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4.事業全体について
- まず評価部会からの提言を記し、最後に総括を述べることとする。
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(1)生命科学領域
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ア.研究プロジェクト全体について
- 我が国における科学研究に対する公的研究助成は、従来公募方式が主流となっており、近年では、高額な研究費を投じて展開される大型の公募研究も幅広く実施されている。このような公募方式による研究助成制度に対し、本事業は、選定された研究分野について研究推進委員会を設け、トップダウン方式によって研究プロジェクトを設定し、各プロジェクトリーダーにはポスドク及び研究補助者の採用をも可能とする非常に高額な研究費を長期間保証して、当該分野の我が国の研究を世界最高水準にまで発展せしめようとするものである。
確かに、科学と技術によってしか立つ道のない我が国において、このようなトップダウン方式による研究推進制度は大きな意味を持ち、その成功は我が国の将来に大きく貢献することを疑うべくもない。したがって、研究分野の選定と研究推進委員会の構築、さらには各研究推進委員会における研究プロジェクトの選定及びそれらの運営と研究活動の在り方が極めて重要であり、事業全体と研究推進委員会の責務は重大である。
このような観点に立って、本年度の中間評価の対象とされた研究分野の各研究プロジェクトを総体的に評価すると、トップダウン方式による研究推進制度の趣旨と利点が良く活かされているとは必ずしも言い難い。研究分野の選定及びそれぞれの研究推進委員会の構築そのものについては生命科学研究の国際的動向及び我が国における研究の現状が的確に把握されており、概ね妥当であると評価できる。しかし、研究推進委員会の方針と実際に研究を実施するプロジェクトチームとの間にかい離が認められる。この傾向は、ことに「血管新生と分化制御」以外の研究プロジェクトにおいて顕著である。これらの研究プロジェクトにおいては、恐らく、プロジェクトチームが研究推進委員会そのものによって選定されたのではなく、両者が独立に設定構築されたことのほか、構想に十分な時間が与えられなかったことなどが背景にあると思われる。このような事情は考慮に値するが、これらの問題点は早急に見直され、改善されなければならない。
次に、先に指摘したように、我が国では既に大型の公募研究が幅広く推進されている。これらの公募方式による研究助成制度とトップダウン方式による研究推進制度とを調和させることが是非とも必要であると考える。両者の間に整合性が欠落している限り、研究費の重複配分あるいは過重配分といったことが必ず現出し、研究者の不信を醸成するのみならず、我が国の科学の健全な発展をも損なうことになろう。加えて、研究費の過重な配分が、将来の我が国の科学を担うべき大学院生レベルの若い学徒をスポイルし、研究者の育成の点でも悪影響を及ぼすことを真摯に配慮する必要があろう。
上記は、評価部会での検討及び議論を通じて導き出される事業全体に対する総合的評価であるが、個々の問題点については、評価部会の各委員から大いに参考とすべき見解が提示されている。これらは、今後、事業をより適切かつ有効に展開していく上で参考となるので、それらの主なものを以下に列記しておくこととする。
- 大型研究プロジェクトが多様に展開されているが、省庁間で同一の方向性のもの、たとえばゲノム研究等は、構成面でも交流面でもより戦略的に計画し、中途半端にならないようにすべきである。
- プロジェクトリーダーとコアメンバーの予算配分が明確でないものが多く見られるが、予算の使用と研究成果は併せて判断すべきものであり、その点は事務局で指導を進めるべきである。
- 研究成果を挙げるという観点から、研究実績の豊かな研究者を選定することで事業の安全性を確保しようとする傾向は理解できる。しかし、科学研究の未来を開拓するには問題意識のしっかりした有能な若手研究者を積極的に参加させるべきである。トップダウン方式の利点を活用し、研究推進委員会は上記の点でも一層指導力を発揮してほしい。
- 公募方式による研究助成制度との違いが不鮮明である。むしろ、研究プロジェクトのメンバー以外の研究者で、1/10程度の研究費でより高いレベルの研究成果を挙げている研究者もいることを真摯に受け止めるべきである。
- 進捗状況が不良という理由で単純に研究費をカットするのは必ずしも良策ではない。要は如何なる理由で研究が進捗しないかを的確に把握し、措置を講じるべきである。予定通りの進捗が見られなかった原因が研究費の不足によるのであれば、むしろ増額も考慮すべきであろう。
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イ.研究分野及び研究推進委員会の選定について
- 生命科学諸領域の国際的な研究動向及び我が国における研究の現状から見て、一級の業績を挙げつつある研究者をトップダウン方式で選び、その研究分野を飛躍的に発展させるという観点からは、本事業における生命科学系の研究分野の選定と研究推進委員会の組織構築は概ね妥当であると判断する。しかし、既に指摘したように、「血管新生と分化制御」以外の3つの研究分野については、プロジェクトチームと研究推進委員会とが独立に選定されたことによって、折角の研究推進委員会の機能が十分発揮できなかった点に、大きな問題点があったことを認めざるを得ない。また、各研究プロジェクトにおいて、プロジェクトリーダーとプロジェクトメンバーとの関係が必ずしも明確でなく連携が不十分であること、また、ことに臨床的研究のための材料収集等の体制構築が不十分であったことなども問題であり、これらは早急に是正されねばならない。
未来開拓という本事業の本来の趣旨と目的を具現するためには、既に国際的に十分太刀打ちできる研究分野を格段に推進し発展せしめると共に、将来の高い可能性を秘める有能な若手研究者を発掘し得る研究分野を積極的に選定すべきであろう。また、トップダウン方式による研究推進制度の利点を活かすには公募方式による研究助成制度との整合性に特段の意を払うことが必要である。この点については、公募方式による研究助成制度になじまない研究分野或いは研究者層は稀薄ではあるが国益のため研究者の育成が必要な研究分野、並びに国内に潜在能力があり資源を投入することで国際的主導権を獲得できそうな研究分野の創出といったことへの配慮がいくらか欠けていたのではなかろうか。
いずれにせよ、科学研究が健全に営まれ、それを永続的に発展せしめるには、トップダウン方式による研究推進制度も必要であり有効性も高い。その意味でも本事業の意義は大きく、これまでの経験を踏まえ本事業が新たな事業によってより良くかつ生産的に引き継がれることを期待する。
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(2)まとめ
- 研究評価委員会により実施される中間評価は本年度をもって最後となり、平成17年度には事業そのものも終了することとなるが、各研究推進委員会には研究推進の方向や評価を誤る結果にならないよう、今次本報告書に記載された指摘に対し適切な対応をとるとともに、研究組織の運営に充分な配慮をすることを願う次第である。
また、本事業の特色である研究分野及び研究プロジェクト選定におけるトップダウン方式については、昨年の中間評価に引き続き、全体的には肯定的な評価を与えることができるが、なお幾つかの改良の余地があることが今回も指摘されたことを改めて強調したい。生命科学領域からの事業全体についての意見にあるように、本事業の方式の完成度を高めることは、今後の新規事業における研究推進のために非常に重要なことである。関連して、毎年の中間評価の評価対象が、該当年度に採択された研究プロジェクトとそれを推進した研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動に限定されているために、研究評価委員会としては事業の全体像の把握に限界があることを述べておきたい。
最後に、事業委員会におかれては、個々の研究分野の研究推進と同時に事業の全体の意義と方式について不断の見直しの努力を最終年度まで続けていただくことを希望する次第である。
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平成12年度開始分
中間報告書 目次 |
1.序 文 |
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2.研究推進委員会の活動等について |
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3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて |
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4.事業全体について |
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