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英国の高等教育の改革

2003年1月22日、英国のクラーク教育技能大臣はホワイトペーパー「高等教育の将来」(The future of higher education)を発表した。(http://www.dfes.gov.uk/highereducation/hestrategy/)
この報告は、今後の英国の高等教育の改革の方向性を述べているものであり、内容は、高等教育財政、教育・研究水準の向上、産学連携の推進、進学率の拡大の推進など多岐にわたるが、おおよそ以下をポイントとして整理することができる。

主な概要
(背景)
これからの英国には、国民全体の技術能力を高めることが不可欠。また、英国の誇る世界有数の研究能力の維持向上も重要。一方で、これまで政府による高等教育への財政支出は不十分だった。

(政府による予算増)
そこで、政府による高等教育支出を、2002/03年度の76億ポンドから2005/06年度には99億ポンドに増やす(年間6%の実質増加率)。

(授業料の金額及び支払方法の見直し)
しかし、大学の財政充実にはそれだけでは足りず、大学は自助努力により多様な収入源を確保することが必要。その観点から、授業料について、現在は政府により1,100ポンドが上限とされているが、その制約を緩め、各大学が0-3,000ポンドの範囲で自由に設定できるようにする。これにより大学の財政支援を図る。ただし、その授業料の支払い方を見直す。具体的には、学生の経済的負担を考慮し、学生が在学中に支払っている現行の仕組みを改め、卒業後に一定の年収(15,000ポンド)に達してから税を通じて支払うこととする(2006年に開始)。

(低所得者層への配慮)
家計所得の低い者に対して、最大1,000ポンドの就学援助金を復活させる(2004年に開始)。具体的には、家計の年収が10,000ポンド以下の場合、1,000ポンドの援助金を得られる。10,000-20,000ポンドの年収の場合もある程度の援助金を得られる。なお、援助金の支給対象者であっても、1,100ポンド以上の授業料を徴収する大学に通う場合は、1,100ポンドに上乗せされた分の授業料は自ら支払うこととなる。

(研究力の強化)
RAEによる研究評価によって、大学の研究競争力が高まったことが証明されているにもかかわらず、十分な予算の手当てができていない。そこで、政府による研究的経費の配分額を増やす。ところで、HEFCEは2008/09年度に行われる次回のRAEの見直し作業を行っており、68に細分化されている現行の評価分野の大綱化がなされる見込みである。こうした見直しに先立って、すでに「5*」の評価を取得している大学から、さらに国際的に優れているところとして「6*」を選び出し、そこに対して重点投資する取り組みを実施する。

(教育の重視)
一部の大学に対する研究支援の重視に伴い、残りの大学の扱いが問題となるが、それについては、大学の多様化を推進するという名目のもとで、教育重視を奨励する。教育活動に優れた大学を教育COEとして認定する。また、博士課程を提供しなくとも「大学」と称することができるようにする。したがって、高等教育カレッジも、研究機能を持たなくとも大学に昇格する道が開けることとなる。大学教官のための教育方法に関する訓練も充実させ、新たに設置される「教育水準アカデミー」(the Teaching Quality Academy)(HESDAとLTSNの統合によって設置)により、2004/05年度までに新任教官のための資格基準を作成し、2006年からその資格制度を実施する。

(大学進学層の拡大)
18-30歳の者の半分が高等教育で学ぶ経験を有するように、高等教育の拡大を進める。そのために、在学2年間で実践的知識・技能の習得を目指すファンデーション学位(foundation degree)をいっそう広める。大学が、授業料を1,100ポンド以上徴収しようとする場合は、そうした高等教育の拡大のための取り組みを行うことを「アクセス合意書」(Access Agreement)で約束して始めて認められる。

(日本学術振興会 国際事業部 人物交流課)
   
   

