平成8年度開始分

未来開拓学術研究推進事業
(平成8年度開始分)に係る
「中間評価」結果への対応について 

  1. はじめに   
    1.  
      事業の目的と中間評価実施の趣旨について

       本事業は、21世紀を展望し、地球規模の問題の解決、経済・社会の発展、豊かな国民生活の実現等を目指し、我が国の未来の開拓につながる創造性豊かな学術研究を大学主導により重点的に推進することを目的として、平成8年度に発足した。
       各プロジェクトの研究期間は原則5年とし、プロジェクト平均年間約1億円にのぼる経費は、国からの出資金を財源とするものである。
       事業の実施に当たっては、事業委員会及び領域毎の部会を設け、そこで審議選定された推進分野毎に研究推進委員会を設置し、同委員会がプロジェクトを企画立案するという、従来にない研究者によるトップダウン方式を基本として採用した。また、日本学術振興会において従来より組織運営されてきた産学協力研究委員会及び研究開発専門委員会からも、それぞれの研究の蓄積の上に、本事業の趣旨に照らし適切なプロジェクトを企画提案してもらう方法をあわせ実施した。
       本事業に課された任務を的確に遂行し、社会からの期待に十分応えるべく、事業発足当初より、中間及び事後の評価を行うことを定めており、平成10年度、最初の中間評価を行うこととなった。この中間評価においては、研究開始後2年を経過した平成8年度開始のプロジェクトとともに、同プロジェクトを企画立案した研究推進委員会等の委員会活動についても評価の対象としている。
       研究推進委員会等の組織は、日常的な助言・支援等とともに、定期的なプロジェクトに対する評価活動を行うが、これに加えて、中間評価においては、別途、外部の専門家を中心とする研究評価委員会を組織し、同評価委員会が評価を行うことにより、慎重且つ客観的な評価を保証し、研究等の見直しを通じて事業の効果的な実施を図ることを目的としている。
       今次評価においては、研究が遂行中であることに鑑み、研究の進捗状況等を中心に評価を行い、特に優れた研究の一層の推進と、改善すべき問題点の指摘等に重点が置かれている。 
       
      中間評価報告書について

       研究評価委員会においては、本事業の趣旨・目的や運営方法等を十分理解され、短期間のうちに、極めて適切且つ周到な評価を実施していただいた。
       評価においては研究推進委員会等の活動、プロジェクトの進捗状況等に加え、事業全体にわたり幅広く目を向けていただき、事業発足当初に描いた評価の趣旨が十分に活かされていると考える。
       事業委員会及び各領域部会は、この評価報告書を基に、評価結果の内容を検討し、今後の対応を審議した。高く評価されたプロジェクトについては、経費の充実を含め一層の推進を図り、問題があると指摘された事項については、適切な見直し、改善等を図る予定である。また、指摘された内容と意見を異にする場合については、評価委員と研究推進委員会等との間で意見の交換を行う機会を持つことが必要と認識しており、早急にかかる機会を設け、相互の理解を深めることとしている。このことは、本事業の推進と深化、ひいては我が国の学術研究の発展にとって極めて重要であると考える。
       今後とも、事業委員会と研究評価委員会が確固とした信頼関係と健全な緊張関係を保ちつつ、協同して学術研究の推進に当たることが、本事業の更なる充実・発展を可能にすると確信する。 


