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国際生物学賞

国際生物学賞 歴代受賞者

第23回国際生物学賞 審査経過報告

国際生物学賞委員会審査委員長 星 元紀

 第23回国際生物学賞審査委員会を代表いたしまして、今回の審査の経緯について御報告申し上げます。
 審査委員会は、私を含めて計20人の委員で構成いたしましたが、そのうち4人は特別に委嘱した外国人の権威ある研究者でした。
 審査委員会は、今回の授賞対象分野に定められた「遺伝学」に関連する内外の大学、研究機関、学協会および個人研究者並びに国際学術団体あてに、1818通の推薦依頼状を送りましたところ、61通の推薦状が届きました。このうち重複を除きますと、推薦された候補者の実数は44人であり、広く15か国に亘っておりました。
 審査委員会は、計4回の会議を開き、慎重に候補者の選考にあたりました。その結果、第23回国際生物学賞受賞者として、アメリカ合衆国のデビッド・スウェンソン・ホグネス博士を国際生物学賞委員会へ推薦することに決定いたしました。

 デビッド・スウェンソン・ホグネス博士は、1925年生まれの82歳で、アメリカ国籍をお持ちです。博士は1952年に米国カリフォルニア工科大学で化学及び生物学を学び、博士号を取得された後、博士研究員としてフランスのパスツール研究所で研究をされました。その後、アメリカのワシントン大学を経て、1959年から1999年までスタンフォード大学に在籍され、遺伝子に関する数多くの研究成果を挙げられました。現在はスタンフォード大学の名誉教授でいらっしゃいます。

 ホグネス博士の業績は、大きく3つに分けることができます。一つは、高等真核生物の遺伝子の構造の研究における業績です。ホグネス博士は、高等真核生物としては極めて初期のゲノムライブラリーをショウジョウバエで作成することに成功しました。また、ショウジョウバエから世界で初めて、ヒストン遺伝子やリボゾーム遺伝子を単離し解析することに成功され、この課程で、遺伝子の転写に係るTATAボックスを発見されております。更に、高等真核生物の遺伝子がタンパク質に翻訳される領域と,翻訳されない領域から成り立つことを発見されるなど、当時の分子遺伝学の基礎の確立に深く関わる多くの業績を挙げておられます。
 もう一つのホグネス博士の研究業績としては、ショウジョウバエを用いた発生遺伝学的研究があります。ホグネス博士は、ショウジョウバエの突然変異体に着目され、ポジショナル・クローニング法を考案され、これを用いて体づくりに関わる遺伝子を同定されました。これらの成果は、今日の機能ゲノミックスとよばれる研究に繋がる、重要なものです。
 最後に、ホグネス博士は動物の発生を分子生物学的に理解するため、ショウジョウバエの変態過程を制御するホルモンであるエクダイソンの働きについて研究され、遺伝子の発現の時間的制御機構の研究で、大きな業績を挙げられました。

 また、ホグネス博士の研究室からは、哺乳類の光受容タンパク質の研究で知られるジェレミー・ネイサンス博士など多くの優れた研究者が育っております。ホグネス博士の研究は、遺伝子科学の諸分野のみならず,現代の生物学全体への貢献にも非常に大きなものがあります。このような次第で、今回の授賞は国際生物学賞に対する内外の評価を高めるものであると信じております。

 審査委員会は、本賞の審査基準として、研究の独創性、国際性および生物学の進歩に対する貢献度を取り上げていますが、デビッド・スウェンソン・ホグネス博士の業績は、そのいずれをも十分に満たすものであることを認め、国際生物学賞を授与するのに最もふさわしい研究者として推薦いたしました。
 国際生物学賞委員会は、審査委員会の推薦を承認し、デビッド・スウェンソン・ホグネス博士に対し、第23回国際生物学賞を授与するものであります。
 以上をもちまして、私の審査経過報告を終わります。