制震(振)構造技術第157委員会は、平成20年6月24−25日の2日間にわたり、早稲田大学国際会議場(東京都新宿区)において、日本学術振興会の支援のもと「第4回国際スマート構造技術ワークショップ(ANCRiSST2008)」を開催した。
会議の英語名は、The Fourth International
Workshop on Advanced Smart Materials and Smart Structures Technologies(ANCRiSST2008)となる。米中韓日を中心に50数名の参加者が、スマート構造技術に関する最新の研究成果、研究協力のあり方、スマート構造技術の教育プログラムなどに関して有益な議論を行った。
ANCRiSSTは、2002年にアジア太平洋地域を中心に設立されたネットワーク組織、The Asia-Pacific Network of Centers for Research in Smart Structures Technologiesの略称である。ANCRiSSTには米国大学の研究機関が比較的多く加盟しており、また現会長が米国人研究者ということもあって、米国科学財団(NSF, National Science Foundation)による一部の米国人参加者への旅費補助も行われた。主な外国側の参加者は、現会長のB.F. Spencer, Jr.教授(イリノイ大学)、前会長のC.-B. Yun教授(韓国先端科学技術大学院大学)、J.N. Yang教授(カリフォルニア大学Irvine校)、F. Gordaninejad教授(ネバダ大学)、M.L. Wang教授(イリノイ大学[会議開催時])、K. Law教授(スタンフォード大学)、そしてANCRiSSTのアドバイザーであるNSFのS.C. Liu博士である。
日本側の組織委員会は運営委員会員によって構成され、委員長である西谷が組織委員長、仁田委員がSecretaryを務めた。
- シンポジウムの概要
1989年の世界初のアクティブ制震ビルの誕生を契機として、建築土木分野においては、制御・計測・情報技術を融合した応答低減や健全性診断が、実構造物の安全性を向上させる現実の技術として認識されるに至った。
事実、ここ10数年の間に、制御・計測・情報技術を融合した研究開発は急速に進展してきた。このような、応答低減に向けて自律的に振舞う能力を備えた構造物、あるいは自身の状況をモニタリングしながら、日常的な、また地震直後の健全度診断を自律的に行う能力を有する構造物を、近年では<Smart Structures>と総称する傾向にある。そして、このような構造物を実現するための技術が<スマート構造技術>である。
最近では、海外において橋梁の突然の落下事故なども発生し、このような事故を未然に防ぐという意味からも、事前に損傷箇所・損傷程度を把握して修復を行うという点で、先端的な計測技術の適用による構造物の健全度診断への期待は大きい。
Workshopでは、主に、ANCRiSST加盟の研究機関・団体に属する研究者による最新の研究成果の発表を中心として、情報交換や討議が行われる。このANCRiSST会議はこれまでに韓国、米国等で開催されている。第4回の今回は、ANCRiSST会長からの要請を受けた第157委員会の主催による、初の日本開催の会議となる。開催にあたっては、冒頭で述べたように、日本学術振興会から「産学協力国際シンポジウム」支援事業に認定され130万円の支援を受けることができた。
前述したように会議は2日間にわたって開催されたが、それぞれの日の朝に、ANCRiSST現会長のB.F. Spencer, Jr. 教授が“Model-based real-time hybrid simulation”と題する基調講演を、ナノ研究で著名な大泊巌教授(早稲田大学ナノ研究機構長)が “Our trial to apply nanotechnology to structural health monitoring”と題する基調講演を行った。写真1は、大泊教授基調講演のときのものである。
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| 写真1 大泊教授基調講演 |
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| 写真2 Workshop Dinner |
このほかの、各セッションに分かれて討議された主なテーマは、次の通りである。
- ピエゾセンサー/アクチュエーター
- センシング手法
- 構造制御
- 構造ヘルスモニタリング
- ダンパー性能同定
- 視覚的センサー
- コンクリート構造のモニタリング
- ワイアレスセンサー
- 信号処理
- 健全性診断
また、以上に加え、全体セッションとして、スマート構造技術の教育プログラム、ヘルスモニタリングのための共通のテストベッドについての議論も行った。
最終日2日目の夜には、Workshop Dinnerを催し、会議において有益な議論ができたことを祝すとともに、参加者の懇親をさらに深めることもできた。写真2は、そのときの様子である。
ANCRiSSTには、スマート構造技術分野において指導的な役割を果たしてきている研究機関が多く加盟しており、本Workshopにおいて、上に挙げた主な討議テーマについての、最新の研究成果、研究動向、応用事例、共通のテストベッド、問題点、課題点などが広く議論することができた。
これらの成果は、紙媒体のProceedings of the Fourth International Workshop on Advanced Smart Materials and Smart Structures Technologies (ANCRiSST2008)として印刷製本され、公表される。会議開催時にはABSTRACT集を配布しているが、会議終了後に提出された論文を、現在Proceedingsとして編集中であり、2008年度内には発行予定である。印刷製本されたProceedingsは、参加者および関係者に送付される。
- 今後への展望
今回の会議での議論を通して、第157委員会としても、制震(振)構造のさらなる発展形とも言えるスマート構造研究は、今後の中心となる研究テーマであり、2009年度以降の委員会活動に反映させることができる。
また、今回の会議でスマート構造技術のための教育プログラムについての議論を行っているが、早速8月に、韓国先端科学技術大学院大学(KAIST)でのSummer Schoolとして実現されている。欧米系のcivil engineeringおよび日本の建築・土木系の教育カリキュラムにおいて、スマート構造技術学習のための講義・実習を系統的に設置しているところはほとんどない。このSummer Schoolには、157委員会も、日本からの大学院生の出席を支援し、157委員会委
員長の西谷も講師を務めた。今後、このようなSummer Schoolへのより積極的な関与も、委員会活動の重要な柱となろう。
最後に、あらためて支援をいただいた日本学術振興会に謝意を表する。
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