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独立行政法人日本学術振興会
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ウィンスロー・ラッセル・ブリッグス博士
Dr. Winslow Russell Briggs
天皇皇后両陛下、鳩山総理大臣、川端文部科学大臣、国際生物学賞委員会の皆様、同僚、友人の皆様、ご臨席の皆様、そして我が家族
このたびは国際生物学賞を賜り、誠に光栄に存じます。生物学者としてこの上ない名誉であり、この賞を受けるにふさわしいすべての優れた研究者を思うとき、私は謙虚の念を抱かずにはおれません。貴国にこの偉大なる賞が存在することは、敬意を受けて然るべきでしょう。国際生物学賞委員会の皆様には心からの感謝を申し上げます。また、地球の生態環境から生物の極めて複雑な分子構造に至るまで、実に幅広い研究分野を網羅するこの学問に対し、深いご理解をお寄せくださる天皇陛下に御礼申し上げます。
私と植物との直接の出会いは10代の頃、父と一緒にミネソタの野生植物の写真を撮りに出かけたときです。そこで見た野生植物は、植物分類学に対する生涯尽きることのない興味を私に与えてくれました。その後ハーバード大学で学びはじめた私は、固い信念をお持ちであったミネソタ大学のある教授から植物学を専攻することを強く勧められました。教授のあまりの熱心さにこの学問を志すことを決めた私は、やがてその教授のおかげで大学院で生物学を研究することになったのです。はじめは分類学からでしたが、まもなく、植物発生学の偉大な権威である二人の研究者からこの学問の追究を強く勧められました。その研究者とは、植物成長ホルモン研究の第一人者であるケネート・ティーマンと、今私たちが幹細胞と呼ぶ細胞からの植物発生に関する研究で著名なラルフ・ウェットモアです。二人とともに研究を行えたことは、私にとってこの上ない喜びです。
私が植物光生物学の研究に携わることになったのは、1957年、スタンフォード大学で私の植物生理学の授業を取っていたある明敏な大学院生がきっかけでした。光屈性のホルモン機構をめぐる激しい議論に決着をつけるため実験法を提案した彼は、なぜ、このごく簡単な実験を実際に行う者がいないのかと疑問を呈しました。そこで私たちは自分たちで実験を行い、議論に終止符を打つ結果を導き出したのです。私は突如として、ほぼすべての研究人生を捧げることになる、植物の光受容体と、その光励起の生物物理的、生化学的、生理学的影響の研究に携わることになったのです。この研究分野は、常に私に魅力的な課題を提示し続けてくれています。
今年度の生物学賞が植物光生物学の研究に与えられたことは、私にとって何よりの喜びです。日本はこの学問を大変得意とされています。植物の光受容体の生物物理的、分子的、生化学的、構造的、生理学的、生態学的研究および光受容体が制御する多様な光反応の研究でトップクラスの日本人研究者がいらっしゃいます。こうした方々は今申し上げた分野のすべてで多大なご功績を残されており、心から称賛の意を表したいと思います。日本の研究者の方々のご貢献によって、この学問は計り知れないほどの発展を遂げています。
私自身が携わった研究も含め、生物学において成功を収めた研究には必ず欠かせない要因があります。それは有能な研究スタッフです。誠に幸運なことに、私は研究人生のすべてをハーバード大学、スタンフォード大学、カーネギー研究所といった一流の研究機関で過ごすことができました。いずれの研究室にも大変優秀な大学院生や博士研究員が集まっています。こうした若い研究者たちは、すばらしい知性、手先の器用さ、生物機能解明への情熱を持っています。生物学研究の推進を支えているのはこのような研究者の特性です。大半の研究活動では、退屈極まる作業の繰り返し、刺激的な内容であっても再現の不可能な実験結果、誤った手掛かりなど、失望を伴うことがあります。その結果、研究者は何カ月、時には何年にもわたって苦しむことになります。しかし、最終的に障害を乗り越え研究を成功に導くのは、研究者というこの特別な人々の情熱です。この点に関して、私とともに働いてくれた若い研究者たちは見事にこの特性を備えています。私は、彼らが私から学ぶよりも多くのことを、彼らから学びました。言い尽くせぬ感謝と敬意の気持ちを表したいと思います。
最後になりましたが、天皇皇后両陛下のご成婚50周年に際し、妻アンと私より心からのお祝いを申し上げたいと存じます。