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3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて
- 今回中間評価の対象となった40研究プロジェクトの進捗状況及び成果に対する評価は、附属資料2の中段のグラフにまとめられている。「研究の進展が著しく、予想を超える成果が期待できる」もしくは「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価された研究プロジェクトが多数を占めた。しかし、「研究の実施状況について、検討すべき点が少なくない」と評価された研究プロジェクトもあり、「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価された研究プロジェクトの中にも、何らかのコメントが付されたものが相当数あった。
また、研究開始後2年間の進捗状況等の評価を基に、研究プロジェクトの今後の取扱いを審査した結果が附属資料2の下段のグラフにまとめられている。「研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充を含め特に推進すべきである」もしくは「予定通り推進することが望ましい」と評価された研究プロジェクトが7割を超えたが、「研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある」と評価された研究プロジェクトが3割弱あり、「進捗状況に鑑み、一部縮小・廃止等の変更が必要である」と評価された研究プロジェクトもあった。
以下、評価において特に付された意見や留意を要すると指摘された事項等について述べる。なお、以下で記しているプロジェクト番号は、附属資料1に記載している番号である。
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(1)理工領域
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 光科学
- プロジェクト番号1は、概ね順調に推移してきている。現状では、成果の明確な用途が明らかになっているとはいえないが、今後は技術の確立に向けた着実な観測と成果の集積に力を注ぐべきである。また、構想、方法論、方針について、研究プロジェクトのグループごとではなく、研究分野のグループ間で討論を行うことにより、共通した理念や方法論を構築して結果を相互比較しながら研究活動を推進することが望まれる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があり、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
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 知的で動的なインターネットワーキング
- プロジェクト番号1は、IPネットワークに自己組織化の技術を導入し、ネットワークの構成要素自身に自律的なネットワーク設計と運用の能力を持たせることで、インターネットの規模の拡大や新しい環境下での問題を解決していくことを目指している。研究活動は望ましい状態で進んでおり、特にコメントする必要は認められなかった。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号2は、不規則に変動するネットワーク環境において、さまざまな人々やアプリケーションによるネットワークサービスを、より快適に知的に支援するための基盤技術を開発しており、その進捗状況は概ね順調であるものの、多少検討すべき点がある。具体的には、「やわらかいネットワーク層」に対するエージェント技術の取り組みとメタネットワーキングで研究されている技術との連携、プロトコル上位層と下位層との整合性の問題、スケーラビリティに関してより一層の検討が望まれる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があり、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号3は、現在のインターネットの次世代の次である次次世代ネットワークアーキテクチャの確立をめざした重要な課題を研究している。本研究プロジェクトが研究開発しているネットワークアーキテクチャは、まだ、萌芽的な研究の側面が強いが、次次世代インターネットとしての標準化に貢献していくことにより、21世紀型社会システムのインフラとして、社会、経済の発展に大きく貢献できる分野である。研究活動は望ましい状態で進んでおり、特にコメントする必要は認められなかった。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
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 感性的ヒューマンインタフェース
- 感性的ヒューマンインタフェースの研究は、ヒューマンインタフェースという総合技術の巾を人間の感性面まで広げることを目標としており、情報技術に新しい分野を切り開くものである。プロジェクト番号1は、人間の感性・認知能力・創造性など潜在的には限りなく広がる可能性のある分野において、人のインタフェースに関する研究を認知科学的な手法で研究している。人は、内部知識と外的情報を身体によって関連付けて行動しているという立場から行動の基本様式を探ることにより、感性的インタフェースの設計指針の確立を目指しており、研究の進捗状況は概ね順調である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号2は、人間と同様な感性を備え、マルチモーダルに対応できる擬人的なヒューマンインタフェースを実現するとともに、その感性基盤機能の開発を行ってきており、その進捗状況は概ね順調である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号3は、感性情報処理という新しい分野において、人間の直感的感性を最大限に活用することを可能にする情報知材の組織化とアクセス技術に関する開発を行っており、その進捗状況は概ね順調である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号4は、人とコンピュータのインタラクションによって感性を触発・増幅することを目的とし、それを可能にする場の実現技術、人間情報計測技術、情報提示、エージェント技術などを開発しており、その進捗状況は概ね順調である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
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 電磁波の雑音レベルの低減
