平成13年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名 次世代プロセス技術
 
研究プロジェクト名 多機能コンポジット作製を目的としたプロセスの構築
 
(英文名) Development of Process for Fabrications of Multi-functional Composites
 
研究期間 平成9年度 〜 平成13年度

プロジェクト・リーダー名 研究経費 254,414千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
野末 章 ・上智大学 ・理工学部 ・教授 内訳 平成 9年度52,964千円
平成10年度47,198千円
平成11年度42,499千円
平成12年度53,477千円
平成13年度58,276千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
末益博志 上智大学・理工学部・教授 骨類似コンポジットのプロセスと評価
板谷清司 上智大学・理工学部・助教授 自己修復機能の付与と破壊靭性の向上
相澤 守 上智大学・理工学部・助手 骨類似コンポジットのプロセスと評価
高井健一 上智大学・理工学部・講師 骨類似コンポジットのプロセスと評価(平成11年4月1日から)
久森紀之 上智大学・理工学部・助手 コーティングのプロセスと評価(平成11年4月1日から)
鈴木啓史 上智大学・理工学部・助手 コーティングのプロセスと評価
松本秀男 慶應義塾大学・医学部・講師 自己修復機能の付与と破壊靭性の向上(平成12年4月1日から)

2.研究計画の概要

21世紀の高齢化社会において,より高性能な人工骨へのニーズが高まると予想されるが,生体骨は206の骨で構成され,その適用部位により機能に対する要求が異なる.人工骨などの生体硬組織代替材料に要求される機能は生体との適合性,親和性は言うまでもなく,高強度,高破壊靭性,低弾性率等多機能であり,このようなバイオマテリアルの創製には,ニーズ指向型の材料であるコンポジットが有効である.生体骨に関しては,高負荷が生じる部位と負荷の少ない部位があり,本プロジェクトでは,高負荷部位適用型の人工股関節を想定した場合と負荷の少ない骨充填適用型を想定した場合に分けて研究対象とし,以下の3項目を最終的な研究計画として実施した.@は高負荷部位に生体適合性を与えることを想定し,AとBは負荷の少ない部材を想定している.

@ コーティングのプロセスと評価 : 高強度,高破壊靭性を有する生体不活性材料表面への骨類似コーティングによる生体適合性機能の付与
A 自己修復の発現とそのプロセス : 生体内でのき裂の自己修復性を活用することで,高強度,高破壊靭性,耐疲労性の付与
B 骨類似コンポジットのプロセスと評価 : 生体適合性を有するアパタイト多孔体にポリマー・コラーゲンを導入し,低弾性率,高破壊靭性を付与し,骨融合機能を高める.

3.研究目的
本プロジェクトの研究目的は以下の複合化技術の構築とその評価であった.

T 複合化技術の構築

(1) 超微粉体からのCMCプロセスの構築
(2) 生体適合性CMCプロセスの構築
(3) アモルファス粉末からのIMCプロセスの構築

 「次世代プロセス技術」推進委員会のご意見を鑑み,平成11年度より
生体適合性CMCプロセスの構築
に重点を移す.

U 評価

複合化技術により得られるMMC,IMC,CMC材料の機能性発現のメカニズム評価・同定
特色:@ 作製したコンポジットの使用状態におけるき裂進展のその場観察
     A 基本物性の定量化と高強度・高靭性化メカニズムの同定

4.研究成果の概要
4−1 研究計画、目的に対する成果
本プロジェクトで計画した(2)生体適合性CMCプロセスの構築は,平成12年度から慶應義塾大学医学部整形外科学教室がメンバーに加わった(活動は平成11年度から)ことで,科学技術が社会に与える影響の広がりと深まりに先見性をもって対応することができ目的以上の成果が得られた.高強度・高靭性材料を基材とした生体適合CMC作製によるヒトの骨に限りなく近いコンポジット作製の試みを特色としたが,理・工・医の新たな境界領域の創製が境界的・融合的な研究開発を行うことにより臨床応用段階までの具体的な独創性・新規性が得られた.すなわち,高負荷部位適用型の人工股関節を想定した場合と負荷の少ない骨充填適用型を想定した場合に分けて研究対象とし,@コーティングのプロセスと評価:高強度,高破壊靭性材料表面への溶液反応を利用した骨類似コーティング技術の確立と細胞・動物実験による生体適合機能の付与とその評価.A自己修復の発現とそのプロセス:生体内でのき裂の自己修復性を活用することで,高強度,高破壊靭性,耐疲労性の向上とそのメカニズムの解明.B骨類似コンポジットのプロセスと評価:生体適合性を有するバイオアクティブアパタイトにポリマーおよびコラーゲンを導入した骨類似コンポジットの作製と細胞・動物実験による生体適合機能付与とその評価を理・工・医の境界を越えた融合により新たな領域の創成が達成され,先導的な研究開発を推進した.
 (1)および(3)については,耐熱性,高熱,伝導性,高破壊靭性CMC,IMCプロセスの構築と機能評価について電子基板材料を対象に開発を試みてきた.すなわち,(2)医療材料の開発の二つにテ−マが大別され,両者の相互関係によって新規性が生み出す工夫が必要あるいは,いずれかに重点を移して成果を上げることを狙うよう推進委員の指摘を本未来開拓の趣旨に鑑み十分検討した結果,平成11年度より(2)を選択することで目的外の研究成果が得られた.

