平成13年度日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究成果報告書概要



研究推進分野名 高度プロセス
 
研究プロジェクト名 コンバージェントプロセスと材料
 
(英文名) Convergent Molecular Transformation Process and Materials System
 
研究期間 平成9年度 〜 平成13年度

プロジェクト・リーダー名 研究経費 376,834千円
氏名・所属研究機関
所属部局・職名
山本嘉則 ・東北大学 ・大学院理学研究科 ・教授 内訳 平成 9年度105,349千円
平成10年度71,540千円
平成11年度71,542千円
平成12年度63,780千円
平成13年度64,623千円

1.研究組織

氏名 所属機関・部局・職 研究プロジェクトでの役割分担
山口雅彦 東北大学・大学院薬学研究科・教授 脂肪族化学に関する研究
宮下徳治 東北大学・多元物質科学研究所・教授 機能性材料に関する研究

2.研究計画の概要

省資源、省エネルギー、環境調和型のエコケミストリーを展開するためには、分子変換プロセスとして、1)変換プロセス自身が収斂型(convergent)であること、2)反応が触媒的に進行すること、この2点が重要である。本研究ではこの概念に基づく、収斂型で革新的な分子変換プロセス(触媒的)による、天然および非天然の有用物質供給および新材料創製を計画した。
@ エンインのホモカップリングによるスチレン誘導体を含む多置換芳香族オレフィンの一段階合成
A N-H活性化によるアセチレン及びアレンの分子内ヒドロアミノ化による環状含窒素ヘテロサイクルのコンバージェント合成法の開拓
B カルボランやフラーレンの様なクラスター化合物を連結し機能材料への展開を図る
C フェノール類、アニリン類、および複素環化合物の直接ビニル化反応の開発
D ポリ(ビニルフェノール)類の合成と基礎的物性評価を行う
E アルキルアクリルアミドポリマーを基本骨格として種々の高分子LB膜の合成、超薄膜形成を行う
F 電子、光機能性を有する高分子ナノ組織体の分子設計、機能を分担した高分子単分子膜をコンバージェント的に積層し新たな機能発現を有する高分子薄膜を構築する。
G 省エネルギープロセスの微細加工技術に耐えられるナノレベルで均一な高分子LB膜の開発およびその技術によるメモリー素子への応用開発

3.研究目的
1.芳香族化学への革新的コンバージェントプロセスの導入
@パラジウム触媒による共役エンインの二量化反応を分子内反応に展開した、シクロファンの短段階合成
A1,2,3-連続置換芳香族、多置換フェノールおよびアニリンなどの多置換型アロマテックスのコンバージェント合成
2.脂肪族化学への革新的コンバージェントプロセスの導入
@遷移金属触媒によるC-H活性化に基づく新規Hydrocarbonationの開発と、オレフィンの一段階官能基化への応用
A遷移金属触媒によるN-H活性化に基づく新規Hydroaminationの開発と、含窒素へテロサイクル合成への応用
3.それらの材料科学への応用
@ホウ素クラスターを含むデンドリマーのコンバージェント合成法の開発と機能性材料としての新物性発現の追及
A電子、光機能性を有する高分子ナノ組織体の分子設計

4.研究成果の概要
4−1 研究計画、目的に対する成果
1. 芳香族化合物のコンバージェントプロセスによる一気構築
@ 各種多置換スチレン誘導体のコンバージェント合成
A シクロファン類の高効率短段階合成
B 各種多置換芳香族アセチレン、フェノール、アニリンのコンバージェント合成
2. 脂肪族化合物のコンバージェントプロセスによる一気構築
@ アレン及びアセチレン類からのアミノ化合物の一気合成
A アレン及びアセチレン類とプロ求核剤の直接付加
3. 環境調和型の新規機能性高分子ナノ材料の開発
@ 高分子ナノ薄膜を用いたポジ型フォトレジストの開発
A 高分子ナノ薄膜を用いた光導波路による分子センシング
B 表面プラズモン励起によるルテニウム錯体高分子LB膜の光電流増幅
C ユーロピウム錯体高分子LB膜による導波光励起型微小共振器の作成


4−2 研究計画、目的外の成果
1. 不飽和化合物を用いる新しいアルキル化反応の開発
芳香族化合物の一気構築の検討を行っている際に、フェノールの2,6ジビニル化反応とアニリン類のビニル化法の開発に成功した。今後アセチレンガスを用いたさまざまな芳香族化合物のビニル化反応への応用が期待できる。
2. ヘリセン部を有する巨大光学活性有機分子の合成と機能
芳香族化合物の一気構築の検討を行っている際に、光学活性ジメチルベンゾフェナントレンジカルボン酸の大量合成法を確立した。さらにこのジカルボン酸がオリゴ糖によって不斉認識されることを見出した。今後このヘリセンユニットを用いてLB膜形成による機能性材料の開発を行う。


4−3 研究成果の展望
1. 従来にないタイプの芳香族化コンバージェントプロセスを見出したが、この研究成果により今後巨大分子の一気構築法の開発への展開が可能になった。
2. 脂肪族化合物の新プロセスの開発により、C-H、N-H、O−Hの活性化に成功したが、これにより今後キラル分子の高効率合成や、触媒プロセスのリビング性を利用したデンドリマーの構築が可能となる。また、ホウ素クラスターを用いた有機・無機ハイブリッド材の合成による光電子材料への応用も期待できる。
3. ヘリセンに関する成果を基に、光学活性ヘリセン含有機能性物質の創製が可能になった。すなわち光学活性ヘリセンは一般的にアキラルな芳香族化合物のキラルバージョンとみなせるため、芳香環を含むアキラルな機能性物質にヘリセンを導入することにより新規キラル化合物が可能になる。
4.ルテニウム錯体やユーロピウム錯体などの有機金属錯体を、両親媒性高分子中に導入し、LB法により高分子超薄膜を作成したが、これより光加工技術により容易に微細描画できる特徴を生かした高分子ナノ薄膜によるソフトマテリアルデバイスへの展開が期待される。