     
  2. 評価結果への対応措置 
    1.  
      研究推進委員会及び関係プロジェクトについて

       今回評価対象となった17の研究推進委員会による研究推進の構想・方策等の立案及びプロジェクトに対する評価等の活動については、極めて適切である又は概ね適切と評価された委員会が過半を占めたが、やや不十分であるとされた委員会も多くあった。
       多くの委員会が指摘を受けた問題点としては、研究推進委員会の委員とプロジェクトリーダーが重なっており、委員会がプロジェクトを適切に指導、評価できにくい体制になっているとするものである。
       研究推進委員会は自らの立案・構想により研究を推進する責務を負っており、その意図するところをプロジェクト遂行者に徹底するためには、研究推進委員会にリーダーを参画させることが効果的であるとの判断もあり、事業を推進する立場からもこれを是とした経緯がある。
       しかし、研究推進委員会によるプロジェクト評価においては、客観性・透明性の確保を図る必要があり、プロジェクト評価の際にリーダーを兼ねる委員を除いて評価を実施した委員会もあった。今後はかかる措置をさらに徹底し、所属するプロジェクトに対してより客観的な評価が継続して実施できるよう、研究推進委員会委員の交替、もしくは外部の専門家による評価協力など、必要な改善を速やかに実施することとした。「再生医工学」及び「生命科学と化学的手法による新有用物質生産」の研究推進委員会では、リーダーを兼ねる委員の交替等の措置をとることを既に決めており、他の委員会についても、プロジェクトの進捗や成果の研究評価において外部の専門家に評価協力を得るなど必要な措置を講ずることとしている。
       プロジェクト98件についての評価では、研究のさらなる発展が期待でき特に推進すべきと高い評価を受けた5件のプロジェクトについて、研究計画の拡充等を図るなど一層の推進を図ることとし、予定どおり推進することが望ましいとの評価を受けた65件のプロジェクトについては、予定どおり推進することとした。
       他方、研究の焦点を明確にし重点化を図る、もしくは研究の一部を縮小・廃止すべきと指摘された28件のプロジェクトについては、評価報告書の指摘及び評価委員より個別に提示されたコメント等の趣旨に照らし、当初の研究計画の見直しを行うなど、あらたな研究方針のもとに研究の遂行を図ることを徹底した。この中には、プロジェクトの内容が近似してきているため、むしろ一体的に研究を進めることが適当との指摘にそって、2件のプロジェクトを一つのプロジェクトに再構築したものも含まれている。
       なお、上記のうち、少数ではあるが、指摘の趣旨が研究当事者の見解と理解を異にするプロジェクトについては、既に述べたとおり、評価委員と研究推進委員会との意見交換の機会を設け、相互の理解を図り、研究の一層の充実・発展に資することとしている。 
       
      産学協力研究委員会及び関係プロジェクトについて

       今回評価対象となった17の産学協力研究委員会のうち、本事業に関連した委員会活動については極めて適切である又は概ね適切であるとの評価を受けた委員会が大半であった。しかし、産学協力研究委員会の組織が関係する研究者を数多く委員として含む組織であることから、委員会によるプロジェクトの評価に客観性が乏しくなる危険性を共通に指摘されている。さらに、プロジェクトの立案にあたっても、上記組織構成に起因して、幅広い研究内容を取り込む傾向となりがちであるとの指摘がある。
       産学協力研究委員会によるプロジェクトの評価においては、外部の専門家を、例えば、国際シンポジウム等を利用して確保し、評価を実施すべきとの研究評価委員会の提案は極めて有効であると考えており、指摘の趣旨にそって今後各委員会に改善を求めることとした。
       また、プロジェクト19件についての評価では、研究のさらなる発展が期待でき特に推進すべきと高い評価を受けた3件のプロジェクトについて、研究計画の拡充等を図るなど一層の推進を図ることとし、予定どおり推進することが望ましいとの評価を受けた8件のプロジェクトについては、予定どおり推進することとした。
       他方、評価委員会からの個別コメントにおいて、研究内容等の改善を求める指摘が多かったことは、上述の委員会の組織構成によるものと考えられる。今回の指摘の趣旨を踏まえ、特に経費の見直しを含めて研究の重点化を図るべきとの指摘があった3件のプロジェクトを含む8件のプロジェクトについては徹底した研究の見直しを図り、焦点の絞られた研究の推進を求めることとした。 

      事業全体について

       本事業の実施全体についても、より高い客観性の確保等多角的な視野から適切な指摘をいただいた。この中には、今後時間をかけて事業委員会において検討すべき課題もあり、また、研究評価委員会との調整が必要な事項も含まれていると思われる。主な指摘事項について今後取り組むべき視点等をまとめると以下のとおりである。
       

        ア.研究推進委員会による今後のプロジェクト評価の在り方について
         本事業の推進にあたっては、研究推進委員会とプロジェクトリーダーとが緊密な連携を図りつつ実施に当たるとともに、高い客観性と透明性を確保することが重要である。次回以降評価対象となる平成9年度以降発足の研究推進委員会においては、研究推進委員会委員とリーダーとの重複は基本的に避けるとともに、リーダーを交えた拡大推進委員会等を開くことにより、密接な意思疎通を図るよう努めているところである。
         今後設置される研究推進委員会において、リーダーを委員として加えることが当該分野の推進にとって不可欠である場合については、当該委員の役割や機能について明確に定め、研究推進委員会の評価機能において支障や誤解が生じぬよう十分留意することとしている。
          今後設置される研究推進委員会において、リーダーを委員として加えることが当該分野の推進にとって不可欠である場合については、当該委員の役割や機能について明確に定め、研究推進委員会の評価機能において支障や誤解が生じぬよう十分留意することとしている。
         より客観的なプロジェクトの継続的評価をどう確保するか、また、当該評価結果を中間評価等においてどのように取り扱うかについては、今回改善措置を図る各委員会活動の今後の展開も見極めつつ、事業委員会において更に検討すべき課題であると考える。 

