| |
3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて
- 今回中間評価の対象となった26研究プロジェクトの進捗状況及び成果に対する評価は、附属資料2の中段のグラフにまとめられている。「研究の進展が著しく、予想を超える成果が期待できる」もしくは「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価されたものが多数を占めた。しかし、評価部会委員又は評価協力者からは、「研究の実施状況について検討すべき点が少なくない」と評価された研究プロジェクトもあり、また「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価された研究プロジェクトの中にも、何らかのコメントが付されたものが相当数あった。
また、研究開始後2年間の進捗状況等の評価を基に、研究プロジェクトの今後の取扱いを審査した結果が附属資料2の下段のグラフに集計されている。26研究プロジェクトのうち、「研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充を含め特に推進すべきである」、もしくは「予定通り推進することが望ましい」と評価された研究プロジェクトが7割近くに上ったが、「研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある」と評価された研究プロジェクトが3割強あり、「進捗状況に鑑み、一部縮小・廃止等の変更が必要である」と評価されたものもあった。
以下、評価において特に付された意見や留意を要すると指摘された事項等について述べる。なお、以下で記しているプロジェクト番号は、附属資料1に記載している番号である。
|
|
-
(1)理工領域
-
 革新的未来型エネルギー生成・変換の方式、材料、システム化
- プロジェクト番号1は、本研究の内容は原子力を対象としており、放射線に対する耐性を検討する基礎的材料研究と、将来の原子炉として超臨界水原子炉の開発を目指す研究が中心である。前者については、従来からの研究の継続的な研究内容の成果は得られているものの、本研究プロジェクトとして新規性のある成果を得るには至らず、論文発表数が少ないと評価された。後者については、目標の具体性に欠けており、国際会議の実績などからみてリーダーシップを持って推進しているとは思えないと評価された。今後の2年間で到達できる目標の設定を明確にし、重点化を図って成果を挙げるよう努力することが望まれる。経費措置については多少減額(10%程度)が適当であるとされた。
-
-
 エネルギー利用の高効率化と環境影響低減化
- プロジェクト番号1は、将来の輸送用エネルギー確保は重要な課題であり、これを環境に大きな負荷を与えること無く合成する研究開発を行っている。この研究プロジェクトでは新たな触媒の発見を主要研究課題としており、すでに成果が得られつつあると評価された。有用な触媒の探索のためには、熱意及び綿密な計画とともに可能性を見極めながら今後の計画を修正する必要があり、そのためには研究プロジェクト外からの助言を積極的に求めることが望まれる。環境影響低減化が目的であるにもかかわらず、合成における炭酸ガス収支の検討が欠けているのではないかという指摘があった。計算化学によるコンビナトリアルな探索については未だ研究開発に利用できる段階には至らず、今後の努力が必要である。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては予定通り推進することが望ましいと評価され、経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 計算科学
- プロジェクト番号1は、ヒトゲノムなどの先端科学研究に関する我が国の遅れを挽回する可能性を持つ重要な分野を扱っている。世界的に見るとIBM社が「1ペタフロップスマシンを2004年までに完成し、300個の蛋白の立体構造のシミュレーションを8ヵ月ないし1年で行う」と宣言し、開発速度を加速している情勢にある。したがって本研究の一層の推進が望まれる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充を含めて特に推進すべきであると評価された。また、研究体制を格段に充実することが望まれるという観点から、経費措置については50%程度の増額を提案することとなった。
-
-
 光科学
- プロジェクト番号1は、同様の研究が同様の方法で世界中で行われている中で、この研究プロジェクトの成果が最前線にあることは認められるが、これらはどちらかといえばこのチームの努力によるものであり、手法そのものに新規性があるわけではない。今後は、いかに普遍的影響を及ぼす独創的成果を生み出すかについての検討が必要である。また、得られた研究成果をどのように活かすかについての検討も望まれる。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価されたが、経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
プロジェクト番号2は、分子メスの研究開発そのものは非常に興味あるテーマであるが、従来までに得られた研究成果としては発表論文が少なく、また引用論文も極めて乏しい。これらの結果をもとにして考えると、この研究プロジェクトが2年後に大きな成果に到達する可能性は極めて少ないと予想せざるを得ない。この結果、研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究計画の一部縮小・廃止などの変更が必要であると評価され、経費措置については多少減額(30%程度)が適当であるとされた。
