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- 事業全体について
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- 未来開拓学術研究推進事業は2年を経過し、実質的な研究成果が出始めている。本事業は全般的には順調に進展しているように思われるが、いくつかの問題点が指摘されている。以下にその概要を述べる。
- 研究推進委員会及びプロジェクトの在り方
ア.テーマ等の設定の在り方
テーマ及びプロジェクトリーダーの設定にあたって、トップダウン方式の重要性は認識するものの、現行の運用方式には少なからぬ問題があることが指摘された。そして今後、全体的にはトップダウン方式の利点は残しながら、より客観的な事前評価を加えて設定することが望ましいという意見が多くあった。例えば、研究推進委員会が構想した多くのプロジェクト候補について、外部の専門家の協力を得て評価を行い候補選定を行う方法、後述の一部公募制の採用、或いは研究推進委員会によって提案されたテーマについて、1年間程度の可能性研究(フィージビリティスタディ)を行い、外部の専門家の評価選別を得る方法等が考えられる。
また、本事業に見られるような大型プロジェクトは、研究の準備、環境整備、遂行及び成果のまとめのステップがテーマ毎に異なり、5年間一律の研究計画にそぐわない場合がある。このため、フィージビリティスタディの期間も含め、研究期間は必要に応じ柔軟に設定できるよう配慮することが肝要であり、このことは研究費のより有効な活用にもつながるものと考える。
イ.サブテーマの設定の在り方
現行の事業においては、サブテーマの設定について多少の混乱が見られる。すなわちプロジェクトによっては、多くのサブテーマが設けられ、それぞれに独立グループが構成されており、結果的に多数のグループから成る班研究形式がとられているものがある。班研究形式となるようなサブテーマの設定の方法は、研究目的、責任分担、研究評価などが曖昧になることが多く、この事業で遂行するプロジェクト研究としては不適切である。サブテーマの数はできるだけ少なくすべきであり、プロジェクトチームは絞られた人数の研究者によって構成されるべきであろう。なお、サブテーマの設定も基本的には研究推進委員会によって判断されるべきものであるが、外部の専門家による評価を得て、取り消しまたは適宜研究者との交代を行うことが望まれる。
ウ.推進方法等の明確化による委員会・プロジェクト間の有機的関係
本事業の成功の可否は、ひとえに研究推進委員会によるプロジェクトの選定とその運営にかかっているといえる。研究推進委員会は、その推進方法等を明確にし、それに従ってプロジェクトを厳選し、事業開始時に推進方法等の趣旨を徹底させる必要がある。さらに研究の進行に合わせて、その進捗状況を常時モニターし、適切な助言を与えてプロジェクトの推進を図るべきである。
エ.研究推進委員会委員とリーダーとの重複について
研究推進委員会によるプロジェクトに対する評価について、やや甘く客観性に欠ける場合が少なくないのは、多くの研究推進委員会において、委員とプロジェクトリーダーとが重複していることと関連していると考えられる。このような場合において、研究推進委員会の自己評価に客観性が多少とも欠落するのは当然であろう。従って、最終判断は各委員会に任せるとして、研究推進委員会の委員は原則としてプロジェクトに参加せず、プロジェクトに参加する委員は、研究評価に参加しないようにすべきである。
オ.プロジェクトに対する研究推進委員会の的確な評価の確保
研究推進委員会によるプロジェクトに対する評価にかかる上記措置とともに、例えば、以下に示す評価専門委員制度を導入することを要望する。
- 各プロジェクトの活動を随時的確に評価し、研究を円滑に推進するために、研究推進委員会に評価に専念する専門委員を置く。
- 評価専門委員は、当該分野について優れた研究業績と高い見識を備えた研究者を、例えば定年退職者を中心に選ぶ。
- 評価専門委員は研究推進委員会に出席し、担当プロジェクトの研究活動の状況について随時報告すると共に、年に2回程度報告書を提出する。
- 評価専門委員は評価部会にも出席し、担当プロジェクトの審議に参加することができる。
この制度を設けることによって、研究評価をより具体的にし、実体に即した的確なものとすることができると同時に、評価に関する知識、経験、情報の蓄積が可能となる。
カ.プロジェクトの公募
テーマ及びプロジェクトリーダーの設定に当たっては、トップダウン方式による現在の方法に加えて、何らかの第三者による評価選別の段階の導入が望ましい。その方策の一つとして公募制の導入は考えられることであり、平成9年度には一部実施されている。分野の性格によっても異なるが、トップダウン方式の利点と公募方式の利点を共に取り入れることにより効果が上がる場合については、例えば、研究推進委員会において研究推進計画を定めた後、推進すべきプロジェクトの中の幾つかをトップダウン方式によって選定し、他の幾つかのプロジェクトについて公募を行うという、一部公募制が考えられる。
