平成15年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名   知的で動的なインターネットワーキング
 
研究プロジェクト名   動的ネットワーキング
 
(英文名)   Dynamic Networking
 
研究期間   平成11年度〜平成15年度

プロジェクト・リーダー名 研究経費 総額 613,597千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
白鳥 則郎・東北大学
電気通信研究所・教授

内訳 平成11年度 110,469千円
平成12年度 118,487千円
平成13年度 164,641千円
平成14年度 164,000千円
平成15年度 56,000千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
木下 哲男 東北大学・情報シナジーセンター・教授 動的ネットワーキングアーキテクチャの設計に関する研究
菅原 研次 千葉工業大学・情報科学部・教授 開発用フレームワークの設計に関する研究
菅沼 拓夫 東北大学・電気通信研究所・助教授 評価用アプリケーションの評価方法に関する研究
加藤 貴司 東北大学・電気通信研究所・助手 評価用アプリケーションの設計手法に関する研究
(平成14年4月1日から)
北形 元 東北大学・電気通信研究所・助手 動的ネットワーキングアーキテクチャの実装に関する研究
(平成14年4月1日から)
グレン・マンスフィールド 東北大学・客員研究員
(株)サイバー・ソリューションズ)
動的ネットワーキングアーキテクチャの実装に関する研究
(平成14年4月1日から)
原田 耕治 東北大学・電気通信研究所・リサーチアソシエイト 評価用アプリケーションのシミュレーション手法に関する研究
(平成14年4月1日から)
サラウッディン・ムハマド・サリム・ザビル 東北大学・電気通信研究所・教務補佐員 動的ネットワーキングアーキテクチャのネットワーク運用ユニットの設計に関する研究
(平成14年4月1日から)
小野里 好邦 群馬大学・工学部・教授 動的ネットワーキングアーキテクチャのQoS制御ユニットの設計に関する研究
山本 潮 群馬大学・工学部・講師 動的ネットワーキングアーキテクチャのQoS制御ユニットの実装に関する研究
ゴウタム・チャクラボルティ 岩手県立大学・ソフトウェア情報学部・教授 動的ネットワーキングアーキテクチャのネットワーク運用ユニットの設計に関する研究
ベッド・ビスタ 岩手県立大学・ソフトウェア情報学部・助教授 開発用フレームワークの仕様記述に関する研究
橋本 浩二 岩手県立大学・ソフトウェア情報学部・講師 評価用アプリケーション(マルチメディア通信システム)の設計に関する研究
(平成13年4月1日から)
レオナルド・バロリ 福岡工業大学・情報工学部・助教授 動的ネットワーキングアーキテクチャのネットワーク運用ユニットの実装に関する研究
(平成13年4月1日から)
イ・ウンソク 韓国成均館大学・School of Electrical and Computer Engineering・教授 評価用アプリケーション(マルチメディア通信システム)の実装に関する研究
(平成14年4月1日から)
三井田 惇郎 千葉工業大学・情報科学部・教授 開発用フレームワークの概念設計に関する研究
(平成13年4月1日から)
中村 直人 千葉工業大学・情報科学部・教授 開発用フレームワークの設計に関する研究
(平成14年4月1日から)
藤田 茂 千葉工業大学・情報科学部・講師 開発用フレームワークの評価手法に関する研究
原 英樹 千葉工業大学・情報科学部・講師 開発用フレームワークの実装に関する研究
李 成竺 東北大学・電気通信研究所・リサーチアソシエイト 評価用アプリケーション(マルチメディア通信システム)の実装に関する研究
(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで)
藤田 伸尚 東北大学・電気通信研究所・リサーチアソシエイト 評価用アプリケーションのシミュレーション手法に関する研究
(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで)

