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本編を開始します
人文・社会科学振興プロジェクト研究事業

研究領域の概要及びプロジェクト研究概要

 

研究領域2



グローバル化時代における多様な価値観を持つ社会の共生を図るシステムについて研究する領域

Research on coexistence among societies with diverse values in an era of globalization

研究領域の目的:

 今日、地球規模で時空間の差異は縮小の一途をたどり、人類社会にとってひとつの大きな利点が提供されつつある。しかし一方で、あらゆる生活面での同一化や、価値規範の画一化などが認められ、こうした現代の傾向に対して、危機感が強く打ち出されるようになっている。

 生物世界における多様性の意義から単純に類推すれば、人類社会においても言語や習慣を異にする諸集団が共存しあうことはそれ自体、地球規模での豊かさにつながると誰もが直感的に感得しうる。しかしながら、人類社会における文化の多様性のもつ意義は、いまだ理論的に確保されておらず、また実際にも確保されていない。

 本研究領域では、多様な価値観が混在していることの意味を積極的に見出し、未来に関するグランドデザインを社会へ発信することを目的とする。これは同時に、新しい社会関係、とりわけ単一の価値観によって上下関係の総体として認識されてきた社会から、水平関係の総和として認識される市民社会への転換を読み解くことを目的とする。

Project Number 2-1 Project Number 2-2 Project Number 2-3 Project Number 2-4  
 
 
  

研究領域 2
Project Number 2-1


プロジェクト研究名:
(英訳名)

平和構築に向けた知の展開

( Advanced Studies for Building Peace )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

黒木 英充
 東京外国語大学・アジア・アフリカ言語文化研究所・教授

プロジェクト研究の目的:

 9.11事件やイラク戦争を通じて、20世紀型の戦争認識や紛争予防のための諸制度が、今や機能不全を呈していることが明らかになった。国家による戦争、非国家組織による政治的暴力を抑止し、平和構築に資するべく、多様な文化や価値観が保障される仕組みを構想することは、現代の研究者に課せられた喫緊の使命である。

 本プロジェクトは(1)「人間の安全」が世界各地でどのように捉えられてきたか、逆に「非安全」な状況がなぜ出現したのかを、具体的な地域に足場を置いて明らかにするとともに、そこに根ざした解決の可能性を検討する。そして(2)「人間の安全」が極限的に破壊される状況として「ジェノサイド」を多角的に問題とし、その予防策を総合的に追究する。さらに(3)20世紀以降の世界を最も強く規定してきた「アメリカ」を根底から捉えなおすとともに、その研究のあり方自体も新たな国際環境の中に位置付ける。(4)このように有機的に組み合わされ、さらに新たに組み直された「知」を、従来型の研究書籍・論文といった活字媒体を通じて発信するだけでなく、映像媒体を利用したり、平和構築の現場ではたらく実務家の活動経験と交流させたりすることにより、平和構築をめぐる学問体系に新たな地平を開くことが可能になる。

 かように私たちは、上記の負託に応えるべく21世紀型の平和構築の具体像を構想し、その作業を通じて人文・社会科学における学融合を目指すものである。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

地域研究による「人間の安全保障学」の構築
( Human Security Studies )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

黒木 英充
 東京外国語大学・アジア・アフリカ言語文化研究所・教授

   http://www.aa.tufs.ac.jp/humsecr/

研究グループの目的:

目的:
 国家、民族・宗教宗派、エスニックグループ、個人の諸位相において政治的暴力の発生をいかに抑止するか、人類の破滅を招来しないようにいかなる安定した安全保障の枠組を創出するか、という課題は今日の人文・社会科学研究者にとって喫緊の取り組みを要するものである。本研究は、問題に応じて人間一人一人のレベルから地球社会全体にまで伸縮・拡張する「地域」を設定し、マルチ・ディシプリンをもって取り組む地域研究の特性を生かして、「人間の安全保障」をテーマに、幅広い専門領域の研究者を糾合しつつ、上記の取り組みを実践することを目的とする。

