| |
4.事業全体について
- 昨年度の研究評価委員会「中間評価」報告書において、本事業について多くの問題点を指摘したが、それらに対する「対応」にも配慮しながら、本年度評価委員会で論議された問題点を以下に記す。
-
|
-
(1)研究分野及び研究プロジェクトの選定について
- トップダウン方式を採用する本事業の成否は、研究分野や研究プロジェクト選定の適否にかかっているところが大きい。ここではこれらの選定に関して、評価部会、評価作業グループの委員から指摘された問題点や留意点を示しておく。
-
ア.研究の特色ならびに目標の明確化
- 評価部会や評価作業グループの会合において、本事業で推進されている研究の特色や科学研究費補助金または他省庁の研究事業による研究との重なりがしばしば話題になった。また大部分の研究が平均点には達しているものの、本事業に真にふさわしい先見的な研究や将来に向かって夢のある創造性豊かな研究はむしろ少ないとの意見も多かった。
こうした点からみて、研究分野や研究プロジェクトの選定方法を、これまで4年間の実績をもとに再検討することは、本事業の今後の発展にとって重要なことと考える。
研究分野や研究プロジェクトの選定に当たっては、少なくとも研究の指向する方向や性格、特色、目標などを明確にし、それを評価に反映させる必要がある。たとえば、研究が基礎志向であるか応用志向であるかを一つの軸に、研究成熟度(萌芽期、成長期、開花・摘果期)をもう一つの軸にとって、両者の組合わせによって研究を大雑把にタイプ分けしておくことも一つの方法と考えられる。たとえば「応用−開花・摘果期」の研究は他に任せ、本事業の対象としないとか、研究推進委員会や産学協力研究委員会によっては「応用−成長期」の研究に重点を置き「基礎−萌芽期」の研究は取り上げないとか、両者の組合せによって本事業の性格や特色について事業委員会の意図するところを明らかにするとともに、それぞれの研究推進委員会ならびに産学協力研究委員会の基本的な位置付けを示すことが可能になるであろう。
-
-
イ.研究分野及び研究プロジェクト選定における閉鎖性と公開性ならびに主体性と客観性
- トップダウン方式は政策目標や事業目的を円滑に効率よく達成する上で優れた面を持っているが、本質的に閉鎖的で客観性を欠く恐れ無しとしない。今後、多くの研究者の共感と支持を得ながら本事業を発展させてゆくためには、研究分野や研究プロジェクトの選考や評価を厳しく慎重に進めるべきことは言うまでもないが、同時に選定過程に、トップダウン方式の長所を活かしながら公開性と競争原理を導入する方策を、積極的に取り入れる必要があると考える。それらについては、昨年度の研究評価委員会「中間評価」報告書においても、“主題を設定した後で一部公募制の採用”、“事前評価制の導入”、“フィージビリティスタディ制の採用”などを提案した。これらについて具体的な検討を進め早期に実現することを強く希望する。
研究分野や研究プロジェクトの選定を、主体性と客観性を調和させながら的確に実施するために、研究動向や研究者についての情報の整備とその利用方策を講ずることも、本事業ならびに日本学術振興会の将来課題として重要と考える。このことは適正な評価を進める上にも参考資料として役立つであろう。
-
-
ウ.今後推進すべき研究分野について−総合化と未来への挑戦
- 昨年度の評価報告書に記した通り、研究評価委員会としては、今後推進すべき研究分野について具体的提案を行うことは、その機能からみて避けることとした。
学術研究の一般的傾向として、既存の分野を超えた総合化の流れが顕著になっている。21世紀においては、これまでにも増して、既存分野の交配による新しい分野の開拓、展開が重要になると考える。こうした流れに配慮することは今後の研究分野選定に当って重要と考える。特に複合領域においては自然科学関係の諸分野間だけでなく、人文社会科学との連携、総合も必要となる。このことは研究推進委員会や研究プロジェクトの構成にも影響を与え、異分野の研究者を加えることの重要性が大きくなるであろう。
研究分野や研究プロジェクトの選定に当たっては基礎と応用、短期的視点と長期的視点、実績重視と将来性重視、着実性と冒険性など複眼的視点に立って、調和に配慮しながら作業を進める必要がある。現実の学術的、社会的要請に応えることも重要であるが、未来に大きな可能性を持つ若い人材と研究分野を発掘し育てることも、本事業の特色を発揮する上で極めて重要と考える。また研究プロジェクトの中に適当なバランスをもって冒険的なものを加えることは、長期的にみて本事業の本来の主旨を達成することに貢献するであろう。
研究分野や研究プロジェクト選定に当たって、科学研究費補助金の成果を取り入れ、その中の優れたものを本事業で取り上げることも評価部会、評価作業グループでしばしば指摘された。
-
|
-
(2)研究推進委員会及び産学協力研究委員会の構成と活動、特に研究評価について
