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科学研究費助成事業

制度概要

私と科研費

 「私と科研費」は、科研費の広報活動の一環として、これまで科研費によって研究を進められてきた方々や現在研究を進められている方々の科研費に関する意見や期待などを掲載するため、平成21年1月に新設したものです。

 毎月1名の方に原稿を執筆していただいています。



No.20(平成22年9月発行)

「アウトプットよりもアウトカムとしての評価を」

東京理科大学・学長 藤嶋 昭先生
藤嶋 昭
東京理科大学・学長

 科学研究費ほど貴重な研究費はない。私の今までの研究生活において落ちついて研究を実施できたのも科研費によることが多い。
  私はいまも光触媒反応の基礎研究やその新しい進展をテーマに、基盤研究(B)と挑戦的萌芽研究の代表をつとめている。
  私がいただいた最初の科研費は奨励研究(A)で、昭和48年(1973年)であるからもう40年近く前のことになってしまう。神奈川大学工学部の助教授をしていた時で、いただいた研究費30万円は非常にありがたかった。その当時の神奈川大学では科研費をとれる人はほとんどいなかったようで、担当の事務の方も使用方法がわからず、文部省に直接行って聞いてくれたりした。その折の担当の方と最近お目にかかる機会があり、その当時のことをなつかしく話題にしたものである。

 この数年間、科研費について文部科学省と日本学術振興会から全国の研究者向けに出している8ページの案内パンフレットの「未来の技術革新の芽を育む科研費」のページに、光栄なことに私の上記の奨励研究(A)「励起状態の電極反応に関する研究」と私の恩師本多健一先生の「有機化合物の光電解の研究」が紹介されている。これらの研究成果が今では「水の光分解電極反応の発見と環境浄化としての光触媒への展開」として世の中で広く利用されていると解説してあり、私にとって大変名誉なことと思っている。

 時がたち、今から10年ほど前になり、大型の特定領域研究の準備を代表者として始めることになった。光化学や電気化学の先生方と真剣に討論をくり返し、その当時の文部省の地下の会議室で、ヒアリングにのぞむこと数回、ようやく採択していただくことになった。

 「光機能界面の学理と応用」をテーマに、6年間という長期の特定領域研究を代表者として実施させてもらった。多くの協力者のおかげで、光触媒、人工光合成や新型太陽電池など関連するテーマで計画以上の研究成果をあげて終了できたのが、3年前である。
  班員や関連する研究者100人以上の方々で行う全体会議は、1つの学会のようであったが、工夫をこらしての成果発表にも思い出は深い。例えば、全員のポスター発表の前に3分間ショートオーラル発表を各自にお願いする方式をとったが、この3分間の発表でも、その内容は十分に伝わり、正しい評価をすることもできた。やはり、統一的なテーマのもとで関連する研究者が集まり、討論する会議の重要性をこの時も知った。

 今から3年前になるが、日本化学会の会長をしていた関係もあり、当時の科学技術政策担当大臣の松田岩夫氏の大臣室におしかけ、科研費について意見表明をしたことがあった。私が主張したのは2つあり、1つは年間1500万円~2000万円ぐらいで10年間続けられる大型科研費を、毎年100件づつ作ってほしいこと、2つ目は200万円ほどの科研費を地方大学や私立大学の先生方を中心に、新設してほしいことであった。前者は、大型予算をとっても3年や5年間に限られていると、有能な花形研究者は落ちつかずに、複数の大型予算をとりに行かざるを得ないという状況をなくすための方法としてである。その後も機会ある毎にこの2つの提案を申し上げているが実現はむずかしいようである。

 いずれにしても落ちついて基礎的研究を続けてゆくことが、大きなブレークスルーを達成する唯一の道であると信じている。特に研究成果を1年毎に評価するアウトプット評価よりも、その成果が10年後、あるいは20~30年後に実際に世の中で役立ったり、基本的考え方として定着するようなアウトカムを、評価の基本とすべきではないかと思っている。

 アウトカムとして評価されるような基礎研究の充実をはかりたいものである。

※所属・職名は執筆時のものです。

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