| 研究推進分野名 | 高次脳機能 | |
| 研究プロジェクト名 | PETおよびfMRIによる言語機構の解析 | |
| (英文名) | Neuroimaging Contributions to the Understanding of Brain Language Mechanism | |
| 研究期間 | 平成9年度 〜 平成13年度 |
| プロジェクト・リーダー名 | 研究経費 | 271,712千円 | ||
| 氏名・所属研究機関 所属部局・職名 |
杉下守弘 ・東京大学 ・大学院医学系研究科 ・教授 | 内訳 | 平成 9年度 | 52,923千円 |
| 平成 10年度 | 58,363千円 | |||
| 平成 11年度 | 55,426千円 | |||
| 平成 12年度 | 45,000千円 | |||
| 平成 13年度 | 60,000千円 | |||
1.研究組織
| 氏名 | 所属機関・部局・職 | 研究プロジェクトでの役割分担 |
| 成瀬昭二 | 京都府立医科大学・医学部・助教授 | 脳機能画像解析の確立と開発 |
| 吉川宏起 | 東京大学・医科学研究所・助教授 | 撮像条件の検討 |
| 関本荘太郎 | 東京大学・大学院医学系研究科・助手 | 画像解析の検討 |
| 幕内 充 | 東京大学・大学院医学系研究科・助手 | 画像の統計解析 |
| 高山秀一 | (財)脳血管研究所・附属美原記念病院・副院長 | 症例の検討 |
| 神長達郎 | 帝京大学・医学部・講師 | 撮像条件の検討 |
| 樋口敏宏 | 京都府立医科大学・医学部・助手 | 脳機能画像解析の確立 |
2.研究計画の概要
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従来の「脳と言語」の研究は,大脳が損なわれた時どのような言語障害が生ずるかを研究し,そのことから間接的に脳と言語の関係を推定してきた。例えば,左中前頭回後部の損傷で字が書けなくなることから左中前頭回後部が書字に関係していることが推定されてきた。しかし,最近,fMRI(機能的磁気共鳴画像法)やPETなどの脳機能画像解析技術の進歩によって,言語をはじめとする精神活動時に,脳のどの部分が活動しているか“目で見える形”でとらえられるようになってきた。本研究は,脳機能画像解析により言語機能が大脳のどの部分の活動で行われているかを明らかにすることを目的としている。このために,脳機能画像解析の新技術の開発も目指している。この研究により,人間の精神についての自然科学的な理解を深めるとともに,失語症,吃音,言語発達遅延などの言語障害,診断,治療などに貢献することが期待できる。 |
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(1) FMRIやPETで使用する言語課題:欧米では,言語学のモデルに基づき,音韻,意味などを対象とした言語課題を用いる研究が多い。我々はこのようなアプローチだけでなく,大脳損傷で生ずる失語症の解析で用いられてきた言語課題(呼称,書字など)を適用することを考えている。日本語の音韻の単純さを生かした課題(たとえば,音素-書字素変換や“しりとり”),漢字,仮名など日本語の特性を生かした課題の適用を工夫していく。 (2) 言語優位半球の決定や失語症の回復など臨床的貢献をめざす。 (3) fMRIの信号機序の解明と測定精度・信頼性の検討:fMRIの画像発現のメカニズムに関する研究とfMRIの測定系と処理系の精度・信頼性の向上を行い,種々の言語賦活試験に対応できる評価系を確立する。 (4) MRIによる新しい脳機能測定法の開発:従来の方法であるBOLD法に基づかない技術開発を行う。そのひとつとして,脳の血管内の水分子を指標にした完全に非侵襲的な脳血流画像法を開発・実用化し,言語機能の解明に用いる。また,代謝面から脳機能を測定するMRSの一般化を図る。 |
| 4−1 研究計画、目的に対する成果 |
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(1) 使用する言語課題:失語症解析用の自発書字課題を用いて書字の大脳メカニズムを研究し,左半球の上頭頂小葉前部,上前頭回から中前頭回にかけての後部2カ所が仮名書字に関連することを示した(Katanoda, et al 2000)。漢字学習は視覚性記憶を向上させることが示唆されたので(Sugishita, Omura 2002),漢字学習と視覚性記憶との関連を脳のレベルで検討した(論文準備中)。文字の左半球提示では, 大脳の賦活はほぼ左半球に限定された(論文提出中)。語音弁別の脳内メカニズムの研究はMRI装置の騒音のため研究が進まなかった。東芝の低騒音MRI装置を用い, 現在再実験中である。 (2) 言語優位半球の決定:決定のため,しりとりを用いた方法を確立した(杉下, 他 2001; 高山,他 2001)。Broca領の損傷による失語症の回復は, 左半球で代償されることが示唆された(論文作成中)。 (3) fMRIの測定精度・信頼性の向上と脳機能解析への応用:測定系依存信号の機序に基づく測定条件の最適化,MRI測定中の騒音の影響の対策検討,体動によるエラーデータの補正,fMRIデータ解析法のルーチン化,などにて良好なfMRI取得法を確立した (Tanaka, et al 2002; 成瀬,田中 2001)。高次脳機能への応用では,足し算と暗算での視覚系反応の違いを検出できた(Tanaka, et al 2002)。fMRIデータの賦活をより鋭敏に検出するため,近傍のボクセルの空間的自己相関を考慮に入れた時−空間回帰分析を考案した(論文提出中)。 (4) MRIによる新しい脳機能測定法の開発:@水分子をトレーサーとする非侵襲的脳灌流画像法(Tanaka, et al 2002; 成瀬,田中 2001),AMn2+投与で,神経細胞興奮時のCa チャンネル開存を水分子の移動として捉える直接の神経細胞興奮画像(Tanaka, et al 2002),B拡散テンソル画像法による神経線維の走行の3次元画像描出(Ebisu, et al 2001; Ebisu, et al 2000; Tanaka, et al 2002; 成瀬,田中 2001),C脳代謝面から脳機能を計測する磁気共鳴スペクトル画像法(Hattori, et al 2001; Tanaka, et al 2002; 成瀬,田中 2001),などが可能となった |
| 4−2 研究計画、目的外の成果 |