- 研究分野や研究プロジェクトの選定と並んで、研究推進委員会及び産学協力研究委員会の研究評価が適切に行われ、研究推進に活かしていくことが本事業の成果を挙げる上に重要なことは言うまでもない。こうした視点を中心に、各評価部会、評価作業グループで広く指摘された問題点をまとめて示す。
-
- 昨年度の研究評価委員会「中間評価」報告書の中の研究委員会委員とプロジェクトメンバーとの重複についての指摘に基づいて、研究推進委員会の組み直し、評価に当たって外部評価委員を加えるなどの改善が行われたことを高く評価したい。今後も引き続きこうした線に沿った改善が進むと同時に、さらに積極的にそれぞれの委員会の創意工夫によって客観的評価のための体制が強化されることを期待したい。こうした点については、次の「(3)研究評価体制の強化」の項で補足する。
「(1)研究分野及び研究プロジェクトの選定について」の項で述べた線に沿って、総合的な研究テーマや挑戦的な研究分野が加わり、対象が多様化した場合には、研究プロジェクトの期間や研究費も多様化し、研究推進委員会及び産学協力研究委員会の構成や運営についても柔軟に対応することが必要となるであろう。
たとえば「基礎−萌芽的研究」では最初の研究費は少なく、芽が成長するにしたがって増額するなどの機動性が必要であり、また成長するまでに長い期間を要する可能性が大きい。また、挑戦的な未来開拓プロジェクトを推進する場合には、フィージビリティスタディやその評価、研究スタッフの整備などを含めて多様で柔軟な対応が必要となる。そのための研究推進委員会及び産学協力研究委員会の体制の整備が今後の課題となるであろう。
研究プロジェクトに関して、若い研究者の登用や研究者の入れ替えの必要性が指摘されている。また、研究推進委員会及び産学協力研究委員会の運営に関連して委員会間の相互連絡、連携の必要性が指摘されている。このことは異なる研究推進委員会、産学協力研究委員会に属する研究プロジェクト間の連携を促進し、また重なりの無駄を省く上で研究活動を活性化する上に重要であるが、それぞれの研究推進委員会及び産学協力研究委員会の実情に即した判断に待つべき問題と考える。
この項の最後にふれておきたいことは、本事業の推進に当たって研究推進委員会及び産学協力研究委員会の果たす役割は極めて大きく、情熱と責任をもって事業の推進に当たる委員を選び活力と意欲に充ちた委員会を構成することが重要と考える。また具体的に指導や評価を通して研究プロジェクトの推進に深く関わる常任的な専門委員制度を設けることも今後検討すべき課題と考える。この点については評価体制の強化と併せて次の項でふれる。
-
(3)研究評価体制の強化
- 前年度の研究評価委員会「中間評価」報告書において、研究推進委員会に評価に専念する非常勤スタッフとして評価専門委員を置く制度の導入を提言した。本報告書においてはこの制度を評価だけでなく、(2)の項目で述べた研究プロジェクトの活動を常時モニターし、具体的な指導助言を与える研究プロジェクト支援スタッフや次に述べる研究成果を産業界につなぐコーディネーターとしての機能も併せ持つようにすることが望ましいと考える。この意味からは、昨年度の評価報告書で提案した評価専門委員制度を研究支援スタッフ制度と改めることが望ましい。
この制度の成否は、知識と経験と、高い見識と決断力をもった人材を得ることができるか否かに懸かっている。高齢まで活躍する研究者が増加している現在、定年退職した研究者の中から適任者を求めることが、容易になりつつあるように思われる。
-
(4)研究成果の応用展開について
- 研究成果を社会や経済に還元することは、本事業の本質にかかわる重要な課題の一つであり、具体的な特許や企業化への展望が必要である。その際それぞれの研究推進委員会、産学協力研究委員会や研究プロジェクトによってその関わり方に深浅があることは当然であり、産学協力研究委員会関係において特に深いと思われる。いずれにしても、この問題の重要性は関係研究者全般に広く認識される必要がある。
また、特許の取得やその企業化を実現するための支援体制の整備が望まれる。この点については上に挙げた研究支援スタッフ制度の実現を含めて、日本学術振興会の努力に期待したい。
-
(5)その他
- 産学協力系評価部会においては、産学協力系の位置付けや研究の性格付けについて厳しい議論が行なわれているが、この問題は当該部会の議論に俟つことが妥当と考える。
本事業における国際協力の問題が複合領域研究系のプロジェクトと関連して提起されている。今後検討すべき問題としてここに挙げておきたい。
|
| |
 |
平成9年度開始分
中間報告書 目次 |
1.序 文 |
 |
| |
2.研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動等について |
 |
| |
|
3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて |
 |
| |
4.事業全体について |
 |
|
|