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最近の研究結果

 科研費により支援する学術研究では、毎年度、数多くの優れた研究成果が生み出されています。文部科学省及び日本学術振興会では、四半期毎に「科研費NEWS」を発行し、「最近のユニークな研究成果の例」として、科研費による研究成果の一部をご紹介しています。

 このコーナーでは、過去に「科研費NEWS」で掲載された「最近のユニークな研究成果の例」を分野毎に紹介しています。


人文・社会系理工系生物系


理工系(工学)

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カバの赤い汗についての化学的研究

京都薬科大学薬学部准教授 橋本 貴美子

【研究の背景】

 哺乳類は種によっていろいろな分泌腺をもっており、そこから分泌される液に色のついたものが知られています。例えばカバは身体全体から赤い分泌液を、ゾウは側頭腺(耳の前あたりにある腺)から青い分泌液を出します。このような現象についての化学的な研究はこれまでありませんでした。我々はカバの分泌液に着目し、赤い色の原因となる不安定な2つの色素を取り出して構造を決め、ヒポスドール酸(赤色)、ノルヒポスドール酸(オレンジ色)と命名しました(Nature, 2004)。カバの分泌液は、カバの皮膚を紫外線から守る、あるいは傷が化膿するのを防ぐと言い伝えられており、取り出した色素がこの働きをしていることを明らかにしました。

【研究の成果】

 カバの汗は赤いと言われますが、実は皮膚の上に出てきた直後は無色であり、1~2分すると赤く色づき(図1)、1~2時間すると茶色に変色してしまいます。そこでまず、カバがどうやって皮膚の上で赤い色素を合成しているのかを調べました。このために、汗が赤く色付かないように工夫をし、無色の汗を採集して何が含まれているのかを調べたところ、ホモゲンチシン酸が相当量含まれていることがわかりました。赤色色素とホモゲンチシン酸の構造を比べてみると、ホモゲンチシン酸が2分子結合すると赤い色素になることがわかります(図2)。
 次に、この反応(酸化反応)を引き起こすものは何かを調べました。候補としては、酸素、光、微生物、酵素が考えられましたが、結局、カバは皮膚の上で酵素を触媒として使い、空気中の酸素を酸化剤としてホモゲンチシン酸を赤色色素へ変換していることがわかりました。
 また、これら不安定色素を化学的に合成する方法を確立しました。

【今後の展望】

 赤い汗は、後に茶色に変色しますが、これは色素のポリマーが生成に由来します。そこで、合成によって入手容易になった色素を用いて、どのようなポリマーが形成されているのか、構造とその機能、役割を調べると共に、汗に含まれている酵素の構造や性質を調べ、化学や生物学の発展に寄与したいと考えています。

【関連する科研費】

平成17―19年度 基盤研究(B)「哺乳類の分泌する生理活性色素の研究」

図1

図1:カバの赤い汗

図1

図2:カバの汗に含まれている色素および無色の前駆体

※所属・職名は執筆時のものです。

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