| 研究推進分野名 | 環境負荷の影響評価と軽減 | |
| 研究プロジェクト名 | 有害な環境汚染化学物質の人体影響評価技術の開発 | |
| (英文名) | Establishment of New Technology for the Risk Estimation on Humans by Environmental Toxic Agents | |
| 研究期間 | 平成9年度 〜 平成13年度 |
| プロジェクト・リーダー名 | 研究経費 | 490,663千円 | ||
| 氏名・所属研究機関 所属部局・職名 |
野村大成 ・大阪大学 ・大学院医学系研究科 ・教授 | 内訳 | 平成 9年度 | 110,838千円 |
| 平成10年度 | 88,785千円 | |||
| 平成11年度 | 101,040千円 | |||
| 平成12年度 | 95,000千円 | |||
| 平成13年度 | 95,000千円 | |||
1.研究組織
| 氏名 | 所属機関・部局・職 | 研究プロジェクトでの役割分担 |
| 中島 裕夫 | 大阪大学・大学院医学系研究科・助手 | SCIDマウスの改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発 |
| 本行 忠志 | 大阪大学・大学院医学系研究科・助教授 | SCIDマウスの改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発 |
| 梁 治子 | 大阪大学・大学院医学系研究科・助手 | SCIDマウスの改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発 |
| 細田 衛士 | 慶應義塾大学・経済学部・教授 | 微量有害汚染物質の影響評価と予防原則の経済学的分析 |
| 宮田 秀明 | 摂南大学・薬学部・教授 | ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発 |
| 太田 壮一 | 摂南大学・薬学部・助教授 | ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発 |
| 青笹 治 | 摂南大学・薬学部・助手 | ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発 |
2.研究計画の概要
|
1) SCID マウスの改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発 T 細胞、B 細胞の両免疫細胞機能を欠いた 従来の SCID マウスでは拒絶反応に関与する正常 T, B 細胞が出現するためヒト組織の移植維持の大きな障害となっていたが、免疫不全マウスどうしの選択的交配による SCID マウスの改良と同時に、移植免疫にかかわる他の免疫機能(NK 細胞、マクロファージ他)をも欠如した、即ち、全ての移植免疫機能を欠如したマウスを開発し、これらマウスにヒト臓器・組織(肺、肝、膵、胃腸、卵巣、子宮、甲状腺、皮膚、骨髄等)を移植し、長期間維持することにより、人体組織に及ぼす環境物質の影響(形態および機能障害、分子レベルの異常、癌の発生等)を定量的に評価する新たな研究システムを開発する。 2) ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発 ダイオキシン類の様に同位体の多い環境汚染物質の把握には、生態系およびヒト生体試料の精緻な定量分析が不可欠である。従って、本分担テーマに関する我国の中心施設である摂南大学を副拠点とし、最新の大型機器による環境汚染状態のモニタリングのみならず、簡便迅速型の超微量定量法の開発、特に多数の同位体中の強毒性のものを的確に定量する方法を開発し、上記の人体影響評価実験に協調してヒト生体試料中の化学種分析を実施する。 3) 微量有害汚染物質の影響評価と予防原則の経済学的分析 難分解性の有害汚染物質が環境中に放出される経済学的な要因と機構を分析し、人体影響評価に基づいて汚染物質の削減と被害未然防止の最適戦略(予防原則、費用便益分析、経済的手段、事後責任ルール等)を検討し、いかなる意思決定ルールと政策手段が選択されるべきかを解明する。 |
|
科学の進歩は、無数の有害汚染物質の産生と自然生態系の破壊をもたらしている。ダイオキシン等これら環境汚染化学物質の人類および生態系への影響評価の基本は、人体影響評価と環境汚染の定量である。これら相補的な2つの技術開発に、経済的に成立可能な環境負荷軽減策を加えた以下の3つの柱を立て、世界に先駆け、有害な環境汚染化学物質の超微量迅速分析、人体影響評価技術の開発、そして社会への還元に至る一連のプロジェクトを推進することを目的とする。 1. SCID マウスの改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発: 人体影響評価は、汚染事故後の疫学調査か動物実験あるいは培養細胞実験しかなすすべがなかった。動物実験には大きな限界(種差等)があり、新たな実験法の開発が不可欠である。拒絶反応をなくした重度複合免疫不全マウス(SCIDマウス)を改良、開発することにより、ヒト正常組織の形態と機能が長期にわたり維持可能なヒト臓器・組織置換マウスを作製し、環境汚染有害物質のヒト臓器・組織への直接影響を究明する。 2. ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発: ダイオキシン等、人体影響評価の基本となる有害な環境汚染化学物質には、定量分析困難な同位体が多い。簡易迅速かつ超微量分析法の開発を行う。 3.微量有害汚染物質の影響評価と予防原則の経済学的分析: 汚染物質の削減と被害未然防止技術に、経済学的分析を加え、経済学的に採算可能な最適戦略を考案する。 |