キ.コアメンバーの在り方について
プロジェクトリーダーのもとで研究の遂行に中心的役割を果たす主たる研究協力者として、それぞれ若干名のコアメンバーが置かれているが、コアメンバーに対する考え方は、プロジェクトによってまちまちであり、コアメンバー自身もその役割について明確な認識をもっていない場合がみうけられる。この制度が空洞化しないように、その性格や機能について基本的な考え方を明確にしておく必要があると考える。
- 今後推進すべき研究分野について
研究評価委員会としては、今後推進すべき研究分野について具体的提案を行うことは、その機能からみて避けることとした。事業委員会が中心となって、本事業の実績と経験の蓄積に配慮しながら、短期的と長期的、基礎と応用など複眼的視点に立って適正な分野の選定が行われることを期待する。その際、次項の分野選定についてのコメントに留意していただきたい。
- 研究分野の選定について
研究分野の選定に当たっては、その分野が萌芽・成長期、開花・摘果期の二つのいずれにあるかを把握し、バランス良く配置することが求められる。未来開拓学術研究推進事業の財源である出資金の性格上、重点は後者にあると考えられるが、学術研究の幅広い振興を目的とする観点から、これのみに片寄ることは適当でないと考える。
なお、分野を上述の分類の代わりに、新分野発掘型、分野構築型の二つに分けることも産学協力分野においては有効と考えられる。
また、その分野が研究のどの時期に当たるかに応じて、当該分野の研究目標、推進方策等を出来るだけ明確に設定しておく必要がある。その際、文部省科学研究費による研究等との関連を十分に考慮することが望まれる。
また、現在急速に進展している分野でわが国から優れた業績を出している人材を選定するものと、未来に高い可能性を持つ人材を発掘する分野とをバランス良く配置することが求められる。後者が行えるのがトップダウン方式の意義の一つである。この場合、事業委員会及び研究推進委員会の責任とリーダーシップはより重要となり、リスクが大きくなるが、独創的な若手研究者を発掘し、格段に優れた研究者を育成することは極めて重要であり、本事業がそうした面にも貢献することを期待する。
さらに、研究分野の選定にあたっては、その選定理由をはっきりと明示することが望ましい。明示することはより適切な評価の条件であり、制度の透明性を増加させることともなる。また、日本固有の発想に基づく独創性に富んだ研究分野を意識的に選考することが望まれる。
本事業で取り上げるべき分野の数は多く、重要な研究分野でまだ取り上げられていないものも少なくない。研究分野の選定に当たっては、可能な限り研究分野の候補を網羅してから、選定理由を明確に示しつつ優先順位をつけて、順次実施していく方法を採ることが望まれる。
なお、以上述べた留意事項の多くは、各研究分野内のプロジェクトの選定に当たっても該当することを付言しておきたい。
- 産学協力研究委員会及びプロジェクトの在り方について
プロジェクトの成否はプロジェクトチームの力量はもとより、産学協力研究委員会の指導力が重要である。産学協力研究委員会は委員会としての経験や蓄積の中から本事業に最もふさわしいテーマと研究者を提案する立場にあり、委員会による十分な検討と事前評価、また、プロジェクトに対する日常的な指導、助言が必要である。
プロジェクトの選定に際しては、総花を排して研究の焦点を絞り込み、目標を明確に設定する必要がある。プロジェクトメンバーについても絞り込む必要があるが、若手の研究者の発掘と産業界の研究者・技術者の参画および役割分担には適切に配慮すべきである。
往々にして、本事業と文部省科学研究費との違いがプロジェクトリーダーやメンバーに十分理解されていないとの印象もあったが、この領域のプロジェクトについては、産業化、実用化を十分意識したプロジェクト構成として特徴を出すべきとの意見とともに、画期的な成果を求めた独創性の高い研究にも配慮すべきとの意見も出され、産学協力研究委員会によるプロジェクト提案を選定するにあたり、今後検討すべき課題と思われる。
また、中間評価にあっては委員会以外の専門家による外部評価を組織し実施すべきであり、例えば国際的なシンポジウム等の機会を活用し、外部に評価を求めるなどの努力が望まれる。
- その他
各評価部会で議論された項目のうち、本報告書でこれまでに取り上げられなかったが、本事業の将来にとって重要と思われる点を記しておく。
研究成果の社会経済への還元にあたっては、特許等の知的所有権の取得や国際標準化への貢献を意識的に行う努力が必要であり、そうした努力を支援する組織を設けることが望まれる。また研究成果の管理ならびに普及を担当する部署の整備も重要である。
産学協力系のプロジェクトは多岐にわたっているので、個々の研究目標に対する達成度などは客観的に評価できるにしても、プロジェクト相互の相対的評価は困難である。これをどのように効果的かつ実際的に行うかは今後の重要な課題と考える。
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