2.研究計画の概要

 本研究は、不規則に変動する非均質なネットワーク環境において、多様な要求(QoS)を持つアプリケーションを効果的に動作、運用するために、アプリケーションとネットワークの中で起こる変動を人間に代って自律的に調整・吸収し安定に動作する仕組み、即ち動的ネットワーキングの機構を開発する。具体的には、基盤技術として新たにエージェント指向コンピューティング技術を開発し、これを用いて動的ネットワーキングのための新しい機構を提案し、さらにプロトタイプシステムを開発してその有効性を示す。
 先ず、開放型広域ネットワーク環境を基盤とした動的ネットワーキングに関する研究を行い、その基本モデルを構成する。本モデルの特徴は、現行のIPネットワークの上位層として「やわらかいネットワーク層」と呼ぶ機構を新たに導入する点にある。これは、非均質ネットワークの機能的な差異を最大限に吸収すると共に、利用者/アプリケーションレベルでの変動や基盤となるIPネットワークレベルでの変動を自律的に監視・調整・制御する。更に、状況に応じてその機能を自己組織的に変化させることにより、利用者/アプリケーションによるネットワーク利用を能動的に支援するものである。すなわち、本研究では、上位層としての利用者/アプリケーション、及び、下位層となるIPネットワークの中間に位置し、両者の状況に対応して自律的に動作するネットワーク機構の実現を目指す。こうした機能を備えたやわらかいネットワーク層をエージェント指向高級ミドルウェアとして実現するために、動的ネットワーキングの機構に関する研究と並行して、その構築ツールとなるエージェントフレームワークを開発する。そして、本フレームワークを用いて、動的ネットワーキング機構に 基づくプロトタイプシステムを開発し、マルチメディア通信サービスなどのアプリケーションを用いた実験を通して、提案手法の総合評価を行う。

3.研究目的

動的ネットワーキングの機構の実現を目指し、以下の項目の研究開発を推進する。
(1) 動的ネットワーキングに基づくネットワークアーキテクチャと基盤技術の開発
提案するやわらかいネットワーク層を中心とした、利用者/アプリケーションの視点を重視した動的ネットワーキングアーキテクチャと、その運用・実装方法などの基盤技術を開発する。
(2) プロトタイプ開発ツールとしてのエージェントフレームワークの開発
やわらかいネットワーク層をエージェント指向高級ミドルウェアとして実現するために、その構築ツールとなる従来にない先進的なエージェントフレームワークを開発する。
(3) やわらかいネットワーク層のプロトタイプの開発
(2)のエージェントフレームワークを用いて、動的ネットワーキングアーキテクチャに基づくやわらかいネットワーク層のプロトタイプシステム(エージェント指向高級ミドルウェア)を開発する。また、マルチメディア通信サービスなどのアプリケーションを用いた実験を通して、世界に先駆けた提案手法の総合評価を行う。

4.研究成果の概要

4−1研究計画、目的に対する成果
本プロジェクトの主な成果は以下の通りである。
(1) 動的ネットワーキングに基づくネットワークアーキテクチャと基盤技術の開発
動的ネットワーキングアーキテクチャに基づくやわらかいネットワーク層の要件を満たす機能群(ミドルウェアコンポーネント)、それらの連携によって実現されるミドルウェアサービスの機能や構造、運用・実装手法など、動的ネットワーキングの基盤技術を開発し、やわらかいネットワーク層をマルチエージェント型ミドルウェアとして実現することに世界に先駆けて成功した。
(2) プロトタイプ開発ツールとしてのエージェントフレームワークの開発
やわらかいネットワーク層の実装・運用に必要な種々の知識を埋め込んだエージェントによるミドルウェアコンポーネントを実現し、これらのエージェントを組織化したマルチエージェントシステムによるミドルウェアサービスの動的な構成/再構成の実現において従来にない効果を発揮する先端的なツールシステムの開発に成功した。これにより、本フレームワークが、やわらかいネットワーク層をマルチエージェント型ミドルウェアとして実装・運用するためのツールとして有用であることを実証した。
(3) やわらかいネットワーク層のプロトタイプの開発
動的ネットワーキングのためのエージェントフレームワークが提供するリポジトリ機能を活用して、種々のミドルウェアコンポーネントを効果的に集積・管理する、従来の関連システムにはないミドルウェアライブラリの開発に成功した。これにより、ミドルウェアコンポーネントの利用/再利用、及び、新規コンポーネントの漸進的な集積の促進が可能となり、ミドルウェアサービス自身の発展・進化を支える基盤技術を世界に先駆けて与えた。


4−2研究計画、目的外の成果
(1) ユビキタスコンピューティング環境のための基盤技術
当初の研究計画では、ネットワーク基盤として有線ネットワークのみを想定していたが、無線ネットワーク技術を組み込むための拡張を行ったところ、井戸端LANなどのユビキタスアプリケーションを効果的に構築可能であることが新たに判明した。これにより、やわらかいネットワーク層の適用範囲の広さが証明されるとともに、本機構がユビキタスコンピューティング環境の基盤技術となり得ることが示された。今後、更に高度なユビキタスアプリケーションの構築基盤技術としての役割が期待できる。
(2) マルチエージェントシステムの動作特性の解析と制御
本研究は多数の自律的に動作するエージェントの協調により様々な機能の提供を実現しようとするものであるが、個々のエージェントの動作は、状況や各エージェントが持つ知識に基づいて動的に決定されるため、システム全体としての振舞いも極めて状況依存的かつ非決定的なものとなる。こうした背景のもと、本研究で扱っている様々な応用分野においてエージェント技術を適用し、利用要求に即したマルチエージェントシステムを系統的に構築するための新たな手法や技術の開発を目的として、本システムの動作特性の解析と制御について検討した。その結果、マルチエージェントシステムの制御手法に関する従来にないさまざまな知見を得た。これらの成果は本研究のみならず、一般のマルチエージェントシステムの効率的な利用のための設計指針を与えることが期待できる。