- 高度情報社会を実現するうえで電磁波の利用は不可欠であり、電磁波の雑音レベル低減や電磁波環境の保全は重要な社会問題である。プロジェクト番号1は、電気・電子機器から発生する不要電磁波の抑制とその伝搬メカニズムの解明を目的としているが、研究の先進性及び目的に対するアプローチの有効性を検討すべきである。また、古典的な問題設定だけでは、現在の電磁波環境問題に対処できるかどうかは疑問であり、複雑なシステムでのEMC問題などにも取り組むべきである。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究計画の一部縮小・廃止などの変更が必要であり、経費措置については多少減額が適当であると判断する。
プロジェクト番号2は、ディジタル回路における不要電磁波の計測とその影響の評価について研究している。研究の進捗状況は概ね順調であるが、実用化をめざしてIEC(国際電気標準化会議)などに標準化等の提案をしていくべきである。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号3は、電力システムがそれに接続される機器によって受ける伝導性妨害に関する電力システム側と機器側における電磁環境制御について研究しており、その進捗状況は概ね順調である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号4は、ディジタル回路に起因する不要電磁波の低減を目的としている。これについては産業界でも重要課題として精力的に研究がなされていることから、研究の先進性、民間における研究との差別化などについて検討すべきであるとともに、対象であるディジタル回路を半導体からプリント基板、機器レベルまで広くとらえるべきである。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があり、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
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(2)生命科学領域
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 昆虫特異的機能の発現機構と開発
- 本研究分野の目的は、昆虫という非常に多様性に富み、様々な環境に適応して生息する生物群を対象として、発生・行動・代謝・転写制御・生理活性物質・環境応答などの幅広い観点から、昆虫特異的機能を分子から個体レベルで解析してゆこうとするものである。ショウジョウバエなどのモデル系をあえて用いず、未だ不明な点の多い昆虫種(広く節足動物を含む)を研究対象に用いた意欲的な研究分野である。一方で、全体として昆虫というおおざっぱな概念でのみ結びついていて、焦点が散漫な感も否めない。今後は、5つの研究プロジェクト間の有機的な連携を進めるとともに、非モデル動物を用いることのデメリットを乗り越えて、可能性の高いテーマを重点的に推進し、独創性ある研究成果を目指すことが望まれる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、プロジェクト番号1及び2は予定どおり推進することが望ましい。プロジェクト番号3は研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある。プロジェクト番号4は研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきである。プロジェクト番号5は進捗状況に鑑み、一部縮小・廃止等の変更が必要である。経費措置については、全ての研究プロジェクトにおいて従来規模で差し支えないと判断する。
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 血管新生と分化制御
- 本研究分野は、高齢化社会における重要な問題である血管老化、動脈閉塞症、さらにはがんに対する治療の基盤となる課題がテーマである。「基礎から臨床へ」、「分子から生体へ」とバランス良く研究プロジェクトが構成されているとともに、研究推進委員会は研究分野全体を詳細にわたり良く把握していることから、概ね妥当な研究推進活動が行われていると判断される。ただし、プロジェクト番号1については、大型プロジェクトとしての高いレベルの成果につなげるべく、研究計画・到達目標の再検討を要する。また、全体的にこの研究分野は世界的に競争が激しく、高いレベルでの研究成果が競われているので、この観点からも本研究分野からさらに高いインパクトを持った研究成果が生み出されることを期待する。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、プロジェクト番号1は研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があり、研究プロジェクト2、3、4は予定どおり推進することが望ましい。経費措置については、全ての研究プロジェクトについて従来規模で差し支えないと判断する。
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(3)複合領域
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 アジア地域の環境保全
- プロジェクト番号1によるソロモン諸島、中国・海南島、沖縄列島の三つの地域を対象とした文化的社会的特性に応じた開発・環境保全状況を六つの側面から類型化する試みは、意図した成果を挙げている。一方で、開発・環境保全計画マニュアルの作成は、具体的ガイドラインとして野心的かつ重要な企画ではあるものの、その道筋が見えてこない。今後においては、研究成果をどのように調査地域に還元していくかを研究計画のなかで明確にしたうえで、当初の構想に沿って研究活動を推進することが大切である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究成果が期待できるものとして予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
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 強磁場下の物質と生体の挙動
- 本研究分野は、世界に先駆けて物質や生体挙動への強磁場の影響に的を絞り、まとまったチームを組織して探索的な研究を展開しており、真に時宜を得た未来開拓にふさわしい企画であり、その研究成果が期待される。