重要性・必要性:
 冷戦後、特に9/11事件以降、世界各地の民族・宗派問題はますます先鋭化し、戦争を含めた政治的暴力の発現形態が多様化してきた。それゆえに1994年に国連開発計画が「人間の安全保障」概念を提唱してから、この言葉が急速に広まってきたといえる。日本の多くの研究機関等も「人間の安全保障」に取り組んできた。しかし、世界各地の紛争・共存のダイナミズムを、現地の社会的・文化的文脈の中に位置付け、一定の時間的スパンの中で分析・解釈し、現在進行中の事態に対応できるような「現地の知」を導出する研究は、依然として立ち後れている。本研究は、その欠を埋めるのみならず、地域研究の機動性と総合性を生かして、既存の研究成果の総合を可能にするような枠組を創り出すことも企図している。

学術的意義:
 本研究は「人間の安全保障」をキーワードとして、人文・社会科学の専門分野のほぼ全域と、農学・医学・生態学など自然科学分野をもカバーしつつ、そこで具体的な「学融合」の実験を試みるものである。この試みは、新たな学問領域を開拓すると同時に、成果を各学問分野にフィードバックさせてそれを再活性化し、既成の枠組を再編する可能性がある。

社会への貢献:
 ウェッブページや刊行物を通じて成果を広く社会に還元するとともに、「人間の安全保障」に関わるNGOとの協働を模索し、「現地の知」を世界各地の現場に流通させることにより、広い意味での平和構築のために貢献することを目指す。

諸学・学官民の融合的協提言を働と社会同時に行う方法としてこの方法を洗練してゆくことを中心的な課題と位置づける。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「ジェノサイド研究」の展開
( Comparative Genocide Studies )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

石田 勇治
 東京大学・大学院総合文化研究科・教授

   http://www.cgs.c.u-tokyo.ac.jp/index.htm

研究グループの目的:

 国際連合が「ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)」を採択してすでに半世紀余り、旧ユーゴスラヴィア、ルワンダ、スーダンなど冷戦後の世界各地で繰り返される大量殺戮の現実は、人類がいまだジェノサイドから自由でないことを示している。ジェノサイドはいかなる政治体制と国際環境の下で生起し、どのような社会的、文化的メカニズムを生み出すのだろうか。また人類はジェノサイドの要因を排除しその出来を未然に防ぐために、どのようなシステムを構築すればよいのだろうか。

 2002年に常設の国際刑事裁判所(ICC)が設立されたことを受けて、日本も今やこの分野での積極的な貢献を国内外から強く求められている。本研究は、この要請に応えるべく、わが国における本格的なジェノサイド研究の確立を目的に、

  1. 主として20世紀以降の世界各地に生起した、集団の根絶を意図するさまざまなタイプのジェノサイドを取り上げ、その比較分析を通してジェノサイドの発生の要因とメカニズムを究明し
  2. ジェノサイドが20世紀以降になって世界各地で頻発する歴史的な背景を、モダニティ(近代)の諸原理に着目して解明する。さらにこれらの成果を踏まえた上で
  3. ジェノサイド後の社会復興過程のあり方を追究し、あわせて
  4. ジェノサイドの予防に向けた理論構築を行うものである

 わが国における従来のジェノサイド研究は、独自のディシプリンを確立することなく歴史学・国際関係論・国際法・人類学などいくつかの学問分野で個別的に行われてきたにすぎない。だが、ジェノサイドは世界各地で多様な要因が結合することによって引き起こされる複合現象であり、それを取り巻く国際政治の動向とも密接に関連している。それゆえ、ジェノサイド研究には地球規模のアプローチと、いくつもの専門分野に跨る多角的で包括的なディシプリンが要請される。

 本研究は、これまで相互の交流をもたず、欧米の研究と比べて大きく立ち後れた、わが国のジェノサイド研究の統合と組織化を強力に推進しながら、さらに開発研究・国際協力論・経済学・社会心理学・科学史・哲学など新たな学問分野の研究者を糾合し、既存分野の垣根を越える学融合的なジェノサイド研究の確立をめざすものである。そして、実効的な予防論を構築するために、国際連合・政府・NGO関係者など「実践知」に支えられた専門家との積極的な研究交流を実行する。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「アメリカ研究」の再編
( Rethinking of American Studies in Japan in a Global Age )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

古矢 旬
 東京大学・大学院総合文化研究科・教授

   http://scitech-gov.cs.kyoto-wu.ac.jp/component/option,com_weblinks/task,view/Itemid,4/catid,23/id,6/

研究グループの目的:

 2001年9月11日のアメリカ合衆国中枢同時多発テロ事件以後、国際社会は混迷の度を深め、新しい平和の条件を探しあぐねている。その間、合衆国は、この混乱状態を変革と新しい国際秩序構築の機会ととらえ、アフガニスタン、イラク、パレスチナを起点とする中東地域の民主化計画に邁進している。しかしその反面、比類のない軍事力を背景とするアメリカの対外行動は、しばしば単独行動主義へと傾き、伝統的な国際協調のあり方を大きく揺るがしている。いまや世界は、あきらかに一つの大きな転換期にあり、その中心にあってアメリカ合衆国は、現状変革と秩序再構築とを同時に推進しようとつとめている。このような状況を背景として、親米、反米いずれの路線を選ぶにしても、他の国民国家は、合衆国の対外行動への対応に苦慮している。そこにおける最も根元的な問題の一つは、アメリカ合衆国という国民国家の対外行動準則をいかに理解するかという点にある。新しい国際状況に対応した新しい総合的なアメリカ理解の達成が今ほど緊急に養成されている時代はない。

本研究は、この世界的な要請に応えるべく、日本のアメリカ研究に新しい地平を開くことを目的としている。そのために、本研究は当面以下の3つの領域を設定し、それぞれに研究班を組織する。すなわち

  1. 「アメリカ・ナショナリズム」研究班(アメリカの国際行動を規定する国内政治の動態の理解
  2. ナショナリズム、リベラリズム、デモクラシーなどをめぐるイデオロギー、政治文化・世論の分析)
  3. 「アメリカと世界」研究班(合衆国の対外政策、対外意識とそれが向けられる各地域の対米政策、対米意識の検討による、相互理解、相互誤解のメカニズムの解明)
  4. 「アメリカ研究の方法論」研究班(アメリカ、日本を含む世界のアメリカ研究の視角、方法につきまとう地域特性の比較、相対化による国際的アメリカ研究の構築)

である。
本研究は過去一年半、方法論的には、多学問分野間の学際的協同と多国間、多地域間の国際的比較を軸として展開されてきた。また従来の日本のアメリカ研究が、もっぱらアメリカ合衆国の研究者との学術交流に主眼を据えてきたのに対し、本研究ではアジアおよびヨーロッパのアメリカ研究者、国際政治研究者との意見交換を重視してきた。この方針は今後も踏襲してゆくつもりである。それによって、日本のアメリカ研究に、多元的な専門的知見と国際的視点を持ち込むことを企図している。

  

研究領域 2
Project Number 2-2


プロジェクト研究名:
(英訳名)

多元的共生社会の構築

( Reconstruction of New Convivial Societies )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

宇田川 妙子
人間文化研究機構国立民族学博物館・准教授

プロジェクト研究の目的:

 近年のグローバル化状況の下、個々に多様な価値を持つ人々の主張と承認を求める動きが強まり、その間の葛藤も激化している一方で、盛んに「多元的共生社会」という言葉が取り上げられるようになっているが、その要請は、システムの側からだけではなく、むしろ、いわば生活世界の人々の側からの声であり、すでに彼ら自身が数々の実践を試み、すでに多くの実績も上がってきている。そのことは、「市民」という言葉が昨今のキーワードになっていることにも端的に示されている。しかし、その一方で、その概念が西洋・先進国の論理にいまだ依拠していること、グローバル化の動きが結局は均質化につながってしまうこと、「共生」の理念の陰で新たな排除が生まれていることなど、深刻な問題点は数多く残されている。

 本プロジェクト研究は、主にこうした「市民」の側から起こりつつある社会再編の動きを、その問題点とともに分析しながら積極的にモデル化していくことによって、今後の「多元的共生社会」にむけた提言を行い、以上のような様々な問題点の解決に資していくことを目的とする。

 その際、プロジェクト全体としては現在の日本社会を議論の参照基準としながら、各グループが個々の特徴を生かして有機的に連携していく。宇田川グループは、日本のみならず国外の運動の現場における事例をも現場に即して調査・比較しながら、その問題点の整理と理論化に従事する。岩崎グループは、阪神・淡路大震災被災地という個別事例を中軸にし、特にそれをアジアの文脈に位置づけながら「新たな市民社会」モデルを導き出し、さらに検証を加えていく。また辻中グループは、積極的に統計的手法を用いて市民社会の実態にかんする国際的な比較調査をすすめていくことによって、欧米のバイアスを脱した市民社会概念を構築するとともに、他の2グループによる現地調査の成果と交錯させることによって、「市民社会」にかんするより実態に即した世界規模のデータベースを作成する。そしてこれら3者の研究は、少なくとも年に1回企画する合同シンポを通して、最終的には、現代日本社会から発信する多元的共生社会への提言という形でまとめていく。



