平成15年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名   強磁場下の物質と生体の挙動
 
研究プロジェクト名   強磁場による磁気分離を用いた環境改善と資源循環利用
 
(英文名)   Application of the Magnetic Separation under a Strong Magnetic Field to the Environment Improvement and Resources Circulation
 
研 究 期 間   平成11年度〜平成15年度

プロジェクト・リーダー 研究経費 総額  386,821千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
渡辺 恒雄・東京都立大学
大学院工学研究科・教授
内訳 平成11年度 57,581千円
平成13年度 74,015千円
平成13年度 97,225千円
平成14年度 83,000千円
平成15年度 75,000千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
西嶋 茂宏 大阪大学・大学院工学研究科・教授 コアメンバー、研究計画の立案と推進
伊藤 大佐 東京都立大学・大学院工学研究科・教授 研究協力者、分担研究の推進
金村 聖志 東京都立大学・大学院工学研究科・教授 研究協力者、分担研究の推進
井原 一高 東京都立大学・大学院工学研究科・研究員 研究協力者、分担研究の推進
島田恵理子 神奈川工科大学・工学部・助手 研究協力者、分担研究の推進
泉  佳伸 大阪大学・大学院工学研究科・助教授 研究協力者、分担研究の推進
矢坂 裕太 大阪大学・大学院工学研究科・講師 研究協力者、分担研究の推進
武田 真一 大阪大学・大学院工学研究科・助手 研究協力者、分担研究の推進
山口  貢 新潟大学・大学院自然科学研究科・教授 研究協力者、分担研究の推進
今泉  洋 新潟大学・大学院工学研究科・教授 研究協力者、分担研究の推進
福井  聡 新潟大学・大学院工学研究科・助教授 研究協力者、分担研究の推進
酒井 保蔵 宇都宮大学・大学院工学研究科・助教授 研究協力者、分担研究の推進
尾崎 博明 大阪産業大学・工学部・教授 研究協力者、分担研究の推進
中平  敦 京都工芸繊維大学・工芸学部・助教授 研究協力者、分担研究の推進
栗延俊太郎 福山大学・工学部・教授 研究協力者、分担研究の推進
梅津 一孝 帯広畜産大学・畜産学部・助教授 研究協力者、分担研究の推進
見目 義弘 日本電気エンジニアリング・顧問 顧問、研究推進上の助言

2.研究計画の概要

本プロジェクトでは、超伝導磁石を活用した新しい磁気分離工学の具体化を図り、応用技術が社会に導入される道筋をつける過程までの成果をあげるため、以下のとおり、研究のフェーズ、応用技術への展開、 などに留意して、研究計画を策定した。
< 研究のフェーズ >
[1] 要素技術として、次の重点課題を取り上げる。
1) 非磁性の物質をも磁気分離の対象にできる様に、磁性付与法の開発
2) オープンな空間で磁気分離処理できる様に、開放型高勾配磁場空間の設計
[2] 要素技術の成果を、次の重点分野に適用できる応用技術を開発する。
1) 環境改善への適用
2) 資源循環利用への適用
< 応用技術への展開 >
[3] 応用技術へ展開する場合には、次の諸点を考慮した。
1) 既存の競合技術との比較し優位性の確認を行う
2) 見通しのある研究課題を選定して、重点的且つ積極的に研究推進する
3) 中間期に、新しく必要な研究協力者を募る
4) 積極的に、新たな助成金を獲得して、応用技術の具体化を図る

3.研究目的

[1] 磁気分離技術は以下の優れた特長を有する。

1) 希薄に分散した懸濁物質に対して、高速の分離処理が可能

2) 薬品の使用が少ない物理的処理

3) 有害物質の分離による資源循環利用が可能

4) 二次的な汚染物質を出さない
[2] 研究目的
これらの特長を活用した磁気分離処理システムを確立するため、廃水処理への適用を重点的に取り上げることにした。当初に目指した開発目標は以下の通りである。

1) 要素技術の開発:・磁性付与法の開発、開放型高勾配磁場空間の設計の確立

2) 応用技術の開発:・環境改善に関連する廃水処理技術への適用(実証研究、実用化研究)

           ・資源循環利用に関連する産業廃水処理への適用(  同  上 )

