平成13年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名 革新的未来型エネルギー生成・変換の方式、材料、システム化
 
研究プロジェクト名 超臨界状態における反応を利用した燃料の高品位化と高効率エネルギー変換に関する研究
 
(英文名) Study on Raising Quality of Fuels by Use of the Reactions under Super Critical Conditions and on Efficient Energy Transfer System
 
研究期間 平成9年度 〜 平成13年度

プロジェクト・リーダー名 研究経費 412,220千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
冨安 博 ・東京工業大学 ・名誉教授 内訳 平成 9年度85,452千円
平成10年度87,380千円
平成11年度83,388千円
平成12年度79,000千円
平成13年度77,000千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
吉澤 善男 東京工業大学・原子炉工学研究所・教授 超臨界状態を利用した燃焼及び輸送現象、高効率エネルギーシステム
藤井 靖彦 東京工業大学・原子炉工学研究所・教授 超臨界状態における反応、同位体効果
池田 泰久 東京工業大学・原子炉工学研究所・助教授 超臨界状態における反応
高橋 実 東京工業大学・原子炉工学研究所・助教授 超臨界状態を利用した燃焼
上野 實 東京理科大学・理学部・教授 超臨界流体の界面活性

2.研究計画の概要

 本研究は、超臨界流体を利用して、燃料の高品位化および高効率エネルギー変換を行うこと目的として始められた。具体的には、超臨界水中おいて、石炭の高品位化に関する研究とエネルギー変換に関する研究の二本柱からなる。本研究の特徴は、窓付容器を用い、超臨界状態における現象を、可視・紫外分光光度計、核磁気共鳴吸収、マッハツェンダー干渉計等により、定量的に観測したことにある。このような基礎的な研究は、後に、超臨界水中における有機物の分解触媒の開発や燃焼に対する定量的な考察を行う上で、極めて有益であった。
 具体的な成果は、先ず、第一には、超臨界水中において、石炭を分解して水素を製造することに成功したことである。成功の理由は、酸化ルテニウム(IV)を触媒として用いたことにある。太平洋炭の場合、450℃の超臨界状態で、分解率は30%であったが、発生する気体の72%は水素で、メタンが11%、二酸化炭素は17%であった。この触媒の威力は驚異的で、石炭分解と同じ条件で、あらゆるプラスチックを完全に分解して気化した。気体成分を分析したところ、メタンが主成分で、それに二酸化炭素と水素の順であった。つまり、この方法を用いると、廃プラスチックから良質な燃料を作ることができる。
高効率エネルギー変換に関する研究では、超臨界水中で、実際にメタノールを用いて燃焼実験を行い、拡散燃焼反応帯の構造を定量的に明らかにすることができた。

3.研究目的
超臨界状態では、水は著しくその本来の性質と異なった性質を有する。例えば、誘電率は著しく低下し、通常は難溶性の有機物も溶解する。超臨界状態では、水と油が混ざり合うのはそのためである。逆に、水溶性の重金属イオンは酸化物となり沈殿する。超臨界水に溶解した有機物の炭素−炭素結合は切断して、低分子化する。酸素の存在下では、有機物を燃焼させることもできる。本研究は、この超臨界状態の特異な性質を利用して、低品位燃料を高品位化すること、および高効率エネルギー変換システムを開発することを最終的な目的としている。この目的を達成するためには、超臨界水の物性を十分に理解し、制御しなければならない。本研究では、窓付超臨界水用容器を用い、可視・紫外吸収スペクトルおよびマッハツェンダー干渉計による測定を行い、超臨界水の物性に関する基礎データを構築していく。また、超臨界水用NMR装置を開発し、超臨界水の分子運動と結合状態、さらには、溶解している有機物の安定性について調べていく。これら基礎研究を基に、超臨界流体を利用した、低品位燃料を高品位化する研究を進めていく。また、超臨界反応容器を有するエネルギー変換装置を製作し、高効率エネルギー変換技術を確立する。