4−3 研究成果の展望
 現在、次世代ネットワークに関連した様々な分野における研究開発が活発化している。本プロジェクトの実施期間においても、概ね当初の我々の予想通りのペースで高度情報化社会に向けた動きが進展し、日常生活の場面におけるユビキタスコンピューティング環境に関する研究開発等も目覚しいものがある。本研究は、やわらかいネットワークのコンセプトに基づく新世代ネットワーク環境の実現を目指して開始されたものであるが、現在進行中のユビキタスコンピューティング環境の有用な基盤技術としての潜在能力も示された。さらに、本研究の成果は、21世紀のネットワーク社会の基盤となるポスト・ユビキタスコンピューティング環境の中核技術となる重要な知見を与え、情報通信分野への学術的インパクトが大きく、さらにその実現に向けて新たに研究を推進すべき技術課題も提示している。以下に、今後の具体的な展望を示す。
 まず、本プロジェクトでは、種々のミドルウェアコンポーネントを効果的に集積・管理するミドルウェアライブラリの開発に成功したが、さらなる発展へ向けて個々のコンポーネントについては高度化の余地が残されているものも少なくない。今後はコンポーネント自体の高度化、およびポストユビキタスコンピューティング環境向けのコンポーネントと、そのライブラリの拡充により、ポストユビキタスコンピューティング環境の基盤技術の確立への貢献が期待できる。次に、本プロジェクトで開発したミドルウェアは、実環境における性能面での改善の余地がまだ残されている。今後、性能の改善と小型携帯端末から高機能端末までを含めた多様な環境での効果的な動作を考慮することにより、プラットフォームフリーな高性能ミドルウェア動作環境の実現への貢献も大いに期待できる。さらに、本プロジェクトで開発したミドルウェアによるQoS調整などでは、制御の幅に限度があることが、実験により明らかになってきた。今後はマルチエージェント型アプリケーションとミドルウェアのより高度な協調により、レイヤフリーな品質管理・制御技術の実現など新分野へと発展することが 期待できる。


4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
 21世紀のネットワーク社会で活動する多様な人々を効果的に支援する未来の新しいネットワークシステムの開拓・実現を目指して、「動的ネットワーキング」という研究課題を切り口として研究開発を行ってきた。その基本となる考え方は我々が提案している「やわらかいネットワーク」であり、本プロジェクトでは、この「やわらかいネットワーク」のコンセプトを基盤として、新世代ネットワーク環境を支える未来のネットワークシステムとして、以下の3点に集約される基盤技術を開発した。
(1) 動的ネットワーキングに基づくネットワークアーキテクチャと基盤技術の開発
提案したやわらかいネットワーク層、及び新しいエージェント指向コンピューティング技術に基づくその実現方法を確立した。
(2) プロトタイプ開発ツールとしてのエージェントフレームワークの開発
やわらかいネットワーク層をマルチエージェント型ミドルウェアとして実現するための、従来にない先進的なエージェントフレームワークを開発した。
(3) やわらかいネットワーク層のプロトタイプの開発
 マルチエージェント型ミドルウェアに基づくミドルウェアサービスの利用とその発展・進化を支援する新しい機構を構築し、その有効性を示した。
 以上の3つの基盤技術を開発することにより、動的ネットワーキングが掲げた目標、すなわち、「利用者/アプリケーションの視点からみて、情報通信の基盤となる現行のIPレベルのネットワークを、自己組織的に動作する知的なネットワークに進化させるための新たな手段の提供」を実現し、その効果を立証することができた。さらに、未来のネットワーク社会の基盤となるポスト・ユビキタスコンピューティング環境の中核技術を与え、その突破口を切り拓いた。今後、本格的なポスト・ユビキタスコンピューティング環境の実現に向けて、本研究の成果を踏まえた研究開発を一層強力に推進してゆくことが求められている。

5.キーワード

(1)やわらかいネットワーク (2)動的ネットワーキング (3)エージェントフレームワーク
(4)マルチエージェント (5)ネットワークミドルウェア (6)ミドルウェアライブラリ
(7)ポスト・ユビキタスコンピューティング環境    

