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吸血刺咬昆虫の生理活性分子の探索と作用機構の解析

Identification,Activity and Mode of Action of Bio-active Molecules from Blood-Sucking and Stinging Insects
プロジェクト・リーダー 鎮西康雄 
三重大学医学部教授




1、研究の背景と目的

 吸血刺咬昆虫はその唾液腺や毒腺の中に、吸血を助けたり狩をしたり防御したりするための生理活性物質を持っている。これらの活性物質には動物の血管や血液の生理反応を制御したり、神経を麻痺させたりする分子がある。これらは特殊な構造と作用 機構とを持っており、医薬や農薬として利用可能なものがある。これらの生理活性分 子を探索し、その作用機構を明らかにするのがこの研究の目的である。




2、研究成果

(1)吸血昆虫・ダニの唾液腺活性分子
 オオサシガメ Rhodnius prolixus (Rp)の唾液腺から生理活性
分子 Prolixin-S を精製・クローニングし、諸性状・作用機構を解析して、抗凝固活性と血管拡張活性を併せ持つユニークなタンパク質であることを解明した。また、抗凝固活性は内因系第9因子のGlaドメインに結合してその活性を阻害すること、血管拡張活性は分子内のヘムに結合した一酸化窒素NOが血管内で放出されることによることを解明した。
 一方、吸血性昆虫(ハマダラカAnopheles stephensi (AS) ・ブラジルサシガメTriatoma infestans (Ti))及びダニ(フタトゲチマダニHemaphisalis longicornis (Hl) )の3種を用い,唾液腺で発現している主要な遺伝子cDNAを網羅的に解析(それぞれ550, 1280, 1990 EST)し、ESTデータベースを構築し、それらの中から目的に叶 うと予想されるクローンをピックアップし、全配列を解析した(それぞれ16, 18, 12 個)。更に組み替え体として発現して活性分子を探索した結果、それぞれ2, 3, 4個の新規活性分子が見つかった。これらは抗凝固活性、血小板凝集阻害活性、痛み抑制活性、口器固着活性などを持っていた。これらについては物質特許を申請した。




(2)ハマダラカとマラリア原虫との相関分子について
 ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei (Pb)) を用い,ハマダラカ体内での増殖・成熟ステージであるオオキネート(Ok)について注目し、そこで発現している2つの接着性タンパク質PbCTRPとPbWarp のcDNAをクローニングした。これらの分子は共に、オオキネートがハマダラカ中腸に侵入する時に必須のタンパク質であることを明らかにした。一方オオキネート(Ok)とスポロゾイト(Sp)のcDNAを網羅的に解析し、それぞれ2,200, 18,000個のESTを得て、データベースを構築した。また、Ok/Spで発現する宿主細胞への感染に関連する分子をそれぞれ2つ新たに見つけた。特にSpの2つの新規分子については、Sp の唾液腺への選択的な接着を決める分子(MAEBLと命名)とSp の宿主動物肝細胞への侵入に重要な機能を持つタンパク質(OSM-1と命名)であることを見つけた。




(3)刺咬昆虫の毒腺に含まれる神経麻痺性分子について
 刺咬昆虫、特にクモ・ハチ・サソリ類の毒腺から神経麻痺作用をもつ新規分子の探索・単離・構造決定を行うために、先ず微量成分分析法を開発した。HPLCおよび LC/MS を組み合わせハチ毒腺の1/100 量で構造解析できる超微量分析法を、またラダー法とMALDI-TOF-MS/MS を組み合わせることで、微量ペプチドのアミノ酸配列決定法を開発した。微量ペプチド、アミンにスクアリン酸を導入することで、MSによる構造 解析が可能であることを示した。これらの方法を用いて表に示したような各種ハチ類、サシガメ、サソリから新規活性ペプチドを単離死構造を決定した。またそれらのいくつかから薬理作用を確認した。





3、研究体制

期間: 1999年9月から2004年3月
横成: プロジェクトリーダー1名、コアリーダー1名、研究協力者他6名、ポスドク数名
実施場所: 三重大学医学部医動物学研究室
(514-0001 津市江戸橋 2-174,059-231-5013;e-mail.chinzei@doc.medic.mie-u.ac.jp)
大阪市立大学大学院理学研究科物質分子専攻物質科学科
(558-8585 大阪氏住吉区杉本3-3-138,06-6605-2570;e-mail.ohfune@sci.osaka-cu.ac.jp)