リンダウ・ノーベル賞受賞者会議派遣事業

参加者の声

第60回参加者


参加者アンケート結果(PDF)

第60回リンダウ・ノーベル賞受賞者会議 報告書

日本学術振興会の支援による参加者の報告書より抜粋

氏名 アルブレヒト(山下) 建
所属 慶応義塾大学・基礎理工学専攻・博士課程大学院生
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
全体としてノーベル賞受賞者の情熱や研究に対する愛着が感じられる講演ばかりであった。加えて、若い世代こそ次の新しいイノベーションを起こす原動力であり、この場で受賞者が持っているものを伝えて、素晴らしい研究を行って欲しいというメッセージが強く感じられた。また、すべての研究者がノーベル賞受賞で立ち止まるのではなく未だに現役で研究を行っていることは大きな励みとなった。しかし、自らの研究分野である化学と違う分野は勿論の事、化学賞受賞者であっても生物分野の研究者が多く、専門分野についての解説や現在の研究についての解説は理解が難しい部分が多々あった。一方で、研究全体に対する姿勢やどのように自らが研究を行って来たのかという部分に関する講演は他分野のものであっても得るものが多くあった。様々な発表を聞き比べる中で研究に対する付き合い方も様々な考え方があり、自らの信じた道を行くことこそ重要なのではないかと強く感じた。発表方法にも受賞者の個性が表れており、プレゼンテーションの構築法についても考えさせられた。

ノーベル賞受賞者の講演―Oliver Smithies:
自らの実験ノートを写したスライドによるプレゼンテーションは非常に興味深かった。初めての実験ノートから始まってゲル電気泳動の基礎となる成果の発見、相同組み換えのアイディア等、どのように発想がもたらされ、どのように考えたのかを語ってもらうことで自身の研究にもつながる大きな財産が得られた。また、多くの経験談・失敗談や実験器具を自作した話、現在も研究(実験)を行っているという点等、全体を通して研究に対する情熱と研究を楽しんでいる姿勢が伝わってきた。現在の若手研究者は情熱を持って研究を行っていると思うが、生涯にわたって研究を続けられるのか不安に思うことも少なくない。そんな中で、Smithies教授のような研究者の話を聞けたことで研究の世界で生きていくために強く背中を押される気持ちがした。

ノーベル賞受賞者とのディスカッション・セッションーJean-Marie Lehn:
午前の講演に引き続いてのディスカッションセッションであり、全ての時間が質問に当てられた。自らの研究領域と近い超分子化学を専門とするノーベル賞受賞者だったので大きな期待を持って望んだセッションであったが、講演で話していた自己修復材料の話を皮切りに生物分野の研究者からの質問が相次ぎ、自分の興味がある部分にはなかなか触れられないままセッションは進んでいった。しかし、生物分野の人たちが超分子を利用した自己修復材料を生物の自己修復システムと重ねあわせて考えていることを知ることが出来、驚いた。通常、他の分野の人が自分達の研究分野をどのように見ているのかを知る機会は非常に限られているが、他の視点に触れることで自分の研究をより多面的に捉えることが出来るようになったと思う。そういった意味で、期待した内容とは違ったものの3分野合同会議の意義を強く感じたセッションであった。後半には自らも超分子材料の実用化やマクロスコピックな系へとどのように適用してゆけばよいのかを質問することが出来、人工光合成に関する質問も他の参加者から出て面白く聴くことができた。こうしたやりとりの中で何よりもLehn教授がひとつの質問に対して非常に丁寧に長く色々な話を交えて話すことに感心した。やはり研究者は狭い専門分野だけに目を向けるのではなく周辺分野へも目を向けて自らの研究へと取り込んでいく姿勢が重要であると改めて感じた。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
会議で聞いた全ての話が今後の参考となると思う。特に幾人かのノーベル賞受賞者に聞いた研究テーマの選び方や研究をしていて生じるメインテーマとは外れるが面白そうな結果やテーマの扱いについての話は自身が迷っていた部分なので大きく参考になった。どの受賞者の方も言っていたのはやはり自身が重要だと思うテーマに集中し、それ以外に関しては手を出しすぎてはいけないということであった。テーマに関しては自らの興味があるものや問題だと思ったことを周りに流されずに選べばよいという言葉も頂き非常に心強い思いがした。ただ、最後の挨拶でSzostak教授が言っていたことであるが、ノーベル賞受賞者にはそれぞれ自分のスタイルがあり誰ひとりとして同じ人はいないので自らのスタイルを確立していくことこそが重要なのではないかと強く思った。
また、通常ではなかなか出会えない他分野の人たちと出会えたことで他分野の人が自分とは全く違う捉えかたや考え方をしていることを実感することが出来た。これまでも色々な分野のことを学び、連携をしていく必要があると考えていたが他分野の人たちと実際に連携していく上でのヒントを得ることが出来たと思う。そうした意味で他分野の人たちが研究課題に対してどのようなアプローチや見方をしているのか見るだけでなく実際に話しをすることが出来た今回の会議では大きな収穫が得られたと思う。さらに、こうした中で分野の違う人とネットワークが構築出来たことも間違いなく今後につながる大きな財産となった。