| 4−1 研究計画、目的に対する成果 |
|
1. SCIDマウス改良によるヒト臓器・組織を用いた新たな実験法の開発: 従来のSCID(C.B17-scid)マウスのうち、免疫能が検出限界以下のものを30代以上選択交配により改良し、また、NK細胞、マクロファージ機能の欠損遺伝子の導入等を行い、拒絶反応の原因となるLeaky(正常T、B細胞の出現)と長期維持の障害となる若年白血病死をなくしたSCIDマウスを開発した。これにより、脳を除く全てのヒト臓器・組織置換マウスの作製に成功し、ヒト臓器・組織への直接影響評価法を確立した。このシステムを用い、ヒト正常皮膚への太陽紫外線照射による日光角化症、皮膚がんの誘発に、世界で初めて成功し、微量ダイオキシン(TCDD濃度:10-55ng/g組織)投与により、ヒト成長に最も重要な臓器であるヒト甲状腺に、濾胞の消失と甲状腺ホルモン分泌の有意な減少、12,000のヒト遺伝子のうち76の遺伝子にGeneChip法により発現異常がみられた。 2. ダイオキシン類等の超微量迅速分析法の開発: アルカリ分解、ミクロ硝酸銀・シリカゲルカラム精製、活性炭カラム精製、超高分解能ガスクロマトグラフ・質量分析計による定量から構成された分析法を開発し、これまで100 ml以上の血液を必要としていたものが、わずか5 mlで可能となった。また、5種の異性体をターゲットダイオキシンとして測定することにより、100〜200 μlの血清で測定を可能にした。フェムトグラム(ナノグラムの100万分の1)オーダーの精緻な定量に成功した。 3. 微量有害汚染物質の影響評価と予防原則の経済学的分析: 焼却設備を熱回収のリサイクルプラントとして高率発電を行うKプラントや、プラスチック残渣からメタノールやDMEを精製するMプラントを例に検討した結果、経済的に成立可能(採算が成り立つ)で、しかも、ダイオキシン類等微量有害汚染物質の発生抑制に寄与することが証明された。 |
| 4−2 研究計画、目的外の成果 |
|
1. 無菌マウス用自動給水マイクロバリア飼育システム: 無菌マウス等の省力飼育維持のため考案したcoupler付改良自動給水ノズルが、SCIDマウスよりもひ弱な変異マウスや老齢(2〜4年)マウスであっても、従来の飲水不能等による事故が一切なく、安全に使用可能なことが証明され、世界中で用いられるようになった。 2. SCIDマウスは、免疫不全以外に放射線によるDNA二重鎖切断の修復能を欠損している。しかし、低線量率照射による回復実験で、これまで知られていない回復機能がSCID細胞に存在することを見つけた。また、化学物質に対しても高感受性であり、多くの培養細胞株を樹立した。細胞修復機能の研究のみならず、環境有害物質の新たな高感度生物影響評価系として、多くの研究者に分与した。 3. 超微量迅速分析法の開発は、マウスなど小動物でもダイオキシン類の定量を可能にした。新たに開発した結合型食物繊維(クロロフィリン結合キトサン)が、ダイオキシン類の胃腸からの吸収を抑制し、体内に蓄積したダイオキシンの排泄も促進した。ヒトでの予防・治療への応用の可能性を示した。 |
| 4−3 研究成果の展望 |
|
1. バイオテクノロジーとしての展開 異種移植に対して、拒絶反応をなくした重度複合免疫不全マウスの開発により確立されたヒト正常臓器・組織の長期継代・維持技術は、単にヒト臓器・組織を用いた環境科学研究への応用のみならず、 1)正常ヒト臓器・組織の再構築、分化、成熟、臓器間反応研究モデル 2)ヒト疾患臓器・組織の病態の解明 3) 人体実験の回避による新薬開発・認定の促進、費用の削減、医療事故の予防 4) ヒト臓器・組織の移植と形態、機能不全疾患の治療等、バイオメディカル研究分野に大きな進歩をもたらすものと考えられる。 特に、ヒト胎芽組織よりの、ヒト臓器の形成、移植など、これまで不可能と考えられたヒューマンサイエンスの分野を築く可能性を強く秘めている。 2. 超微量迅速分析; フェムトプロジェクト 超微量物質高感度迅速定量法を開発した結果、ナノグラムの百万分の1であるフェムトグラムオーダーで、ダイオキシンの分析定量が可能となった。これは、死体とか大量の血液からしか定量分析出来なかったダイオキシン類を、臨床検査レベルの採血量で、生体での定量を可能にする。また、ホルモン等内の超微量生体物質の分析定量も可能にした。ヒト体内での超微量物質の動態研究に大きな進歩をもたらすとともに、マウス等小動物でのトレース実験研究を可能にする。 3. 環境汚染削減技術の開発; 経済学的に採算性が取れねば成り立たない 微量有害物質発生抑制は、大きな経済的犠牲を強いる。最新の廃棄物焼却・削減技術に、初めて経済学的採算性を実証できたことは、循環型社会形成のための技術開発に大きなインパクトを与える。 |
| 4−4 本事業の趣旨に鑑み、果たした役割 |
|
