平成14年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名   生体の計測と制御
 
研究プロジェクト名   次世代バイオセンサー創成基盤技術の開発
 
(英文名)   Creation of Generic Technology for Advanced Biosensors
 
研究期間   平成10年度〜平成14年度

プロジェクト・リーダー名 研究経費 総額 674,792千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
民谷栄一・北陸先端科学技術大学院大学
材料科学研究科・教授
内訳 平成10年度 131,566千円
平成11年度 156,226千円
平成12年度 140,000千円
平成13年度 148,000千円
平成14年度 99,000千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
横山 憲二 独立行政法人産業技術総合研究所・先端バイオエレクトロニクス研究ラボ・副研究ラボ長 人工分子素子の設計・創成
矢野 和義 東京工科大学・片柳研究所・助教授 分子進化工学による生体分子認識素子の設計・創成
森田 資隆 北陸先端科学技術大学院大学・材料科学研究科・助手 超安定バイオセンシングシステムの開発

2.研究計画の概要

 本研究プロジェクトは、下記に示す研究分担課題を核として、これらが協力に連携し合うことによって、次世代バイオセンサーの開発が遂行された。
1. 人工分子認識素子の設計・創成
  コンビ化学合成を駆使したモレキュラーインプリント分子を用いる方法や超安定な酵素と人工分子インターフェイスを連携する方法で行った。
2. 分子進化工学による生体分子認識素子の設計・創成
  遺伝的アルゴリズムを用いたコンピュータ上の進化を応用することにより、分子認識素子を設計、創成した。さらに、この方法を人工分子の設計、合成にも展開し、より優れた分子認識素子を創成した。
3. 先端デバイスを用いたバイオセンサーの設計
  次世代バイオセンサーの設計、創成のためには、上記のような分子認識素子と化学情報を信号変換するためのデバイスの開発が不可欠である。デバイスの設計としては、ニアフィールド光デバイスなどの単一分子検出が可能な、超高感度先端デバイスの開発を検討した。
4. 超安定バイオセンシングシステム
  マイクロマシン技術などを駆使して、センサーの微小化、集積化を図り、システム全体としての長期安定性を確保する方策を確立した。まず、酵素活性を分子レベルで測定できるマイクロデバイスの開発を行い、酵素活性の安定性に関する知見を得、これを基礎として、並列型の微小反応場を用いた多チャンネルバイオセンサーを開発し、超安定バイオセンシングシステムを創成した。

3.研究目的

 従来のバイオセンサーは、酵素や抗体などの生体分子を電極や半導体に固定化して構成されてきたが、長期安定性に問題が有り、実用化に大きな問題となっている。そこで、分子認識材料の安定化とデバイスの高感度化を目指し、下記の項目を目的とした。
1. 自然界に存在する超安定分子、例えば超高熱酵素の探索。
2. モレキュラーインプリント法、コンビ化学合成法などによる、全く人工的に創成した認識分子の開発。
3. 遺伝アルゴリズム法などを用いて創成した、人工タンパク質機能分子などの創成。
4. 上記における構造の安定化と生体分子のフレキシビリティーの保持を追及。
5. エネルギー変換効率の低下による感度の低下においては、ニアフィールド光デバイスなどの単一分子検出可能な超光感度先端デバイスの開発。
6. マイクロマシン技術を駆使して同一センサーの多数集積化を図り、システム全体としての長期安定性を確保。
 以上のように、本プロジェクトは、分子進化工学、バイオミメティック工学、マイクロマシン工学、電気化学、光計測化学などの複合領域の先端科学技術を駆使し、超安定バイオセンサーを創成した。