4.研究成果の概要
4−1 研究計画、目的に対する成果
 本研究における最大の成果は、その最終的な目的の一つである低品位燃料を高品位化する技術を確立したことである。具体的には、超臨界水中において、石炭を分解して水素を発生させることに成功した。近年、燃料電池の実用化に関心は一段と高まっており、そのエネルギー原料として、水素は最も付加価値の高い燃料と言える。石炭の分解と水素発生を可能にしたのは、超臨界水中において、有機物の分解に効果的な触媒を発見したことである。この触媒、酸化ルテニウム(IV)、の威力は驚異的で、石炭は、触媒粉末を含む450℃の超臨界水中で、30%分解して気体を発生した。気体成分の72%は水素であった。石炭の構成要素の一つであるナフタレンは、同じ条件で、100%分解して気化した。発生する気体の内、水素は21%、メタンが47%、二酸化炭素は52%であった。水素の発生の機構は明らかではないが、石炭などの芳香族化合物から直接水素が発生するのではないことは明らかである。触媒が石炭などを攻撃する際に発生するラジカルが、連鎖的に水を分解して、水素を発生するものと思われる。
超臨界水中における高効率エネルギー変換については、内部可視化同軸拡散燃焼実験装置の製作に成功した。実際に、メタノールを燃焼させ、超臨界水中における拡散燃焼反応帯の構造を定量的に明らかにしたのは大きな成果である。

4−2 研究計画、目的外の成果
 目的外の成果の第一は、超臨界水を用い、廃プラスチックを処理して、良質な気体燃料を製造する技術を開発したことである。石炭の高品位化の目的で発見した触媒は、超臨界水中で、あらゆる有機物を分解して気化することが分かった。プラスチックも例外ではなく、試みたあらゆるプラスチックが、450℃の超臨界水中で、気化した。固体残渣はほとんど見られなかった。その中には、ポリプロピレンやポリ塩化ビニルのような難燃性のプラスチックも含まれる。発生する気体の主成分はメタンで、それに二酸化炭素と水素であった。一酸化炭素のような有害な気体は検出されなかった。このことは、廃プラスチックを完全に処理し、同時に良質な気体燃料を作ることを意味する。様々なプラスチックを処理したところ、分解速度と発生する気体成分比に違いはあるものの、発生する気体組成は同じであった。このことは、あらゆる廃プラスチックを分別することなく処理できることを意味し、工業的にも有用な成果であると思う。


4−3 研究成果の展望
 先ず、本研究で明らかにした、酸化ルテニウム(IV)の触媒効果である。なぜ、超臨界水中で、RuO2が有機物分解の触媒になるのか。このことは、単に工業的な重要性ばかりでなく、物理化学てきにも興味深いことである。この反応機構を明らかにしていくことにより、超臨界水中における触媒反応に新たな展望が開けると期待できる。
 超臨界水中において、RuO2が酸化触媒であることは間違いない。問題は、なぜ、ナフタレンや石炭を分解して水素を発生するかということである。ナフタレンの場合、RuO2はナフタレンの1/5しか含まれないが、ナフタレンは100%分解する。発生するメタンと水素の量は、ナフタレンの水素原子の全当量よりも遥かに多い。つまり。RuO2は有機物を攻撃してラジカルを作り、このラジカルが連鎖的に反応して、ナフタレンを完全に分解する。ラジカルは、同時に、水を分解して水素を発生する。今後、超臨界重水中において、1H-NMR測定を行ない、ベンゼンの分解反応を追跡することを計画している。この実験により、中間体の生成、水分解の機構が明らかになると期待される。
超臨界水中における燃焼の研究は、実際に、メタノールの燃焼実験を行うことにより、拡散燃焼反応帯の構造を定量的に説明することができた。この結果は、高効率エネルギー変換システムを構築する上で、重要なステップになると期待される。

