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独立行政法人日本学術振興会
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サージ・ダアン博士
Dr. Serge Daan
天皇皇后両陛下、ご臨席の皆様
国際生物学賞の受賞は誠に誇らしいことです。恐らく生物学者が願う最高の栄誉ではないでしょうか。その22年の歴史において、同賞は多くの優れた科学者に贈られてきました。日本学術振興会が大変に見識ある選出をされたことで、今や世界的に権威ある賞となっ ています。その名声を際立たせるのは、自らも優れた科学者でいらっしゃる天皇陛下、皇后陛下のご臨席のもとで贈呈されるという事実であります。
私自身の業績が先達のそれに匹敵するとは、簡単には申せません。私の業績はすべて共同研究に基づいております。科学的発見の喜びに浸るとき、そこには必ずといってよいほど、新しいアイデアについて共に研究する仲間との友情がありました。私の人生には、そんな幸福を味わったエピソードがいくつかございます。
最初のエピソードは、ドイツのユルゲン・アショフ、米国のコリン・ピッテンドリの両氏と博士課程修了後の研究をしていた頃のことです。お二人は現代の生物リズム研究の創始者であり、学者や教育者に大きな影響を与えておられました。私たちは概日リズムの同調の基本原理について、親しく協力しながら研究を進めました。この偉大なる二人の科学者がご存命なら、今回の賞は間違いなくそのいずれかに贈られたことでしょう。私の研究は彼らあってこそのものでした。
重要なエピソードは1980年代初め、ドミアン・ビアスマ氏と私が人間の睡眠制御モデルを開発したときのことです。このときは睡眠研究の世界的権威、私のチューリヒの友人であるアレックス・ボルベリー氏と緊密に協力していました。その後も動物の最適な繁殖時期に関する原理を解明するに当たって、多くの友人や学生、特にディルクヤン・マスマン、コール・ダイクストラ、ヨースト・ティンバーゲンの各氏の助けを得ることができました。いずれもやはり、お互いの利益のために楽しく力を合わせたエピソードです。
今や科学とは共同作業であり、顕彰されるべき人を誰か一人選ぶのはますます難しくなっています。また、そうして選ばれた一人は、その人を取り巻く科学的環境の産物でもあります。私は幸いなことに、とても刺激的な家庭で育ちました。最愛の両親は(もう随分前に他界しましたが)科学や哲学、芸術に対する関心を育んでくれました。全部で7人いる兄弟姉妹からは常にインスピレーションと愛情をもらいました。本日ここに同席している妻のルース、3人の子どもたち(ベルテ、モリス、ハンナ)も同じです。
グローニンゲン大学には研究生活の後半を通じてお世話になりました。この席にわざわざお越しいただいた同大学理事のツヴァルツ教授に感謝申し上げます。
また、私の研究環境においては日本も重要な存在でした。生物リズムの研究で日本は第一人者的存在です。これは多分に北海道大学の本間研一、本間さと両教授の功績によるものです。お二人は20年以上にわたって「生物リズムに関する札幌シンポジウム」を2年ごとに開催され、大変な成功を収められています。若い研究者を対象にした「アショフ・本間賞」も設けられています。私は長年、その選考委員会に参加しておりました。選考委員会とシンポジウムの関係で、日本を8度訪れております。本間ファミリーには本当にお世話になりどおしです。
陛下もご承知のように、日本とオランダは何世紀もの間、特別な関係を保ってきました。陛下ご自身、初期の日本科学に対するオランダの影響についてお書きになっておられます。当時の日本は、長崎のオランダ人居留地(出島)を通じてのみ西欧の世界を垣間見ることができました。ヨーロッパの科学の進歩に触れるために、「蘭学」つまりオランダに学ぶことが必要だったのです。現在は立場が逆転しました。私たちオランダの科学者が日本の豊かな知識を吸収している次第です。
このような素晴らしい賞を頂戴し、両委員会には心より感謝申し上げます。両陛下、ご臨席の皆様にも御礼申し上げます。