研究推進分野「環境負荷の影響評価と軽減」は、人間生活における様々な活動から産み出される環境負荷要因とその影響を定量的に把握分析し、化学汚染物質等の処理、制御技術、リスク管理の開発などの研究を推し進め、将来予測等を通じ、環境に調和し環境を維持しうる技術体系を確立することを趣旨としている。 本プロジェクトは、その中で唯一の人体影響研究班として、以下の役割を果たした。 拒絶反応をなくした重度複合免疫不全マウスの開発と、ヒト臓器・組織置換マウスの作製による人体影響評価技術の確立は、真夏に浜辺で一時間の太陽紫外線を毎日浴びると、ヒト皮膚がんの誘発につながること、汚染地域住民のダイオキシン組織濃度が、ヒト甲状腺の機能・形態障害や遺伝子発現の異常を十分に引き起こす事を実証し、ヒト臓器・組織を用いた研究の重要性を世界に示した。この技術は、これまで不可能と考えられたヒューマンサイエンスの一分野を新たに開拓するものである。ヒトそのものにおけるメカニズムを探ることに加え、ヒト臓器・組織の作製の可能性を示した。 ダイオキシン類など超微量物質の高感度迅速分析法の開発は、これまで困難であった生体汚染の定量、経母乳、経胎盤曝露の定量を可能にした。さらに、高温焼却によるダイオキシン類発生抑制を行うと、逆に変異原性の強い二トロ多環水素類の発生量が急増し、新たな、より深刻な汚染をもたらすことを発見した。これまでのダイオキシン汚染削減策を根本的に改める必要性を示した。 一方、新技術を用いた廃棄物よりの燃料の精製プラント、焼却による熱回収発電プラントなどにより、経済的に成立可能な循環型社会形成が可能であることを科学的に裏付けることができた。この発想は、汚染削減の基本となるものである。しかし、環境負荷軽減と採算性のバランスのみでは、最新の汚染削減技術の開発自体が、より深刻な汚染と人体障害を生み出そうとしていることも本プロジェクトは実証した。三位一体の調和のとれた環境・生命負荷の軽減策が必要であり、どの一つが欠けても未来世代に巨大な環境・生命負荷と経済負荷を残すことになる。未然防止に科学技術の果たす役割は大きくなる。 |
5.キーワード
(1)有害汚染物質、(2)ダイオキシン、(3)超微量迅速分析
(4)ヒト臓器・組織置換マウス、(5)人体影響評価、(6)汚染削減経済政策
(7)フェムトグラム、(8)SCID マウス、(9)経済的メリット
6.研究成果発表状況
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Eiji Taniguchi, Hiroo Nakajima, Tadashi Hongyo, Kazuyasu Fukuda, LiYa Li, Masayuki Kurooka, Hikaru Matsuda, Taisei Nomura. | Effects of N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine on the human colorectal polyps consecutively maintained in SCID mice | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Cancer Lett. | ??? | ??? | ??? | 2002 (in press) |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Souichi Ohta, Daisuke Ishizuka, Hajime Nishimura, Teruyuki Nakao, Osamu Aozasa, Yoshiko Shimidzu, Fumie Ochiai, Takafumi Kida, Masatoshi Nishi, Hideaki Miyata | Comparison of polybrominated diphenyl ethers in fish, vegetables, and meats and levels in human milk of nursing women in Japan | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Chemosphere | 46 | ??? | 689-696 | 2002 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Osamu Aozasa, Souichi Ohta, Teruyuki Nakao, Hideaki Miiyata, Taisei Nomura | Enhancement in fecal excretion of dioxin isomer in mice by several dietary fibers | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Chemosphere | 45 | ??? | 195-200 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Eiji Hosoda | "Recycling and Landfilling in a Dynamic Sraffian Model - Application of The Corn-Guano Model to a Waste Treatment Problem-" | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Metroeconomica | 52 | 3 | 268-281 | 2001 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Taisei Nomura | Transplacental and transgenerational late effects of radiation and chemicals (Invited) | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Cong. Anomalies | 40 | ??? | S54-S67 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Souichi Ohta, Shinichi Kuriyama, Osamu Aozasa, Teruyuki Nakao, Michio