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
Takuo Suganuma, Shintaro Imai, Tetsuo Kinoshita, Kenji Sugawara and Norio Shiratori A Flexible Videoconference System based on Multiagent Framework
学術雑誌名 ページ 発行年
IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics part A 33 5 633-641 2003

全著者名 論文名
Koji Harada, Tetsuo Kinoshita and Norio Shiratori The Emergence of Controllable Transient Behavior Using an Agent Diversification Strategy
学術雑誌名 ページ 発行年
IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics part A 33 5 589-596 2003

全著者名 論文名
Goutam Chakraborty An Efficient Heuristic Algorithm for Channel Assignment Problem in Cellular Radio Networks
学術雑誌名 ページ 発行年
IEEE Transactions on Vehicular Technology 50 6 1528-1539 2001

全著者名 論文名
Shintaro Imai, Gen Kitagata, Susumu Konno, Takuo Suganuma and Tetsuo Kinoshita Developing Knowledge-based Videoconference System for Nonexpert Users
学術雑誌名 ページ 発行年
International Journal of Distance Education Technologies 2 2 13-26 2004

全著者名 論文名
Salahuddin Muhammad Salim Zabir, Ahmed Ashir, Gen Kitagata, Takuo Suganuma and Norio Shiratori Ensuring fairness among ECN and non-ECN TCP over the Internet
学術雑誌名 ページ 発行年
International Journal of Network Management 13 5 337-348 2003

全著者名 論文名
Leonard Barolli, Akio Koyama, Takao Yamada, Shoichi Yokoyama, Takuo Suganuma and Norio Shiratori An Intelligent Routing and CAC Framework for Large-scale Networks based on cooperative agents
学術雑誌名 ページ 発行年
Computer Communications 25 ??? 1429-1442 2002

全著者名 論文名
Salahuddin Muhammad Salim Zabir, Ahmed Ashir, Gen Kitagata, Takuo Suganuma and Norio Shiratori Toward Ensuring Fair Service among ECN and non ECN TCP Connection Over the Internet
学術雑誌名 ページ 発行年
Journal of Information Science and Engineering 18 ??? 837-847 2002

全著者名 論文名
Takuo Suganuma, Sung-Doke Lee, Takuji Karahashi, Tetsuo Kinoshita and Norio Shiratori An Agent Architecture for Strategy-centric Adaptive QoS Control in Flexible Videoconference System
学術雑誌名 ページ 発行年
Next Generation Computing 19 2 173-191 2001

全著者名 論文名
Takuo Suganuma, Shintaro Imai, Tetsuo Kinoshita and Norio Shiratori A QoS Control Mechanism Using Knowledge-Based Multiagent Framework
学術雑誌名 ページ 発行年
IEICE Trans. Inf. & Syst. E86-D 8 1344-1355 2003

全著者名 論文名
Bhed Bahadur Bista, Kaoru Takahashi and Norio Shiratori On constructing n-entities communication protocol and service with alternative and concurrent functions
学術雑誌名 ページ 発行年
IEICE Trans. on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences E85-A 11 2426-2435 2002

全著者名 論文名
白鳥則郎, 木下哲男, 菅原研次 やわらかいネットワーク (Invited)
学術雑誌名 ページ 発行年
情報処理学会誌 43 6 639-644 2002

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
Norio Shiratori A Dynamic Networking Architecture Towards Next Generation (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
1999 IEEE International Symposium on Intelligent Signal Processing and Communication Systems ISPACS'99 Phuket,Thailand ??? 10 1999

全著者名 論文名
Tetsuo Kinoshita Agent-based Middleware for Next Generation Network System (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
4th IEEE Int. Conf. on Computer and Information Technology (ICCIT20001) Dhaka, Bangladesh ??? 321-325 2001

全著者名 論文名
Kenji Sugawara An Agent-based Framework for Developing Flexible Distributed Systems (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
IEEE International Conference on Cognitive Informatics Calgary, Canada ??? 101-106 2002

C.著書(Books)
全著者名 書名
白鳥則郎 現代工学の基礎5 ネットワークシステムの基礎
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
岩波書店 東京都千代田区一ツ橋2-5-5 ISBN4-00-010985-5 1-178 2000

全著者名 書名
木下哲男, 桑原和宏, 菅沼拓夫, 菅原研次, 服部文夫, 原英樹, 藤田茂 エージェントシステムの作り方
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
電子情報通信学会 東京都港区芝公園3-5-22 ISBN-4885521742 1-204 2001


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