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3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて
- 今回中間評価の対象となった89件の研究プロジェクトの進捗状況及び成果に対する評価は、附属資料2の中段のグラフにまとめられている。「研究の進展が著しく、予想を超える成果が期待できる」もしくは「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価されたものが全体の多数を占めた。しかし、約2割の評価委員又は評価協力者から「研究の実施状況について検討すべき点が少なくない」と評価され、また「研究は概ね順調であり、成果が期待できる」と評価された研究プロジェクトの中にも、何らかのコメントが付されたものが相当数あった。
また、研究開始以来の過去2年間の進捗状況等の評価を基に、研究プロジェクトの今後の取扱いを審査した結果が附属資料2の下段のグラフに集計されている。89研究プロジェクトのうち、「研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充を含め特に推進すべきである」、もしくは「予定どおり推進することが望ましい」と判断された研究プロジェクトが7割近くに上ったが、「研究の焦点を明確にして重点化を図る必要がある」と判断された研究プロジェクトが3割弱あり、「進捗状況に鑑み、一部縮小・廃止等の変更が必要である」と評価されたものもあった。
以下、審査において特に付された意見や留意を要すると指摘された事項等について述べる。
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(1)理工領域
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 次世代人工物質・材料の探査的研究
- 4プロジェクト中、プロジェクト番号1、2及び4は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号3は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると指摘され、その内容については、研究推進委員会の検討に委ねることとした。
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 原子スケール表面・界面ダイナミクス
- プロジェクト番号2は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号1は、プロジェクト内の実験グループとの関連は薄く、むしろ他の実験プロジェクトとの交流を盛んにした方がよく、プロジェクト研究として成立するためには、強力な指導原理の基に一体化した組織が構築される必要がある。全体の中身を整理し、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 高度プロセス
- プロジェクト番号1は、新炭素物質創製プロセスに関して顕著な進展が見られ、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきであると評価された。
プロジェクト番号2は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
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 次世代プロセス技術
- 2プロジェクトともに、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。その内、プロジェクト番号1については、この分野の他の研究に比して特徴や特に優れている点を明確にし、本当に人工骨の新しい材料とプロセスがこの研究から生まれるように鋭意努力して欲しい旨の指摘があった。プロジェクト番号2については、本当に未来開拓に相応しいエコマテリアルが生まれ、新プロセスを生むブレイクスルーが可能なのか研究計画を全面的に見直すべきであると指摘された。
全体として、担当研究者が、未来開拓学術研究推進事業の中のプロジェクトを担当しているという意識を、さらに高めてほしいとの意見が出されている。
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 知能情報・高度情報処理
- プロジェクト番号1は、多くの成果を上げていることは高く評価できるが、次の理由で、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。多くの研究開発グループ間の競合が激しいこの分野において、本事業の特色を発揮するため、マルチメディア・コンテンツの高次処理についての大きな枠組みを提案しうる方向など特徴ある研究を推進するの方向に研究方針の再検討が望まれる。
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 マルチメディア高度情報通信システム
- プロジェクト番号1は、予定通り推進することが望ましいと評価された。
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 シンセシスの科学
- プロジェクト番号1は、研究方法について、その理論的背景が独断的で説得性が無いと思われる。また、研究目標についても、期間内に達成できる目標が不明であるとの指摘があり、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 革新的未来型エネルギー生成・変換の方式、材料、システム化
- 3プロジェクトともに研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。プロジェクト番号1及び3については、以前から進めてこられた研究であり、未来開拓学術研究推進事業としての意味が見いだされない。プロジェクト番号2については、フラーレンとナノチューブの両者を対象としているが、研究効率の面から焦点を絞ることが大切ではないかと指摘された。
また、研究推進委員会が指導力を発揮することが望まれると指摘された。
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 エネルギー利用の高効率化と環境影響低減化