4.研究成果の概要

4−1 研究計画、目的に対する成果
【人工分子素子の設計・創成】細胞内シグナル伝達の計測や幹細胞を認識するセンサーペプチドを開発した。また、モレキュラーインプリントポリマーを用いたバイオミメティックセンサーを開発した。さらに、フルクトシルアミン化合物の酸化的加水分解反応を触媒する人工酵素を開発した。また、有機水質汚染に対する微量ハイスループット分析センサーを開発した。
【分子進化工学による生体分子認識素子の設計・創成】DNAアプタマーを探索し、IC50がnMレベルの未知のDNAアプタマーを探索することに成功した。また、コール酸に結合するDNAアプタマーを利用して、SNPsを検出することに成功した。さらに、Gプロテイン共役型受容体の活性を評価する方法を開発した。
【先端デバイスを用いたバイオセンサー】マイクロ光カンチレバー技術の開発を進め、検出系の高感度化を行い、配向させて固定したDNA分子を100nm以上の高分解能で蛍光観察することに成功した。また、一分子蛍光の観察を行い、連続的に画像を取得して得られた蛍光イメージにより、蛍光強度がスキャンごとに増減するブリンキングを示し、一分子蛍光を確認することができた。
【超安定バイオセンシングシステム】マイクロマシーニング関連技術を利用して、親疎水制御が可能な表面修飾による疎水バルブ構造やナノ周期構造デバイスを開発した。また、微小化学分析システムの構成要素となる化学センサ、アクチュエータの開発を行い、超低侵襲的血液分析を目指したモスキート型センシングシステム、迅速にアンモニアやクレアチニンを同時測定するためのエアギャップ型微小センシングシステム、水素バブルを用いたポンプ、バルブを搭載した集積型微小送液機構を開発した。さらに、小型SPRセンサチップであるSpreetaと静水圧を利用した送液法の組み合わせにより、12時間のバッテリー駆動が可能な携帯型免疫SPRセンサシステムを開発した。

4−2 研究計画、目的外の成果
 本研究プロジェクトを遂行する過程で開発されたオンチップバイオテクノロジー技術は、バイオセンサーのみにとどまらず、遺伝子・タンパク工学、細胞工学、再生組織工学、脳神経工学などの基本ツールとしての発展の可能性を有している。このプロジェクトにおいてもすでに遺伝子ライブラリー用集積型PCRチップ、タンパクライブラリー用in vitroプロテイン合成チップ、脳神経細胞チップによる薬剤スクリーニングなどについて成功をおさめた。特に、ピコリットル〜ナノリットルの微小チャンバーを104〜107配置した高集積チップを作製した。これは、独立したチャンバー構造を有しているためにスポットタンパク同士の相互混入もなく、抗原と抗体、酵素と基質、レセプターとリガンドなどの相互作用を解析できる。これによって、Functional Proteomics(網羅的タンパク機能解析)を実現できる。このようにピコリットルレベルの集積されたチャンバーを用いた展開は、民谷らが世界で先駆けて実現したものである。さらに、こうしたチップを用いて研究を行うための周辺装置(温度サイクル装置、ピコインジェクター・アレイヤー装置、蛍光スキャナー装置など)も独自に開発しており、当該分野では、国内国外ともに極めて独創性が高い。これらの成果は、当初のバイオセンサー研究課題の枠を越えて新たに展開されたものである。

