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国際生物学賞委員会審査委員長 和田 正三
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第27回国際生物学賞審査委員会を代表いたしまして、今回の審査の経緯について御報告申し上げます。
審査委員会は、私を含めて計20人の委員で構成いたしましたが、そのうち四人は特別に委嘱した外国人の権威ある研究者でした。
審査委員会は、今回の授賞対象分野に定められた「発生生物学」に関連する内外の大学、研究機関、学協会および個人研究者並びに国際学術団体あてに、1977通の推薦依頼状を送りましたところ、70通の推薦状が届きました。このうち重複を除きますと、実数は47件であり、広く16か国に亘っておりました。
審査委員会は、計4回の会議を開き、慎重に候補者の選考にあたりました。その結果、第27回国際生物学賞受賞者として、アメリカ合衆国のエリック・ハリス・デヴィドソン博士を国際生物学賞委員会へ推薦することに決定いたしました。
デヴィドソン博士は、1937年生まれで、アメリカ国籍をお持ちです。博士は1963年に米国ロックフェラー大学で博士号を取得されました。その後、ロックフェラー大学、カリフォルニア工科大学において研究活動を行い、発生生物学に関する数多くの研究成果を挙げられました。現在はカリフォルニア工科大学生物学科の教授でいらっしゃいます。
デヴィドソン博士は、長年にわたり、一貫して、発生における遺伝子の役割、遺伝子の発現制御機構、発生と進化のメカニズムなど、発生生物学の中心的研究課題の解明に取組んでこられました。
博士は、一つの細胞である受精卵が、分裂し、様々な形と機能をもった細胞に分化していくためには、遺伝子の発現が正確に制御され、発現した遺伝子同士の相互作用が必須であると考え、「遺伝子調節ネットワーク」という概念を提唱されました。博士は、ウニを使った実験を精力的に行い、この概念を実験的裏付けをもって実証されました。この業績は、博士の、動物の発生全体を俯瞰した先見的な洞察、緻密かつ網羅的な実験、理論的再構築などによってなされたものであり、他の追随を許さない格段に優れた研究と言えます。
昨今では、遺伝子の発現制御機構の解明は、発生生物学のみならず、遺伝学、分子生物学、細胞生物学、神経生物学、免疫生物学など多くの分野における中心的研究課題となっており、「遺伝子調節ネットワーク」という概念を構築し、実証されたデヴィドソン博士の研究業績は、生物学全体の発展に大きな貢献をもたらしました。
審査委員会は、本賞の審査基準として、研究の独創性、国際性、および生物学の進歩に対する貢献度を取り上げていますが、エリック・ハリス・デヴィドソン博士の業績は、そのいずれをも十分に満たすものであることを認め、国際生物学賞を授与するのに最もふさわしい研究者として推薦いたしました。
国際生物学賞委員会は、審査委員会の推薦を承認し、エリック・ハリス・デヴィドソン博士に対し、第27回国際生物学賞を授与するものであります。
以上をもちまして、私の審査経過報告と致します。