氏名 大沼 宏彰
所属 東北大学大学院・工学研究科応用化学専攻・博士後期課程3年生
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
ノーベル賞受賞者は60歳を越える方ばかりであったが、全体としてエネルギッシュに講演にしていた。
基本的にはノーベル賞受賞者が自分の研究について講演していた。いずれも、教科書に載っているような内容が多かった。このため、異分野の内容の講演(ただし、正直、素粒子物理の講演についてはほとんど内容が理解できず)が自身の見識を広めてくれた。
講演者によっては、研究内容のみ出なく若手研究者へのメッセージが含まれていた。非常に印象深く聴くことが出来た。また、レクチャーそのものよりも休憩時間や夕食時、あるいは午後のディスカッションの時間が刺激的であった。

ノーベル賞受賞者とのディスカッション・セッションー全体の印象:
レクチャーありのものとなしのものとの2つがあった。午前中にレクチャーがあった受賞者のセッションはディスカッションのみであった。また、議論の時間中は原則的にノーベル賞受賞者と学生のみ(レクチャーを聴いていたゲストや報道関係者、他のノーベル賞受賞者は締め出されていた)となっており、学生が気軽にディスカッションしやすい雰囲気を作るための配慮が感じられた。
また午前中の講演はいずれもノーベル賞受賞に関連したものであったが、レクチャー+議論のセッションのものの講演内容についてはノーベル賞受賞と直接に関連しないものもあった。ディスカッションについては、研究のことはもちろん、それ以外の研究に対する心がまえと多岐にわたっていた。活発に議論がなされていたセッションと、そうでないセッションとで大きな開きがあった(これは話しての技量によるところが大きいように感じた)。さらに、人気のあるセッションとそうでないセッションとで開きがあり、会場がいっぱいで入れないケースもあった。

会議への参加全体を通じて自分の中で変わった点、変わるきっかけとなった点など:
大きく4つある。(1)~(3)については、ノーベル賞受賞者よりも世界中の若手研究者と交流できたことが大きい。(4)についてはノーベル賞受賞者(特にKroto先生とErnst先生)の講演が大きい。いずれも行動に結びつけるのは易いことではないが、一回でも二回でも行動を変えられるように努めていきたい。