英国政府による「総合予算3カ年計画」の発表の概要
  −英国の教育・科学技術予算が1997年から2006年で倍増−

【総合予算3カ年計画】
 2002年7月15日、英国のブラウン蔵相は、2003-04年度から2005-06年度に係る「2002年総合予算3ヵ年計画(Comprehensive Spending Review 2002)」を下院の演説を通じて発表した。総合予算3カ年計画は、1997年の労働党の政権獲得に導入されたものであり、毎年の予算編成と別に、計画的な予算執行と政府の政策の優先順位を明確化することを目的としている。今回の計画は1998年、2000年に続く3回目であり、英国の好調な経済状況を反映して、大幅な歳出増を見込み、とりわけ政権の最優先課題である教育に全演説の2割を費やして大幅な予算増を約束した。また、科学技術についても本年4月に公表された科学技術のための人材養成に係る答申(ロバート・レポート)の実現を中心とする予算増を発表している。

【政府全体の予算規模】
 好調な英国の経済状況、安定したインフレ状況、失業率低下による失業手当の負担減、利払いの縮小により、強気の予算編成を行うことが可能になった。これにより国及び地方を合わせた公財政規模は、以下のとおり毎年大きく上昇する。
  1997-98年度:3236億ポンド(政権獲得時)
  2001-02年度:3901億ポンド(昨年度)
  2002-03年度:4184億ポンド(本年度)
  2003-04年度:4546億ポンド
  2004-05年度:4815億ポンド
  2005-06年度:5114億ポンド
 また、公財政規模をGDPとの割合で見ると39.0%(2001-02年度)から41.9%(2005-06年度)に上昇。この中で医療・社会保障と並んで教育がもっとも大きく予算を伸ばしている。

【教育】
 蔵相は「子どもの人口に占める割合は20%だが、我々の将来の100%だ」と述べて、教育の重要性を主張し、教育費を450億ポンド(2002-03年度)から578億ポンド(2005-06年度)に増額することを発表した。これにより1997-98年度の水準と比べて倍増となる。これは毎年6.0%の伸び率(インフレ調整分の実質率)に相当し、歳出全体の伸び率(3.25%)を大きく上回る。GDPとの割合でも2001-02年度の5.0%から2005-06年度には5.6%に伸びる。
 標準的な公立中等学校に政府から直接算出される交付金は本年度11万5000ポンドから2003-04年度16万5000ポンド、さらに2003-04年度から18万ポンドに増える。小学校への交付金も現行の4万ポンドから1万ポンド増えて5万ポンドとなる。さらに、都市部の教育困難な中等学校1400校には優れた教員獲得等を目的として「学校リーダーシップ奨励費(leadership incentive grants)」として12万5000ポンドが毎年追加支給される。小学校・中等学校の施設整備についても、昨年度の22億5000万ポンドから45億ポンド(2005-06年度)に倍増(そのうち12億ポンドはPFIを通じて実施)。これらの結果、児童生徒一人当たり公財政支出も2700ポンド(1997-98年度)から4900ポンド(2005-06年度)に大きく増える。また、スペシャリスト・スクール(specialist school)を2000校に倍増し、さらに300校を上級スペシャリスト・スクール(advanced school)とするなど中等教育の多様化を進展する。
こうした予算増は教育改革とセットで発表されており、例えば、成績の向上が見られないなど成果の上がらない学校については、校長を交替する、あるいは近隣の学校に運営を委ねる(学校の連邦化)など学校に対して厳しく成果を出すことを求めている。
 高等教育に関する予算の全体的なあり方の決定は今秋にずれ込むこととなり、現時点では明確になっていない。とりあえず大学の施設設備整備として5億ポンドが毎年追加措置されることが発表されている。

【科学技術】
科学技術費についても、3年間にわたり年10%(インフレ調整後の実質率)の割合で上昇し、20億ポンド(2002-03年度)から29億ポンド(2005-06年度)に増える。これにより科学研究費も1997-98年と比べて倍増することとなった。
 リサーチ・カウンシルからは大学に間接経費として新たに毎年1億2000万ポンドを支給する。若手研究者養成に関して蔵相は「英国は科学教育に関して犯した過ちを次の世代にもたらしてはならない。英国の若手研究者への資金提供のため、ロバート・レポートの提言を実現する」と述べて、リサーチ・カウンシルが支給する博士課程学生への奨学金を現行の年額9,000ポンドから2005-06年までに13,000ポンドに引き上げる。ポスドクへの支給額も現行の17,000ポンドから2005-06年度までに21,000ポンドに引き上げる。また、大学の研究の商業化を促すための「高等教育イノベーション・ファンド(Higher Education Innovation Fund)」を現行の6400万ポンドから2005-06年度には9000万ポンドに引き上げる。リサーチ・カウンシルは政府による予算増の発表を受けて直ちに「脳科学」「持続可能なエネルギー経済」「プロテオミクス」「幹細胞研究」を重点研究分野の例として挙げている。あわせて英国最大のチャリティ団体であるウエルカム・トラスト(Wellcome Trust)も5年間で2億8000万ポンドに相当する計画を発表している。