4−3 研究成果の展望
本研究プロジェクトによって、以下の研究成果および新分野への展望を明らかにした。
1.バイオセンサーの研究は、生体情報変換機構に学び、越えるところにある。
 生体は、1種の情報変換システムとして捉えることができる。例えば、遺伝、脳神経、ホルモン、免疫等の生体現象は、生体内外の情報と生体自身との相互作用によって制御され、ウェットな環境下で起こる生化学反応であり、生体情報を担う化学物質が実際に存在することである。また、こうした生体情報物質に関わる生化学反応システムでは、一般に反応が選択的であり、必要に応じて増幅、減衰などの反応制御が行われている。バイオセンサーは、こうした生体反応の特徴に注目して構築され、分子認識材料と各種トランスジューサーから構成される。そのため、バイオセンサーの機能進化を行う上で、新たな分子認識材料およびトランスジューサーの設計、創成がキーテクノロジーになると考えられる。
2.バイオセンサー研究は、マイクロチップテクノロジー、ナノテクノロジーと密接に関連する。
 バイオセンサーの機能進化のための新たな分子認識材料およびトランスジューサーの設計、創成は、本研究プロジェクトの主要テーマである。そのため、最近のマイクロチップテクノロジーやナノテクノロジーを駆使することが重要である。マイクロチップテクノロジーにより、マイクロフロー型やアレイ集積型など各種オンチップ型のバイオセンサーを実現できる。また、認識材料としての生体分子や細胞などをセンサー素子として配置するためのマイクロアセンブリ技術として、極めて有用である。一方、ナノテクノロジーとの接点では、ボトムアップとしての分子設計技術、例えば、コンビナトリアル分子集団を用いた分子認識材料の創成を可能とした。また、走査型ナノプローブを用いた一分子解析を基礎とする方法論とも密接に関連する。さらに、近接場型ナノプローブや原子間力顕微鏡を用いたDNA/タンパク質相互作用の解析なども実現している。
3.バイオセンサーからバイオテクノロジー基本ツールへの発展の可能性を有する。
 本研究プロジェクトを遂行する過程で開発されたオンチップバイオテクノロジー技術は、バイオセンサーのみにとどまらず、遺伝子・タンパク工学、細胞工学、再生組織工学、脳神経工学などの基本ツールとしての発展の可能性を有している。このプロジェクトにおいてもすでに遺伝子ライブラリー用集積型PCRチップ、タンパクライブラリー用in vitroプロテイン合成チップ、脳神経細胞チップによる薬剤スクリーニングなどについて成功をおさめている。


4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
 未来開拓プロジェクトを通じて得られた研究成果を基礎として、種々の実用研究への展開が実現している。例えば、北陸先端大において以下のような民間との共同研究へと展開した。
民間との共同研究(13年度分の抜粋)
  ・水晶振動子を用いた環境計測システムに関する研究
  ・バイオテクノロジーを用いたダイオキシン類・環境ホルモンの高感度検出法の研究開発
  ・微小分析システムの実用化
  ・DNAチップの開発
  ・ホルムアルデヒド測定バイオセンサーの開発
  ・環境ホルモンスクリーニング技術に関する研究
  ・微生物の測定に関する研究
  ・発酵管理システムの構築に関する研究
  ・バイオセンサーによる地下水測定に関する研究
 バイオセンサーは、チップ技術により、目的に応じた設計や作製が可能である。特に、医療診断、環境計測、食品安全検査などへの応用が期待されている。実用展開のためには、安価、簡便、迅速な検査が求められており、医療の分野においては、リスク因子の一次スクリーニングや老後の在宅ケアの観点から、いつでもどこでも測れるPOC(ポイントオブケア)検査のニーズが高まっており、産業化の期待が大きい。このような観点から、研究展開する。最終的には、産業界との連携をはかるためのバイオセンサー産学連携機構(仮称)の創設基盤の形成が本研究プロジェクトにおいて促進できたものと考える。

5.キーワード

(1)バイオセンサー (2)分子認識 (3)コンビナトリアル設計
(4)マイクロチップ技術 (5)ナノテクノロジー (6)バイオチップ
(7)環境センサー (8)医療診断センサー (9)細胞・組織工学

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
Kenichi Kojima, Atsunori Hiratsuka, Hiroaki Suzuki, Kazuyoshi Yano, Kazunori Ikebukuro, Isao Karube Electrochemical protein chip with arrayed immunosensors with antibodies immobilized in a plasma-polymerized film
学術雑誌名 ページ 発行年
Analytical Chemistry 75 ??? 1116-1122 2003

全著者名 論文名
Hideki Nagai, Yuji Murakami, Yasutaka Mirita, Kenji Yokoyama, and Eiichi Tamiya Development of a microchamber array for picoliter PCR
学術雑誌名 ページ 発行年
Analytical Chemistry 73 ??? 1043-1047 2001