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漢字と仮名の音読や漢字と仮名の書字において, 漢字と仮名の脳の賦活に差はなかった。このことから,Bold効果はどのような視覚刺激なら差がでるのかをテストするため, 外国人の顔の学習実験をおこなったところ, 顔の知覚と再認には紡錘回が関与することを明らかにできた(Katanoda, et al 2000)。この研究はNature neuroscience 4: 771-776, 2001.のreviewに紹介された。 |
| 4−3 研究成果の展望 |
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fMRIやPETなどの脳機能画像法は,精神活動時に脳のどの部分が活動しているか“目で見える形”で明らかにできるということで, 脳科学に大きなインパクトを与えた。しかし, 実際にどのくらいの精度があるのか, 再現性はどうかといった具体的なことは明らかでなかった。我々の研究成果から, 書字の大脳メカニズムを解明するとか, 言語優位半球決定には利用できることが明らかにされた。なお, 漢字と仮名の差といった細かい課題の差がでないことが示唆された。Bold法より, さらに鋭敏な脳活動指標を発見する必要があろう。再現性については, 「しりとり」などの課題で検討を加えた結果, 高い再現性があることが明らかになった。 脳の活動を解析する統計法は, 空間以外に時間という要因の入る新しい統計法である。我々の研究でも空間一時的回帰モデルによる新しい統計法を開発した。このような統計法はBold効果にかわる新しい指標が見出されても脳の活動解析する際に適用可能であり,その点,永続性のある学問領域である。 |
| 4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割 |
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(1) fMRIにより, 言語活動を脳のレベルで研究するための1)MRI装置の条件, 2)視覚刺激と聴覚刺激をfMRI測定を阻害しないように提示する方法, 3)fMRIに適した言語課題, 4)fMRIの統計処理などを明らかにした。また,言語優位半球の決定や失語症の回復メカニズムの解明などの臨床応用が可能なことを示した。今後, 臨床応用がますます盛んになると思われる。 (2) fMRIにより, 言語活動を脳のレベルで研究するための1)MRI装置の条件, 2)視覚刺激と聴覚刺激をfMRI測定を阻害しないように提示する方法, 3)fMRIに適した言語課題, 4)fMRIの統計処理などを明らかにした。また,言語優位半球の決定や失語症の回復メカニズムの解明などの臨床応用が可能なことを示した。今後, 臨床応用がますます盛んになると思われる。 (3) 臨床応用において, 未来の課題として患者の頭の動きが少しくらいあっても位置調節できる技術の開発が必要である。また, Bold効果よりも脳の活動に敏感な指標の発見が望まれる。 |
5.キーワード
(1)実験系心理学、(2)認知科学、(3)神経科学
(4)脳・神経、(5)脳神経疾患
6.研究成果発表状況
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Ebisu T, Katsuta K, Fujikawa A, Aoki I, Umeda M, Naruse S, Tanaka C | Early and delayed neuroprotective effects of FK506 on experimental focal ischemia quantitatively assessed by diffusion-weighted MRI | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Magn Reson Imag | 19 | 2 | 153-160 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Katanoda K, Yoshikawa K, Sugishita M | A functional MRI study on the neural substrates for writing | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Human Brain Mapping | 13 | 1 | 34-42 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| 杉下守弘,幕内 充,米田孝一,三原盤,岡崎晶子 | しりとり課題を用いた機能的MRIによる言語優位半球の決定 | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| 認知神経科学 | 2 | 1 | 81-83 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Sugishita M, Makuvchi M, Yoneda K, Mihara B, Okazaki S | Determination of language dominant hemisphere using functional MRI during the performance of shiritori tasks | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Jpn J Cog Neurosci | 2 | 1 | 81-83 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Sugishita M, Omura K | Learning Chinese characters may improve visual recall | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Perceptual and Motor Skills | 93 | ??? | 579-594 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| 高山秀一,小林正人,杉下守弘,小野塚聡,河瀬 斌 | しりとり負荷fMRIによる言語優位半球の同定?