(日本学術振興会 国際事業部 人物交流課)
   
   

米国連邦政府の2002年度研究開発予算について

 2002年度(2001年10月1日〜2002年9月30日)の連邦歳出予算は、例年にならい暫定予算の延長を繰り返していたが、去る12月20日に大統領と議会とで合意に達し、年明けにも正式に成立することとなった。不況、大幅減税、テロ事件後の再建・救助費用、将来のテロ対策費、アフガニスタンでの戦争などの要因により、連邦予算は5年ぶりに赤字となる見込みであるが、米国が直面している諸課題に財政的に的確に対応することで両党の合意が得られており、2002年度の歳出は厳しい財政見通しにもかかわらず前年度より大幅に増加することとなった。そのうち、研究開発予算については、全米科学振興協会(AAAS)より12月28日付けで「連邦の研究開発予算、過去最高の1037億ドルに達する;国防省、NIH、テロ対策関連研究開発費が大幅増(Federal R&D Climbs to Record High of $103.7 Billion; DOD,NIH,and Counter-Terrorism R&D Make Big Gins)」とのタイトルで分析結果の概要の報告が公表されたので、その概略を以下に紹介したい。
 この報告では、2002年度研究開発予算について8点にわたってその特徴が列記されており、まず第1に連邦による研究開発への投資が、始めて1000億ドルを突破したことが挙げられている。総額は1037億ドルで、前年度比13.5%、額にして123億ドルの増となっている。これは、過去最高の増額であり、伸び率も過去20年あまりのなかで最高の記録となっている。
 第2に、ブッシュ政権による4月の当初の予算案では、一律削減が提案されていたものが、逆にほとんどの主要な研究開発関係機関において実質的な増額なったことが指摘されている。特に、ブッシュ政権及び議会とも国防及び保健衛生を優先していることを反映し、国防省(DOD)と国立保険研究所(NIH)の予算の増加が際立っている。NIHについても、予算倍増5か年計画の4年目にあたり、前年度比15.8%増の228億ドルとなっている。
 第3に、基礎研究費及び応用研究費の大幅な拡大が指摘されている。連邦の基礎研究及び応用研究への投資は482億ドルに達しており、前年度比で48億ドル、11.0%の増となっている。なかでも、NIHのみで連邦の研究助成の46%を占めていることが、際立った特徴となっている。
 第4に、9月11日のテロ攻撃事件を受け、テロ対策関連の研究開発費が前年のほぼ3倍にあたる15億ドルに達しており、その半分が緊急予算から措置されていることが述べられている。もともと大統領、下院とも、テロ対策として緊急研究開発予算を措置する意思はなかったが、400億ドルの緊急対策基金から拠出すべきとの上院による主張が実現した結果となっている。
 第5に、国防や保健衛生をはじめとする国家的使命を担った研究開発予算が、大きく伸びたことが指摘されている。保険衛生面を担っているNIHについては、2003年度までに1998年度レベルから倍増する計画に則って予算が伸びているのみならず、バイオテロリズム対応の研究開発と研究施設改善のためのかなりまとまった資金が、緊急資金からでることになった。
 第6に、議員による個別事業への予算づけ(イアーマーク)が、行政予算管理局により抑制が求められていたにもかかわらず、依然として続いていることが指摘されている。イアーマークによる研究開発事業は、もともと当該機関の執行計画には含まれていないもので、2002年度においては、こうした研究開発におけるイアーマークが15億ドルに達することとなった。機関別に見ると、農務省、国防省、エネルギー省、航空宇宙局に多くのイアーマークが割り当てられている。
 第7に、非国防研究開発費が6年連続で最高額を記録していることが特徴として挙げられている。しかしながら、近年の増加分の大部分は、NIH予算の恒常的な拡大によるもので、結果としてNIHの研究開発費が占める割合が、非国防研究開発費の半分近くに迫るものとなっている一方、NIHを除く非国防研究開発費は、1980年代に恒常的拡大を続け1994年に頂点に達した後、1990年代半ばの緊縮財政により大きく落ち込んでいるため、2002年度の増加は、1990年当初のレベルに戻ったに過ぎないともいえる。さらに、これらには緊急テロ対策費として今回限りの割り当てとされているものが含まれていることも指摘されていいる。
 第8に、連邦科学技術予算(FS&T budget)が11.1%伸びて524億ドルに達したことが特徴として挙げられている。連邦科学技術予算は、クリントン政権が提唱した「21世紀研究資金」を引き継いで行政予算管理局が導入したもので、同予算は、基礎及び応用研究そして新たな知識と技術の創造に関わる研究開発及び非研究開発事業を取りまとめたものとなっている。連邦科学技術予算の伸びの大部分も、NIH予算の大幅な拡大によっている。
(日本学術振興会ワシントン研究連絡センター)
   
