平成
12
年度開始分
研究評価委員会「中間評価」報告書
2.研究推進委員会の活動等について
生命科学領域に設けられた4研究推進委員会の活動について、評価結果を「(1)研究推進計画(全体構想、方針、推進方法等)及び研究プロジェクトの選定の妥当性について」、「(2)研究推進委員会による研究評価について」、「(3)社会、経済への成果還元の可能性について」、及び「(4)研究推進委員会の構成及び活動状況の全体的評価と総括」の4項目に分けて報告する。
(1)研究推進計画(全体構想、方針、推進方法等)及び研究プロジェクトの選定の妥当性について
本事業では、研究分野毎に研究推進委員会が設けられ、同委員会が研究推進計画を立案するとともに、これに沿って研究プロジェクトを構想しプロジェクトリーダーを選定するというトップダウン方式が事業実施の基本となっている。
総括的にいえば研究推進委員会が立案した研究推進計画の内容は概して妥当であり、現状の方向で推進すべきものが多い。また、研究プロジェクトの選定についても、一部を除き概ね妥当な選定であったと考えられる。
しかし、研究推進計画立案に当たっての目標の明確化、研究プロジェクト選定に当たっての目標との整合性などいくつかの問題点も指摘されている。また、個々の研究プロジェクトの進捗状況として見れば必ずしも期待どおりのものばかりとはいえない。以下に評価部会において特に付された意見等を示す。
従来の方針で採用された
「血管新生と分化制御」は前年度採択分と同様に適切かつ一貫した全体構想のもとに研究推進が行われており、研究プロジェクトの選定もよくバランスがとれていると評価された。
他の3つの研究分野は従来の未来開拓学術研究推進事業の選定方針とは異なる形で、ミレニアム・プロジェクトとして
「ゲノム研究」、
「発生・分化・再生」及び
「植物遺伝子」として採用された。特に
「ゲノム研究」は研究プロジェクト数も予算も大きく、研究推進委員会への負担はかなり大きいものがあった。その中で日本のゲノム研究として重点的に推進すべき方向の分野をカバーしており、研究推進計画は概ね妥当であると評価した。しかし、一部の研究プロジェクトではプロジェクトリーダーのリーダーシップをもっと発揮しやすいように組織体制を手直しすることが必要との助言がなされた。また、一部の研究プロジェクトではサンプル収集や方法論において、当初の見通しが甘かったのではないかとの指摘もあった。
「発生・分化・再生」については、ミレニアム・プロジェクトの重点拠点として行政的にトップダウンによる研究機関と研究プロジェクトが選定され、研究推進委員会はその選定に参加しないという本事業としては異例の選定プロセスのなかで始まった。研究推進委員会は非常な努力をもって助言をしているが、選定に後付された形での限界があり、研究プロジェクト間での出来・不出来の差がかなり大きい結果となった。実情にあった予算の再分配も含めて、研究推進委員会のリーダーシップを期待する。
「植物遺伝子」については、構想・推進方法について全体として概ね妥当であるとの判断がなされた。ただし、7つの研究プロジェクト各々は少し研究テーマを多く盛り込みすぎで、科学研究費補助金における「班研究」的な色彩が否めない部分もあるとの指摘もあり、今後の推進方針の中でそれぞれの焦点をさらに絞ることが望まれる。
(2)研究推進委員会による研究評価について
全体的に見て、客観的で適正な評価が行われていることは喜ばしい。評価部会において指摘された問題点等は以下の通りである。
「血管新生と分化制御」、
「ゲノム研究」及び
「発生・分化・再生」における研究評価については、研究内容を良く把握しており、概ね適切であると評価された。特に
「ゲノム研究」と
「発生・分化・再生」については、研究の進め方や成果に問題がある研究プロジェクトも一部にあったが、研究推進委員会はそれらを適切に厳しく評価し、助言も適切であるとの判断がなされた。
「植物遺伝子」については、研究推進委員会による評価をもっと厳しくしてもよいのではないかと言う指摘があった。また、一部のプロジェクトリーダーには研究推進委員会から、焦点を絞って目指すレベルをより高く設定するようにとの助言が必要との指摘があった。
(3)社会、経済への成果還元の可能性について
研究成果を社会や経済に真に還元するためには、具体的な特許や企業化の展望が必要である。本事業の実施方法にも、“研究の成果については、人類共通の「知的資産」として広く普及に努め、かつ、社会への還元に努めることとしています”とあることから、研究推進委員会及びプロジェクトリーダーはこのことを改めて認識するとともに徹底することが重要である。以下に評価部会において貢献が期待できるとされた事例を示す。
「血管新生と分化制御」は高齢社会における医療の基礎を築く重要なテーマであり、血管・循環障害と癌の治療法開発への貢献が期待される。
「ゲノム研究」、
「発生・分化・再生」及び
「植物遺伝子」については、ミレニアム・プロジェクトに選定された21世紀のバイオ研究開発の基盤確立のために重要であり、非常に幅広い医療・産業・農業への貢献が期待される。
「ゲノム研究」からのテーラー医療やゲノム創薬の実用化、
「発生・分化・再生」からの再生医療、
「植物遺伝子」からの植物改良は直接的な応用であるが、それ以外の周辺研究領域への貢献も大きいと期待される。
(4)研究推進委員会の構成及び活動状況の全体的評価と総括
4研究推進委員会の活動状況の全体的評価は、「概ね適切」が3委員会であり、大部分の研究推進委員会の活動は適切に進められていると判断される。しかしながら、評価部会における評価作業の段階においては、研究推進委員会活動の現状や在るべき姿についての問題点がいくつか指摘された。
研究推進委員会の構成とその活動状況については概ね妥当との判断がなされた。ただし、
「植物遺伝子」については、「班研究」的な集合からの脱却とさらに「重点化」を目指した強力な推進が望まれる。いくつかの興味深い成果を強く推進するためには、必要に応じて研究プロジェクトの再編成を行う可能性も念頭に置いて指導することを期待する。
ミレニアム・プロジェクトの3つの研究分野については、他省庁の大型プロジェクトとも連携した「国家レベルでの戦略と成果見通し」なしには本来の目的に十分達することは困難である。ミレニアム・プロジェクト立ち上げの中で拠点形成化(理化学研究所など)の戦略性に比して、各省庁の研究補助金運用における戦略性に関しては十分な議論によって練られていたのか再検討する必要もあろう。特にA「ゲノム研究」は予算的にも労力的にも大きなスケールの研究・開発であり、患者サンプリングも含めて、一貫した幅広い「集約的」研究の練り直しを適宜行う必要があり、厚生労働省の関連プロジェクトや理化学研究所などの拠点との連絡を密にすることが肝要であるとの意見が多かった。
平成12年度開始分
中間報告書 目次
1.序 文
2.研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動等について
3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて
4.事業全体について
日本学術振興会 未来開拓学術研究推進事業