- 国際シンポジウム名、開催期間、開催場所、参加者数(国内、国外、著名な参加者)、予算総額について
国際シンポジウム名:「第9回非接触原子間力顕微鏡法国際会議」
開催期間:平成18年7月16日(日)〜平成18年7月20日(木)(5日間)
開催場所:神戸(神戸市中央区港島中町6-9-1) (会場名:神戸国際会議場)
参加者数:計 229名 (国内168名、国外61名、著名な海外参加者:Prof.F.J.Giessibl[University of Regensburg, Germany], Prof.R.Pétez[Universidad Autonoma de Madrid, Spain], Prof.M.Reichling[Universität Osnabrück, Germany])
予算総額: 13,182,067円(独立行政法人日本学術振興会経費負担額 2,000千円を含む)
- 国際シンポジウムの実施内容・成果及び成果公開について
ナノプローブテクノロジー第167委員会10周年記念国際会議として開催した「第9回非接触原子間力顕微鏡法国際会議(NC-AFM2006国際会議)」の参加登録者は229名であった。国別内訳は、日本168名・ヨーロッパ諸国48名(ドイツ・スイス・英国・アイルランド・スペイン・デンマーク・フィンランド・トルコ・チェコ・スロバキア・イタリア)北米7名(アメリカ・カナダ)アジア6名(台湾・韓国・中国)である。極東での開催であるにもかかわらず海外からの参加者が61名(27%)を数えたことは(1)会議主題である非接触AFMが新世代のナノプローブ技術として注目を集めていること(2)我が国が非接触AFM研究において世界を先導する立場にあることの証左である。NC-AFM2006参加者の集合写真を図1に示す。日本学術振興会からは、理事の伊賀健一先生(写真中央)に代表してご参加頂き、ご挨拶をお願いした。国内外の企業13社から出展を得たことは、日本学術振興会による産学協力研究事業(第167ナノプローブテクノロジー委員会)が産業界の関心を喚起する役割を十分に果たしていることを示している。
会議第一日は、ナノプローブテクノロジー第167委員会が平成10年に発足してから約10年経過したことを祝って、第167委員会発足の10周年記念特別事業として走査プローブの各要素技術から国際標準化にいたる未来像を提示するSPM Roadmap Symposiumを開催した。この内容は、別途、世界初の走査型プローブ顕微鏡(SPM)に関する英語のロードマップとして、Springer社から”Roadmap of Scanning Probe Microscopy”の題名の専門書として平成18年10月末に出版を行った。
第二日目から第五日目のあいだは午前午後の口頭発表と夕方のポスター発表を含めて、産学研究者による活発なディスカッションが展開された。口頭発表48件(海外26・国内22)とポスター発表80件(海外29・国内51)によって、非接触原子間力顕微鏡技術とその発展・応用に関する最先端の研究成果が報告された。口頭発表は、予稿の内容に基づいた国際諮問委員や会議開催担当者らによる投票の合計点で、高い評価を得た順番に口頭発表希望者に割り振った。同点の場合は、できるだけ多数の研究グループが口頭発表できるように、口頭発表の無い研究グループを優先した。また、SPM Roadmap Symposiumに関して、口頭発表だけでなく会議中はポスター展示も行い、日本発の走査型プローブ顕微鏡(SPM)に関する世界初のロードマップの宣伝を行った。会議中は、展示ブースに、日本学術振興会やナノプローブテクノロジー第167委員会の宣伝パンフレットも置いて内外への宣伝も行った。その結果、この会議で、新たに2社に賛助会員として参加していただけることになった。