脳神経外科手術における有用性? | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| 脳神経外科ジャーナル | 10 | 3 | 155-162 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Takayama H, Kobayashi M, Sugishita M, Onozuka S, Kawase T | Determination of language lateralization using functional MRI during the performance of shiritori tasks in neurosurgery patients | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Jpn J Neurosurg | 10 | 3 | 155-162 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Takegami T, Ebisu T, Bito Y, Hirata S, Yamamoto Y, Tanaka C, Naruse S, Mineura K | Mismatch between lactate and the apparent diffusion coefficient of water in progressive focal ischemia | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| NMR in Biomed | 14 | 1 | 5-11 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Katanoda K, Yoshikawa K, Sugishita M | Neural substrates for the recognition of newly learned faces ( a functional MRI study) | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Neuropsychologia | 38 | 12 | 1616-1625 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Takayama H, Kobayashi M, Sugishita M, Mihara B | Diffusion-weighted imaging demonstrates transient cytotoxic edema involving the corpus callosum in a patient with diffuse brain injury | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Clinical Neurology and Neurosurgery | 102 | 3 | 135-139 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Sugishita M | fMRI Studies on Neural Substrates for Writing | |||
| 会議名 | 開催場所 | 論文番号 | ページ | 発行年 |
| International Society for Brain Electromagnetic Topography 12th World Congress /Character, Behavior and Electroencephalogram Society 27th Annual Meeting | Utsunomiya, Japan | ??? | 7 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Ebisu T, Tanaka C, Umeda M, Fukunaga M, Aoki I, Watanabe Y, Someya Y, Naruse S | Diffusion-Weighted MRI Indicates that Both Vasogenic and Cytotoxic Edema Contribute to Human Brain Contusion | |||
| 会議名 | 開催場所 | 論文番号 | ページ | 発行年 |
| Proceedings of the 8th Annual Meeting of the Society of Magnetic Resonance in Medicine | Denver, USA | ??? | 1250 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Hattori N, Thomas M. A, Naruse S, Umeda M, Tanaka C, Inoue N, Fukunaga M, Someya Y, Sawada T | Differentiation of Choline and Ethanolamine in Human Brain | |||
| 会議名 | 開催場所 | 論文番号 | ページ | 発行年 |
| Proceedings of the 9th Annual Meeting of the Society of Magnetic Resonance in Medicine | Glasgow, UK | ??? | 1689 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Sugishita M | Speech Dominance in the sprit brain | |||
| 会議名 | 開催場所 | 論文番号 | ページ | 発行年 |
| Proceedings of the Second International Symposium on Image, Language, Brain | Tokyo, Japan | ??? | 6-7 | 2000 |
| 全著者名 | 書名 | |||
| Tanaka C, Ebisu T, Umeda M, Aoki I, Fukunaga M, Watanabe Y, Someya Y, Mori Y, Naruse S | Strategic Medical Science against Brain Attack (Editor: Kikuchi H) | |||
| 出版者名 | 出版場所 | ISBN番号 | ページ | 発行年 |
| Springer-Verlag | Tokyo | ??? | ??? | 2002 |