- プロジェクト番号3は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号1、2及び4は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。その内、プロジェクト番号1については、水素エンジンの研究と水素精製・製造に関する研究との相互の連携を深めるよう、最終目標を明確化し、計画を再検討することが望まれる。プロジェクト番号2については、基礎学理の究明を目的とし、数多くのサブテーマを研究しており科学研究費補助金の総合研究のようである。未来開拓学術研究推進事業の趣旨に沿って研究の焦点を絞る必要がある。プロジェクト番号4については、サブテーマの総合リサイクルシステムに関する研究グループと他の研究グループとの相互の連携・融合が不十分であり、それぞれの研究グループの目標をはっきりさせ、研究の焦点を絞る必要がある。
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 計算科学
- プロジェクト番号2は、重力やクーロン相互作用が支配する物理系の解析のために専用機を開発し、新知見を得る先駆的な研究を行っており、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め、特に推進すべきであると評価された。
プロジェクト番号1、3及び4は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
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 光科学
- 2プロジェクトともに、予定通り推進することが望ましいと評価された。
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(2)生命科学領域
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 高次脳機能
- プロジェクト番号1及び4は、研究の更なる発展が期待でき、研究の拡充を含め特に推進すべきと評価された。
プロジェクト番号2及び5は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。 プロジェクト番号3は、テーマ自体の困難性もあってか進展が不充分であり、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 細胞シグナリング
- プロジェクト番号1及び3は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号2は、チームのサイズから見て焦点を絞った方が良いのではないかとの指摘があり、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。また、特定の研究者の発表論文における実験再現性に関して疑念が指摘された研究プロジェクトがあり、この問題については研究推進委員会の調査と指導に委ねることとした。
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 生命体の形成機構(生殖、発生など)
- プロジェクト番号1には、「行動様式の発生機構」と「個体及び細胞の大きさの決定機構」と異なる2つの課題があり、研究の中心が途中で前者から後者へ方向転換していることについて疑問視され、どちらかに集中すべきとの指摘があり、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 生体分子の構造と機能調節(構造生物学と機能分子)
- 3プロジェクトとも順調に進み優れた成果を挙げており、予定通り推進することが望ましいと評価された。残された研究期間はさらに目標を明確にして真に国際的な成果を挙げることが望まれる。
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 植物の環境応答機構とバイオテクノロジー
- プロジェクト番号1は、概ね順調に進んでおり、予定通り推進することが望ましいと評価された。
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 感染と生体防御
- 感染症の重要性が改めて注目されている時代であり、成果が期待される分野である。プロジェクト番号1、2及び6は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号3、4、5及び7は検討すべき点が指摘され、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。その内、プロジェクト番号3については、研究成果についてより質の高い雑誌に発表すべきであると指摘された。
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 成人病−遺伝素因と環境因子の解明
- 全ての研究プロジェクトは概ね順調に進んでおり、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
なお、研究の視点として地球全体から見て種の多様性の保存や生態系への影響に問題はないのか、また食品の安全性提示や世界の人口増加に適用可能なのかなどの配慮が必要であると指摘された。
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 ゲノム微生物学
- 重要な研究分野であるが、厳しい国際競争に勝てるのか、我が国の独自性はどこにあるのか心配であるとする意見が多かった。
プロジェクト番号1は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
プロジェクト番号2は、プロジェクト番号1と本来一つでもよいのではないかという観点から、両プロジェクトを合体した上で、研究体制を再構築し重点化を図り、目標を絞る必要があると評価され、縮小・廃止する方が良いとする評価がなされた。
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(3)複合領域