4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割
 コンバージェントプロセスで有機合成反応を達成しようとするのは、世界の潮流となっている。さらに詳細に見ると、パラジウム触媒を用いる多置換芳香族化合物の一気合成は、従来の遷移金属触媒による[2+2+2]型芳香族化に新風を吹き込んだ。さらにC-H、N-H、O-Hの活性による不飽和結合へのH-C、H-N、H-Oの付加反応は、従来のnucleophileを用いるプロセスを大きく変え、pronucleophileから反応を起こし得る点で、注目されている。
 以上の2つの基本的コンバージェントプロセスを基盤として、機能性材料の分野に新風を送ろうとしている。最近我々が見出しつつあるC60とホウ素クラスターをπ電子系で直接結合させたダンベル型無機有機ハイブリッド化合物は、従来にない電気的特性を有することを見出している。
 このように、コンバージェントプロセス自身の開拓は、“高度プロセス”研究に大きく貢献すると考えられ、わが国のこの分野にも新しい流れを起こさせるのではないかと考えている。

5.キーワード

(1)コンバージェントプロセス、(2)ベンゼン環化反応、(3)ヒドロ炭素化反応
(4)プロ求核剤、(5)ヘリセン、(6)LB膜

6.研究成果発表状況

A.学術雑誌論文(Journal Papers)
全著者名 論文名
Shin Kamijo, Tienan Jin, and Yoshinori Yamamoto Novel Synthetic Route to Allyl Cyanamides: Palladium-Catalyzed Coupling of Isocyanides, Allyl Carbonate, and Trimethylsilyl Azide
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 123 38 9453-9454 2001

全著者名 論文名
Fumi Yonehara, Yoshiyuki Kido, Satoshi, Morita, and Masahiko Yamaguchi GaCl3 Catalyzed Arylation of Cycloalkanes
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 123 45 11310-11311 2001

全著者名 論文名
Long Guo Quan, Mouad Lamrani, and Yoshinori Yamamoto Intramolecular Nucleophilic Addition of Aryl Bromides to Ketones Catalyzed by Palladium
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 122 11 4827-4828 2000

全著者名 論文名
Itaru Nakamura, Shin-ichi Saito, and Yoshinori Yamamoto Hydrofurylation of Alkylidenecyclopropanes Catalyzed by Palladium
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 122 11 2661-2662 2000

全著者名 論文名
Vladimir Gevorgyan, Akira Takeda, Miyako Homma, Naoki Sadayori, Ukkiramapandian Radhakrishnan, and Yoshinori Yamamoto Palladium-Catalyzed [4+2] Cross-Benzannulation Reaction of Conjugated Enynes with Diynes and Triynes
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 121 27 6391-6402 1999

全著者名 論文名
Mohammad Al-Masum, and Yoshinori Yamamoto Palladium Catalyzed Hydrocarboxylation of Allenes
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 120 15 3809-3810 1998

全著者名 論文名
Fei Feng, Tokuji Miyashita, Hitoshi, Okubo, and Masahiko Yamaguchi Spreading Behavior of Optically Active Macrocycloamides Consisting of Helical Chiral Units at the Air-Water Interface and the Formation of Langmuir-Blodgett Films
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 120 39 10166-10170 1998

全著者名 論文名
Vladimir Gevorgyan, Akira Takeda, and Yoshinori Yamamoto First Intermolecular Regiospecific Palladium-Catalyzed Enyne-Diyne [4+2] Cross-Benzannulation Reaction
学術雑誌名 ページ 発行年
J. Am. Chem. Soc. 119 46 11313-11314 1997

B.国際会議発表論文(International Conferences)
全著者名 論文名
Yoshinori Yamamoto Diversity in Palladium Catalyzed Organic Reactions (Plenary Paper, Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
Oppolzer Lectures 2001 Geneva P-1 ??? 2001

全著者名 論文名
Shin Kamijo, Tienan Jin, Yoshinori Yamamoto Novel Synthetic Route to Allyl Cyanamides-Palladium Catalyzed Coupling of Isocyanides, Allyl Carbonate, and Trimethylsilyl Azide (Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
Singapore International Chemical Conference II Singapore 226 230-230 2001

全著者名 論文名
Yoshinori Yamamoto Metal Promoted Synthesis of Heterocycles from Heterocyclic Compounds (Plenary Paper, Invited)
会議名 開催場所 論文番号 ページ 発行年
17th International Congress of Heterocyclic Chemistry Vienna PL-10 ??? 1999

C.著書(Books)
全著者名 書名
Masahiko Yamaguchi Comprehensive Asymmetric Catalysis (Editor: E. N. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto)
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
Springer Berlin ISBN3540643362 1121-1139 1999

全著者名 書名
宮下徳治 コンパクト高分子化学
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
三共出版 東京 ISBN4782704135 1-152 2000

全著者名 書名
Tokuji Miyashita Macromolecule
出版者名 出版場所 ISBN番号 ページ 発行年
Sankyo Tokyo ISBN4782704135 1-152 2000

D.特許等取得状況
特許等名称 発明者名
アリルフラン化合物の製造方法 山本嘉則、中村達、斎藤慎一
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
東北大学長 発明 特願2000-070419 平成12年3月14日 平成14年3月1日

特許等名称 発明者名
L-パラボロノフェニルアラニンの製造方法 山本嘉則
権利者名 種類 出願番号 出願年月日 設定登録年月日
東北大学長 発明 特願平10-059346 平成10年3月11日 平成11年9月17日


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