 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「運動の現場における知の再編」の解明
( Studies on Reconstruction of Knowledge in the field of Social Movements )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

宇田川 妙子
人間文化研究機構国立民族学博物館・准教授

研究グループの目的:

 現在、世界各地で盛んになっている様々な「運動」とは、かつてのイデオロギー的な性格のものではなく、既存の行政機構や市場・諸制度の機能不全や欠陥等を背景にして、人々が、自分たちの身近な生活実感や問題意識の中からそれらを変革し、オールタナティブを模索していこうとする動きであるという特徴をもつ。近年「市民社会」という言葉に大きな注目が集まっていることも、その現れの一つであろう。そしてこの「運動」の多くは、様々な意味での弱者に配慮した「多元的共生」社会の実現を目指しており、すでに多くの模索が行われ、実績も積まれ始めている。

 しかしそこには同時に、住民の中の多様性が看過されて別の排除を新たに生んでしまったり、急速に進むグローバル化のなか自由市場の論理に取り込まれてしまったり、「市民社会」という論理が先進国中心主義的であったり等々、様々な問題点も噴出し、その解決は急務となっている。したがって本研究は、その現状と問題点を多角的に明らかにし、「多元的共生」社会の構築に向けた議論を活性化させながら、その構築に向けた具体的な提言に資することを最大の目的とする。具体的には、研究成果を(それに対する評価を容易にして)実効性のあるものにするためにも、われわれ日本社会の実態を中心軸としつつ、それを相対化するために先進国や発展途上国の事例を調査し比較参照しながら、日本社会を基本的な軸とするモデル化を試みていきたい。

 また本研究は、近年の公共論や市民社会論を従来の運動論と結びつけ、さらに、それらの社会学的議論に、緻密な現地調査の手法を得意とする文化人類学の視点を積極的に導入し協同していくことによって、理論的にも新たな学的領域を切り開こうとする学術的な意図も持つ。近年、人文社会科学の活力が低下していると言われ、その原因の一つとして、現代社会の問題との乖離が指摘されるが、その意味では、本研究は、まさに現代の社会問題に積極的に対峙するばかりでなく、そこでの「知」を、むしろ人文社会科学の再編の原動力にしていくという方向性をもつ。したがって、調査研究の場やその成果公開の場を通して、研究者、活動家、一般市民などとの対話を積極的に行い、その対話の手法自体を人文社会科学のなかに基礎づけていくことも、本研究の課題である。



 

  

研究グループ名:
(英訳名)

被災地の現場における共生社会の構築
( Construction of the society for co-existence in the disaster area )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

岩崎 信彦
神戸大学・文学部・教授

研究グループの目的:

研究の目的:
 大災害は社会に大きな衝撃を与え、平常には隠れていた様々な問題を噴出させる。1995年の阪神大震災において、被害、救助・救援、復興を通して行政、市場経済の脆弱点と住民の生活のあり方が大きく問われた。被災地ではそれを直視しながら、多様な担い手によって新しい社会づくりが「減災」「共生」「市民社会」をキーワードに進められている。とくにボランティア活動の新たな興隆のなかで、コミュニティ・サポート・ネットワーク、行政とのパートナーシップ、異文化理解が進展している。これらを「多元的共生社会の構築」のテーマの下に研究する。

研究の重要性・必要性:
 日本は「災害多発」時代を迎えている。それに対応するためには社会の中に「減災」の仕組みを形成していかなければならない。そのために阪神大震災の被災地で得られる教訓を、<学知>と<民知>の連携のなかで発展させていくことがきわめて重要であり、必要である。

学術的意義:
 1つは、社会が、災害を記憶にとどめ「減災」を進めるためには、これまでの大災害に関する歴史・文化論的視点からの学術的究明を強化しなければならない。2つは、阪神大震災では行政、市場経済の機能の限界性が問われ、あらためて「市民社会」の独自の存在意義が注目された。それを探求するには、災害局面に限らず、グローバリズムの進展による国家機能と市場経済の変容に対応して、市民社会をどのように位置づけ発展させるかが重要な研究課題となる。グローバルな視点をもちながらこれを学術的に深める。