4−2 研究計画、目的外の成果
目的外の成果として, 平成12年度より慶應義塾大学医学部整形外科学教室(戸山芳昭教授,松本秀男講師(メンバー))と共同研究が開始されたことである(活動は平成11年度から).本研究プロジェクト内容が既存の医療材料研究に比較し,複合化による早期骨融合材料の創製など新規性・独創的に優れ,革新的内容へ向上したことは極めて有意義なものである.すなわち,複合化技術の一つとした生体適合性CMCプロセスの構築において,生体適合膜の新しい作製条件の確立とその機能評価においては理・工学分野で補え,十分な研究の遂行が可能である.しかしながら,医療材料を扱う上での実用化,市場性といった観点からは限界がある.つまり,豊かな国民生活の実現への効果(QOL)が認められるユーザー(患者)の立場に立ち,何が問題か,如何なる材料を作製すればよいかを考えるに本プロジェクトの新たな展望を導いた.実際の治療現場の経験や知恵を,研究の場にフィードバックすることで研究目標・計画が具体的かつ明確に設定され,実現性が高い妥当なものとなったことに理工学と医学との融合が独創的・新規的な研究成果を生み出したことは目的外の科学技術の可能性を実現させた成果である.

4−3 研究成果の展望
医療材料を扱った本研究プロジェクトの学問的・学術的なインパクトとして新規な複合化技術の構築による材料創製とその機能の早期発現性が挙げられる.前者はコーティングによる複合化技術と生体骨類似コンポジット材料の創製を構築し,噴霧熱分解法とソフト溶液法プロセスの独創的な技術開発により,その実現が見込める技術的可能性は大いに期待できる.後者はこれらの機能の発現性を評価したもので3つのインパクトが挙げられる.高強度,高破壊靭性を有する生体不活性材料表面への骨類似コーティングによる生体適合性の機能付与の構築.生体内でのき裂の自己修復機能を活用した力学特性の向上とそのメカニズムの解明.生体適合性を有するアパタイトにポリマーおよびコラーゲンを導入し,骨と同等な力学特性と迅速な生体適合性の機能付与の構築により医療材料の実現に寄与するプロセス技術の開発を示唆した.これら機能の実現可能性の達成および克服しなければならない諸問題を明確にするため,実験室での細胞レベルからウサギ,ラットを用いた動物実験より骨への早期置換能力,生体適合性に関する検証は既存の医療材料研究と比較して新規制・独創性に優れ今後の臨床応用が期待される.これまで実施してきた材料開発のノウハウを生かし,機械工学,材料工学や臨床医学のみならず,基礎医学や生物学の研究者などとの協力を密にすることで21世紀社会の要求に応え,我が国の直面する少子・高齢化社会における新規な医療材料の進歩に画期的な役割を果たし,新しい産業への創出への発展の手がかりが期待される.
今後の展望として,以上の実現可能性の目標・計画を具体的かつ明確に設定し,実現性が高い妥当なものとする.臨床応用では,骨形成タンパク質(BMP)の適用を考慮する.BMPは骨誘導機能を有し,本コンポジットにBMPと血流促進効果のあるタンパク質添加の併用効果によるさらなる骨融合の促進を組織的検証だけでなく強度の改善作用として応用展開が期待される.つまり,大型欠損部や骨形成の期待が少ない部位など従来適用に問題があった症例にも適用可能となり,骨融合速度の促進が入院期間や社会復帰までの時間を短縮できる.