3) 実用化への導入:・特許に基づく水処理技術の企業化

4.研究成果の概要

4−1 研究計画、目的に対する成果
当初予定の成果を下記の通り収めた。
< 要素技術の開発 >
[1] [磁性付与法:  1)電気化学的担磁法    2)コロイド化学的担磁法 
          3)メカノケミカル担磁法   4)微生物担磁法
[2] 開放型高勾配磁気分離技術: 高勾配磁界設計
< 基礎研究への展開 >
 (1) 開放型高勾配磁気分離装置用磁界設計法
 (2) クリプトスポリジウム・オーシストの磁気分離
 (3) 硫酸還元菌の硫化鉄粒子の重金属磁気分離
 (4) 包括固定化法の開発
 (5) 磁性材料の生成
 (6) 二流路磁気分離装置の開発
 (7) 強磁場下のトリチウム電解凝縮
 (8) 電解磁性粒子のコロイド化学反応解析
 (9) マグネシウム濃縮回収の素材開発
 (10) 重油回収の素材開発
 (11) 微生物含有磁性ゲル粒子を用いる有害物質含有廃水の処理
< 応用研究への展開 >
 (1) アオコの磁気分離と肥料化
 (2) 半導体加工廃液からの資源回収
 (3) 古紙製紙廃水の低コストの廃水処理
 (4) 埋立地の浸出水の廃水処理
 (5) 屎尿処理場の廃水処理
 (6) 余剰汚泥ゼロ都市下水廃水処理
 (7) 余剰汚泥ゼロ養豚廃水処理


4−2 研究計画、目的外の成果
< 成果の情報発信 >
[1] わが国においては、磁気分離の研究と技術開発が、1975年当時の第1期に続いて、1995年以来の第2期の活発な時期にある。この活発な研究と技術開発の背景には、小型で無冷媒の使い易い超伝導磁石装置が開発がある。本プロジェクト以外にも、ほとんど同時期に、磁気分離に関連する他のプロジェクト(岩手県地域結集事業、旧科学技術庁マルチコアプロジェクト、NEDO支援民間企業プロジェクト)も活発に取り組まれてきた。そこで本プロジェクトは、これら他の関連プロジェクトと合同で、以下の通り、研究成果について積極的に社会へ情報発信してきた。

 (1) 毎年の成果を発表する「磁気分離による科学と技術の交流ワークショップ」の共催

 (2) 磁気分離に関る研究者と技術者の養成を目的とする「磁気分離の夏の学校」の共催
[2] 2003年3月に日本で第3回世界水フォーラムが開催された。これに向けた準備として、2002年5月より文部科学省の科学技術・審議会の資源調査分科会・水資源委員会委員として、本プロジェクトリーダの渡辺が参加し、磁気分離による新しい水処理技術について報告書の中で研究成果を報告した。また、3月12日のNHK朝の「おはよう日本」では、本プロジェクトが開発した磁気分離による水処理技術(東京都立大・神奈川工科大グループ、大阪大・京都工芸繊維大グループ)についての報道があった。
[3] 2003年3月にアメリカ化学会で準備された磁気分離セッションに、本プロジェクトから6件の発表を登録した。しかしアメリカのイラク参戦の時期と重なったため、参加を断念した。その後、これらの発表のうち、余剰汚泥ゼロを実現できる磁化活性汚泥による都市下水処理(酒井保蔵・宇都宮大助教授)については、ネーチャーの紹介記事として掲載された結果、短期間に世界10カ国の科学報道で紹介された。
< 海外との交流 >
[1] 米国・南カロライナ州立大学:環境化学科ナブラチル教授との共同研究協定書の締結
[2] 英国・サザンプトン大学:第一人者ワトソン教授の未来開拓公開シンポジウムへの招聘


4−3 研究成果の展望
< 学術的なインパクト >
 本プロジェクトが成功裡に最終年度を迎えることが出来た結果、学術分野へ与えたインパクトは大きい。
 第一は、本プロジェクトの研究者が、要素技術の開発を共通目的として、物理、化学、電気、生物、農学、などの異分野の研究者で組織された結果、相乗効果による研究力が向上した点である。
 第二は、本プロジェクトに課せられた成果目標の、具体的な社会還元を達成するために、研究課題を策定する場合に、既存技術との競合関係、優位性、などについてケーススタデイーを行い、十分な見通しを持ってから、研究を推進した点である。
 第三は、上記の2点の特長を有する研究推進を図った結果、本プロジェクトに期待された研究成果を出す段階で、異分野の研究者の協力関係が確立できたこと、成果目標にそって効率的に研究を推進するシステムを作り出したこと、などは意義は大きい。
 第四は、本プロジェクトの研究推進方法については、磁気分離に関連する海外の研究者から高い評価を得ており、広範囲な学際的な研究分野を開拓する場合の一つのモデルケースを実践したと自己評価している。
< 今後の展望 >
 未来開拓事業での本プロジェクト終了後の平成16年度に備えて、平成15年度には「新しい水創成技術の開発」を想定した特定領域研究の企画調査(代表者は酒井保蔵宇都宮大助教授)が文部科学省から認められ、一連の調査活動を行った結果、平成16年度募集の特定領域研究(B)に研究計画書「新しい水創生技術」を作成して提出した。