(1) 英語力の向上
英語力の不足を痛感し、英語力の向上の必要性を感じた。
研究の内容を話すだけであれば、英語でもOK。しかし、日常の部分の会話については、英語力の不足を感じた。今後は一層と英語力を向上に努めたい。
(2) 積極性
他国の若手研究者の積極性には感心した。日本人以上に、自らノーベル賞受賞者や他国の学生に話しかけていたように思う。個人的には、特にベトナム・台湾・タイ・シンガポール・マレーシアなどの学生にたいして積極性を覚えた。今回のような会議では、彼らを見習ってもっと積極的にいくのが良いと考える。(一方で、日本人の謙虚さを活かせる場面を探して発揮することの必要性も感じた。)
(3) 他国への理解
自国・他国の文化についての理解を深めることが必要だと感じた。かなりの外国の学生が日本について、日本の文化について知識があった。特に食、サブカルチャー(漫画・アニメ・ドラマ)では日本の文化が世界にかなりの影響を与えていることが分かった。一方で、自分のもつ外国文化の知識は浅かった。今回の会議参加のおかげで、特にアジア諸国に興味を持てるようになったので、文化面への知識を深めて生きたいと思う。他国の文化と日本の文化とを比較して日本文化への理解も深めたい。
(4) 教育への興味
前々から教育には興味を持っていたが、今回の会議を通して、本質的に体制を変えるためには教育が重要であることを強く意識するようになった。もちろん、若い世代への教育が中心だが、大人への教育も必要と考える。すべての人が意識・行動を変えることで、持続的な社会への道も拓かれると考えるためである。単発での動機付けだけでなく、意識の維持を中心も考える必要があると感じた。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
(1) 目的意識の重要さ
化学および物理学賞受賞者は科学への興味を抱いている方が多く、医学・生理学のノーベル賞受賞者は社会への還元を強く考えていたように感じた。ノーベル賞受賞者の講演・ディスカッションから、大きな仕事をなすためには①純粋な好奇心、もしくは②社会還元の意識のいずれかを強く持っていることが大事であることがよくわかった。自身も税金を元に研究していることを改めて認識し、少しでも還元できるよう研究に励みたいという気持ちを強くした。
(2) 問題定義の重要さ
問題の定義が重要であることが良くわかった。解決手法も重要であるが、その優先順位は問題定義の次にある。どう解決するのかではなく、どれだけ面白いテーマを作っていくか、そこに注力して行きたいと思う。
自身の話しへ展開してみたい。現在、研究手法として計算化学を用いている。実験事実の解析・解釈に終わるのではなく、「予測」を目指し実験研究者へ新しい問題・テーマを提起していたい。また研究の対象として材料を扱っているが、これまでの材料の延長線上で無く、あたらしいコンセプトで材料を提案できるスキームを考えていきたい。



氏名 木全 諭宇
所属 Postdoctoral research fellow, UCL Cancer Institute, London
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
ノーベル賞受賞者の講演を聴き、成功した科学者の中でも、サイエンスについての考えやアプローチはかなり異なることに気づかされ、サイエンスで成功するためにかならずしも絶対的な才能や能力が必要な訳ではないことを改めて実感した。しかしながら、「研究を楽しむ」こと、絶え間ない努力と行動力、さらに危険を冒す勇気、そして、他の人々たちとの相互援助と協力が必要、という点はすべての人に共通する点だと思った。また、多くの成功した研究者たちがいかに真剣に、社会貢献の仕方を考えていることを知り、研究の世界だけに閉じこもるのでなく、知識の幅を広げ、自分の研究を、いかに社会に対してコミュニケーションし、そして還元していくかということも意識しなければならないということを認識した。