Tanahashi, Hideaki Miyata | Survey on Levels of PCDDs, PCDFs, and Non-Ortho Co-PCBs in Soil and Sediment from a High Cancer Area near a Batch-Type Municipal Solid Waste Incinerator in Japan | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Bull. Environ. Contam. Toxicol. | 64 | ??? | 630-637 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Eiji Hosoda | Asymmetry of Price Control and Quantity Control in an Environmental Policy | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Environmental Economics and Policy Studies | 3 | ??? | 381-397 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Eiji Hosoda | Material cycle, waste disposal, and recycling in l Leontief-Sraffa-von Neumann economy | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| J. Mater Cycles Waste Manag. | 2 | ??? | 1-9 | 2000 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Kazuyasu Fukuda, Hiroo Nakajima, Eiiji Taniguchi, Kazuo Sutoh, Hui Wang, Prakash Manoor Hande, Li Ya Li, Masayuki Kurooka, Keiko Mori, Tadashi Hongyo, Takeshi Kubo, Taisei Nomura | Morphology and function of human benign tumors and normal thyroid tissues maintained in severe combined immunodeficient mice | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Cancer Letters | 132 | ??? | 153-158 | 1998 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Taisei Nomura, Hiroo Nakajima, Tadashi Hongyo, Eiji Taniguchi, Kazuyasu Fukuda, Li Ya Li, Masayuki Kurooka, Kazyi Sutoh, Prakash Manoor Hande, Takanori Kawaguchi, Masato Ueda and Hiroshi Takatera | Induction ofcancer, actinic keratosis and specific p53 mutations by ultraviolet light B in human skin maintained in SCID mice | |||
| 学術雑誌名 | 巻 | 号 | ページ | 発行年 |
| Cancer Res. | 57 | 11 | 2081-2084 | 1997 |
| 全著者名 | 論文名 | |||
| Taisei Nomura | SCID Biotechnology for the Study on Environmental Mutagenesis, Teratogenesis and Carcinogenesis in Humans (Plenary Paper, Invited) | |||
| 会議名 | 開催場所 | 論文番号 | ページ | 発行年 |
| Challenges in the New Millennium | Chennai, India | P4 | 40-41 | 2000 |
| 全著者名 | 書名 | |||
| Taisei Nomura | Trends in Radiation and Cancer Biology. (Editor: R.N. Sharan) | |||
| 出版者名 | 出版場所 | ISBN番号 | ページ | 発行年 |
| Forschungzentrum | Julich | ISBN 3-89336-230-4 | 149-155 | 1998 |
| 全著者名 | 書名 | |||
| 宮田秀明 | ダイオキシン | |||
| 出版者名 | 出版場所 | ISBN番号 | ページ | 発行年 |
| 岩波書店 | 東京 | ISBN 4-00-430605-1 | 1-261 | 1998 |
| 全著者名 | 書名 | |||
| Hideaki Miyata | Dioxins | |||
| 出版者名 | 出版場所 | ISBN番号 | ページ | 発行年 |
| Iwanami Pub. Co. | Tokyo | ISBN 4-00-430605-1 | 1-261 | 1998 |