4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
本研究において、未来開拓につながる成果は、以下の3テーマである。
1.石炭から水素の製造
  燃料電池にとって、最大の問題はいかにその燃料とする水素を製造するかということである。本研究で開発した、超臨界水中において、RuO2触媒を用い、石炭から水素を製造する技術は、石炭が豊富な資源であるため、工業的に極めて有望であると確信する。この際、約20%の二酸化炭素が発生し、反応全体では発熱するため、エネルギー供給は非常に少なくてすむ。水素発生は、他に、低品位な褐炭においても確認され、さらにバイオマスでも有望である。
2.廃プラスチックから燃料を作る
  超臨界水中において、RuO2触媒を用いると、廃プラスチックを分解して、メタンを主成分とする良質な燃料を製造できる。この方法では、一酸化炭素、ノックス、ソックス等の有害な気体は発生しないので、これまでのいかなるプラスチック処理法よりも環境に対する負荷が低い。最大の利点は、廃プラスチックの分別が必要ないことである。
3.高効率エネルギー変換システムの構築
  上記の方法で発生する気体を燃料とした、高効率エネルギー変換システムを構築していく。研究は現在進行中で、今年度中に、概念図およびエネルギー効率、触媒回収について発表する予定である。

5.キーワード

(1)超臨界水、(2)触媒、(3)水素製造
(4)廃プラスチック、(5)核磁気共鳴、(6)緩和時間
(7)干渉計、(8)燃焼反応帯、(9)エネルギー変換

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
Tamas Varga, Hiroshi Tomiyasu, et. all. Cleavage of Diphenylether with Boron Trifluoride under Supercritical Conditions
学術雑誌名 ページ 発行年
Journal of Supercritical Fluids ??? ??? ??? 2002

全著者名 論文名
Tamas Varga, Hiroshi Tomiyasu, et. all. Fluoride Ions as a Strong Base in Supercritical Water: Desulfurization of Aromatic Sulfones
学術雑誌名 ページ 発行年
Journal of the Royal Society of Chemistry ??? ??? ??? 2002

全著者名 論文名
Takehiko Tsukahara, Tomiyasu, et. all. 17O Chemical Shift and Spin-Lattice Relaxation Measurements of Water in Liquid and Supercritical States by Using High-Resolution Multinuclear NMR
学術雑誌名 ページ 発行年
Journal of Supercritical Fluids ??? ??? ??? 2002

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
Tamas Varga, Miki Sato, Takehiko Tsukahara, Masayuki Harada, Yasuhisa Ikeda, Hiroshi Tomiyasu Temperature Dependence of 1H NMR chemical Shift in supercritical trifuluoroehanol
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
PACIFICHEM 2000 Honolulu Symposium #69 19 2000

全著者名 論文名
Takehiko Tsukahara, Masayuki Harada, Yasuhisa Ikeda, Hiroshi Tomiyasu 1H spin-lattice relaxation times of water, Methanol, and ethanol under sub- and supercritical conditions
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
PACIFICHEM 2000 Honolulu Symposium #69 20 2000

全著者名 論文名
Park K.C., Kim S.-Y., Hitoshi Yamazaki, Hiroshi Tomiyuasu Production of carbon soot in subcritical and supercritical water
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
6th Conference on supercritical fluids and their applications Maiori SW/06 ??? 2001

全著者名 論文名
Takehiko Tsukahara, Tamas Varga, Masayuki Harada, Hiroshi Tomiyuasu, Yasuhisa Ikeda Spin-lattice relaxation times of water and nonaqueous solvents under sub and supercritical conditions
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
6th Conference on supercritical fluids and their applications Maiori SW/08 ??? 2001

全著者名 論文名
Takehiko Tsukahara, Tamas Varga, Masayuki Harada, Hiroshi Tomiyasu, and Yasuhisa Ikeda NMR chemical shifts and spin-lattice relaxation measurements of water and alcohols in liquid and supercritical states
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
Informal Meeting on the fundamental aspects of supercritical fluids Kyoto Poster#13 39 2001


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