4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
骨や歯の生体硬組織が欠損した場合を高負荷荷重部位と負荷の比較的少ない部位で大別し,その機能の回復や生体組織の保護や再建手法として用いられる材料の開発およびプロセス技術の構築をテーマにして次世代プロセスに貢献してきた.
 本プロジェクトでは大学を拠点とする本グループの特徴を生かすべく,高機能で付加価値の高いコンポジットの作製および開発を行った.本事業の趣旨に鑑み,次代の産業の未来を切り開くとともに,21世紀の少子・高齢化がより進展する中で,健康な高齢化社会を目指すために必要な革新的な医療などの実現に寄与する発展基盤を築き,果たした役割は極めて高く評価するものである.
本プロジェクトを遂行するにあたり,上智大学を拠点として骨代替材料を中心とした『上智大学コミュニティーカレジッジ「骨を考える」』(半期12回開講)を開講し社会への貢献を実施し高い評価を得た.さらには,21世紀の大学教育のあり方として,上智大学 教育・研究・キャンパス再興プロジェクト(長期計画)グランド・レイアウトのアカデミックプランとして『ヒューマンケアサイエンスセンター(仮称)』設立構想が提案された.教育研究期間の代表となる『21世紀COEプログラム(TOP30)』への進出も提案されている.これらは,本学の特徴を十分に生かした文理融合型構成の次元付きプロジェクト型センターとしたコンセプトを背景に,世界との競争力が堅持された大学を目指したものである.
我が国の直面する課題の解決に取り組んだ本事業を基盤とし,国民生活・産業への波及効果により社会・経済への還元を推進する『独創的革新技術開発研究』を意識し,新たに編成された上智(理・工)・慶大(医)・企業(製造,販売)総合プロジェクトチームの構築.既存の分野・領域を越えて機動的な科学技術の展開(上智−慶應プロジェクト)を目的とした『科学技術振興調整費』などの各種大型プロジェクトへの参入も視野に入れた研究体制を構築できたことは,本プロジェクトが本字業の趣旨に鑑み築き上げた結果として,先導的かつ有機的実効戦略部隊の核へ発展したことは極めて重要かつ貴重な事柄である.

5.キーワード

(1)多機能、(2)コンポジット、(3)プロセス
(4)コーティング、(5)自己修復、(6)骨類似
(7)高強度・高破壊靭性、(8)生体適合性、(9)生体活性

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
M. Aizawa, M. Ito, K. Itatani, H. Suemasu, A. Nozue, I. Okada, M. Matsumoto, M. Ishikawa, H. Matsumoto and Y. Toyama In vivo and in vitro Evaluation of the Biocompatibility of the Hydroxyapatite-PMMA Hybrid Materials Having Mechanical Property Similar to That of Cortical Bone
学術雑誌名 ページ 発行年
Key Eng. Mater. 220 ??? 465-468 2001

全著者名 論文名
N. Hisamori, A. Nozue, M. Aizawa and H. Suemasu, In-situ Visualization of Bioactive Functional of Hydroxyapatite Ceramics by AFM in a Simulated Body Fluid
学術雑誌名 ページ 発行年
Tissue Engineering 7 ??? 635 2001

全著者名 論文名
久森紀之,野末章,河野晃伸 アルミナセラミックスの擬似生体環境における腐食挙動と力学特性の評価
学術雑誌名 ページ 発行年
材料試験技術 46 ??? 147-153 2001

全著者名 論文名
M. Aizawa, F. S. Howell and K. Itatani Fabrication of Porous Ceramics with Well-Controlled Open Pore by Sintering of Fibrous Hydroxyapatite Particles
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Ceram. Soc. Japan 108 ??? 249-253 2000

全著者名 論文名
M. Aizawa, Y. Tsuchiya, K. Itatani, H. Suemasu, A. Nozue and I. Okada Fabrication of the Hybrid Materials by the Introduction of Poly (Methylmethacrylate) into the Porous Hydroxyapatite Ceramics
学術雑誌名 ページ 発行年
Bioceram. 12 ??? 453-456 1999

全著者名 論文名
M. Aizawa, T. Hanazawa, K. Itatani, F. S. Howell and A. Kishioka Characterization of Hydroxyapatite Powders Prepared by Ultrasonic Spray-Pyrolysis Technique
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Mater. Sci. 34 ??? 2865-73 1999

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
H. Suemasu, T. Wada, M. Aizawa, K. Gozu, A. Nozue, K. Itatani Fracture toughness and Failure Mechanism of Polymer-Introduced Porous HAp Composites
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
10th International Conference on Fracture USA 100862 ??? 2001

全著者名 論文名
N. Hisamori, A. Nozue, M. Aizawa, and H. Suemasu In vitro Bioactive Functional of Bio Ceramics in a Simulated Body Fluid
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
10th International Conference on Fracture USA 100863 ??? 2001

全著者名 論文名
M. Aizawa, T. Yamamuro, K. Itatani, H. Suemasu, A. Nozue and I. Okada Formation of Calcium-Phosphase Films with Gradient Composition on Alumina Ceramics by Spray-pyrolysis Technique and Their Biocompatibilities by Cell-Culture Tests
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
13th Int. Symp. Ceramics in Medicine Italy ??? ??? 2000


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