4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
本プロジェクトは、未来開拓学術推進事業複合領域「強磁場下の生体と物質への影響」の5つのプロジェクトの中で、直接に社会還元する具体的成果を出すことを強く求められていた。
1) その結果、4−1で報告の通り、<応用研究への展開>については、企業、地方自治体、などとの共同研究を鋭意推進した結果、特許取得を初め、各種の外部資金獲得による実用装置の開発にまで到達できたものも出てきた。
2) また、本プロジェクト終了後も、<基礎研究への展開>の成果の中には、平成16年度に実用化に向けて新展開を見せる研究テーマもある。
3) また、過去4年間に構築した磁気分離ワークショップの研究と技術開発のネットワークを活用して、産学が情報を交換して、強い磁場環境での新分野展開を図ることにしている。
以上の通り、本プロジェクトは、未来開拓のプロジェクトとして期待された社会還元の点で大いなる成果を挙げると共に、将来に向かって、新分野の研究と技術の展開の基礎を構築できたと自己評価している。

5.キーワード

(1)磁気分離 (2)磁性付与法 (3)開放型高勾配磁界設計
(4)環境改善 (5)資源循環利用 (6)廃水処理

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
H. Nakajima, H. Kaneko, M. Oizumi, S. Fukui, M. Yamaguchi, T. Sato, H. Imaizumi, S. Nishijima, and T. Watanabe, Separation characteristics of open gradient magnetic separation using high-temperature superconducting magnet
学術雑誌名 ページ 発行年
Physica C 392-396 ??? 1214-1218 2003

全著者名 論文名
N. Kato, Y. Sakai, D. Kagaya, and S. Sekiya, Magnetically isotropic-anisotropic change of thermally responsive polymer gels
学術雑誌名 ページ 発行年
Jpn. J. Appl. Phys. 42 1 102-103 2003

全著者名 論文名
S.Takeda, S.Yu, I.Tari, S.Nishijima, A.Nakahira, Development of Colloid Chemical Process for Magnetic Seeding to Organic Dye
学術雑誌名 ページ 発行年
Bulletin of Chemical Society of Japan 76 5 1087-1091 2003

全著者名 論文名
劉成珍、武田真一、田里伊佐雄、西嶋茂宏、中平敦 高勾配磁気分離法による染料分子回収法の開発
学術雑誌名 ページ 発行年
低温工学 38 2 77-82 2003

全著者名 論文名
中平敦,柄谷周子,小西伸次, 西村文秀,武田真一,西嶋茂宏,渡辺恒雄 ハイドロキシアパタイトのCd除去と磁気分離応用
学術雑誌名 ページ 発行年
材料 52 6 566-570 2003

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
S.Takeda, S.Nishijima, U.Hafeli, B.Terazono, Y.Akiyama, Y.Izumi, K.Ema, Development of Magnetic Microspheres for Bioactive Compounds and Characterization Method of Their Magnetophoretic Mobility
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka 3D-28 127 2003

全著者名 論文名
Y.Kakihara, T.Fukunishi, STakeda, S.Nishijima Superconducting High Gradient Magnetic Separation for Purification of Wastewater from Paper Factory
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka 3D-36 129 2003

全著者名 論文名
I. Ihara, Eriko Shimada, Kiyoshi Kanamura and Tsuneo Watanabe High Gradient Magnetic Separation Combined with Electrocoagulation and Electrochemical Oxidation for the Treatment of Landfill Leachate
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka 2B-p10 86 2003

全著者名 論文名
D. Ito, K. Miura,T. Ichimura, I. Ihara and T. Watanabe Removal of As, Cd, Hg and Pb Ions from Solution by Adsorption with Bacterially-produced Magnetic Iron Sulphide Particles Using High Gradient Magnetic Separation
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka 2B-p08 86 2003

全著者名 論文名
S. Fukui, T.Fujita. M. Yamaguchi, T.Sato, S.Nishijima, T. Watanabe Open Gradient Magnetic Separation Using Superconducting Solenoid Magnet
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka ??? ??? 2003

全著者名 論文名
S. Fukui, M. Yamaguchi, H. Imaizumi, S.Nishijima, T. Watanabe Analytical Study on Open Gradient Magnetic Separation Using Quadrupole Magnetic Field
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The 18th International Conference on Magnet Technology Morioka ??? ??? 2003

全著者名 論文名
E. Shimada, T. Imai, Y. Ikuma, I. Ihara, T. Watanabe, K. Tsurusaki and K. Tachibana Growth and Electrochemical Reactions of Fe(III) Colloidal Species Adsorbing Harmful Organic Compounds in Wastewater
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
In symposium AD1, as a part of the 203rd Meeting of The Electrochemical Society ??? ??? ??? 2003

D.特許等取得状況
特許等名称 発明者名
有機排水の処理方法及び処理装置 酒井保藏,ヤマト,関東電化産業
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
??? 発明 平成15年特許願第2003-363340号 ??? ???


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