会議への参加全体を通じて自分の中で変わった点、変わるきっかけとなった点など:
自分自身は、すでに海外でポスドク経験が長いこともあり、 自分のコミュニケーション能力について改めて自信をもつことができた。一方、自分の専門以外の内容については、かなり理解できない部分も多かったため、専門化するだけでなく、より学際性を高めなくてはなりないと感じた。また、ノーベル賞受賞者たちの体験談の中から、成功するための最低の基本原則を認識することができ、また一方で、人間として、研究者として、どう生きていくのかということを、改めて考える時間が持てたことは大変貴重な経験であった。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
研究の成功のためには、がむしゃらの努力も必要であるが、それのみではなく、あるときは全体を見、長期的な視点をもつことが必要であるということ、そして、幸運も重要な要素であることを実感した。そのためには、研究において、困難があっても、それをあえて楽しみ、ポジティブな気持ち、熱意を維持する能力、そして、時には、研究以外の面での楽しみをもつことが大切であることを学んだ。
さらに、ノーベル賞受賞者たちの実体験から、無数にある研究課題の中から、もっとも重要であると思われる問題や研究対象に集中し、その解決と理解に向けて、創造的なアプローチ、そして緻密な計画を立てることが必須であることが理解でき、いかに自分の能力を集中させていくかを一層努力したいとおもった。
さらに、自分のことばかりではなく、他人を助けること、そして意見や結果を共有することで、多くの人を引き込みつつ、協力することも、研究者としての成功のための非常に重要な要素であるということを実感し、自分もまわりの人とどう相互作用していくということをもう少し意識していきたいとおもった。

今回の派遣を通じて得た成果を今後如何に日本国内で還元できると思いますか?:
現在、海外で研究を行っているため、日本の科学に直接還元することは難しいかもしれないが、海外で研究をしたいという若い学生・研究者に会う機会や、あるいは短期的に日本に帰国する機会に、今回の会議での体験を話し、国際的な視点を持つこと、コミュニケーションの重要さ、ノーベル賞受賞科学者たちの考え方について可能な限り伝えていきたい。
また、将来、日本の研究機関、大学機関で職につくことができた暁には、今回の派遣で学んだこと、そして自分自身の海外での研究の経験を生かし、大学での講義や研究室内での相互作用、さらに一般の方たちに対する公開セミナー、を通じて、科学の重要さと楽しさ、そして、科学の社会貢献のあり方について、議論し、そして私自身の体験や考えを伝えていくことができると思う。
さらに、 研究結果の応用のために、積極的に国内企業との共同研究や相互作用をおこなっていき、また、今回リンダウ会議で作ることができたネットワークを生かし、共同研究や学会開催などにより、日本の国際的、学際的研究をより推進していきたい。



氏名 富田 陽子
所属 千葉大学・大学院理学研究科・博士課程大学院生
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
今回は、3分野合同ということもあって、自分の専門(物理学)以外の講演も初歩的な説明から聞くことができたので、化学はもちろん、医学や薬学についても大変興味深く、自分自身のインスピレーッションを掻き立てられるものであった。また、全体として講演者の先生方が折に触れてユーモアを交えてお話し下さったので、多少理解が困難な専門用語が出てきても頭を抱えて悩むことなく、終始講演を楽しむことができました。

会議への参加全体を通じて自分の中で変わった点、変わるきっかけとなった点など:
リンダウ・ミーティングでは、世界中の同世代の若手研究者が集まるので、研究生活における悩みや辛さや研究が達成された(認められた)時の喜び等、研究者特有の話題を話したり、議論できたことが、同世代の研究者が身近にいない私にとってとても嬉しいものでした。
また、苦手な分野や苦手な人にも積極的に声をかけ、行動することで、どんどんと新しい道が切り開かれていくのを肌で感じました。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
3分野合同であったこともあって、科学に対して様々なアプローチや多様な価値観に接することが出来ました。また、これを通して、多くの受賞者に共通して、自分のオリジナルなアイデアを大切して自分の信念のもとに研究に邁進することが重要であると感じました。その研究姿勢は、今後の研究を進めていく上で重要な要素の一つになると思います。

今回の派遣を通じて得た成果(I.及びⅡ.)を今後如何に日本国内で還元できると思いますか?:
1. 国際会議と違って、同世代の多くの研究者と会い、様々な分野の研究者が世界中にいることを肌で感じ取ることはグローバルな研究者を育成していく上で、大変有意義で重要なことだと思いました。よって、こういった国際派遣等の機会を有効に利用して外国へ飛び出し、グロバリゼーションのバリアを低くすることが大切であると思います。私は、これを機に後輩や他の周囲の研究者にこのことを伝え、誰しもが、国際派遣への道が開かれていることを伝えていきたいと思っています。