        イ.プロジェクトの選定について
         プロジェクトの選定のための事前評価をより客観的に透明性をもって行うため、プロジェクトを公募する方法については、本事業開始2年目の平成9年度に「アジア地域の環境保全」研究推進委員会で一部実施されたところである。
         プロジェクトの選定に当たっては、各研究推進委員会において、それぞれの分野の性格や特殊性に照らし、また、本事業に則して最も適切な選定方法をとることが肝要であるが、研究推進委員会として公募を実施する場合は、委員会としての推進計画を明らかにした上で、公募する理由や趣旨、目的など、できるだけ具体的に示す必要がある。
         また、選定方法の如何を問わず、プロジェクトの選定理由、選定方法等について今後より一層明瞭に示すことが、その後の評価にとっても重要であり、その徹底を図りたい。 

        ウ.プロジェクトの構成等について
         本事業におけるプロジェクトは、研究推進委員会の立案した推進計画にそって、研究目標を明確にした上で、重点的に進める必要があり、研究の焦点が広がり、総花的になることは、本事業にふさわしくない。多くの研究者によって組織される場合、往々にして「班研究形式」となる傾向になりがちであり、これを避けるためにも、プロジェクトメンバーを厳選し規模を適正に保つ必要がある。リーダーのもとに研究の中核を担うコアメンバーを置く必要がある場合は、リーダーとともにプロジェクト全体に責任を有するアシスタントリーダーとしての位置付けを明確にし、評価においてもリーダーに対すると同様、その適否、能力等を評価する必要があると考える。
         産学協力研究委員会の企画立案によるプロジェクトについては、産学協力のインターフェイスとしての経験や蓄積が十分反映されたプロジェクトとして、特色のあるものである必要がある。産業界の若手研究者の参画、委員会の合同立案による新たな研究領域の開拓など、今後積極的に取り組むこととしている。
         また、プロジェクトの研究期間は原則5年として事業を進めてきたが、個々の研究の必要に応じ、本事業の趣旨を踏まえつつ、適切な期間を設定することを検討していきたい。このことに関連し、フィージビリティスタディを活用すべきとの指摘は極めて有益であり、本事業においてふさわしいプロジェクトを構成し、適切な選定を行うためにも積極的に取り入れる必要があると考える。 

        エ.研究分野の選定について
         本事業において今後開拓すべき研究分野の選定は、事業の根幹にかかわる重要事項であり、このことについて事業委員会及び各領域部会に課された責任は極めて重い。これまで、広く大学等からの提案、また、学術審議会等からの意見等をいただいてきたところであるが、今後、さらに広い観点から将来を見通しつつ、重点を置くべき研究分野について鋭意検討を進めることとしている。
         なお、研究分野の目標や推進方策とともに、分野選定の理由等についても一層明確化する必要があると考える。 


     
  3. おわりに

  4.  
     本事業においては、研究者によるトップダウン方式という新しい試みにより実施されてきており、これまでも試行錯誤を繰り返し、その都度改善を図ってきたところである。また、本事業の趣旨や実施方法について、広く各界の理解を得るよう努めてきたところであるが、今次中間評価により問題点の明確化とその改善に向けた視座を得ることが出来たと考えている。今後、さらに事業委員会等で事業の発展に向けて検討を加えていきたい。
     このようにトップダウン方式を基本として採用したため、研究推進においては、とかく既存の分野の拡大、充実に走り易く、新しいフロンティア開拓への創造的努力に欠ける場合がある。ノーベル賞に結びつくような革新的な研究成果やベンチャー起業に貢献する新産業技術は、新しく開拓されたフロンティアから生み出されるものである。欧米などで既に開拓された分野の追跡型ではなく、リスクを取って未知のフロンティア分野に挑戦しなければ未来を開拓することは出来ない。リスクを含め、この角度からの研究評価も大事であろう。ともかく、評価結果の適切な反映とともに、評価者と被評価者が一方通行にならず、十分なコミュニケーションを図ることが何よりも重要と考える。
     なお、優れた研究者であり優れた評価者でもある人材の育成、確保は本事業に限らず、我が国の学術研究と研究評価の発展にとって益々重要な課題になるものと思われる。 

日本学術振興会 未来開拓学術研究推進事業