発表された主なトピックスは、アトムトラッキングを併用した精密な力学分光・原子分子の力学的マニピュレーション・絶縁体材料の表面構造評価・高速走査顕微鏡を用いた生細胞観察・放射光との組合せによる元素分析・ケルビンプローブ顕微鏡による触媒評価などである。特筆すべきこととして、2004年にアメリカ(Seattle)で開催されたNC-AFM2004国際会議において我が国の研究者が発表した世界初の液体中での原子・分子分解能観察が着実に進展を遂げると同時に、ヨーロッパ諸国による追撃が始まったことがあげられる。また、日本と海外との共同研究が実験と理論だけでなく、様々な形で広がりつつあることも注目すべき点である。NC-AFM2006国際会議で発表された最新の研究成果は、サーキュレーションの高い学術雑誌であるInstitute of Physics Publishing (IOP)のNanotechnology誌(IST 2004 impact factor 3.322)に査読を経たのち原著論文として掲載される。なお、特別企画として、SPM Roadmap Symposiumでの講演内容を、原子間力顕微鏡の進歩・国際標準化の動向という観点から総合的にまとめた総説論文二報を、会議論文と同時に掲載する予定であり、世界的にみてインパクトのある論文特集号(2007年2月発行予定)になると期待できる。
NC-AFM2006国際会議は、第1回目を1998年に日本(大阪大学)で開催し、その後、第2回目を1999年にスイス(Pontresina)、第3回目を2000年にドイツ(Hamburg)、第4回目を2001年に日本(京都テルサ)、第5回目を2002年にカナダ(Montreal)、第6回目を2003年にアイルランド(Dingle)、第7回目を2004年にアメリカ(Seattle)、第8回目を2005年にドイツ(Bad Essen)で開催し、今回の第9回目が日本(神戸)開催となったが、注目すべきことは、(1)9回の全ての会議で発表件数がもっとも多い国が日本であったこと、(2)参加者人数も常に1〜2位を海外での開催国と争ってきたこと、(3) 特に、2004年以降は本分野のトピックスの大半が日本から発表されており、本分野では日本の独走状態が出来つつあることである。つまり、ナノテクノロジー分野での評価・分析関連のキーテクノロジーと目されている高性能・高機能な原子間力顕微鏡(AFM)は日本のお家芸となりつつある。なお、本分野の進歩・発展が急速なため、今後も、第10回目は2007年にトルコ(Antalya)、第11回目は2008年にスペイン(Madirid)と毎年の開催が決まっている。
国際会議を開催するにあたっての課題としては、ナノテクノロジー分野での評価・分析関連のキーテクノロジーである高性能・高機能な原子間力顕微鏡(AFM)である非接触AFMを国内外にどのように普及・発展させるかを工夫した会議運営が大切と考えている。普及・発展させるには参加人数を増やす工夫や新しいトピックスの開拓が必要である。本会議では、会議の内容やトピックスを初期の非接触で原子分解能の半導体表面の測定から、少しずつ絶縁体、分子、バイオやデバイス評価に移して来たことや、原子・分子操作やフォース・スペクトロスコピーやケルビン法のような新しいトピックスや新技術の開拓を行ってきたこと、非線形誘電率顕微鏡などの新しい手法も積極的に取り込んできたことが参加人数を増やすとともに本分野の持続的発展に役立ってきた。また、お互いが意見交換しやすいように、口頭講演はシングル・セッションを維持して、残りはポスターセッションにしてきたのも分野の発展に寄与してきたと考えている。本分野の技術や応用をさらに発展させるための工夫として、本会議では、走査プローブの各要素技術から国際標準化にいたる未来像を提示するSPM Roadmap Symposiumを開催した。まさに、ナノプローブテクノロジー第167委員会発足の10周年記念特別事業として相応しい実りある行事になったと考えている。国際会議を開催するにあたっての今後の課題としては、ナノテクノロジー分野での評価・分析関連のキーテクノロジーである高性能・高機能な原子間力顕微鏡(AFM)を他分野にどのように普及・発展させるかを考える必要が有る。そのためには、委員会を通じた出版や講演などの広報活動をさらに推進することが必要と考えている。
 |
| 図1.NC-AFM2006参加者の集合写真 |
|