2. 今回のリンダウ・ミーティングを通して知り合った多くのノーベル賞受賞者の先生方や世界中に拠点を持つ多くの若手研究者と分野を越えて、WebやE-mail、時には折に触れて手紙を書いたり、電話するなどして研究者間のネットワーク形成に貢献できたらと考えています。



氏名 富永 依里子
所属 京都工芸繊維大学・大学院工芸科学研究科・博士後期課程
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
いずれの受賞者の先生方も、聴衆に理解させるプレゼンテーションを徹底しておられると感じた。話される速度は決して遅くはなかった。ところが、聴衆の記憶に残るスライドや言葉選びを心掛けておられるため、ご講演内容が理解しやすかった。また、絶妙のタイミングでユーモアを交えて講演しておられ、聴衆を惹きつける質の高いプレゼンテーションの連続に大変驚いた。決して独りよがりにならずに、アクセントを付けて発表することの大切さを学んだ。
3分野合同会議ということを意識してくださっていたのか、受賞者の先生方はご自身の詳細な研究内容にこだわった講演をなさるのではなく、ノーベル賞受賞者として若手研究者に贈りたいメッセージを盛り込んだ講演内容にしてくださっていたと思う。聴衆を意識したプレゼンテーションを行うことの大切さを改めて痛感した。

ノーベル賞受賞者とのディスカッション・セッションー全体の印象:
ノーベル賞受賞者の先生方との距離が非常に近かった。先生方が気さくに参加者に対応し、様々な助言をくださったことは今後の研究の大きな励みとなった。個別のディスカッション・セッションは、ご講演と同じく素晴らしい機会だと思った。
先生方はご自身の研究成果を説明なさるだけではなく、それらが学問領域にどのように波及していき、社会にどのように還元されているかを教えてくださった。ご自身の研究成果と社会の現状の両方を踏まえ、今後、科学者・研究者がどのようなことを考え、社会貢献していくべきか、先生方のお考えを明確に説明してくださったように思う。

会議への参加全体を通じて自分の中で変わった点、変わるきっかけとなった点など:
会議に参加する前、私は自分の専門分野である物理学の中の、特に半導体分野の学術論文や記事ばかりを読んでいた。会議に参加して、ノーベル賞受賞者の先生方、各国の参加者の方々そして日本人参加者の方々が非常に幅広く科学の知識をお持ちであることに大きな衝撃を受けた。自分自身の視野の狭さを大いに反省した。今後は、物理学だけではなく、化学、医学・生理学といった専門分野以外の学術記事も読むように心掛け、物理学とそれらの分野を融合させた研究テーマを自分自身で持ちたいと思うようになった。
また、本会議に参加したことで、科学技術のリーダーになるという意識を初めて持った。ノーベル賞受賞者の先生方に、科学技術を先導していくには幅広い知識を身に付けることを怠らず、新しい研究を行うことを常に意識し、情熱を持って後進の方々の指導に携わる必要があることを教えていただいた。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
参考になった点は2つある。1つは、学位取得後に一度は海外の大学や研究機関で研究するよう心掛けようと思ったことである。研究を通じて、日本をより良く変えていきたいという思いがあるが、日本の教育・研究システムしか知らないと、何をどのように改善していけばいいのか具体的な考えが持てないのではないかと思った。日本と世の中全体に貢献できる研究者になるため、今後は積極的に海外に出向きたいと思う。その際には、本会議で出会った海外で働いておられる日本人研究者の方々にご助言やご意見をいただき、本会議の外国人参加者の方々が所属しておられる研究機関を訪問させていただければと思う。
2つ目は、これまで私にとっては専門外と位置付けてきた化学や生物学、医学を勉強し、私の専門の半導体工学や電子材料工学と結び付ける試みを始めるきっかけを与えていただいたことである。そのような『学問の境界領域』で研究しておられる方々に本会議で出会うことができたため、その方々の論文を読んだり、連絡を取り合ったりして、新しい研究テーマの探究の参考にさせていただきたいと思う。