全著者名 論文名
Jun Matsui, Miho Higashi, Toshifumi Takeuchi Molecularly Imprinted Polymer as 9-Ethyladenine Receptor Having a Porphyrin-based Recognition Center
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem 122 ??? 5218-5219 2000

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Electrochemical Gene Detection Microelectrode Array and Microfludic Chip (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
International Symposium on Bioanalysis Biotechnology and Nanotechnology (ISBBN 2002) Hunan,China 6 17-23 2002

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Development of screening system of endocrine disrupters using an immuno-based vitellogenin detection (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
Symposium on Biosensors and DNA Microarray for environmental monitoring Kwangju,Korea 5 20-21 2002

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Micro chamber array ships for biomolecular and cellular analysis(Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
4mes Rencontres Franco-Japonaises Biocapteurs et Bioelectroniques Tokyo,Japan 10 23-26 2001

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Development of novel biosensors based on biological stress signals(Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
LIST 2001 AIST-Kansai Ikeda,Japan 11 1-2 2001

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Integrated Microchamber Array for DNA/Protein Synthesis and Cell Screening(Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The International Symposium Microchemistry and Microsystems(ISMM2001) Kawasaki,Japan 9 17-18 2001

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya, Takuya Ohsugi, Yuji Murakami, Yasutaka Morita, Kenji Yokoyama Design of synthetic peptides recognized with fullerene (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
International symposium on nanocarbons 2001 Nagano,Japan 11 14-16 2001

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Nanoscopic SPM and pico-chamber array ship for bio molecular and cellular analysis(Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
The second Japan China joint seminar on separation sciences Kyoto,Japan 12 23-24 2001

全著者名 論文名
Eiichi Tamiya Micromachined Biosensors for Environmental Monitoring(Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発表年
Fifth International Symposium on Evironmental Biotechnology (ISEB 2000) Kyoto,Japan 8 27-31 2000

C.著書(Books)
全著者名 書名
森田資隆、村上裕二、金原 健、民谷栄一 化学フロンティア-コンビナトリアルバイオエンジニアリング(植田充美、近藤昭彦編)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
化学同人 京都 ISBN4-7598-0739-X 175-179 2003

全著者名 書名
民谷栄一 生物工学実験書改訂版(日本生物工学会編)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
培風館 東京 ISBN4-563-07774-7 367-371 2002

全著者名 書名
民谷栄一 先端技術が拓く医工学の未来(古川俊之編)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
アドスリー 東京 ISBN4-900659-30-4 160-205 2002

全著者名 書名
民谷栄一 計測工学ハンドブック(山崎弘郎ら編)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
朝倉書店 東京 ISBN4-254-20104-4 629-640 2001

全著者名 書名
Eiichi Tamiya Scanning and Force Microscopies for Biomedical Applications II Vol.3922(Editor:Shuming Nie, Eiichi Tamiya, Edward S. Yeung)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
SPIE California ISBN0-8194-3538-4 189-198 2000

D.特許等取得状況
特許等名称 発明者名
細胞の代謝活性に及ぼす影響を測定するためのバイオセンサー 民谷栄一
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
北陸先端科学技術大学院大学長 発明 特願平11-254432 平成11年9月8日 平成13年6月22日

特許等名称 発明者名
集積化されたマイクロウェルを用いたポリメラーゼ連鎖反応装置 民谷栄一、横山憲 二、村上裕二、阪口利文、森田資隆、永井秀典、井手上公太郎
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
北陸先端科学技術大学院大学長 発明 特願平11-40811号 平成11年2月19日 平成12年3月10日

特許等名称 発明者名
バイオセンサー及び生体材料の固定化方法 民谷栄一、横山憲二、村上裕二、井手上 公太郎
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
北陸先端科学技術大学院大学長 発明 特願平11-68897 平成11年3月15日 平成13年2月16日


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