論  紀伊国屋書店 2005年11月
松嶋秀明/著  関係性のなかの非行少年 更生保護施設のエスノグラフィーから 新曜社 2005年11月 
荒川歩・サトウタツヤ 2005 セク融・学融を妨げる要因の検討と構造構成主義による解決の可能性とその適用範囲 立命館人間科学研究, 9, 85-96. 2005年03月
溝口元・高山晴子 2005 ロックフェラー財団における公衆衛生研究助成
立正大学社会福祉学紀要、17 2005年03月
サトウタツヤ・安田裕子・木戸彩恵・高田沙織・ヤーン=ヴァルシナー 2006 複線経路・等至性モデル 人生径路の多様性を描く質的心理学の新しい方法論を目指して 質的心理学研究、5、255-275. 2006年03月
サトウタツヤ編 「病い」への人文・社会科学的アプローチ 研究シリーズ ヒューマンサービスリサーチ(立命館大学) 2006年4月
水月昭道 著 「子どもの道くさ」 東信堂 2006年06月