   

スミソニアン研究所のNSFへの移管について

 大統領府の行政管理予算局(OMB)は、スミソニアン研究所の3センター(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター・スミソニアン熱帯研究所、スミソニアン環境研究センター)の予算を2003年度に米国科学財薗(NSF)へ移管する案を発表した。これは、総額約1億2000万ドルの予算を他の機関からNSFへ移管する計画の一環として提案されたもので、12月 7日発行のScience誌によると、この計画は効率的な管理運営で実績をあげたNSFを高く評価しての財政当局による予算戦略とされている。この計画が実現するとスミソニアンの3センターに所属している約250名の研究者が影響を受けることになり、これらの研究者は研究費を確保するために、より競争的な環境に置かれることになる。この提案については、マーバーガー科学技術担当大統領補佐官は理解を示している一方、スミソニアン側は、議会やロビイストを巻き込んで実現阻止に向けて強く働きかけており、実際に実施に移されることになるか否か成り行きが注目されている。
 なお。スミソニアン研究所以外には、米国大洋気象管理局(National Oceanic & Atmospheric Administration)や米国地質調査所(US Geological Survey)などが実施しているいくつかの事業をNSFに移管する計画が提案されている。
(日本学術振興会ワシントン研究連絡センター)
   
   

「カルシウム・シンポジウム」
ノーベル・フォーラムにて盛大に開催される

 日本とスウェーデンの共同研究は年々活発になっているがその代表的なものを紹介したい。
 東京大学医科学研究所教授、理化学研究所・脳科学総合研究センター・グループディレクターの御子柴克彦氏とカロリンスカ研究所のアニタ・アペリア教授の国際共同プロジェクト(科学技術振興事業団)の主催による「カルシウム振動(カルシウムオッシレーション)」プロジェクトは昨年スタートした。
 カロリンスカ研究所のノーベル・フォーラムにおいて「カルシウム・シンポジウム」が2001年1月19日に盛大に開催され、御子柴克彦代表研究者をはじめとして、研究成果の発表がなされた。
 冒頭、アペリア教授と御子柴教授より、本共同プロジェクトがスウェーデンと日本の交流に対して重要な意義を有することが紹介された後に、細胞内カルシウムが生体内の機能発現にいかに普遍的な現象であるかが示された。御子柴教授は小脳の発生・分化に重要な分子であったP400がIP3レセプターであることの発見者として特に有名であり、世界で最初にIP3レセプターの精製とそのcDNAクローニングに成功するなどの顕著な業績をあげ、世界をリードしている。兄田・」アペリア教授は、腎臓病の権威であり、細菌感染によるカルシウム振動が腎炎に移行させるなど、御子柴教授が生理学的立場であるのに対し、アペリア教授は病態の立場からの戦略をとる。今回のシンポジウムは本プロジェクトの両研究グループの構成メンバーによる発表からなり、多くの重要な成果が紹介され、活発な質疑がなされた。会場のノーベル・フォーラムは、ほぼ満席となり、延べ200人が参加した盛大なシンポジウムとなった。
(日本学術振興会ストックホルム研究連絡センター)