- 概要
国際シンポジウム名: 第18回プラズマ化学国際シンポジウム
開催期間: 2007年8月26日(日)〜31日(金)
開催場所: 京都大学吉田キャンパス,桂キャンパス
参加者数: 671名(国内334名,国外337名)
著名な海外参加者:Bryan R. Henry (IUPAC President, University of Guelph, Canada), Mark J. Kushner (Dean of the College of Engineering, Iowa State University, U.S.A), Michael A. Lieberman (UC Berkeley, USA), Riccardo d'Agostino (University of Bari, Italy) 予算総額: 36,447千円(独立行政法人日本学術振興会経費負担額1,500千円を含む)
実施内容・成果及び成果公開について
京都大学にて第18回プラズマ化学国際シンポジウム(18th International Symposium on Plasma Chemistry,略称ISPC-18)が日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会,国際純正・応用化学連合,応用物理学会の主催で開催された.
この会議は2年ごとに開催される会議であり,プラズマ材料科学分野の中でもプラズマ化学を中心とする最新の成果が総合的にまとまって発表される国際会議である.今回の会議は,1987年に第8回会議(ISPC-8)が東京で開催されて以来,20年振りの日本での開催となる.参加者数671名(国内334名,国外337名)の大規模な会議となるとともに,日本での開催にも関わらずフランス(40),アメリカ(35),韓国(33),チェコ(28),ドイツ(26),カナダ(25)をはじめとする全40ヶ国からの参加者を得ており,約半数が海外からの参加者となっている.これは,本プラズマ材料科学分野の研究内容とその産業応用分野が日本のみならず国際的に重要視されていることを物語っている.
今回設定した分野毎の発表件数は,表1の通りである.発表内容に関しては,欧州を中心としたポリマーの成膜や表面処理に関する講演Gや,熱プラズマを用いたコーティングや合成等のプロセシングに関する講演JFの件数が多いのが本会議の従来からの特徴である.近年の特徴としては,本委員会の研究会でも重点的に取り上げた大気圧や液体などの高密度媒質におけるプラズマに関する発表Bが増えており,マイクロプラズマC,バイオ・医療応用L,環境応用Mのほとんどが大気圧プラズマを用いていることを考慮するとかなりに比率となってきた.このような状況をふまえて,本国際会議の概要を以下に報告する.
大気圧プラズマの分野では,本委員会のメンバーが主導的となって日本から発信したマイクロプラズマCを一つのセッションとして企画した.国内発表者が多数を占めたが,約30%の海外からの講演があり,国際的にも重要性が認識されていることを示している.その中でもの一つとして注目されているプラズマジェットに関する成果が多数報告された.特に,電池駆動可能なプラズマペンなどの具体的実用デバイス提案もあり,今後の産業応用への展開が期待される.その用途についても,従来の疎水・撥水化などの簡単な表面処理に加えて,生体組織の止血に用いる等の新しい用途への適用が試みられている.しかし,微細空間における放電機構について基礎を論じる発表は日本を除くとほとんど無かった.基礎理解を欠いた産業応用は今後の発展に支障をきたすと予測され,今後も本委員会主導にて基礎の理解に務める必要がある.
こうしたプロセシング用としてではなく,蛍光灯やPDPのようにプラズマ自身がデバイスとして最終製品に組み込まれる新しい用途も模索されている.具体的には,マイクロプラズマをアレイ状に集積したアドレッサブル面発光デバイス,プラズマの誘電性を動的に可変可能であることに注目した電磁波制御デバイス,電極をフレキシブルな織物構造にしたデバイス,マイクロ流路中に微細放電空間を設けたマイクロリアクターなどが挙げられる.まだ研究段階ではあるが,既成産業応用の置き換えではない新奇な産業創成につながると期待される.
更に高密度な媒質である液中のプラズマに関する発表も増えてきた.具体的には,微細な泡をガス導入または気化によって液中に発生させ,気泡中のプラズマと液体との相互作用により物質合成(DLCや金属ナノ微粒子),液中不純物の除害など,と応用先行型の報告が目立った.大気圧プラズマが各種診断ツールやモデリングによって分析されている状況と比べると,液中に関しては基礎的理解がまだ十分ではなく,本委員会において産官学が協力し,基礎理解に根ざした産業応用が実現できるように,次期の重点テーマの一つとして取り上げる予定である.
なお,本会議の最終日には,Kyoto Protocol発祥の地であることや,本委員会の次期重点応用分野の一つでもある環境対策に関する産業応用ワークショップが企画された.従来の環境対策では,主にプラズマ化学を利用して有害化学物質を分解するだけであったが,今回は,近年の持続可能社会実現の要請に応えるべく貴金属等の資源リサイクルとCO2削減に特化した環境応用に関して徹底的に議論した.日本,韓国,米国,スイス,オーストラリアの主に産業界からの講演とパネル討論で構成され,大気圧プラズマや液相の関与するプラズマが環境応用に実用可能であることがしめされた.また,エネルギー効率の向上など今後の課題も明確化され,今後の本分野の方向性を見出すことのできた有意義なワークショップとなった.最終日の午後であるにもかかわらず約半数の参加者がワークショップに参加していたことは,本分野に対する国際的な期待を反映したものといえる.
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- 今後の課題
プラズマ材料科学第153委員会は, 20年前に東京で開催された第8回の会議(ISPC-8)を契機として,日本における当該学術・産業分野の活性化と発展を目的として組織された委員会である.近年の海外でのISPCへの日本からの参加者数が上位2〜3位を占めることや基調講演を務めていること,前回のISPC-17では,日本からの参加者が開催国カナダからの参加者数を上回ったこと,そして本ISPC-18においても多数の海外からの参加者に恵まれつつ,日本のアクティビティを示すことができたことは,本委員会のこれまでの活動が日本における本分野の活性化・発展につながった結果と言える.
本ISPC-18では,日本の研究者が先駆けて着手した大気圧プラズマやマイクロプラズマといった分野における国内外の研究が活発になるとともに,その産業応用も盛んになっている.これらの分野は,本委員会の研究会テーマとして先駆的に取り上げられたテーマであり,同じ志を持つものが組織として研究を進めることの重要性を示している.
次回の日本での開催は未定であるが,今後の課題としては,社会的に注目度の高い産業応用を見据えた新しい分野を組織として開拓することが国際社会における日本の存在価値を高めるとともに,日本における国際会議を有意義なものにすると考えられる. 特に,産業応用分野において社会的に注目されつつある分野(今回は,ワークショップでとりあげた環境応用やバイオ・医療応用など)を積極的に取り上げるとともに,その基礎となっている物理化学現象についても十分に議論できるプログラム構成とすることが今後の課題といえる.
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