プロジェクト番号3は、研究が非常に活発に行われており、望ましい状態で進んでいると評価され、特にコメントする必要は認められなかった。研究プロジェクトの今後の取扱いとしては、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきであると評価され、経費措置については充実すべき(20%程度)であるとされた。
-
-
|
-
(2)生命科学領域
-
 高次脳機能
- プロジェクト番号1は、研究課題が感覚、認知、学習記憶などの脳の基礎的理解であり、将来の脳神経系医学への貢献に欠かせないものであると考えられる。計画の推進状況は全体的に妥当で指導も適切と考えられるが、バイオロジーの面により焦点を絞るべきという意見も出された。
今後の取扱いについては、予定通り推進することが望ましいと評価され、経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 細胞シグナリング
- 細胞シグナリングは国際的競争が激しい一方で、成果の波及効果が高い領域である。プロジェクト番号1は、インスリンを中心とするシグナル伝達機構に多くの実績があり、さらに独自の実験系を用いて研究を推進している。今後は、インスリンを中心とするシグナル系の成果に関する個体レベルでの展開への期待が述べられた。活動状況は、生命科学領域での評価対象8研究プロジェクトの中で最も高く評価され、特に推進すべきと評価され、経費措置については充実すべきであるとされた。
-
-
 成人病−遺伝素因と環境因子の解明
- プロジェクト番号1及び2は、両研究プロジェクトとも研究課題の設定は概ね適切であり、予定通り推進することが望ましいと評価されたが、プロジェクト番号2は、キメラマウスの解析がやや遅れているとの意見が出された。また、プロジェクト番号1は、ES細胞を用いた血管細胞の分化機構の解明と臨床応用に必要な基礎技術の開発が期待されるとの意見があった。
経費措置についてはそれぞれ従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 遺伝子発現制御ネットワーク
- プロジェクト番号2及び3は、予定通り推進することが望ましいと評価された。プロジェクト番号1は、遺伝子の発現制御に関する新たな観点に乏しいとされ、研究の焦点をより明確にして重点化を図る必要があると評価された。また、プロジェクト番号4は、SR蛋白質と核内各種蛋白質の相互作用の観点からは評価できるが、研究のアプローチ方法など総合的に見て、より一層焦点を絞る必要があると評価された。
経費措置についてはそれぞれ従来規模で差し支えないとされた。
-
-
|
-
(3)複合領域
-
 再生医工学
- プロジェクト番号1は、大きな役割の一つは、先行している研究プロジェクトで開発された再生組織の力学特性、界面特性、微細構造特性等の評価であるが、現状では、その役割を十分に果たしているとは言い難い。
研究プロジェクトの各論としては、非常に興味ある研究課題が選ばれており、それぞれ概ね順調な成果を挙げている。しかし、再生医工学分野全体として見た場合の各研究課題とその成果の相互の関連性など、全体の整合性を考慮して研究の重点化を行うことにより、研究プロジェクト全体として、より一層の成果の向上が期待できるとされ、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 生体の計測と制御
- プロジェクト番号1は、4チームの相互の関連性が明瞭ではなく、全体としてどこが最も特徴となるのかが不明である。一つ一つの個別テーマでは、世界的に著しく研究が進められているので、このままでは5年間でどこを残したいのか、書面では必ずしも明確ではない。プロジェクトリーダーが的を絞って牽引していくことが期待される。
未来開拓の研究では、網羅的にいろいろなことを行った、あるいは行うというより、何か一つでも著しく本質的なイノベーションを期待する。プロジェクトリーダーは近接場光顕微鏡を特に取り上げるようであるが、この部分だけでも生体系分析の観点から今まで非破壊分析ができない、あるいは観測が容易ではない対象を分析・測定できるように問題をいくつか解決できれば高く評価したい。
新規な分子認識素子については成果を挙げているが、全体的に安定性への検討が遅れている。また、先端デバイスを用いたバイオセンサーの設計については、AFM/SNOMシステムでは再現性に問題があり、安定性への考察が難しいとしているが、その解決策が研究計画に盛り込まれていない。
以上のようなコメントが指摘されたが、研究は概ね順調であり、予定通り推進することが望ましいと評価され、経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 環境負荷の影響評価と軽減
- プロジェクト番号1は、基本コンセプトとしてのポーラス構造及びボイドの効果はどこまで明確にできるのか疑問である。また、ポーラス型高密度居住の有用性や有効性を確認するためのクライテリアはどのように設定されるべきかについての考察が明らかでない。また、高温多湿気候地域での人間の行動特性が日本人のそれと異なる点は考慮しなくてよいのか、その地域の研究者との協力関係を通じた文化的側面の情報収集はなくても大丈夫なのか、などの疑問点が指摘された