氏名 成田 憲保
所属 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室・日本学術振興会特別研究員PD
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―全体の印象:
本会議の講演全体の印象として、ノーベル賞受賞者の方々は皆ご高齢であるにも関わらず、依然として現在の研究の進展状況をよくご存じで、多くの方は未だに研究を続けておられる様子がうかがえて、大変印象に残った(これは日本と違い定年退官後も研究を続けられる仕組みが海外にあることも大きな要因と思われる) 。また受賞者の方々が講演中に何度か用いた言葉として、curiosity-based researchというものがあった。これは日本語にすれば好奇心にもとづいた研究というものだが、純粋な知的好奇心にもとづいて疑問を追究する姿勢が良い研究を生み出すということを受賞者の方々は共通しておっしゃっていたように思う。この点において、お金になるから、何かの役に立つからというような視点が重視される現代の科学行政の社会にあって、ただ単純に知りたいからというcuriosity-basedな研究がこうして高く評価されるノーベル賞という賞の存在自体にも深く感銘を受けた。また今回の会議は3分野合同ということもあって、自分自身の研究テーマからは離れた講演が多かったものの、講演ではどのような疑問やモチベーションがあってどうアプローチしたのかという経験談を、ユーモアを交えてわかりやすく話していただき、研究に対する姿勢・方法論が非常に参考になった。

ノーベル賞受賞者の講演―Roger Y. Tsien:
Tsien氏はMartin Charfie氏、下村脩氏らとともに緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発で2008年のノーベル化学賞を受賞された。今回の会議にはこのお三方がそろって参加されており、それぞれの講演ではそれぞれが果たした役割を紹介しあっていて、お互いをリスペクトしている様子が伺われた。Tsien氏の研究は下村脩氏の発見された緑色蛍光タンパク質(GFP)という物質を、化学的により使いやすい形(より観察しやすい色、強度)になるよう改良し、さらに医学的に病変部の特定のために用いるというもので、思考のプロセスが非常に明快に説明されていた。また現在行われている研究として、細胞の状態を発光している色で知ることができるようにする技術など、新しいアイデアを立案してそれを実現していく様子を分野外の人間にも非常にわかりやすく解説していただいた。このように今あるものから工夫によって新しいものを生み出していくというプロセスは、別の講演でMartin Charfie氏がおっしゃっていた「Scientific progress is cumulative.」という言葉を体現しており、一歩一歩進んでいく科学研究の姿を感じると共に、今あるものをどう工夫して使うかというアイデアの大切さを学んだ。

今後研究を進めていく上で参考となる点:
本会議でのノーベル賞受賞者の講演では、ノーベル賞の受賞対象となった研究の内容に対してだけでなく、ノーベル賞受賞者がどのような発想から研究を行ってきたかという体験談やどのようにして研究室を運営してきたかという方法論まで、さまざまなお話を聞くことができた。特にどのような発想からノーベル賞級の発見をしたかという部分では、多くの受賞者が共通してcuriosity-basedな研究の大切さを説いておられたと思う。今後研究を進める上では、このメッセージを参考に自分が面白いと思う謎を解き明かすことをひとつの目標にしていきたいと思う。
また、今後研究を進める上で大事だと感じたノーベル賞受賞者の言葉としては、以下のようなものがあった。
Martin Chalfie氏
Scientific success comes via many routes.
Scientific progress is cumulative.
Student and PDs are the lab innovators.
Basic research is essential.