社会への貢献:
 上記のことから明らかなように、社会の災害時、平常時における「減災」化を進める諸方策を共生社会構築の視点から提供する。また、高齢化社会、地方分権型社会、グローバリズムの到来の中で社会が抱える課題に対して社会改良の指針を示していく。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「多元的共生」の国際比較
( International Comparison of Pluralistic Co-existence of Societal Groups and Civil Societies )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

辻中 豊
 筑波大学・大学院人文社会科学研究科・教授

   http://csc.social.tsukuba.ac.jp/top_intro_j.htm

研究グループの目的:

 社会集団間の多元的な共生を成立させるものとして、各地域単位(国、自治体など)での市民社会の質が問われている。しかし、市民社会の現実のあり方については、非欧米を含めた経験的な比較実証研究は進んでいない。加えてNGO、NPO、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)についても概念の欧米バイアスがあり、真の意味での地球的な多元的共生にむけて洗い直しが必要である。本研究では様々な文化圏をまたぎ市民社会組織の包括的な国際実態調査を行い、データベースを構築・比較分析を行い、文化(生活世界)と政治を繋ぐ市民社会の立体的モデルを構築する。

 こうした研究のもとになるデータベースは、順次、社会に公開される。既遂の日本(第一次市民社会組織調査)のデータベースがLDBより公刊(2004年)されている。

 世界的にも希少な市民社会組織データベースの構築は、他の研究グループ、プロジェクト研究に基本データを提供し、日本の共生社会を構想する上で、不可欠な国際比較データとなると考えられる。これまで世界の学界が依拠してきたL.サラモンのジョンズホプキンス大学データは、政府の集計資料に依拠するものであり、実態に迫るには限界がある。 本データはサラモンデータの限界を克服するものである。

2005年度以降実施予定の市民社会組織・NGO-NPO・近隣地域団体全体を対象とする日本全国調査がデータベース化されると、さらに一層データベース価値が増大する。日本の社会運動や団体、ネットワーク、そしてソーシャルキャピタルを論ずる最も重要なデータとなるからである。

  

研究領域 2
Project Number 2-3


プロジェクト研究名:
(英訳名)

グローバル・ガバナンスの解明

( Exploring Global Governance: Actualities, Histories, & Ideas )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

遠藤 乾
北海道大学・大学院公共政策学連携研究部・教授

プロジェクト研究の目的:

 グローバル・ガバナンス(GG)に関する本プロジェクトは、国境を超える世界的・地域的問題のマネージメントの実態を歴史・現状両面において解明し、思想理念的な含意を探る、学際的・国際的な研究である。具体的には、以下に掲げる3つの目的がある。

  1. ヒト・モノ・カネ・情報・疫病などの国境横断的な移動に伴う社会的諸現象を実証的に分析すること。特に、経済・通貨、送金、公衆衛生、平和構築、世界標準などの領域における現状や、WHO・国際刑事裁判所などの国際組織、あるいは印僑・華僑などの脱国境的(トランスナショナルな)ネットワークを把握すること。
  2. そのガバナンス(統治)のあり方を考察すること。その際、グローバルなレジーム、帝国、国家、地方、あるいは私的な団体やネットワークなどの多層にわたる対応主体や、多様な対応形態を探ること。とくに東アジア地域における秩序形成のあり方に重点をおきながら検討を進めてゆく。
  3. これらの現象の含意を検討すること。つまり、国際組織や人的ネットワークが実際にもつインパクトを社会提言につなげたり、主権国家を中心とした人文社会科学的な概念枠組の射程を再考し、新たな枠組の可能性を提起すること。

 社会連携としては、実務家や出版社、ジャーナリストを研究段階から関与させるプロセスを重視し、また国際的な学会・ワークショップにおいては報告等を試み、積極的に関与する。また、プロジェクト内の2グループ(グローバル・ガバナンス/帝国とネットワーク)間の連携を重視するのはもちろんのこと、平和構築や科学技術等の他のグループとも連携を深めてゆく。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「重層的ガバナンスの理念と実態」の解明
( Exploring the Ideas and Realities of Multi-level Governance )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

遠藤 乾
北海道大学・大学院公共政策学連携研究部・教授

研究グループの目的:

 グローバル・ガバナンス(GG)プロジェクトのなかの「重層的秩序の理念と現実」グループには、以下の3つの目的がある。

  1. ヒト・モノ・カネ・情報・疫病などの国境横断的な移動に伴う社会的諸現象を実証的に分析すること。特に、経済・通貨、送金、公衆衛生、平和構築、世界標準などの領域における現状や、WHO・国際刑事裁判所などの国際組織を把握すること。
  2. そのガバナンス(統治)のあり方の考察。特に、世界的レジーム、帝国、地域、国家、地方、私的な団体などの多層にわたる対応主体や、異なる対応形態の検討。
  3. これらの人文社会科学に対する含意の検討。国家中心的概念枠組の射程の再考。

 メンバーは、政治、社会、国際関係、行政、法など多岐にわたる専門領域から募っており、GGプロジェクトのもうひとつのグループによる歴史・経済的な分析と合わせて、意図的に各専門領域を超えるようにデザインされている。とりわけ、現状のGGに関する分析を、歴史的現象の研究や概念理念的な検討と接続することを目指している。

 社会連携としては、実務家や出版社、ジャーナリストを研究段階から関与させるプロセスを重視し、また国際的な学会・ワークショップにおいては報告等を試み、積極的に関与する。また、「帝国とネットワーク」グループ(グローバル・ガバナンス・プロジェクト内のもうひとつのグループ)との連携を重視するのはもちろんのこと、平和構築や科学技術等の他のグループとも連携を深めてゆく。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

帝国とネットワーク−アジア地域秩序の解明
( Empires and Networks: Exploring the Asian Regional Order )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

籠谷 直人
京都大学・人文科学研究所・教授

研究グループの目的:

 グローバル・ガバナンス(GG)プロジェクトの下での、「帝国とネットワーク」グループは、アジアにおける国境を越えた地域秩序形成の歴史的展開を解明することを目指している。伝統的「帝国」(明清中国、ムガル)・近代「帝国主義」(イギリスなど)・戦後「覇権」(アメリカ)という3つのレジームを時代的に設定した上で、以下に挙げる4つの問題にアプローチする。

(1)帝国統治の比較分析:
 17世紀以降のアジアにおける、広域統治システムとしての広義の帝国の理念と組織を、時系列的・地域横断的に比較検討する。国家中心的概念枠組みを相対化する学術的試みであり、また、チベット問題などに見られるように、伝統的帝国秩序が現代アジアの秩序形成に直接関係していることから、重要な社会的意義をも有する。

(2)植民地統治のメカニズムの解明:
 従来は主権問題として取り上げられてきた植民地統治を、広域ガバナンスのメカニズムとして再検討する。感染症の伝播や動植物種の越境への対策措置、貿易、移民、資本移動等に関する規制や制度設計、インフラ・国際標準の整備など多様な対応形態を明らかにする。

(3)アジア商人ネットワークの分析:
 民間のアクターが提供する、取引や移動の為の制度や規範のあり方と、アジア各地域での秩序形成の内的ダイナミズムを明らかにする。帝国が在地のガバナンスに民間ネットワークを利用する一方、移民商人が帝国の提供する広域秩序を選択的に活用していく、帝国とネットワークの相互関係に考察を加える。

(4)戦後アジア地域秩序の検討:
 アジアにおける帝国の歴史的展開と、商人ネットワークとの関係を視座にいれることにより、「冷戦」「脱植民地化」「開発」といったイデオロギーやポリティクスを中心に構築されてきた、戦後アジア地域秩序像を再考する。

 本グループでは、従来の地域研究や学問領域を超えて、日本・アジア研究、ヨーロッパ・アメリカ研究、政治史・国際関係史、経済史の研究者が緊密に連携することで、公権力と民間セクターが交差する、アジア地域秩序の重層性を明らかにし、また、主権国家を中心とする概念枠組みに再考を促していく。更に、「重層的秩序の理念と現実」(遠藤)グループと協働し、歴史研究と現状のGGに関する分析との対話を深めることで、アジアの現状分析や今後のアジアの秩序構築にも提言を行なう。

  

研究領域 2
Project Number 2-4


プロジェクト研究名:
(英訳名)

水のグローバル・ガバナンス

( Global Governance of Water )

プロジェクト・リーダー名:
(所属機関・部局・職)

中山 幹康
 東京大学・大学院新領域創成科学研究科・教授

   http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/ggwater/

プロジェクト研究の目的:

 国際河川・湖沼流域の水資源を巡る国家間での確執が、世界の幾つかの地域では顕在化していることからも明らかなように、水資源の分野でも、エネルギーや食料の分野と同じく、「グローバル・ガバナンス」の必要性が高まっている。

 「グローバル・ガバナンス」を水資源の管理において確立するためには、新しい行動規範と、そのような行動規範が機能するため方法論が提案されねばならない。本研究では、新しい行動規範として「青の革命」を、行動規範が機能するための方法論として「越境影響評価」を研究の対象とする。

 本研究は、二つの研究グループが互いに知見を補完し合うようなテーマを設営すると共に、少なからぬ参加者が両方のグループに所属して研究を実施することで、知見の補完のみならず、学融合的な視点からの成果を得ることを目指す。

 本研究は、研究の成果から抽出される政策提言を発信することを通じて、国際社会へインパクトを与えることを志向している。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「越境影響評価」と水のガバナンス
( Transboundary Impact Assessment and Governance of Water )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

中山 幹康
東京大学・大学院新領域創成科学研究科・教授

研究グループの目的:

 人口が急増しつつある乾燥地では、将来的に水資源が更に逼迫し、水資源を巡る係争が国内や国家間で生じる事が懸念されている。こられの地域で水資源問題を解決するためには、「水資源開発」と「水資源使用の効率化」が不可欠である。本研究では、これらの分野で、国際的な行動規範を確立する必要性が認識されている課題として、「ダム建設時の自然および人間居住環境への配慮」および「国際流域における流域国の協調形成」を採り上げる。

 「ダム建設時の自然および人間居住環境への配慮」については、世界的にも多くの議論が展開されてきた。2000には「世界ダム委員会」によって国際的な行動規範としての指針が提案されたものの、国際社会によって広く受け入れられるには至っていない。国際的な行動規範が確立されるには、「世界ダム委員会」が提案した指針(国際的な行動規範)の適用性について、実証的な事例研究を世界の各地で過去に建設されたダムについて行い、国際的な行動規範としての実効性を高めるための努力が必要である。本研究では、国際的な学際研究チームにより、「文理融合型」の国際共同研究として事例研究を実施する。

 「国際流域における流域国の協調形成」については1997年に国連総会で採択された「国際河川の非航行的利用に関する条約」の有効性を検証するための事例研究を、世界各地の国際流域を対象として実施する。同条約(国際的な行動規範)を批准した国の数は未だに少数であり、国際的な条約として発効する見通しは得られていない。本研究では、同条約の適用性に関して、水資源の共有が過去あるいは現在において流域国間で問題とされた国際河川において、「文理融合型」の国際共同研究として実証的な事例研究を実施する。

 上記のような実証的な事例研究を通じて得られた知見から、研究の対象である「世界ダム委員会が提案した指針」および「国際河川の非航行的利用に関する条約」を「国際的な行動規範」としてより現実的なものとするための具体的な改善について、政策提言を行う。

 

  

研究グループ名:
(英訳名)

「青の革命」と水のガバナンス
( Blue Revolution and Water Governance )

グループ長名:
(所属機関・部局・職)

蔵治 光一郎
東京大学・大学院農学生命科学研究科附属 愛知演習林・講師

研究グループの目的:

 21世紀は水資源の争奪から戦争が起きるだろうといわれている。かつて「緑の革命」により人口増加を上回る食糧の増産が達成されたが、水が不足し新たな水資源開発が望めないような地域では、水危機を克服するために「青の革命」が唯一の道であると考えられている。緑の革命は農薬や肥料といった科学技術によって達成されたが、青の革命は科学技術だけで達成できるものではなく、土地利用、生態系、社会・政治システム、人間の心のあり方を含めた水の合理的・合倫理的な分配・利用を実現する、従来の水管理とは質的に異なる新たな水のガバナンスを形成することが必要不可欠である。このような新たな水のガバナンスの実現のためには、水に関する人文・社会科学や自然科学を現場の文脈に沿って学融合的に結集・再編していくことが必要かつ重要である。

 本研究グループでは、日本国内および海外の具体的な水系の諸問題における紛争や住民参加の事例研究を通じて、このような問題解決型の学術の結集・再編を進め、そのことにより国内や世界の水問題の実態と本質を把握し、問題の解決に寄与するための学術のあり方を示すと同時に、青の革命に関する社会提言を通じて水問題の解決に具体的に貢献していくことを目的としている。