お問い合わせ先

本件に関する問合せ先
独立行政法人日本学術振興会
総務部総務課 国際生物学賞担当
TEL03-3263-1722
FAX03-3221-2470
E-mailip-biology@jsps.go.jp

国際生物学賞

国際生物学賞 歴代受賞者

第24回国際生物学賞 受賞者あいさつ

ジョージ・デイビット・ティルマン博士
Dr. George David Tilman

天皇皇后両陛下、ご臨席の皆様

 いま、私の思いは感謝と謙虚の気持ちで満ちております。国際生物学賞は、四半世紀近くにわたり優れた生物学者に授与されてきました。彼らが果たした重要な成果は、知識を発展させ、次世代の研究者らにとってよい刺激となっています。私の専門である生態、進化、分類の各分野の歴代の受賞者は、学界の偉人であり、彼らの威光の下、この場に立てることを光栄に思うとともに、謙虚に感じております。 私は喜びと感謝の気持ちをもって、この賞をお受けしたいと存じます。
 日本学術振興会の皆様、そして何よりも、天皇皇后両陛下に心から感謝申し上げます。陛下はご自身が高名な生物学者でいらっしゃいます。そして皇后陛下は、この賞をさらに名誉あるものとしてくださいました。両陛下のご臨席は、科学を重んじるお二方のご姿勢を示しているものと存じます。
 これまでに大変お世話になった方々を思うとき、まず初めに思い出されるのは若かりし頃、そして両親のことです。当時はミシガン州に住んでいましたが、両親は私の科学に対する好奇心を支え、ミシガン湖畔の砂丘や周囲の森林の生態系を自由に探求させてくれました。次に思い浮かべるのは高校で生物を教えてくださった、ドン・ファーナム先生です。先生の実験や研究に対する熱意は、私が科学者になることを初めて考えるきっかけとなりました。
 私は生物学が大変好きでしたが、それを職業にするとはまったく想像もしていませんでした。ミシガン大学入学当時は物理を学びましたが、それは数学と実験という私の2つの興味を両方満たせる分野と考えたからです。やがて新任のステファン・ハッベル、ジョン・ヴァンデルメールの両博士が私を生態学の世界へと導いてくださいました。生態学は理論と実験に興味を持つ者にとって、まさに素晴らしい学問でした。私は自分の人生をささげる職業を見つけたのです。
 ピーター・キルハム、スーザン・キルハムの両教授は、大学院生であった私を教え導き、この学問分野最大の謎を追求することの重要性を力説してくださいました。以来、私は数多くの先生方、大学院生、博士研究者とともに研究する機会に恵まれました。本日いただくこの賞は、こうしたすべての方々にとっての賞でもあります。
 私が研究に打ち込んだ重要な謎は、生物多様性でした。なぜ過去30億年の間に地球上の種は次第にその数を増してきたのか。非常に多くの競争しあう種が共存できるのはなぜか。多様性が失われることは生態系の機能にどのような影響を与えるのか――。私はこの35年間、実験、数学理論、自然生態系の観察を組み合わせて、こうした疑問を追求してきました。その研究を通じて、生態学は機構的・予測的学問になり得ることを示してきたのです。
 私がこの研究を始めたのは非常に深い関心を持ったからであり、よもや他の方々も同様の関心をお持ちになるとは想像していませんでした。ましてや、人間が支配力を高め、生態系の単純化と破壊が生物多様性および社会にとって重要な生態系機能を脅かすことになろう、この世界に私の研究が深く関わることなど予測もしていませんでした。
 次の半世紀には大きな難題が待ち受けています。世界の人口は50パーセントの増加、一人当たりの消費量は140パーセントの増加が見込まれています。またこの期間に、世界の食料・エネルギー需要も倍増すると見られています。将来の世代が受け継ぐ世界の行く末は、われわれがこうした需要の高まりにどう対応していくかにかかっているのです。
 私は、科学および環境倫理が発展し、地球に差し迫る課題に応用できるならば、われわれは生物多様性と世界の生態系を維持でき、同時に地球上のすべての人々が当然享受できるべき豊かで充実した生活を送ることができるだろうと、前向きに考えています。しかし、この実現には科学と社会の密接な協力が欠かせません。特に世界各国の優秀な若者に科学に興味を持ってもらうことが大事です。
 本日、天皇皇后両陛下のご臨席を賜ったことは、科学にとって大変な名誉であり、生物学における基礎研究が社会、そして将来にとって最も必要であるというメッセージを若い研究者らに伝えることになります。このメッセージはこれまで以上に深い意義を持つとともに、国際生物学賞の最も重要な目的でもあります。科学をお支えくださる両陛下ならびにご臨席の皆様に心から感謝申し上げます。