本研究プロジェクトのスコープには含まれていないが、途上国の都市化、高層住宅化には、前提としての水のライフラインや廃棄物の収集システムの確立がある。自然と人工換気が組み合わされる方法がこの研究の重要点であるが、家庭厨房からの悪臭対策はどのように配慮されているのか。また、高層住宅化の場合、天井−床の高さが浅くなると空気・熱移動に問題を起こす。日本の住宅はこの点で失敗しているが、ハノイの例ではどのように配慮されるのか。ハノイの冬季はかなり気温が下がるが、冬季の室内温熱条件をどのように配慮しているのか。
以上のようなコメントが指摘されたが、研究は概ね順調であり、予定通り推進することが望ましいと評価された。経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
-
-
 アジア地域の環境保全
- プロジェクト番号1は、研究の枠組みに基づいて、現地の問題解決を目的とした実践的な課題の検討や現地での実験をいくつも行っている。しかしながら、対象地域における個別の課題の解決をどのように統合して、最終目標たる上位の共生原理の提案に至るのか、現時点ではその道筋は見え難い。
これまでの研究成果では、森林の伐採が物質循環と生態系を破壊し、持続的生物生産性を低下させたことを具体的に指摘している。この成果は評価に値するし、ローカルな問題ではなくグローバルな問題として把握できると思われる。しかしながら、未来開拓学術研究推進事業として、どのような生活様式をとれば、森林の伐採を防ぎ、循環型の社会を維持できるのかについて具体的に提案してほしいとの指摘があり、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価され、経費措置として多少の減額(30%程度)が相当であるとされた。
-
-
 電子社会システム
- 4研究プロジェクトのうち、プロジェクト番号1及び4は、成果が十分期待できるもので、予定通り推進することが望ましいと評価され、経費措置についてはそれぞれ従来規模で差し支えないとされた。
プロジェクト番号2は、「情報市場における重要課題解決の法モデルの構築」を目的としているが、解決の対象となる課題の具体的内容の記述がなく、さらに、「知識ユニット」や「情報価値」などが未定義のままに、説明や議論が抽象的に展開されている。そのため、研究状況等報告書の範囲では研究実施状況がほとんど理解できないという問題点がある。また、本研究はプロジェクトリーダーが提唱した「コピーマート」の法モデルを基盤にした研究プロジェクトであることから、発表論文のほとんどがプロジェクトリーダーのものである。共同研究の実を挙げるためにも、今後は研究分担者にも積極的な研究成果の公表を望みたい。今後の取扱いとしては、予定通り推進することが望ましいと評価され、経費措置については従来規模で差し支えないとされた。
プロジェクト番号3は、電子化がこれからの資産市場、産業と企業、市場と政府に与える影響について検討するものとなっているが、すでに具体的・現実的に現れている影響の実体調査がほとんど十分に行われていないと指摘され、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価され、経費措置として多少の減額(10%程度)が相当であるとされた。
-
-
|
(4)産学協力研究委員会関係
- 4研究プロジェクト全てに対しヒアリング及び現地調査が行われた。その結果、プロジェクト番号4は、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充及び経費の充実(30%程度)も含め特に推進するべきであると評価された。
プロジェクト番号1及び2は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
また、プロジェクト番号3は、研究を進めていく上で、この分野が企業の開発も進んできているとの認識のもとで、今後外部の企業と競争するようなディスプレイプロトタイプの実現を目標とするのではなく、実用化へ向けての最重要基盤技術の実証等に焦点を絞ることが必要である。そのため、一部研究内容の整理が必要であると指摘され、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価され、本研究プロジェクトの推進を積極的に支援する観点から、プロジェクトリーダーからの経費拡充要求があれば格別の配慮(増額20%程度)をすべきであるとされた。
今回の中間評価では、通常のヒアリングに加えて、すべての研究プロジェクトに対して現地調査を実施した。これは、特に問題があるから現地調査をするというスタンスからの実施ではなく、より良い研究プロジェクト評価へ向けての一手段という位置付けで行われた。現地調査により、より詳細な研究プロジェクト目標と成果、今後への取り組み姿勢などが明らかとなり、評価の質を一層向上することが出来たように思われる。評価対象の研究プロジェクト数が多い場合は実施困難なことも予想されるが、できる限り現地調査を実施することが望ましい。
|
| |
 |
平成9年度開始分
中間報告書 目次 |
1.序 文 |
 |
| |
2.研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動等について |
 |
| |
|
3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて |
 |
| |
4.事業全体について |
 |
|
|