プロジェクト番号1は、「電磁界が発がん性などの生体影響をもたらすか」という一般的な疑問に答えることを第一目標としているが、単に現象論的な取り組みだけではなく、各種のDNA修復遺伝子や転写因子との相互作用、X線や薬剤、熱ショックなど他の要因との複合暴露の効果などについても調査しており、磁界の作用機構に関して興味ある結果を得つつあることは大変に結構なことである。この方向に向けての更なる発展が期待されるとともに、ニーズがあれば企業等で広範かつ迅速に応用されることの期待も大きい。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきであり、経費措置については充実すべきであると判断する。
プロジェクト番号2は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある。本研究プロジェクトの目的は、国際的にも例を見ない強磁場を用いた磁気分離による環境浄化や資源循環利用への適用を図るものである。磁気分離の新技術の開発とその実用化の研究については、自治体や企業との共同研究により新規事業を創出しつつあり、また、多くの特許申請も行われていることから、研究成果が環境産業を通して社会に貢献できるものと期待される。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号3、4、5の各研究プロジェクトは、探索的な研究であり、試行錯誤しながら進めていく研究分野であるだけに、更なる研究成果を挙げるためには、その新しい研究成果の発展に応じて、柔軟性をもって研究内容の重点の移行までを考慮に入れながら進める必要がある。これからの研究計画においては、目標の絞込みについても十分に留意すべきである。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
本研究分野の総括としては、世界に例を見ない企画であるだけに、試行錯誤があったり結果的には研究成果なしとの結果を得ることは致し方ないことであると考える。しかし、初めての研究成果であるだけに、仮に実りのなかった結果にしてもそれなりの意味があるので、何らかの形で世間の目に触れるように残しておく必要があると考えられる。今後、研究の進行とともに研究成果の整理や問題の絞込みについて柔軟性を持って取り組むことが望まれる。また、新しい研究成果に応じて、臨機応変に基礎分野の専門家の協力を得ることなども考慮に入れて、学問的基盤を強化しながら発展を目指すことも望ましい。
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 外科領域を中心とするロボティックシステムの開発
- 本研究分野の目的は、手術の対象となる臓器や病巣の多次元画像による術中ナビゲーションシステムの開発とロボティックシステムの開発であり、消化器外科領域、整形外科領域と工学の協同による研究が推進されている。個々の研究プロジェクトの研究成果にはややばらつきが見られるが、既に臨床への応用が始まっているものもある。
プロジェクト番号1及び3における研究成果は、国際的水準に近づいているところであり、研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。しかし、2つの研究プロジェクトで行われている骨格系手術ロボティックスシステムに関する研究については、今後、統合の方向が望ましい。
プロジェクト番号2及び4については、既存技術との差異と今後の実用化を前提として、既存の手術支援用マスタースレーブマニピュレーターとの差別化を明確にすべきである。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、予定どおり推進することが望ましく、経費措置については従来規模で差し支えないと判断する。
プロジェクト番号5は、新規開発技術としての独創性に今ひとつ乏しく、open MR環境及び遠隔医療における通信規格に係る安全性の確立とともに、社会的、法的側面からの検討が必要であると考えられる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があり、経費措置については多少減額が適当であると判断する。
本研究分野においては、研究プロジェクト全体としては概ね順調に研究が推進されているが、これまでに研究成果が得られていない研究プロジェクトについては、一部の重点化を図るなどして、より一層の研究の推進が図られることを期待する。
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(4)産学協力研究委員会関係
- 8研究プロジェクトのうちの4研究プロジェクトに対して現地調査を実施した。その結果、研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、プロジェクト番号1は研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきである。プロジェクト番号2、3、5、6、8は予定どおり推進することが望ましい。プロジェクト番号4及び7は研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある。経費措置についてはプロジェクト番号1、2、4は充実すべきであり、プロジェクト番号3、5、6、7、8は従来規模で差し支えないと判断する。
今回の中間評価では、通常のヒアリングに加えて、4研究プロジェクトに対して現地調査を実施した。これは、特に問題があるから現地調査をするという姿勢からの実施ではなく、より良い研究プロジェクト評価へ向けての一手段という位置付けで行われた。現地調査により、より詳細な研究プロジェクト目標と成果及び今後への取り組み姿勢が明らかとなり、評価の質を一層向上することが出来たように思われる。このようなことから、対象の研究プロジェクト数が多い場合は実施困難なことも予想されるが、できる限り現地調査を実施することが望ましいと考えられる。
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平成11年度開始分
中間報告書 目次 |
1.序 文 |
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2.研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動等について |
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3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて |
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4.事業全体について |
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