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 生命情報
- プロジェクト番号1及び3は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。プロジェクト番号2は、全体として生命情報の視点が弱く、個々のサブプロジェクトの研究が生体情報工学やヒューマンインターフェイスといった研究の枠から出ていないという印象が強いため、生命の観点を持つオリジナルな研究を行うように研究体制の再編成が必要であると指摘され、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 再生医工学
- プロジェクト番号1は、社会に貢献できる要素が多く、予定通り推進することが望ましいと評価された。ただし、全体としては目標があまりに多岐にわたり、個々の研究の進捗状況には大きな隔たりがみられるため、研究の重要度や国際比較に配慮して研究のターゲットを絞り込む必要があり、例えば、造血系の再生は「使える」形に早急にもっていくことが必要であると指摘された。
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 生命科学と化学的手法の融合による新有用物質生産
- 2プロジェクトともに、国際的に見ても格段に優れた成果を上げており、今後さらに実用化の研究が進めば社会に対する貢献も大きく、今後も研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含めて特に推進すべきであると評価された。
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 生体の計測と制御
- プロジェクト番号1、2及び4は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
プロジェクト番号3は、研究目標とサブプロジェクトとの関係をより明確にすることが必要であり、むしろサブプロジェクト(「SQUIDMEGシステム」・「人工内耳評価システム」の試作)に焦点を絞ることが望ましいと指摘された。また、研究成果が的確にまとめられておらず、研究目標とアプローチをもっと明確にし、プロジェクトに医学・生理学に関連する研究者を加え、研究を推進することが望ましいと指摘され、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
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 環境負荷の影響評価と軽減
- 全てのプロジェクトが予定通り推進することが望ましいと評価されたが、概して論文数、特に国際的な雑誌に掲載された論文数が少ないとの指摘があった。
また、環境問題は各方面にわたって進められているので、その中で未来開拓学術研究推進事業にふさわしい特色や意図を明確にした研究内容が求められ、研究推進委員会が今後も適切な指導を行い、必要な重点化を進めていくことが望まれると指摘された。
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 アジア地域の環境保全
- プロジェクト番号1、3及び4は、予定通り推進することが望ましいと評価された。プロジェクト番号2は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。
この研究分野は数多くの省庁と関連し多面的に研究が展開されているだけに、未来開拓学術研究推進事業としてどのような立場で進めるべきか、基本的な問題点をはっきりさせる必要がある。この研究分野を推進するに当たり、「アジア地域」での環境保全に関する学問的、基本的な問題を捉え、場合によってはその分野の現地の研究者とも協力しながら、次世代に向けての貢献をするよう、この事業として特徴付けることが望ましいのではないかとの意見もある。この種の国際的視点を伴った課題への対応については、少なくとも事業委員会等でさらに具体的に検討することが望ましいとの指摘があった。
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(4)産学協力研究委員会関係
- 10件の研究プロジェクト全てに対しヒアリングが行われた。その結果、プロジェクト番号4、8及び10は、研究の更なる発展が期待でき、計画の拡充も含め特に推進すべきであると評価された。
プロジェクト番号5、6、7及び9は、予定どおり推進することが望ましいと評価された。
なお、プロジェクト番号8及び9は、研究を進めていく上で、一部研究内容の整理が必要であると指摘された。
他方、プロジェクト番号1、2及び3は、研究の焦点を明確にして重点化を図る必要があると評価された。プロジェクト番号1については、産業につながる芽を作り出す新機能開発に向けて重点的に研究を展開することが必要である。プロジェクト番号2については、研究プロジェクトの最終目標の達成と残りの研究期間等を考慮すると、現在の研究対象への展開は得策でなく、複合組織を持つ材料系への展開が必要である。プロジェクト番号3については、現実的に2万個のヘッドがリーズナブルなプロセスで実現できるのか、いかにして現実的に記録再生を実現するのかなどの問題点を詳細に検討する必要がある。また、研究者が限定されたプロジェクトであるので基盤となる研究課題に焦点を当てる必要がある。
研究プロジェクト全体として、これぞ産学協力研究委員会提案の未来開拓学術研究に相応しいと思われる研究プロジェクトが多くないことが評価委員の共通の感想である。
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平成9年度開始分
中間報告書 目次 |
1.序 文 |
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2.研究推進委員会及び産学協力研究委員会の活動等について |
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3.研究プロジェクトの評価と今後の取扱いについて |
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4.事業全体について |
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