H. Robert Horvitz氏
Basic research is the driver of scientific knowledge.
これらのメッセージは今後研究室を運営していく立場になった場合に心構えとして胸に刻んでおきたいと思う。

今回の派遣を通じて得た成果を今後如何に日本国内で還元できると思いますか?:
私は普段から小学生~一般の方までの幅広い年代層に対してアウトリーチ活動を行っているため、研究の面白さや好奇心の大切さといったものを自分自身の講演を通して日本国内で還元していくことができると思う。特に、好奇心を持つことの大切さについては、アウトリーチ活動を通して子どもたちやその親御さんたちに伝えていきたいと感じた。
また、今回ノーベル賞受賞者から教わった方法論や体験談を国内の若手研究者たちに伝えるためにも、今回の派遣を通して培った国内参加者たちとのつながりを大事にして、周囲に発信していけるようにしたい。
さらに、もし将来自分自身が研究室を主宰できるようになったら、本会議で学んだ事柄を学生たちにも伝えていき、また可能であれば本会議の存在を伝えて積極的に参加するように促したいと思う。そのためにも、日本学術振興会には今回のような大変貴重な派遣の制度を今後も継続していただければ幸いに思う。


氏名 橋本 健二
所属 早稲田大学・理工学術院・研究助手
リンダウ会議領域 3分野合同会議

ノーベル賞受賞者の講演―Theodor W. Hansch:
Hansch 氏はFrequency Comb(光周波数コム)という等間隔のスペクトル分布を持つ光源の発生範囲を拡大させることなどにより、2005 年にノーベル物理学賞を受賞している。研究内容の詳細を発表中に理解することはできなかったが、その原理をMechanical Frequency Comb という振り子を例に説明されており、原理が視覚的に分かりやすく、物理学以外の専攻の研究者にも原理が理解しやすかった。Hansch氏のご講演に限ったことではないが、他分野の人たちに説明する際の工夫が印象に残った。また、1 つの現象をレーザだけでなく、他のことにも応用できる可能性があるという、他分野と関連付ける能力の必要性も感じるご講演内容であった。

ノーベル賞受賞者とのディスカッション・セッションー全体の印象:
午後のディスカッション・セッションは受賞者との距離も近くなるため、ノーベル賞受賞者をより身近に感じることができ、質問や討論が積極的に行われた。多くの受賞者は、ディスカッション中にノーベル賞受賞の秘訣を説明されていたが、どのノーベル賞受賞者にも共通していえることは、受賞理由に“Lucky”であることを挙げていたことである。しかし、待っているだけでは幸運は訪れず、幸運が訪れるような環境づくりをされていると感じた。またPlay hard!(よく遊べ!)とよく仰っていたが、お正月に研究していたり、結婚式当日も研究室にいたりするなど、研究そのものを遊びと感じている方が多かった。もちろん、そういう環境を受け入れてくれる家族や周りのサポートも大きいであろう。

ノーベル賞受賞者とのディスカッション・セッションーIvar Giaever:
Giaever 氏は自分の研究を進展させるためにも、発表を数多くすることが重要だと仰っていた。ただ、大切なのは発表そのものではなく、発表後の質疑応答であり、時には分野の異なる研究者と議論をすることの重要性も主張されていた。そういう意味では今回のノーベル賞受賞者会議は3 分野合同で、様々なバックグラウンドを持った研究者が集まっていたので、議論をするには絶好の機会であった。また、より多くの人と議論をするためには、日本人同士だけでなく、外国人の研究者との議論も必要であり、英語の重要性を強く感じた。

会議への参加全体を通じて自分の中で変わった点、変わるきっかけとなった点など:
海外でポスドクをされている方たちの意欲の高さに強く刺激を受けた。また、私の専門は工学(Engineering)であるが、周りの多くの参加者は物理学や化学、医学・生理学などの科学(Science)を専攻されており、他分野の研究者と自分の研究についてディスカッションできたことは非常に有益であった。しかし、諸外国の研究者とディスカッションする際には、自分の専門外の話になると分からない専門用語の単語が多いため、自分の専門だけでなく自然科学一般の知識を身に付けていきたいと思う。
また、ロボット工学というものは機械工学や電子工学、制御工学、情報工学などの幅広い知識を必要とするため、今回の会議でも他分野の研究がロボットに応用できないかということを常に考えていた。始めから他分野との融合を諦めるのではなく、いかに関連付けるかということも研究者に求められる能力であろう。