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国際生物学賞

国際生物学賞 歴代受賞者

第26回国際生物学賞 審査経過報告

国際生物学賞委員会審査委員長 浅島 誠

 第26回国際生物学賞審査委員会を代表いたしまして、今回の審査の経緯について御報告申し上げます。
 審査委員会は、私を含めて計20人の委員で構成いたしましたが、そのうち4人は特別に委嘱した外国人の権威ある研究者でした。
 審査委員会は、今回の授賞対象分野に定められた「共生の生物学」に関連する内外の大学、研究機関、学協会および個人研究者並びに国際学術団体あてに、1,957通の推薦依頼状を送りましたところ、55通の推薦状が届きました。このうち重複を除きますと、実数は46件であり、広く16か国に亘っておりました。
 審査委員会は、計4回の会議を開き、慎重に候補者の選考にあたりました。その結果、第26回国際生物学賞受賞者として、アメリカ合衆国のナンシー・アン・モラーン博士を国際生物学賞委員会へ推薦することに決定いたしました。

 モラーン博士は、1954年生まれで、アメリカ国籍をお持ちです。博士は1982年に米国ミシガン大学で博士号を取得されました。その後、アリゾナ大学、イエール大学において研究活動を行い、共生の生物学に関する数多くの研究成果を挙げられました。現在はイエール大学生態・進化生物部門の教授でいらっしゃいます。

 モラーン博士は、昆虫類およびその体内に存在する共生細菌の間にみられる密接な共進化関係について、分子生物学、ゲノム科学、実験生物学および理論生物学などの多彩なアプローチを駆使することにより、多くの優れた研究成果を挙げ、「共生の生物学」分野の発展に大きく貢献してこられました。その業績は多岐に渡りますが、アブラムシその他の昆虫類における必須共生細菌の進化的起源と共進化関係の解明や、共生細菌が宿主の生態や環境適応に与える影響の解明などが挙げられます。
 とりわけ、さまざまな共生細菌の系統において加速分子進化、ゲノムサイズ縮小、塩基組成バイアスなど独特のゲノム進化パターンがみられることについて集団遺伝学的観点から理論的な説明を与えた研究は、単なる昆虫共生細菌のみならず、細胞内寄生細菌から細胞内小器官まで多様な微生物群にみられるゲノム縮小進化に対し、統一的な理解を与えたとして高く評価されています。このように、共生関係が進化的な新規性をもたらす重要な機構として多くの生物群において多様化を促進し、また新たな生態的地位を利用する能力を賦与してきたことを、具体的かつ豊富な証拠とともに提示し、さらには共生関係の多様性のなかの共通原理を明らかにしてきたモラーン博士の研究業績は、進化生物学、生態学、微生物学、ゲノム科学などの生物学全般に大きなインパクトを与えるものです。

 審査委員会は、本賞の審査基準として、研究の独創性、国際性および生物学の進歩に対する貢献度を取り上げていますが、ナンシー・アン・モラーン博士の業績は、そのいずれをも十分に満たすものであることを認め、国際生物学賞を授与するのに最もふさわしい研究者として推薦いたしました。
 国際生物学賞委員会は、審査委員会の推薦を承認し、ナンシー・アン・モラーン博士に対し、第26回国際生物学賞を授与するものであります。
 以上をもちまして、私の審査経過報告を終わります。